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第1話 神選択

 『おめでとうございます。貴方達はココではない世界……『イーデン』を救う勇者に選ばれました』


 そんな女性の声が聞こえ、僕は唐突に目を覚ました。


 ……さっきまで、息をするのも苦しい状況だったのに……。


 静かに()()()()()()後、すぐに意識が覚醒した感じだ。


 今は、あれほど息苦しく、鉛の様に重かった身体が妙に軽い。


 羽でも生えて、空に飛んでいけそうな気分だ。


 「何だそれ! 『イーデン』って何だよ!! 俺はこれから彼女とデートの予定だったんだ! 早く元の場所に戻してくれ!!」


 急な怒鳴り声。


 ただでさえ、起き抜けで状況を把握できていないのに……何とも頭に響く濁声だ。


 僕は、未だにボーッとする頭を何度か左右に振り、モヤモヤした思考を正常に戻そうと努力する。


 そうした事で、初めて自分が置かれた状況に気が付いた……。


 『彼女……? はん、お黙りなさいな! あなた方の双肩には『イーデン』の未来がかかっているのです! 女に(うつつ)を抜かす暇など無いですわ!』


 また聞こえる、女性の甲高い声……だが、さっきとは別人の声だ。


 今現在、僕の置かれた状況がどうなっているかと言うと……。


 起き抜けで地面に座り込んでいる僕の目の前に──


 僕に背を向ける形で立っている、制服姿の男女……。


 人数は……おおよそ、40人くらいは居るんじゃないだろうか?

 

 男女比率は丁度半々くらい……いいや、若干女子の方が多いかもしれない。


 その40人程度の男女は、一様に前方へと視線を向けている。


 僕に対して背を向ける形になっているため、一人一人の表情は窺い知れないが……各々が醸し出す雰囲気から、あまり良い状態とは言い難かった。


 て言うかこの人たち、僕の存在に全然気付いていないっぽい。


 ……もともと影が薄いし、仕方のない事なのか?


 それにしても、この男女が来ている制服……どこかで見たことがある様な……。


 そして、その男女が見つめる先には──


 これまた、男女の集まり……。


 こちらは、制服姿の男女の倍以上の数──ざっと、100人くらいは居るんじゃないだろうか。


 各々が腕を組んだり、踏ん反り返ったりして……何とも不遜な態度で制服姿の男女の前に立っていた。


 うん、制服姿の男女が間に挟まっているし、この100人の男女も僕の存在には気付いてなさそうだ。


 ……それにしても、おかしい。


 その100人の男女……頭に禍々しいツノが生えていたり、背中に翼が生えていたりと……明らかに普通の人間じゃない。


 コレがコスプレというやつなら話は別だが……明らかにそう言う雰囲気の場所ではないし、それらは妙にリアルで……作り物の様には見えなかった。


 おかしいと言えば、この場所だってそうだ。


 何もない……。


 お互いに、睨み合う様にして対峙する男女の二集団以外には……壁や建物……と言うか、地面すら存在しない。


 ただ、真っ白なだけの空間で、男女が睨み合っているのだ……。


 傍から見れば、異様な光景……。


 ココがどこで、どんな状況かは全く分からなかったが……僕は大人しく馬の流れに従い、黙って男女の会話に聞き入ることにした。


         *


 「とにかく、彼女に会いたいんだ! 早く元の戻してくれよ! 俺は彼女がいないと生きていけないんだ!」


 この人、そればっかりだな……。


 先ほどから『彼女、彼女』とそればかり口にするのは、茶髪──と言うより、真っ金金の髪色の男子だ。


 僕は彼女なんて出来た経験がないし、分からないけど……それほど大切に出来る人が居るのは……何となく羨ましい。


 あー、いいや。


 僕にも大切な人は居た……いや、居る。


 僕にとって、何より大切なのは……二人の幼馴染──


 「でもさー、ケントくん。その彼女って、今朝知り合ったばっかりの人だろ? まだ告ってもないのに、彼女って……それに、いつデートの約束なんかしたんだよ?」


 ……前言撤回。


 全然羨ましくないな。


 「うるせぇな! 俺が彼女つったら彼女なんだよ! 殴られテェのか小松!」


 「──ぐべっ! もう殴ってるよケントくん……」


 金髪──ケントと呼ばれた男は、悔しそうに地団駄を踏んだ。


 どうでも良いけど、このやり取りはいつまで続くんだろう?


