三人の兄
同じ頃、エルフレイム辺境伯邸では、留守を預かる三人の兄が、長兄レオンの執務室へ集まっていた。
本来なら、とっくに昼食を終えている時刻である。
しかし、執務机の上には朝から運び込まれた報告書が、まだ半分近く残されていた。
北東の砦から届いた物資補給の申請、雪解けによって崩れた街道の修繕計画、春先から増え始めた魔物の目撃記録。
父アルベルトがローゼンタール公爵領へ赴いている間、それらへ決裁を下すのは、次期当主であるレオンの役目だった。
開け放たれた窓から、訓練場の音が流れ込んでいる。
剣のぶつかる乾いた響き。
兵士たちの掛け声。
指導役が飛ばす鋭い叱責。
聞き慣れた音ばかりだった。
ただ、その中に混じっているはずの声が、今日は聞こえない。
レオンは署名を終えた書類を脇へ寄せ、無意識に閉ざされた扉へ目を向けた。
そこから末弟が顔を覗かせるはずはない。
オーレリアンは父とともに、半日以上離れたローゼンタール公爵領へ滞在している。
朝食を終えたあと、何食わぬ顔で執務室へ入り込み、長椅子へ寝転がることもない。
何を話すでもなく、レオンの隣で剣の手入れを始めることもなかった。
分かっている。
それでも、屋敷のどこかから聞き慣れた足音が近づいてくるのを待ってしまう。
「オーレリアンは、きちんとやっているだろうか」
口にした途端、向かいの席に座るカイルが報告書の頁を捲る手を止めた。
顔は上げない。
声だけが、呆れを隠さず返ってくる。
「朝から三度目だな、兄上」
「まだ三度だったか」
「数えていないと思ったのか?」
カイルは細長い指で頁の端を押さえたまま、ようやく顔を上げた。
兄弟の中では最も細身で、軍服より文官服の方がよく似合う男である。
穏やかそうな容貌をしているが、口を開けば相手の痛いところを正確に突く。
「聞くたびに答えが変わるかもしれない」
レオンが言うと、カイルは僅かに目を細めた。
「変わらない。あいつが公爵家で一日中、大人しく行儀よく座っている可能性は低い」
窓際から、押し殺した笑い声が聞こえた。
ガイアスだった。
軍務の合間を縫って屋敷へ戻ってきた三兄は、先ほどから窓枠へ肩を預け、兄二人の会話を聞いている。
軍服の上着は椅子の背へ掛けられ、黒いシャツの袖を肘まで捲っていた。
「少なくとも、求婚だけは済ませているだろう」
「そこまでは私も心配していない」
レオンは机上の羽根ペンを置いた。
あの末弟が、決めたことを前に怖じ気づくとは思えない。
国王を前にしても、自分が正しいと信じれば真正面から口にする男だ。
まして今回、シンクレアへ求婚すると決めてからのオーレリアンには、誰が止めても聞かないだろうという確信があった。
問題は、その後である。
公衆の面前で婚約を破棄された女性へ、出会って間もない年下の男が求婚する。相手がその場で答えを出せるはずがない。
考える時間を求められたなら、待たなければならない。
間違っても、顔を合わせるたびに返事を尋ねたり、自分の気持ちを押しつけたりしてはならなかった。
理屈では、オーレリアンも理解しているはずだ。
理解していることと、実際に落ち着いて待てることは別だが。
「返事を急かしていなければよいのだが」
「そこまで愚かではない」
ガイアスが答える。
声音には迷いがなかった。
直属の上官として、戦場でのオーレリアンを最もよく知るのは彼である。
弟は大胆だが、考えなしではない。危険な場所へ真っ先に踏み込むのも、自分の速さと味方の位置を見極め、戻れると判断しているからだ。
待てと命じられれば、何時間でも身を潜める。
敵が動くまで、息を殺して伏せ続けることもできる。
もっとも、恋愛で同じ冷静さを保てる保証はなかった。
