1-E
ようやく立ち直ったカリンが、まだ顔色を悪くしながらも周囲の確認を行う為と離れた中。サラはまだへたりこんでいた少年に向かって手を差し伸べた。
「お怪我はありませんか? もう大丈夫ですよ」
そう笑顔と共に手を差し伸べたサラだったが、少年は一瞬その手を取ろうとしたもののすぐに手を引っ込めると、プイと横を向いて不貞腐れた顔を見せつつ自力で立ち上がった。
その少年の態度を見て"折角助けてあげたのに"と思うようなメンタルをサラは持たない。むしろ"昔、孤児院にもこういう素直に成れない子もっていましたわよね"と少し懐かしく思い出してしまうくらいだった。
そう思い出しかけたサラは、何かが引っかかった気がしてもう一度少年の顔をマジマジと見てしまった。
先程までと違い、髪型はやや乱れているし、地面に倒れた分だけ服にも汚れが付いている。そしてその顔をよくよく眺めてみると、サラは孤児院の頃の友人の事を思い出した。
「な、なんだよジロジローー」
「――あなた、エイジ君ですか?」
「……やっと思い出したのかよ」
敵意すら含んだ言葉遣いを隠しもしないこの少年の事を、サラは自分が孤児院に居た頃にもっとも親しくしていた友人であったエイジであることにようやくたどり着いていた。二年の月日で成長していた事、そして小ぎれいな恰好をしていた事から気づいていなかったのだ。
「そうだよ、お前がズルして捨ててったエイジだよ」
「……ズルして捨てた?」
エイジから投げられた言葉に、身に覚えのないサラは瞬きをして固まった。
――そんな一行を少し遠くから見下ろしている人影があった。
ゾンビ達が街にすら入る事無く殲滅されてしまったのを見て。
「……虎の子のあいつを使うか」
その人影が零した呟きは荒野の乾燥した風の中で掻き消えた。