 さっさと話を進めてくれないと、現状を把握する事も出来ない……。


 『そろそろ静かにしてくれ。これ以上騒ぐなら、〝贈り物(スキル)〟を与えずに『イーデン』に放り出すぞ? 『イーデン』は魔物が存在する過酷な世界……果たしてスキルなしで生き残れるかな?』


 100人の男女の内、モッサリと顎髭を蓄えたツノの生えた男が、低い声でそんな事を言い出した。


 言っている意味は全く分からなかったが、その男が放つ威圧感に、制服姿の男女達は皆押し黙ってしまう。


 ……と言うか、騒がしくしていたのは一部の人間だけだったが……。


 『……よろしい。では、君たちが置かれた状況から説明しよう』


 制服姿の男女達が静かになったのを確認すると、100人の男女の中から一歩前に出た──やたらと神々しい光を放つ、絶世の美女が説明を始める。


 何となくだが、その女性がこの100人の集団のリーダー的存在の様に思える。


 今、気付いた事だが……100人の男女達は、その見た目は千差万別ではあるが、その誰もが驚くほど整った容姿をしていた。


 それこそ、あまりにも人間離れした美しさで……。


 とにかく、女性の説明はこうだ。


         *


 ココに集められた者は、地球から召喚された地球人40人で……ある高校のクラスメイト達の様だ。


 目の前にいる100人の男女は、全員が何らかを司る神様で──


 ──あれ?


 なるほど、何となく見た事のある制服だと思ったけど……。


 僕は()()()()から高校に通えていなかったけど……40人の男女らが来ている制服は、僕が通う予定だった高校の制服だ。


 ──あれあれ?


 この人たちが、『僕のクラスメイトになるはずだった人達』だってのは分かるけど……。


 ひい、ふう、みい、よう……て、おい。


 僕の目の前に立っている男女の数を数えてみれば、丁度40人……。


 もしかしなくても、僕は数に含まれてない?


 ??


 それに、この100人の男女が神様って言うのも何だか胡散臭い……。


 まあ、こんな不思議な現象が起こっているんたがら、信じざるを得ないんだけど……。


 『君たちは選ばれた人間だ。コレから特別なスキルを与えられ、『イーデン』と言う別世界で活躍してもらいたい。詳細は──案内人を用意しているので、行けば分かるだろう』


 ……僕は含まれてなさそうだけどね。


 何だか、強烈にイヤな予感がする。


 絶世の美女──神様の有無を言わさぬ言葉……反抗できない圧力……。


 誰もが息を呑み、押し黙る。


 『さあ、君たちに〝リスト〟を渡した。開いてみなさい。『システム』と発声すれば、ウィンドウが現れるはずだ』


 「「「システム」」」


 40人の男女──クラスメイト(仮)が、言われるがまま『システム』と口にする。


 ……一応、僕もやってみよう。


 「……シ、システうぅ……」


 自分でもビックリするくらいの小声で……しかも若干噛んでしまった……。


 誰にも聞かれなかったのが救いか……。


 ──ピコン


 何とも間抜けな音を立てて、青色の四角(ウィンドウ)が左右に二つ……目の前に現れる。


 一つは……。


 僕の名前──


 葛城かつらぎ 紫苑しおん レベル1


 と冒頭に書かれた……。


 何だコレ?


 ステータスか?


 力の値──1……ふざけるなよ。


 守の値──1……何も守れないだろ。


 知力の値──1……馬鹿すぎるだろ。


 速さの値──1……バグってんのか?


 運の値──1…… ……。


 余りにもな数字が並ぶ僕のステータスに、辟易としながらも、一応最後まで確認する。


 HPの値──1……つまずいただけで死ぬだろ!


 MPの値──1……いっそ清々しいな!


 確認してみれば、なんて事はない。


 全部1だ。


 ……ふう、見るまでもなかったな。


 まあ、おそらくだが……普通の人間の基準値は1なんだろう。


 コレから、神様の言う〝スキル〟を貰って……『自分で強くなれ』と言う事なのだろうな。


 まるでテレビゲームの世界だ。


 RPG的な?