オーレリアンが自分の感情を恋として自覚したのは、今回が初めてである。しかも、相手は一年前から胸へ残っていた女性だ。
隠そうとしても、喜びも不安も顔へ出ているに違いない。
「求婚の話へ触れなくても、毎朝シンクレア嬢の部屋の近くをうろついていそうだ」
カイルが淡々と口にした。
レオンの眉間へ皺が寄る。
「なぜ、そのような不審者じみた行動を想像する」
「姿を見たい。しかし、返事を急かしてはいけない。そこで偶然を装い、廊下を歩く」
カイルは報告書を閉じた。
「オーレリアンなら考えそうだ」
「偶然を装えると思うか?」
ガイアスの問いに、カイルは僅かに考えた。
「無理だな」
二人がほとんど同時に頷く。
レオンも反論できなかった。
オーレリアンは嘘が下手である。
隠し事をしているつもりでも、目と口元がすべてを語る。偶然を装って待ち伏せしたところで、シンクレアを見つけた瞬間に顔を輝かせ、何のためにそこへいたのか自分から明かすようなものだった。
レオンは額へ片手を当てる。
「父上が一緒にいることだけが救いか」
「父上が恋愛について適切な助言をできるとは思えないが」
カイルが即座に返した。
「公爵家へ失礼を働けば、止めてくださるだろう」
「父上自身が、息子を売り込んでいる可能性もあるぞ」
ガイアスの言葉に、レオンは黙った。
十分にあり得る。
アルベルトは息子たちを心から愛し、全員が自慢の息子だと信じて疑わない男である。
ローゼンタール公爵へ向かって、オーレリアンがどれほど強く、優しく、将来有望であるかを語り続けていても不思議ではない。
むしろ、求婚を始める前から相手の父親へ息子の武勇伝を披露している姿が、簡単に想像できた。
「止める者が一人もいないのではないか」
レオンの呟きへ、カイルが肩を竦める。
「公爵家の方々が止めてくれるだろう」
「他家へ任せるな」
「なら伝令を出すか?」
その一言に、レオンの視線が扉へ向いた。
伝令。
出そうと思えば、すぐに出せる。
公爵領まで早馬を走らせ、滞在の様子を尋ねることは難しくない。父へ宛てて、オーレリアンが余計なことをしていないか確認するよう書くこともできる。
それでは、弟へ任せたことにならない。
レオンが返答を迷っているうちに、ガイアスが窓辺を離れた。机の脇まで歩み寄り、積まれていた報告書の一枚を手に取る。
「今のところ、心配するほどではないだろう」
「根拠は?」
「求婚するまでに、兄上達から散々注意された。それでも理解していないなら、何を言っても無駄だ」
「慰めになっていない」
「それに」
ガイアスは書面へ目を落としたまま続ける。
「シンクレア嬢は、嫌なことを曖昧に済ませる方ではないだろう。オーレリアンが踏み込みすぎれば、止めるはずだ」
レオンは答えなかった。
一年前、王城の大広間で婚約を破棄されたシンクレアの姿は、彼も人づてに聞いている。
泣いて縋ることも、声を荒らげることもなく、必要な言葉だけを残してその場を去った女性。
剣士としても名を知られ、自分の意志を曲げない人物だという。
オーレリアンが惹かれた理由を聞いたとき、驚きはした。
しかし、納得もした。
末弟は、心から尊敬できない相手へ、人生を共にしたいなどとは言わない。
「五つ年上ということも、本人はまるで気にしていなかったな」
カイルが新しい書類へ手を伸ばしながら言った。
「むしろ、相性はよいのではないか」
「なぜだ」
レオンが尋ねると、カイルは顔も上げずに答える。
「昔から甘えん坊だからだ」
あまりにも即答だった。
レオンは反論しかけ、そのまま口を閉じた。
ガイアスも否定しない。
軍人としてのオーレリアンしか知らない者が聞けば、信じないかもしれない。
