表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ミルディアの涙-友の行方-  作者: つき夜好き


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

31/32

episode21.決意の時

これは、トラッドネスとの誓いを破った訳じゃない。


ミルディアは、別の記憶も思い出したのだった。


[何人もの集団で襲おうとしてるって事はそれなりの重要人物って事だよ。

それに、そんな重要人物を襲うって事はあの5人だって手練れって事だよ?

今のミルティは5人も相手にできないよ!]


初めて静咲を見かけたのは私が商人で静咲をかばったとかじゃない。


[顔に傷を付けた・・・あいつらが・・・不愉快だ。]


静咲が襲われていたのを私が女性が襲われていると勘違いして、逆に助けられたんだ。


でも


[っな・・・んだ。これは・・・。]

静咲の後ろから金の矢が飛んでくるのが見えて。私は、何故か、静咲が傷つくのが嫌だと思って気が付いたら、自分が怪我してた。

それを見て静咲は私と鳥籠の契約をする事で私を救ってくれた。


私は、それを記憶ではなく心で覚えてる。


あの手の感覚。

傷を手当てしてくれた時に繋げてくれた、静咲の生命。


そして、あの時に言った、言葉。


[たった3日の縁だ。

そなたの記憶にも残らない男だ。

この絆の儀式も樹天仙である私には意味があっても、そなたには意味は無い物となる。

つまり・・・我々は、たった3日だけの約束であって、そうだ・・・きっと・・・

2度と合う事は無い。]


けれど、けれど私達は。


「静咲!」

目の前をその大きな身長とは裏腹に縮こまって、後ろから見ても落ち込んでいる事が解る位に、ふらふらと歩いて居る静咲のそのゆったりした裾を思い切り掴む。


静咲は振り返り、ミルディアのその顔を見る、その群青色瞳はゆらゆらと揺れていた。


その表情は何処か不安そうだった。


けれど、ミルディアは。


[でも・・・覚えておいて、私は君を深く、深く愛して居る事を。

再び契約を結ぶけれど今度は疑わないで。

私の気持ちを。]


私は。


「貴方が良い!貴方に決めたの!」


ミルディアのその言葉に、ますます目を丸くし驚くが、その驚きの表情は次第に今までで一番愛しいと思って居ると解る程に、満面の笑みを浮かべ、ミルディアを思いきり抱き締める。


私の世界にはトラッドネスしか居なかった。


そう思いながら、胸元から漆黒に染まった、友情の宝玉と自らの友情の宝玉を取り出し、それを握りしめる。


でも、その中に、静咲が現れて。

静咲と出会ってから私にとって静咲は、なんだか、トラッドネスとはまた違った、特別な存在な気がしてならなくて。


だから、私は、決めたの。

この静咲と言う男性が、私を愛してくれると言うならば。


私も、彼を愛そうと。


この世に愛が幾つあるのか知らない。


その数も数えようなんて思わない。


その形なんかも今はもうどうだって良い。


何で、愛そうかとか、何故愛してくれたのかとか、もう、そんな事考えない。


私は、ただ、私の記憶を消してまで私の心を得ようとした想いを、その全てを受け入れようと決めたんだ。


ミルディアは、そう思った瞬間今まで抱きしめられていただけだったのを、初めて、自ら腕を回し身長が高い静咲は首までは届かないものの、それすらも愛しく思い背中の服をしっかりと掴むのだった。


ーーーーーー


「ミルディア。本当に。」


「静咲、もう良いって。言って要るでしょう?」


「詫びと言っては何だが、そなたの言って居た・・・。その、友人を私も探そう。」

二人は、手をしっかりと繋ながら、あの木の家へと足を向けていた。


二人にはお互い言葉に交わさずとも、後一つだけ問題が残されて居る事は解っていた。


国王、静朔慈だ。

その問題の為に、本来ならば、静咲の部屋があるあの木造りの豪華絢爛の屋敷に帰り、今後の事について話し合う所だが、堂々と帰る事が出来ない事を今の二人にとっては言わずもがなだった。


