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『私はシルハザ。君達が今まで倒して来たゾンビ達を作り出した死霊術士であり――ヴァンパイアだ』
夕刻に差し掛かり、夕陽が荒野とそこに転がる死体を赤く染め上げる中、唯一立ち上がったゾンビが生気の無い顔で、そう耳障りのする声を響かせた。
『宣言しよう。私は今夜、汝らのいる街へと侵攻する。これまで失われたゾンビ達の補充の為に』
その言葉にサラ達の間に緊張が走る。これは事実上の襲撃宣言だった。その言葉を口にした後、ガクリと話していたゾンビの膝の力が抜けて地面に倒れ掛かる。が、完全に倒れ切る前に再びゾンビが顔を上げた。
『そうそう。言い忘れていた。――君らが邪魔をしない事を祈る。そうすれば君らには手を出さない事を約束しよう』
それだけ言い残すと、今度こそゾンビから完全に力が抜けて地面に倒れ伏した。それはもはやゾンビではなく、ただの死体に成り果てていた。
しばらくは誰も口を利かなかったが、サラが気を取り直すようにポンと手を叩いた。
「ここでこうしていてもしかたありませんね。一度モンテウッドに戻って対策をお話しましょう」
「おう、まあそうだな」
その言葉に周囲の気配を探っていたクロウも賛同の声を上げて、ようやく一同の間の緊張の空気が少しほどけた。
アロンゾは自分の白馬が、サラがこんな所にまで連れて来てしまって怯え切ってしまった馬を励ますように鼻面でつついているのを見て、そちらの方に向かう。クロウはライアが乗り捨てていた車を見に行き、顔をしかめながらそのタイヤに巻き込まれたゾンビの肉体をどうやって取り除こうか考えている様だった。
その中にあって契約外の事はしないぞとばかりに我関せずと少しだけ隅によけて立っていたライアの所に、ニコニコとした笑顔を浮かべたサラがやってきた。
「ライアさんにお願いしておきたいことがあるんですが」
「なんだい?」
「あの巨人のゾンビだった死体。再生不可能なまでに破壊しておいてもらえませんか?」
「…………は?」
いきなりのサラの発言に硬直するライア。別に敵対している相手であるならば戦うのは問題ないが、好き好んで死体を破壊する趣味がある訳でもないライアが否定の声を上げる前に、サラが畳みかけて来た。
「今夜あのシルハザさんという人が来るのですよね? 巨人ゾンビを作った死霊術士なのですよね? ――再利用されたら大変じゃないですか」
「まあ……それは、そうだが」
「本当は燃やせれば良いのですが、こんなに巨大なものを燃やせる程のものがここには無くて。それに、クロウさん、アロンゾさんの武器だと難しそうですが、ライアさんのゴーレムが一番向いていると思って!」
ニコニコキラキラと反論しづらい理屈を述べてくるサラに、ライアが言葉に詰まる。やりたくはない。やりたくはないが、なんと言い返そうか、とライアが考えている時だった。
ニヤニヤと嫌な笑みを浮かべたクロウが乗っかって来た。
「そうだな。確かに俺らには難しいな。今夜のサラの護衛に関係するかもしれないから、契約範囲内かもな?」
「確かに。刃物ではなかなか……」
アロンゾまで乗っかって来てしまっては、もはやライアには否定の言葉は紡げなかった。
「や……やればいいんだろうが畜生が!」
ライアの渾身の叫びが辺りに響き渡った。




