episode7.不思議な店主
樹ノ国に入った途端に樹ノ民達の視線はミルディア達に釘付けだった。
特にミルディアは頭の先から足の先まで舐めるように何度も見られ、
ミルディアは気味が悪くなりルーティの服の裾を掴み。
「私達何かしたのかな?」
と思わず小声で聞くが
ルーティには一つだけ覚えがあった。
あの助けてくれた樹天仙の鳥籠だ。
恐らくあれに入れられた、ミルディアは、
樹ノ民にしか見る事が出来ない何かが見えているのではないだろうか
あくまで、憶測だが、それが一番正解な気がしてならない。
そう考えた時に、もしかしたら、自分達はまずい時にまずい国に入ってしまったのではと警戒し、ふと、自分自らが調べたあの樹天仙の男が作った鳥籠の外側に書かれていた虹色の刻印の意味を思い出す。
[我、汝に乞う者
汝の心を欲す
汝の永遠なる調べと共に
愛を乞わんとする者
ここに誓いを結ばん]
あの刻印の続きは不明だが、
実は儀式には続きがある事をルーティは知識として知っていた。
儀式の総称名は、
鳥籠の儀式や、
絆の儀式、
命の儀式、
求愛の儀式、
等色々な呼ばれ方をしているが
儀式には全部で三段階あって、一段階目はまず心から愛した女性に対し求愛し
了承した相手の女性は、樹天仙の男の作った鳥籠で三日間眠る。
その間、樹天仙の男は各自で作った独特の移り香を少しずつ、眠っている相手の女性にしみこませるだけでなく、各樹天仙の男独自の力を込めていく。
そうする事により、来世に渡っても結ばれる縁を作る準備をする。
因みに、樹天仙の男の力はそれぞれ違って居ると書物には書いてあった。
先日の樹天仙の男の力はおそらく再生の力か癒しの力が特に強かった為に、
ミルディアの命を救う事が出来たのだろう
そして、第二段階は契貞の儀式
これは、お互いの樹天仙の枝や髪等の身体の一部を装飾品に作り変えて、肌身離さず付ける単純なものだが、肌身離さずと言うより、一度付けた装飾品は輪廻が廻っても外れる事が無く、その為に来世で、お互いを見つける事が出来る一つの手段とする為とされている。
最後の第三段階これは、詳しくは乗って居なかった。
ただ・・・。ただ。神サンザーラと、死と運命を司る神デイガーディアンに命を捧げよ。とだけ記されている。
これも至ってシンプルだが、三段階の中で一番想像するだけでも恐ろしい。
愛の為に態々死ねと言っている様なものだ。
もしかすると、あの刻印も何かしら樹天仙の男によって違いがあるのかもしれない。
大体輪廻転生とかその時点で信じられない話だ。
色々考えを巡らせていると、やはり、このまま進むのはまずいのではないのだろうかと言う結論が出てしまう。
にしても、この目立ちよう。ほかにも樹天仙の男は居るのだから、別段、その内の一人に求愛の儀式の、第一段階をされたからと言って、こんなにも珍しい物を見るような、奇妙なものを見るような目で見るのは、少々不思議な気がする。
そう思いながら、ルーティはだんだんと、その恐ろしさが解って行き、
もしかして、あの樹天仙の男が二度と合わないといった理由はこの、皆の好奇な眼差しに関係しているのではと思うと、ミルディアが持って居た裾の手を握りしっかりと手を繋ぐ。
そして、ふと、ある書物の一説を思い出すと、こないだあった人物が名前は解らないが
少なくともこの国のどういう人物かを理解し、体中から嫌な汗が出る。
そして、持ってきた書物の中の一説を必死で思い出そうとしていたが、
それは思い出す事が出来ないでいた。
けれど、どう見ても今のこの状況は尋常ではなかった。
ルーティの、ミルディアとの繋いでいる手の力が更に強くなる。
「大丈夫。トラッドネスが居ない間は、僕が居る。」
そうひっそりと、ミルディアに言うと、ミルディアは小さくうなづく。
「とりあえず、今日泊る宿を探そう。」
そう言うと、小さくなりながらも、それを探す。
「確か、昔キリに聞いた事がある。樹ノ国には民高商と言って
商人を泊める宿を準備してくれる場所があるって。とりあえずそこを当たってみよう。」
ひそひそ声でそう言いながら、しばらく歩くと、少し外れた樹ノ民も少ない場所にそれらしき場所があった。
何故それらしき場所だとわかるかと言うと、明らかに人ならざる者も行き交い