けれど、二人は、取り合えず、その話題は今は出したくない。

そうお互いに思って居たのもまた事実だった。


「そなたが、ちゃんと私に気持ちを伝えてくれたなら、もう恐れる事は何も無くなった。

それに、嫉妬して居ないかと問われると、

嘘にはなるが、やはり、そなたの想いは出来るだけ尊重したい。

だから、ラッドとやらをそなたが気に掛けて居るならば、そなたが、この国を出られない代わりに、私が、手を貸そう。」

そう言うと、静咲は手の平を広げそこに自らの息を思い切り吹きかける。


それと同時に、突風が吹き。


静咲の手の平から沢山の白い小さな綿毛や花びらや花の粉が舞い散り、空中に飛んで行く。


「これで、きっと生命体を掴む事が出来る。

ラッドとやらの生命体はおそらく、そなたによく似ていると思う。

そなたが怪我をした時、それを治す為に、そなたの生命体と繋がった時、微かに、ラッドとやらの、生命の痕跡があった。

そなたが川の水脈ならば、ラッドとやらは差し詰め深い、深い海の底の様だった。

そなたが淡い木漏れ日ならば、ラッドとやらは差し詰め太陽と月の間を行く光様な。そんな揺らめきを感じた。

それをたどれば見つかるだろう。」

薄く微笑みながらミルディアに言うと、ミルディアは初めて自分から静咲に抱き着くと。


「ありがとう。静咲。」

そう一言お礼を言う。

それですらも今の静咲には愛しく、

また嬉しく想うのだった。


けれど、ミルディアはふと、思い出すのだった。


[何言ってるんだ。お前。

現に目の前に一体居るだろう?

奴らにとっての美味しい(エサ)が。]


ううん。今更エサ扱いは無いだろうけど・・・。


ここまで来て流石にと思いつつ、不安な事はやはり聞いておこうと、ミルディアは、静咲に恐る恐る問う。


「所で、静咲。ルーティは・・・どうしてる?」


「ルーティ?あぁ。あのぴーちく五月蠅い奴か。」

そう言うと、少し意地悪な少年の様な顔をすると。


「喰った。」

静咲がそううなり、ミルディアは、ひぃぃぃっと半泣き状態になりながら静咲から一気に離れる。


「ミルディア。ミルディア。なんでそんなに怯えているの。」

静咲は本の冗談のつもりだったが、ミルディアが、異常な程に怯えて居る事に、焦り出す。


「だって。だって。」


[奴らにとって美味しい(エサ)。]


「樹天仙の主食って・・・人の容に近い肉何でしょう?」

静咲はそれを聞いて、呆れた顔をしながら、

ミルディアの手をゆっくりと引く。


「おいで。」

ミルディアのその小さな身体は、少し強張って居た。


「君の質問には合っている部分とそうでない部分がある。我々は確かに、人の容に近い者の肉を好む。

つまり人肉だ。だが、客を喰う程ぶしつけじゃない。」

そう言いながら、この間とは全く違う、大きな蔓が絡み合って出来所々に、美しい女性の絵が模してある、豪華な宿に連れていかれる。

≪フィロゥ マッデルゥクァ フォルロティー ミルロティー

セレラロゥ ティリス フォルランティー セレラヒール

ラクソティ タリグリヅァ セレラムーション≫


この歌は・・・。


≪セレラティア タリグリツァ ラクソティ インダイフォレイド

フォルラーアス

フシャラーアス ティリス≫

夢の中で、聞いた事がある様な。

夢の中では、男性と女性の声が重なり合い美しい二重奏となって、聞こえていたそれは、宿の中の小さなステージで、美しい女性の樹ノ民と男性の樹ノ民が歌って居る。


「ミルディア、この歌聞いた事があるの?」

その歌に聞き入って、思わず立ち止まって居た、ミルディアに、声をかける静咲。


「聞き覚えがあるって、だけで、丸々あって居るかと聞かれると、ちょっと。」


「・・・。不思議な事もある物だな。」

少し首を傾げる静咲。


「どうして?」


「この歌は、古の言葉で、神サンザーラと神サンザーラが、愛した女神の事を歌った歌で、けれど、その全貌はまだ、私達樹ノ国の民でも、解読しきれていない部分がある位、謎めいた歌なんだ。」