十七歳にして多くの実戦を経験し、第一遊撃隊で剣を振るう若者。負傷しても弱音を吐かず、年上の兵士へも必要な意見は口にする。危険な任務ほど、自分から手を挙げる。
──家族の前では違った。
成長してから露骨に甘えることは減ったものの、任務から戻れば必ず家族のいる部屋へ顔を出す。
レオンが執務をしていれば、何を話すでもなく隣で剣を磨く。カイルが地図を広げていれば肩越しに覗き込み、ガイアスが訓練場へ向かえば、頼まれてもいないのについていく。
構ってほしいとは言わない。
ただ、好きな相手の近くにいたがる。
「甘やかしてもらえる女性かどうかは、分からないだろう」
レオンが言う。
「甘やかしてもらう必要はない」
カイルはようやく顔を上げた。
「あいつの場合、隣に置いてもらえるだけで満足する」
「犬のようだな」
ガイアスが低く呟いた。
「同じようなものだ。帰宅したとき、玄関で待つか、窓から見ているかの違いしかない」
「お前たちは、オーレリアンを何だと思っている」
咎める声には兄としての威厳を込めたつもりだった。
しかし、二人の表情は変わらない。
否定として弱いことを見抜かれている。
オーレリアンが幼い頃、遠征から戻るレオンを玄関で待ち続け、そのまま床へ座り込んで眠っていたことは、一度や二度ではない。
末弟が生まれたとき、レオンはすでに十七歳だった。
父が領地を離れている夜には抱いて寝かしつけ、歩き始めた頃には手を引いた。兄というより、半ば父親のようなつもりで育ててきたところがある。
そのためか、オーレリアンは年上の者へ心を預けることを恥じない。
自分より経験を積んだ相手へ教えを請うことも、相手の判断へ従うことも屈辱とは考えなかった。
五つの年齢差など、彼にとっては問題にすらならないのだろう。
「本人が気にしていなくとも、シンクレア嬢が同じとは限らない」
レオンが静かに告げると、部屋の空気から僅かに軽さが消えた。
カイルの指が、閉じた報告書の端を一度叩く。
「年齢か、家格か、婚約破棄後の評判か。何が不安になるかは、我々には分からない」
公爵家の令嬢と、辺境伯家の四男。
家格だけを見れば、シンクレアが下位の家へ嫁ぐ形になる。
本人たちが気にしなくとも、社交界が黙っているとは限らない。
王家から退けられ、格下の家へ収まったのだと嘲る者もいるだろう。
年下の男を誑かしたと、下卑た噂を流す者さえ現れるかもしれない。
オーレリアンは、そうした貴族社会の悪意を読むことが得意ではない。
自分が年齢も家格も気にしないから、相手にとっても乗り越えられるものだと考えてしまう可能性はあった。
「そこまで考えているだろうか」
レオンの問いに、ガイアスはすぐには答えなかった。
机の上へ置かれた報告書を見つめ、腕を組む。
「考えが足りなければ、向こうで知ることになる」
「傷つけてからでは遅い」
「傷つけないために何も言わず、何もしない男でもない」
ガイアスの声は落ち着いていた。
「失敗すれば謝る。足りないものがあれば学ぶ。それがオーレリアンだ」
レオンは三弟の横顔を見た。
ガイアスは、オーレリアンの欠点を誰より知っている。
勢いに任せすぎること。
目の前の一人を救おうとするあまり、全体への注意が薄れること。
考えるより身体が先に動き、あとから叱られること。
そのたびに、上官として容赦なく叩き直してきた。
同時に、末弟の才能と素直さを、誰より認めている。
オーレリアンは一度、自分の誤りを理解すれば逃げない。
できないことを誤魔化さず、できるようになるまで食らいつく。
恋愛でも同じだと断言はできない。
それでも、自分の望む姿へ相手を変えようとするより、自分が相手の隣へ立てる男になろうとするだろう。