 とにかく、もう一つのウィンドウを確認して──


 「げげ、知力が100しかねぇ! 俺、勉強苦手だもんなぁ……他は結構高い数値なのに、知力だけ凹んでやがる……」


 ……は?


 今、なんて言った??


 僕、知力1だけど?


 偏見は良くないが、とても勉強など出来そうにない……見るからに、不良っぽい赤毛の人が知力100なのに?


 ……イヤな予感が的中した。


 差別だ、コレは。


 「……あの」


 流石に酷すぎる……と言う事で、神様に文句を言おうとした僕だが……。


 『皆さん、自分のステータスは確認しましたね。それでは、二つ目のウィンドウを見てください』


 僕の小さな声は、絶世の美女女神の声に遮られ、誰にも気付かれなかった……。


 仕方なしに、もう一つのウィンドウに目をやると、冒頭に──


 【祝福を受ける神を選択してください】


 などと書かれていた。


 そのまま下を見ていくと……そこには何かのリストの様なものが並んでいる。


 序列1位 【正義の女神:ミレイユ】……定員1名


 序列2位【力の女神:ストロン】……定員1名


 序列3位【炎の男神:フレイ】……定員2名

         *

         *

         *


 以上の様な事が、延々と書かれていたのだ。


 このリスト……どこまであるのだろうか?


 スワイプしていくと、下に動いていく様だが……面倒だったため、リストの一番下までは確認しなかった。


 とにかく、『祝福』とやらの意味はわからなかったが、こんなの一番上が良いに決まってる。


 ……素直に『正義の女神』とやらを選んでおこう。


 定員があるみたいだけど、漏れたら諦めれば良いだけだ。


 『このウィンドウに書かれている様に、貴方達には選択した神の祝福……スキルが与えられ──』


 ──ピコン


 『【正義の女神:ミレイユ】が選択されました……待機中……』


 『……は?』


 僕がウィンドウ内をクリックすると、またもや間抜けな音が聞こえ──それと同時に、機械音声の様な無機質な声が、僕のウィンドウから響いた。


 何かを説明しようとしていた絶世の美女女神は、口を開けたままで固まり──


 バババッ!!!


 制服姿のクラスメイト40人──


 そして、100人の神々達までもが、僕の方に注目した。


 正確に言えば、機械音声がした方にか……。


 『──まだ説明の途中なのに何勝手に押してんのよ! 祝福の選択は慎重にやらないと後で後悔──って、貴方誰?』


 絶世の美女女神は、若干口調が怪しくなりながらも、初めて僕の存在に気付いたかの様にそんな事を言い……て言うか、やっぱり僕の扱いってそんな感じなのね。


 『豊饒の女神:アイナ! 『転移者』選抜の担当は貴女のよね! 部外者が混じってるじゃない! 一体どうなってるの!?』


 『正義の女神:ミレイ様……す、すみません……。か、確認します……』


 絶世の美女女神……この人が正義の女神ミレイユなのね……選択誤ったかな?


 ……それよりも……。


 部外者……部外者か……。


 何となくそんな気はしてたけど、僕はお呼びでないらしい。


 アイナと呼ばれた女神様は、目の前にいくつものウィンドウを表示させ、アタフタとスワイプさせた。


 やがて……。


 『し、失礼しました、ミレイユ様。げ、原因が判明しました……』


 『で? その原因とは?』


 『こ、この者は……地球で──亡くなり、『イーデン』で〝転生〟予定の少年だった様です。な、何かの原因で、〝転移者〟の中に紛れ込んでしまった様で……す、すみません』


 『……』


 ……原因判明。


 分かってみればなんて事はない……。


 やっぱり、僕は──死んでしまったんだな。


 家族もいないし、その点では未練はなかったけど……最後は病院で……独り寂しく死んだのか……。


 でも、まあ……アイナ女神様の話では、どうやら僕は『イーデン』と言う世界に〝転生〟出来る様だし……。


 『スキル』なんて特別っぽいものを貰って〝転生〟できるのだから……ある意味運が良かったのか?


