↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
2/4

第2話 転生

 『【死の女神:イスラ】が選択されました……待機中……』


 シンっと静まり返った謎空間に、無機質な機械音が木霊する。


 え? 


 何だかやばそうな雰囲気だし、キャンセルしたいんだけど?


 『──あああああっ!! らめぇ!!』


 無機質な声を聞いた瞬間、ミレイユ女神様が再び奇声を上げながら、僕に向かって突進して来る。


 どうでも良いけど……テンパリすぎておかしくなってない、この人……?


 『は、早く! キャンセルををををを──』


 バグった動画プレーヤーの様な声を出し、ガクガクと身体を震わせるミレイユ女神様。


 それをフォローするかの様に、アイナ女神様はミレイユ女神様の優しく肩に手を置き──


 『ミ、ミレイユ様、お、おちつつつつつ』


 アンタが落ち着けよ。


 それにしても、当事者が不安になる様なテンパり方は止めて欲しい。


 あんなに不遜だったミレイユ女神様がこんなに取り乱すなんて……そんなにヤバい人なんだろうか?


 『死の女神:イスラ様』


 ……何かヤバそうだし、このままキャンセルしてもらおう。


 「あの、落ち着いて……キャンセルしてもらえれば、僕も他の神様に──」


 『──【死の女神:イスラ】が承諾しました』


 ……どうやら遅かった様だ。


 僕の話を遮る様にして、機械音声が『承諾』の意を伝えてきた。


 『ふ、ふふふふ……。キ、キタ……きちゃ……つ、遂に──きたあぁぁぁぁぁぁぁあ!!!』


 居並ぶ神々の一番後方、僕の位置からは姿すら確認できない場所から──とんでもない奇声が上がる。


 思わず、両耳を塞ぎたくなるほどの大声だ。


 『うははははっ!! うれぴぃ! ──おい! さっさとそこを退かんか、愚神どもめ!!!』


 ドゴォ!!!!!


 そんな奇声と共にごうおんがひびき、90人近い神々が弾き飛ばされた。


 神々は、海が割れる様に左右に弾け飛び──さながら、『映画:モーセの十戒』の様相だ。


 離れた位置にいた、ミレイユ女神様やアイナ女神様は無事だったが、惨憺たる状況を前にガタガタと身体を震わせる。


 『──ひっ……ミ、ミレイユ様……どうするんですか? ──今まで、一度も人間から選ばれなかった神【死の女神:イスラ】が……。人間に選ばれなければ、力を失ってしまう我々神の中でも、一際、巨大な力を持って生まれたのに……人間に選ばれなかったために〝力を封印〟されていた【死の女神:イスラ】が解き放たれてしまった。イスラの力は、どんな神よりも強いというのに──ですよ!』


 何で説明口調?


 アイナ女神様がおかしくなってしまった。


 『あばばばばば……』(ミレイユ)


 こっちもかよ。


 明らかにビビりすぎな女神達を尻目に、神々の凄惨な様を見た〝転移者〟たちは、無言でサッと左右に分かれて道を開け──


 そこから──


 コッコッコッ──……


 一人の──


 息を呑むほど美しい──


 一人の女性が歩いて来る。


 髪は、ウェーブがかった紫色で──光を反射して、キラキラとアメジストの様に輝いている。


 瞳は髪と同じ紫で──宝石なんて色褪せてしまうほどに、美しく、それ自体が輝きを放っていると錯覚するほどだ。


 身長も──小柄な僕なんて小人に見えるほどに長身で……ごめん、それは言いすぎた。


 170センチ以上はあるだろう。


 身長だけでなく、身体つきも──出るところは出て……引っ込むところは引っ込んでいる。


 顔面偏差値なんて、測る事が馬鹿らしくなるほどの数値だ。


 その人が纏う紫色のドレスは、何とも挑発的なデザインで──身体の線がくっきり出てしまうほどにぴっちりしていた。


 傍から見れば、『変態』の様な解説をしてしまったが……それらを置いて、何より注目すべき事は──


 顔が怖い!