レオンも、そう思いたかった。
「あいつに必要なのは、曖昧に察してほしいと待つ相手ではないかもしれないな」
ガイアスが続ける。
「駄目なものは駄目だと、はっきり言ってくれる方がいい」
「それは同感だ」
カイルが頷く。
オーレリアンは、相手の顔色を窺い続ける男ではない。遠回しな言葉や社交辞令を、そのまま受け取ってしまうこともある。
寡黙であっても、必要なことを率直に告げる女性であれば、意思を通わせやすいはずだった。
「シンクレア嬢が受け入れてくれたなら、尻に敷かれるだろうな」
カイルの何気ない一言に、ガイアスが笑う。
「喜んで敷かれるだろう」
「本人の前では言うな」
レオンは注意した。
しかし、末弟が否定する姿は思い浮かばない。
シンクレアに命じられたからと嬉しそうに動き、周囲から妻に弱いとからかわれても、好きな相手の言うことを聞いて何が悪いと開き直るに違いなかった。
「母上も喜ぶだろうな」
ガイアスが言う。
「娘が欲しかったと、何年も言い続けている」
「返事を待たずに、シンクレア嬢の部屋を整え始めるぞ」
カイルの言葉に、三人は揃って沈黙した。
否定できなかった。
エレノアなら、まだ結婚すると決まっていないと説明されても、分かっていますと微笑みながら、翌日には客室の家具を入れ替えている可能性がある。
「帰ってくる前に釘を刺しておくべきか」
レオンが呟く。
「無駄だと思うが」
「私もそう思う」
次兄と三兄から即座に返され、レオンはこめかみを押さえた。
父は息子を売り込み、母は相手を娘として迎える気でいる。
兄たちは兄たちで、末弟が失言していないか気を揉んでいる。
オーレリアンの知らないところで、エルフレイム家全体がすでに彼の求婚へ巻き込まれていた。
それでも、迷惑だとは思わない。
末弟が初めて、自分から選んだ相手だった。
幸せになってほしいと願うのは当然である。
「断られた場合は、どうする」
カイルの問いへ、ガイアスは窓の外へ視線を向けた。
「しばらく使い物にならないだろうな」
「軍務へ影響を出させるな」
レオンが言う。
「訓練量を増やす」
「傷心の弟へ容赦がないな」
「剣を振っている間は、余計なことを考えずに済む」
上官としては正しいのかもしれない。
しかし、兄としてほかに何かないのかとレオンが見つめると、ガイアスは僅かに肩を竦めた。
「訓練の後で、酒くらいは付き合う」
「十七歳だ」
「では果実水だ」
「母上の焼き菓子でも与えておけば、少しは機嫌が直るだろう」
カイルが続ける。
「子ども扱いするな」
咎めながらも、レオン自身、落ち込んだ末弟のために何を用意するかを考えてしまった。
好物の肉料理。
疲れたときに母が焼く、木の実入りの菓子。
子どもの頃から好んでいる蜂蜜。
三十四歳の長兄にとって、十七歳の末弟は、今も守るべき存在だった。
いつか、自分より大切な相手を見つけることも分かっていた。
その日が、思っていたより早く訪れただけである。
「兄上は寂しいのか?」
不意にカイルが尋ねた。
レオンは眉を寄せる。
「何がだ」
「オーレリアンが結婚すれば、これまでのようには兄上へ甘えなくなる」
「すでに甘えてなどいない」
「求婚前、真っ先に兄上の部屋へ相談へ来ただろう」
「あれは必要な相談だ」
「最初に兄上を頼った時点で、十分に甘えていると思うが」
ガイアスの口元も緩んでいる。
「結婚後は、相談相手もシンクレア嬢になるだろうな」
「それが夫婦というものだ」
「理解はしていても、寂しいのだろう?」
二人の視線を受け、レオンは机の上の書類を整えた。
必要以上に角を揃えていることへ自分でも気づいたが、途中で止める方が不自然だった。