「・・・どういう意味か、解るところで良いから教えてくれる?」

静咲に、お願いすると、静咲は、薄く微笑みながら、ゆっくりと頷く。

「前半は殆ど解読されて居ないのだけれど、フェミナーガを称える所からは解読されているからそこからだと、


≪アァ フェミナーガ

ロンティア ラクソティ フィロルナ ミリルライド

アァ フェミナーガ

セレラティア セレラサキアイド≫

「あぁフェミナーガよ

どうか女神に命の恵みを

あぁフェミナーガよ

樹ノ神に樹の祝福を」

静咲は聞き入って居る周りの樹ノ民や旅の客に迷惑が掛からない程度に、ミルディアに耳打ちする様に訳す。


≪ダーグィン フシャラーアス アザルナリア

フォルダ ダーグ エルヴァーイン≫


「深き眠りが二人に振りかかろうと

愛が影を落とそうと」


≪ティリサ フシャラーアシア フォルタ

ロフィス ロフィス ミリリアルティート≫


「重なった二つの愛が

巡り続けますように」


≪アァ サンスラーヤ

アァ ガントレッティア

フシャラーシス リクァ リシァス≫


「あぁどうか

あぁ容無き神よ

二人を導き給え。」

静咲は一つ一つ丁寧に耳元で訳してくれると、その歌は幕を閉じる。


ミルディアの瞳からはゆっくりと、涙が流れ、それは友情の宝玉となって、床に落ちる。


≪あぁ。我の涙、我の愛する女神。我が欲しいのはこの世に一つだけ。我はそなたが欲しい。涙の子。≫


「っ⁉」

ふと、誰かの顔を思い出した気がしたのに、我に返るなり、それは頭の中から消える。


今の、は・・・?一体。


「ミルディア⁇」


「女神って訳されている所だけど、本当は、涙の子じゃないのかな?」


「え?どうして?」

静咲は、眉を顰めながら、ミルディアに言う。

「あっえっと。ごめんなさい。忘れて。」

ミルディアは、そう言うと、奥へ奥へと進んで行き、静咲は、そんなミルディアを不思議な顔で見つめるのだった。


ルーティが居ると、言われた、部屋の前に辿り着き、ノックをする。


「あっ駄目。今入って来たら困るんだ。

後にしてくれるかいギルラス。

それとも静咲かな?」

いつの間にか、ルーティも彼らの事を

呼び捨てる程親密になっている様で、

中では何か実験しているようだった。


そんな事もお構いなしに、ミルディアは中へと入る。


「ミルディア。如何したの?」

中へ入るときょとんとした表情でルーティが試験管を持って立っていた。


その部屋には沢山の実験器具が置かれ、ポコポコと緑色や黄色、怪し気な赤い液体が、白い煙を出しながら沸騰して居た。辺りには、あの、キリの宿よりも、沢山の本が並べられているばかりか、治めきれずに床に積まれている。


「食べられたかと思ってたのに。」


「食べられた?もしかして、彼らの主食が人肉だって知っちゃったの?」


「ルーティ知ってたの?」


「彼らの習慣はね。何となくは。人肉って。」


「じゃぁ。」


「うん。僕らみたいなのを、

主食としているよ?」

そう言われた瞬間。静咲をみる。


「ねえ。静咲私を喰いたいって、思った事ある?」

恐る恐る静咲に問うミルディア。


「無い。」

すると、静咲は、ミルディアの問いに対し、即答し、その言葉に、ほっと肩を撫でおろすミルディア。


「でも、食いたいって思った事ならある。」

しかし、静咲の続きの言葉に、ミルディアは、動きが制止し、静咲をじっと見つめる。


「・・・言い方一緒だよね。大差ないよね。」

静咲は、その鋭い青い爪で真っ白い頬を軽くポリポリと掻きながら、考え込み、やがて、ミルディアに解る様に説明し始める。


「例えで言うなら、〝喰う"方は完ぺきなるこうエサのイメージ。

対し、そなたに抱く〝食う″は、はみはみと甘噛みしたいって感じだな。」


意味が解りません。


ミルディアの頭にはそう一言言葉が過る。


「それに、ちゃんと店で卸されてるし。」


「それもそれで嫌な話です。」


「そうだな。基本的に私達は、命は大切にしてる。けれど、それは、植物を中心とした、大切という意味だから、人に近い者の命と言うには少々、そなた達とは違うかもしれない。ミルディアに対する愛情は別格だけれど。」