 ニコニコ笑顔で歩いて来るのに、目が笑っていない。


 絶対、何かに激怒している。


 その女性は、僕の目の前までやって来ると、足を一旦止め──


 『其方が、妾を選んでくれた人間様だな? 妾は、【死の女神:イスラ】と言う。……少し待っていてくれ、妾は愚神と話がある……』

 

 と、笑顔で言った。

 

 怖ぇ……。


 思わず、心の声が粗暴になってしまうほどの圧力を感じる。


 女神イスラ様は、その圧力を保ったままでミレイユ女神様の前に立ち、笑顔のままで言った。


 『で、ミレイユくん? 妾に言う事があるんじゃないのかな?』


 『……と、特には』


 『おいおいおい、お前、神ネットで妾の事馬鹿にしてたよなぁ? 『絶対にイスラを選ぶ人間なんていない』って! リアルファイトというものを教えてやろうか?』


 『あ……そ、それは……。ア、アイナ女神がやれって言うから……』


 『えぇぇぇぇぇ!?』


 普通に仲間を売ったよ、この人。


 迷いなく、人のせいにしてるし……。


 『あ、あの……イ、イスラ……? 祝福対象が決まったなら、〝転生〟させた方が良いのでは……? つ、ついでに……あ、貴方も一緒に行かないと……』


 『……あぁ? そんなの妾の勝手だろう? 今は比較的、気分が良いから見逃すが……これ以上、戯言を抜かすと──首を引っこ抜くぞ?』


 『……すみません』


 ──ザザッ!


 見事な土下座だ。


 どんだけビビってるんだよ……。


 そんな、極端に遜った様子のミレイユ女神様の土下座を無視し、女神イスラは──

 

 『それにしても……。いやん、可愛い坊やじゃない! 妾の事は『死神ちゃん』って呼んでね! 自分の名前って好きじゃないの! うふふ、気分が良いからスキルあげちゃう!』


 ぎゅむ──!


 そう言って、いきなり僕の頭を掴んで、強引に胸元に手繰り寄せた。


 そして──


 【ステータス2倍のスキルが発現しました】


 唐突に、僕のステータスにスキルが追加される。


 そんな簡単にもらって良いものなのか?


 効果も凄そうだし……まあ、でも、


 『さてさて、妾のカワイコちゃんのステータスはどうなったかな??』


 ──ステータス、オール2


 まあ、当然そうなるよね。


 元々、オール1だし!


 『いやん、よわよわで可愛すぎるー!』


 何でも良いんかい。


 ……テンション高すぎてついて行けないな。


          *


 「あ、あぁ……そんな……そんな……しーちゃん……な、なんでぇ……」


 「あり得ないよ……何で、紫苑がこんな所にぃ……」


 神様達が繰り広げる茶番に辟易していると、〝転移者〟の中から、妙に聞き覚えのある女の子の声が聞こえた。


 それも、二人……。


 その二人は、僕にとって見知った顔だが……僕が人混みの先にいたため、それが壁になってコチラに気付かなかったらしい。


 人の波がかき分けられ、僕の姿が露わになった事で初めてコチラの存在に気付いた様だ。


 まあ、僕の方も気付かなかったのだから……仕方のない事か。


 ダッダッダッ!!

 

 僕の姿を見つけた瞬間、二人の少女が〝転移者〟の集団から抜け出し、コチラに向かって走って来る。


 重なる二つの足音──


 僕は、バツが悪くなって……咄嗟にそっぽを向いてしまった。


 詩織(しおり)──


 桜花(おうか)──


 ……何で二人がここに?


 確かに、『記憶を失くす前に二人にお礼を言いたい』とは言ったけど……不意打ちは困るな。


 そもそも、彼女らは違う高校に通っており……クラスメイトではないはずなのに。


 でも、彼女らが着ている制服は、間違いなく、僕が通う予定だった高校の制服で──


 なぜ……?


 さっきまでは、『新しい人生を送れば良い』と楽観的に考えいたが……二人が巻き込まれると言うなら話は別だ。


 ──ガバッ!