「オーレリアンが信頼できる伴侶を得るなら、喜ばしいことだ。私が寂しがる理由はない」
「そうか」
カイルの返事には、まったく信じていない響きがある。
「結婚した後も、毎日のように兄上の執務室へ来ると思うがな」
ガイアスが告げる。
レオンの手が止まった。
「妻まで連れてくるかもしれない」
「それは……構わない」
返答までの間が、すべてを物語ったらしい。
カイルとガイアスが顔を見合わせる。
二人が笑い出す前に、レオンは積み上げていた報告書を分け、それぞれの前へ置いた。
「暇なら仕事をしろ」
「話を逸らしたな」
「軍師なら、言われる前に必要な仕事を見つけろ」
「これは兄上の担当だ」
カイルは即座に書類を押し返した。
ガイアスは窓辺に置いていた上着へ手を伸ばす。
「隊の訓練へ戻る」
「待て」
レオンが低く呼び止める。
逃がすつもりはなかった。
結局、三人は再び机を囲み、それぞれの書類へ手を伸ばすことになった。
窓の外では、兵士たちの訓練が続いている。
剣の打ち合う音。
号令。
地面を蹴る足音。
普段なら、その中へ誰よりよく通るオーレリアンの声が混じっていた。
今日は聞こえない。
たった一人欠けただけで、屋敷も訓練場も妙に静かに感じられた。
レオンは羽根ペンを取り、決裁書へ視線を落とす。
すぐには紙へ下ろせなかった。
「ちゃんとやっているだろうか」
四度目の呟きが零れる。
カイルが呆れたように顔を上げ、ガイアスは小さく息を吐いた。
「そこまで心配なら、伝令を出せばいい」
「何と書く。求婚は進んでいるかと尋ねるのか」
「元気にしているか。食事は取っているか。公爵令嬢へ迷惑を掛けていないか」
「完全に母親だな」
ガイアスの言葉に、レオンは睨むような視線を向けた。
本気で怒っていないことは、二人にも分かっている。
カイルは平然と続けた。
「最後に、断られても帰る家はあると添えておけばいい」
レオンの表情から、僅かに力が抜けた。
兄たちは、求婚が受け入れられることを願っている。
だが、それをシンクレアへ押しつけるつもりはなかった。
彼女には、彼女の人生がある。
差し出された手を取るかどうかは、彼女自身が決めなければならない。拒まれれば、オーレリアンは傷つくだろう。
それでも、情に流されて受け入れられるよりは、誠実な答えを得る方がよい。
どのような答えを持ち帰っても、末弟の帰る場所は変わらない。
受け入れられていれば祝い、断られていれば慰める。
失言をしていれば叱る。
その後で、また同じ食卓を囲む。
レオンは羽根ペンを紙へ下ろした。
「伝令は出さない」
カイルが片眉を上げる。
「よいのか?」
「オーレリアンが自分で選んだことだ。最後まで本人へ任せる」
「ようやく弟離れか」
「違う」
レオンは署名を終え、羽根ペンを置いた。
「信頼しているだけだ」
その声には、次期辺境伯として人を任せる強さと、長兄として末弟を案じる思いが同時に宿っていた。
オーレリアンは甘えん坊で、寂しがりで、人を好きになれば隠すこともできない。
だが、守ると決めた相手のためなら、自分の未熟さから逃げずに向き合える男でもある。
五つの年齢差も、公爵家との家格の違いも、彼にとって諦める理由にはならないだろう。
だからこそ、相手にとって何が不安なのかを知り、二人で越える方法を探さなければならない。
そこへ辿り着けるかどうかは、もはや兄たちが教えることではなかった。
「しっかりやれよ、オーレリアン」
レオンの小さな呟きを、今度は誰もからかわなかった。
遠く離れた土地で末弟が何をしているのか、三人には分からない。
それでも、オーレリアンならば自分の言葉と行動で向き合っている。
そう信じ、三人の兄はそれぞれの仕事へ戻った。