「どう言う・・・。」


「そなた自身で言って居たではないか。樹天仙の愛は情熱的だと。その通り、樹天仙は何よりも自分の愛して居る者を優先する。植物が最優先だったが、今は、そなたが最優先になった。樹天仙は求愛の儀式を行うと、優先順位が妻が一番上になる。そんな妻を餌だと思う訳が無いであろう?」


「そうだよ。君は、樹天仙の食物連鎖の中で、勝ってるんだから。」

ルーティはそう言うと、再び書物に目を移す。


「ちょっと変な言い方しないでよ。それじゃあ、私が、樹天仙を食べるみたいな、言い方になっちゃうじゃない。」


「おぉ。私は、ミルディアになら、食われても良いぞ?」

静咲の言って居る、食うと言う意味は、恐らく先程、静咲が言って居た意味の食うだろう。つまり、ミルディアには、ハミハミされたい、そう言いたいのだろうが、それは、恥ずかしくて、口に出せる訳が無く、ミルディアの顔は只管に紅い華の如く真っ赤に染まって居た。


「けれど、ルーティを喰わないのは、ミルディアの、おまけって、だけれど。」

静咲のその言葉に少しだけ、不快に思ったルーティは、仕返しの様に言葉をミルディアに投げかける。


「あぁ、ちぃなぁみぃにぃ。

樹天仙の、繁殖期について面白い事解ったんだけどぉ。聞きたい?」

繁殖期・・・。

その言葉に、ミルディアはますます、顔が、真っ赤に染まり、ルーティを睨む。


「だって、君達結ばれるんだから、知っといても、損はない筈でしょう?」

からかう様な表情でミルディアを見つめるルーティ。


「樹天仙は、求愛の儀式を終えてから永遠に繁殖期だから。」

その言葉に、口を開けたまま、固まるミルディア。


「どうしたの?ミルディア。」

心配そうにのぞき込む静咲にはミルディアが何時もよりも顔色が悪いように思えた。


「ついでに言うと、菩提樹ノ君。つまり、静咲と求愛の儀式を成功させた者は、勿論居なかった訳だけど、菩提樹ノ君の称号を得た者と求愛の儀式を行うと、もれなく、求愛の儀式の時に、樹ノ国の皆にこういうのが配布される。」

そう言うと、ルーティが親指の第一関節位の大きさの真珠を差し出してくる。


「ルーティ、これ何?」

眉を顰めながら、それを見つめるミルディアに対し、ルーティは更に、意地悪気な表情を、浮かべ、答えようとする前に静咲が口をはさむ。


菩提玉珠(ぼだいぎょくじゅ)ではないか。よく手に入れられたな。」

静咲が菩提宝珠と呼んだそれは、白い樹が小さな葉を模した容になっており、その中にまた白い玉がはめ込まれていた。


「神サンザーラが愛した女神と求愛の儀式を交わした時に、民に与えられたと言い伝えられている宝玉だよ。ギルラスがくれたんだ。話もギルラスから聞いた。勿論、町の喰われそうに無い樹ノ民にも話を聞いたしね。」