入っていくからだ。けれど、もしかすると飲食店かもしれない。
だが、取り合えず、今のこの状況を奪回するために、二人は入る事にした。
入ったそこは、木の根がしたから大きく生えて上へと延びて出来たつくりの、建てたと言うよりは、自然と建ったと言った方が良い作りで、温かみがあった。
けれど、先ほどは言って要った客も、すれ違う樹ノ民も一人もそこにはおらず、逆にそれが不気味さと恐怖を抱かせていた。
「何だか、受け付けてくれる樹ノ民とか居ないね。」
ルーティはミルディアにひっそりと話す。
「うん。でも、それっぽい台みたいな所はあるよ?」
ふと、そこを覗き込むと、四色の模様と鍵の様な差込口があった。
「これって・・・・。」
ミルディアは、その差込口を見つめ、なぞる。
[これが絶対に必要になる時が来る。必ず肌身離さず持っておけ。良いね。]
キリの言った言葉を思い出し、自らの胸元をペタペタとさわり
はっとすると、それを出す。
「ミルティそれ何?四色の鍵?」
「ほら、これキリから出発前に貰ったじゃない?何に使うんだろうってあの時思ってたんだけど。
もし、この宿が商人しか泊まれない宿なら・・・。」
そう言いながら、その鍵をその差込口に差し込む。
チリーンチリーン
「いらっひゃい。」
なんとも気の抜けた声が聞こえるが、見回しても、誰もいない。
「あっあの・・・。今日泊る所を探してます。」
辺りを見回しながらそう言うミルディア。だが、肝心の声の主が見当たらない。
「うぅん。かぁぎもぉって、来たのはぁぁ、良ぃけどぉ。
キリ様ではないようですがぁそぉれぇに。この匂いぃ。」
言葉に特徴がありすぎて、全くもって聞き取り辛かった。
それだけでは無く、その声の主は、近くの本棚にも、受け付けのその向かい合う机の向こう側にも、奥に置いてある、使い古された椅子の上にも何処にもその姿は無い。
透明な樹ノ民でもいるのだろうか。
そう思うと、二人はますます、縮こまっていく。
「ねぇ。ミルティ。なんか可笑しいよ?
見えないよ。ミルティには見える?」
「私にも見えない。」
「それに、なんだか、しゃべり方が特徴すぎてなんだか逆に恐怖を増長させるよ。」
「ちょぉっとぉ。ちょぉっとぉ
なぁにぃ泣いてるんですかあぁ。
だぁれぇもぉとってくやぁしないですよぉ。
っというかぁみぃええなぁいぃ
みぃえぇえなぁいぃって。
目のぉ前ぇに居るじゃぁないですかぁ。」
その言葉に、ミルディアは、涙を止めると、それと同時に、宝玉も落ちるのが止む、
そして、ミルディアは、ゆっくりと目を凝らす。
「よぉくぅみてぇくだぁさいってぇえ。」
ミルディア達はあたりを見渡す。
「あっあぁあ。はずれたぁ。
いまぁ、いいところぉいってたのにぃ。」
良い所?その言葉に、ミルディアはもしかしてと、目を凝らし、受付台の上を見つめる。
「ミルティどうしたの?」
ルーティはそんなミルディアに話しかける。
「ルーティ。私達勘違いしてたのかも。」
「何が?」
「彼女は・・・見えない樹ノ民でもないし、大きすぎる樹ノ民でもないのよ。」
そう言いながら、ルーティにも見るよう促し言葉を続ける。
「私達の爪よりも小さい樹ノ民だったのよ。」
「何これ‼かぁわいい‼」
ルーティはその小さな樹ノ民を見ながらそう言うと。何かがルーティに飛んでいく。
「いっ‼‼た‼‼」
「ちょぉっとぉ!あんたぁよりぃ何千年とぉ生きてんだぁ」
「年下扱いするなってさ。」
大声を必死に出している彼女が可哀そうになったミルディアはルーティに代弁する。
「キリ様が泊ってるぅへぇやぁ‼」
そう言うと、どがんと、彼女にとっては大きいであろう鍵が落ちて来た。
けれど、それは私達にとっては手のひらサイズだ。
「ありがとう。」
笑顔でそれを受け取りその場を立ち去ろうとするミルディアだったが。
目の前に大きな白板が落ちてくる。
【待った‼】
おそらく、もう大きな声を出すのが疲れたのだろう。
【あんたのその匂いと、そのまとっている感覚、ここに泊まるより菩提樹ノ君に頼った方が良いのでは?】
「菩提樹ノ君?」
ミルディアがそれに興味を示そうとした瞬間。ルーティは慌てふためくように
「あっありがとう。大丈夫お気遣いどうもぉぉぉぉ。」
そう言いながら、ミルディアの背を押し、部屋を後にするのだった。