 『……そうですか。まあ、紛れ込んでしまったものは仕方ないですね。しかし、神々の恩恵は本来、〝転移者〟に与えられる特権……貴方に与える事はできません。〝転生〟すれば記憶も失うわけですし……スキルを与えても無意味ですからね』


 ですよねー。


 何か、話を聞いている途中からそんな気はしてました。


 急に冷静な口調になったミレイユ女神様を前に、僕ゲンナリしてため息を吐くが──


 『それに、ぷぷ。貴方、そんなステータスで私の──この【正義の女神:ミレイユ】の恩恵を受けようなんて……ブッハ! 冗談はその貧相な身体だけにしてくださいな!』


 ……急にどうした?


 情緒不安定すぎるだろ、この女神様……。


 『他の神々方……見てくださいな、このステータス!』


 ミレイユ女神様がそう言って、僕の方に向かって右手を翳すと──


 ──ピコン


 間抜けな音を立てて、僕のステータスウィンドウが変化した。


 ……変化したと言っても、『青背景』だったのが『赤背景』に変わっただけだが。


 見るまでもない。


 見事にステータス値、オール1のウィンドウ画面だ。


 ……おそらくだが、赤背景になった事で、他の人にも僕のステータスが見える様になったのだろう。


 だって……。


 『ぷっ……! 今まで色々な〝転移者〟や〝転生者〟を見てきたけど……オール1は流石に初めてだ! ぷぷぷ……』


 『グハッ! こんなんじゃ、スキルを与えてやっても長生きは出来ねぇな!』


 100人の神様達がみんな笑っている。


 それだけじゃなく……。


 「……ヘッ。こんな状況クソ食らえって思ったが……コイツの悲惨さに比べりゃ、少しはマシかもな。ちょっとだけ自信がついたぜ」


 「ふふ、そうね。心細くて泣いちゃいそうだったけど……コレよりはマシね」


 ほぼ初対面のはずのクラスメイト達まで僕を──僕のステータスを見て嘲笑った。


 ……ゴミを見る様な目だ。


 挙げ句の果てにはコレ呼ばわりか……。


 『勿論、貴方などに私の加護は与えられませんので、〝選択〟は取り消しで。そのまま、何も持たずにさっさと〝転生〟なさいなさいな』


 と、ミレイユ女神様。


 そうなるだろうとは思ったけど……酷いな。


 それでも女神様なのかよ。


 『あ、あの……ミレイユ様。さ、流石にこちらのミスでここに呼んでしまったのに……何もなしで放り出すと言うのは、余りにも……』


 『……ミスしたのはアイナ女神ですけどね?』


 ……何だ。


 リーダーっぽいミレイユ女神様や、僕を嘲笑う他の神々達もこんな感じだから、神様って言うのは意地悪な人ばかりかとも思ったけど……このアイナ女神様は話が分かりそうだ。


 優しそうで、ミレイユ女神様に負けず劣らずの美人……推せる。


 『す、すみません……。で、ですが、いくらこの少年が『底辺のゴミクズ』だとしても……〝転生〟にもそれなりのコストがかかってますから……。知ってしまった以上は……な、何か手助けをした方が良いのでは?』


 『その『底辺のゴミクズ』を〝転生者〟に選んだのもアイナ女神ですけどね?』


 前言撤回……コイツらは敵だ。


 もう何でも良いから、さっさと〝転生〟させてくれ。


 これ以上、恥を晒したくもない。


 僕は、そう思って、その意をミレイユ女神様に伝えようとしたが──


 『……まあ、しかし、アイナ女神の言う事も一理ありますか……。では、こうしましょう』


 おや? 何だが、流れが変わりそうだ。


 ミレイユ女神様の話では、〝転生〟すれば僕の記憶は失われて……別の人間として生まれ変わる様だけど。


 ……まあ、僕の記憶のほとんどは病院のベッドの上だったし……失われる事を惜しむ記憶なんてない。


 それならば、新たな人間とし生まれ変わった方が……辛い記憶なんて無い方が幸せになれると言うものだろう。


 でも、それにしたって、何か〝先立つ物〟はあった方が絶対に良いはず。


 て言う事で、スキル、頂きます!


 『ぷっ。貴方様に新たにリストを作りましたので……確認してください。ぷぷ』


 何で笑った?