「・・・何が言いたい。」

静咲は、ルーティが何か自分に言いたそうにしているのに、気付き、ルーティに対し、首を傾げる。


「これで、君達が、繁殖のどの段階を行って居るのか、色で知らせてくれるのさ。」


「・・・・・は?」

ミルディアは、最早目が点になり、口は木の実が一個かじれる程大きく空いて居た。


「ねぇ。ミルディア。嬉しいでしょう?樹の国の皆が私達の子が出来る一瞬一瞬を祝福してくれる「っない。」

静咲は真底嬉しそうに、ミルディアに、言うが、ミルディアの方はフルフルと震えて居た。


「嬉しく何てなぁぁぁい‼」

そう言いながら、顔を真っ赤に染め、静咲にそっぽを向くミルディア。

その光景を、小さく舌を出し、先程の仕返しと言わんばかりに見守るルーティ。


「そっその。はっ。は・・・は何とかについては・・・・。とっ、取り合えず置いといて。」

ミルディアは、明らかに同様して居た。


「は何とか?ミルディアどうしたの?子は嫌いなのか?」

静咲は、恥ずかしくないのだろうか。


「ミルディア。静咲はね、繁殖期って言葉しか知らないんだよ。所謂そこらへんは、君よりも子供なのさ。」

クスクスと、意地悪そうに微笑みながら言うルーティに対し、静咲は、睨みつけながら、

鋭い牙をむき出しにし、ルーティを威嚇する。


「あまり、馬鹿にすると私の腹の中に収めてしまうぞ。小僧。」


「せっ、静咲!」

それを、止めながら、図星なのか。と少々苦笑するミルディアだった。


「とっ、取り合えず、私とルーティは食べない・・・いや。喰われないと言う事は解りましたが。」


「何を言って、居るの?ミルディア。ルーティは、町に放置してたら、多分1刻も持たずに、喰われるよ。菩提玉珠の事だって聞きまわる事はあまりお勧めしない位だ。」

さらりとそう言う静咲に唖然と言葉が返せないミルディア。


「そうだろうねぇ。菩提玉珠について、聞きまわって居た時も、何度か掴まって、服をひん剥かれて、気が付いたら、皿の上にのせられて、スパイスをかけられたって事が、何度かあったよ。クスクス。そぉれがもぉ!おっきな、皿でさぁ。皿だって気付くまで時間かかっちゃって、気付いたから、逃げ出せたけど、気付かなかったら、今頃は、樹天仙の腹の中だったよ。」

そう言いながら、これくらいかな?いやこれくらいだ。と、身振り手振りで、楽しそうに話すが、話している内容が、普通じゃない。


「・・・ルーティ。ルーティ。笑えないよ。普通に。そこ笑う所じゃないよ。」

今とっても、聞いてはいけない事を聞いたような気がするミルディアは、ルーティに対し、半泣き状態で、そう言うがルーティは、それでも御腹を抱えて笑って居た。


「まぁ。僕はここで実験が出来るし、

食料は静咲かギルラスが持って来てくれるから。それに越した事は無い。

環境にも今の所は困っては無いよ。」


「それなら・・・まぁ。良いんだけど。

静咲も、ラッドを探してくれるって言ってくれて居るし、これで今の所は安心だよね。」


「あぁ。君、記憶戻ったの。」


「戻ったのって!ルーティは私が記憶が無くなった事を、知って居たの⁉」


「まぁね。だって、その場に僕居たし。

でも、僕は、目の前に居る樹天仙と君の結婚は反対だけど。君の命の為って言うなら、まぁ仕方ないって思うよ。」

少しため息交じりに、静咲を睨みつけながらそう言うルーティ。


「何か、あったんだね。」


「君が、記憶をなくしている間に?それなら、あったかな。取り合えず、僕は、色々ここで樹天仙の事について教えてもらう事が出来たから。」


「ルーティ。まさか、買収されたんじゃないでしょうね。」


「っう。」

その言葉に、反応を示すルーティ。


「何を貰ったの!言いなさい!」

ミルディアは、ルーティの頬をつねりながら、吐かせようとすると、ルーティは、解った、解ったと、少し涙を浮かべ、それを見せる。


「これは?」


「ギルラスと静咲の髪の毛と皮膚。」


「・・・・・・。」

何だろうか、それだけでと言う冪なのか、

凄いと言う冪なのだろうか。


「さて、もう良いだろう?ルーティはこの通り喰われて居ない。私達の事も少しは認めてくれている。許しは得られただろう?ミルディア。行く所がある。」

そう言うと、静咲は、邪魔したなと一言、言うと。ミルディアを連れ出す。


「え?え?許し?え?静咲どういう事?何を許してもらったの?」

ミルディアが、何も飲み込めぬままに、あの、蛍星蟲(けいせいちゅう)の沢山いる場所へと静咲はミルディアを連れ足を向けた。



しかし、ミルディア自身は、一体何処へ連れて行かれるのか見当もついて居なかった為に、不思議に、思いながらも、握られ引かれた手をじっと見つめていた。


その場に辿り着いても、静咲はその手を離す事は無かった。恐らく、ここで私は居なくなったから、二度と見失わない様に、ちゃんと握ってくれているのだろう想うと、少し笑みが零れる。