 二人は、ほぼ同時に僕に抱きついて来るが──僕は、鋭い視線で事の元凶っぽい神々を睨みつけた。


 事と次第によっては、相手が神だって容赦しない。


 「しーちゃん、〝転移〟て何ぃ! 死んじゃったって何ぃ! しーちゃんが居ないなら、戻ったって意味ないじゃない! 何で、昨日はあんなに元気だったのにぃ……何でぇ……」


 と、整った顔立ちをグジャグジャにしながら泣きじゃくる詩織。


 「だから言ったじゃない! あんな施設の、クソ施設長の言う事なんか信じちゃダメって! 詩織のバカ! そんな事で、紫苑の最期に会えなかったなんてぇ!」


 泣きながら、大声で詩織を罵倒する桜花。


 まだ、時間的には昨日別れたばかりだと言うのに……何だか、二人の事が凄く懐かしく思えた。


 と言うか、ここにきて一番の疑問を解決しなくては。


 「ふ、二人とも落ち着いて……。て言うか、その制服……何?」


 相手に落ち着けと言いながら、僕自身も結構テンパっていた様で……二人に対して端折りすぎな疑問をぶつけてしまった。


 これでは、通じるものも通じないだろう。


 「だって、だってぇ……しーちゃん、この高校に通いたいって言ってたのにぃ……病気で通えなくてぇ……な、なのに、私たちだけぇ……」


 ……通じたよ。


 さすが幼馴染。


 そして、その言葉で、何となく詩織の言葉の意味はわかった。


 まあ、彼女が言いたい事は──


 『僕が行きたかった高校に行けないのに、そこ自分が通っていると知ったら、僕が落ち込むだろうと思って嘘を付いていた』


 って事なんだろう。


 気の使い方、変じゃない?


 そんな嘘、いつかはバレるのに……。


 まあ、そんなふうに思っていてくれた事は素直に嬉しいけどね。


 それに、詩織達は、僕にとってその〝いつか〟が来ないかも……と、何となく気付いていたのかもしれない。


 ……さっきは、二人を巻き込んだ神々に激しい怒りを覚えたが……同時に、二人に最後に会えた事に感謝する気持ちも感じてしまった。


 ……記憶をなくして、別人として生きる僕とは違い、二人にはこれから過酷な現実が待っていると言うのに……。


 ごめん、二人とも。


 二人に心の中で謝罪し、改めて今までの事に感謝し、お礼を述べようとした瞬間──


 ──ピカッ


 突然、僕の身体から眩い光が放たれる。


 「うえ!? な、何だこれ!」


 突然の事に僕は動揺し、僕に抱きついていた二人も何も言えずに固まっている……。


 『ああ、時間切れね。そろそろ〝転生〟の準備をしなきゃ。何か、大事そうな場面だから止めなかったけどね……。安心なさい。〝転生〟した後も、妾が最大限に助けてあげる。妾に愛された事が、誇りに思えるほどにね』


 いや、そう言う事じゃない。


 ……まあ、それも大事なんだけど。


 記憶を隠してしまう前に、二人に言いたかった事が──


 身体が……消えていく……。


 声が……出ない……。


 ああ、残念だ。


 せっかく、最後に会えたのに……伝えたい事も伝えられずに……。


 「──ちゃん! しーちゃん! 必ず──別の世界でも、必ず貴方を見つけるから!」


 「待ってなさいよ! 絶対、絶対よ!!」


 僕は──〝転生〟した……。


         *


 と、そんなしんみりした感じで〝転生〟したにも関わらず──


 【記憶の再生スキルが発現しました】


 の機械音声と共に、普通に記憶を思い出した。


 ……もはや何でもありだな。


 「ぎゃっ……ぎゃっ……ほぎゃ……」


 今の僕は赤子で、記憶を思い出したところで何もできないんだけどね。


 まあ、でも、この日、この時から……。


 僕の、死神愛され人生が始まったのだ……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。