 強烈に嫌な予感が……。


 ミレイユ女神様は、そう言うと、再び僕に向かって右手を翳した。

 

 すると、僕の目の前にあったステータスウィンドウとは別の──『神選抜画面』とも言えるもう一つのウィンドウ内のリストが変化し──


 序列90位 【無能の男神:ムノーン】……定員100名


 序列91位【娯楽の男神:ゴーラック】……定員100名

         *

         *

         *


 序列90位よりも上の選択肢が排除された。


 酷すぎるだろ!


 しかも、神の名前のテキトウさよ……。


 『このもの達も、一応は神。一応、スキルを与えることも出来るわ。ぷぷ。さあ、どんなスキルが与えられるか……楽しみね』


 だから笑うな。


 ミレイユ女神様は、僕を蔑むのが『楽しくて仕方がない』と言った様子で嘲笑う。


 『……確かに我は無能のムノーンだが……言い方……』


 『娯楽は、生きていく上で最も大切なものなのに……』


 100人の神々達の中から、そんな抗議ともつかない微妙な声が聞こえた。


 間違いなく、ムノーン男神様とゴーラック男神様だろう……。


 この男神達は、ミレイユの良い様に不貞腐れた様子を見せているが……僕は騙されないぞ?


 この男神達……面倒くさそうに……でも、蔑んだ視線を僕に向けている。


 『絶対に選ぶなよ』と言う、圧力の様なものを感じるのだ。


 『ワシを──このムノーンを選んだ暁には、『5秒以上息を止めていられるスキル』を与えよう』


 ……無能だ。


 どうしても選ばれたくないらしい。


 『このゴーラックを選べば、『真剣な場でも遊び出したくなるスキル』を与える』


 ……こちらも無能。


 明らかにデメリットしかないスキルだろ!


 『さあ、さっさと選んで〝転生〟してください。我々は〝転移者〟を導くのに忙しいのです。さあ、皆さんコチラに──』


 ミレイユ女神様の声を受け、アイナ女神様が先導する形で、制服姿の男女達──〝転移者〟が場所移動を始める。


 ……どうやら、神々は一刻も早く僕を視界から消してしまいたいらしい。


 神々は皆、汚物を見る様な蔑んだ視線を向けてくる。


 それは、〝転移者〟たちも同じで……。


 僕に対する神々の扱いを見て、嘲りの視線を向けると同時に、僕が『邪魔者』であるかの様に唾を吐く者までいた。


 ステータス、オール1は、人間扱いすらされないらしい。


 流石に泣けてくる状況だが……〝転生〟さえしてしまえば、記憶は消され、全て忘れ去る事ができるのだ。


 せっかく生まれ変わるのだから、ポジティブに行かないとね。


 でも、だけど……さっきは『生前にいい思い出なんて無い』って言ったけど……。


 違うな。


 いい思い出もあった……。


 それは、病弱な僕を幼い頃から心配して、ずっとそばにいてくれた二人の幼馴染の少女……違う高校に通っているはずだから、ココには居ないだろうけど……。


 最後に……記憶を失ってしまう前に……一度会ってお礼を言いたかったな。


 まあ、言っても仕方ない事か……。


 さっさと神様を選んで〝転生〟してしまおう。


 でも、ミレイユ女神様の思い通り……笑いのネタになったみたいでムカつくな。


 いっその事、最高に笑い者になってやろう。


 こうなったら、リストの一番下だ!


 ──ピコン


 『あ! ああああ!!』


 僕がろくに確認もせずに、リストの一番下の神様を選択したと同時に、アイナ女神様が奇声に近い叫び声を上げた。

 

 『な、何!? アイナ女神、どうしたと言うの!』


 続けて、仲間の奇声に驚いたミレイユ女神様も声を上げる。


 『ミ、ミレイユ様! 序列90以下をリストにしたと言う事は、ア、アレも! もしかして、序列100位もリストに有るのでは!?』


 『……あ。……あ、ああああああっ!!!』


 何だ何だ?


 突然、ミレイユ女神様やアイナ女神様が発狂し始めたぞ?


 て言うか……序列100位って……。


 神様が全員で100人だから、一番下は100位……え? 僕、選んじゃったんだけど?


 僕は、女神達の奇行に驚きつつも、ウィンドウ画面から、改めて自身が選択した序列100位の神様の内容を見てみる。


 序列100位【死の女神:イスラ】……定員1名……貴方・だ・け♡


 ……何だコレ!?


 絶対、ヤバい奴を選んでしまった!

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