そして、あの蛍星蟲(けいせいちゅう)達はやはり地面の草花に沢山張り付き、命を燃やす瞬間を待って居た。

その瞬間がやってきて、空へと舞い上がり、まるで星の瞬きの様に沢山の、蛍星蟲(けいせいちゅう)達が飛び立つのを見た時だった。

静咲が私の耳元で囁き始める。


「この間は、君が消えてしまって。

本来やり遂げたかった事が、何も出来なかった。伝えたかった事の言葉の一部も、伝えられなかった。もう一度仕切り直しだ。」

その囁きは吐息にも似て居て、耳をくすぐる。


「この、蛍星蟲(けいせいちゅう)は確かに正式名称だけれど。多くの樹天仙はそうは呼ばないんだ。」


「では、何て?」


「恋に添いて篝火とならん。」

そう一言言うと、薄く微笑み、更に続ける。


「その意を込めて、恋添篝(れんそこう)

嘗て、他種族の女を愛した樹天仙が居たそうだ。その樹天仙はその他種族の女が例え輪廻転生を果たさずとも。生涯その者一人を愛し抜こうと心に決めたと言う。」

そう言いながら、静咲は握っていた手を放し、そのまま、ミルディアの前にかしずく。


「そして、ここでその者と求愛の儀式を最後まで行ったのだとか。二人は、結ばれたが、他種族の女の寿命は樹天仙の者よりも短命。

瞬きする程に短く、別れの時はすぐに訪れた。だが、二人は愛に満ちたり、幸せだったそうだ。お互い恋しがらない様に、ずっと寄り添える存在になりたいと、願ったと言う。その願いが死と運命(カルマ)を司る神の心を射ち、二人は、蛍星蟲へと生まれ変わったのだと。」

そう言いながら、静咲はミルディアの左足首に、銀色の糸とまるで、静咲の瞳の色と同じ色の群青色の宝石を散りばめたアンクレットを、ゆっくりと取り付けそれに軽く口づける。


【我は誓う。】

その言葉は、あたりに響き、私の頭と心の中にもまるで直接静咲が入ってきているかの様に響く。


【汝、死の死目に会おうとも】


静咲の瞳が・・・。


【汝が迷動樹海に迷おうとも】


まるで澄んだ空みたいに光り輝いて・・・。


【汝が神サンザーラに召されようとも】


静咲の力が流れ込んでくるみたい。それだけじゃない。静咲のあの甘い香りまで、染みわたる様な感覚すら感じる。


【汝が死と運命(カルマ)を司る

デイガーディアンの下へ召されようとも】


怒っているあの目とは違って怖くなくて。


【汝の魂と身体を

我が魂と身体に繋ぎ留めん。】


その最後ともいえる言葉を告げた後に、静咲の腕が鳥籠になる前の樹の枝の様になり、やがて、人の容だった静咲は本来の樹天仙である姿を現す。


その姿は、本当に樹と言える。


地に根を生やし薄黄色い小さな花を何輪にもさかせ、ミルディアは、それを見ると、静咲が、何故、菩提樹ノ君と呼ばれるのか、理解が出来た気がした。


美しく、雄々しく、尚且つ繊細で人ではない樹に変貌を遂げ、ミルディアと今も尚空に向かい光輝く全ての蛍星蟲に、その美しい花弁をまるで祝福するかのように降らせる。


そして、自らの枝をゆっくりと伸ばし、ミルディアの身体を抱きしめる様に絡めて引き寄せるその仕草を受け入れつつ、ミルディアは、思うのだった。


あぁ。これが、あの誓いの第二段階なんだ。


と、そう、知るのにはそんなに時間はかからなかった。


引き寄せられ、抱き締められたその感触はあの柔らかく、けれど冷たい感触とは全く違って真っ白の樹の色に独特のざら、とした感触、木目の部分もちゃんとあった。けれど、静咲だと、心から安心でき、ミルディアは、身体を全て預ける。


コポポポ


コポポ


コポポ


人の容に近い私達で言う心臓の音だろうか。

彼の身体に耳を当てると、聞こえて来るその音は、まるで水が体内をしっかりと巡っている心地の良い音色だった。


これが、静咲なんだ。


すると、まるで少しずつ花弁が散って行くかのようにそれは解け、元に戻って、静咲はミルディアを包み込むように抱きしめていた。


「ミルディア。けれどね。けれど・・・。

私は、恋添篝(れんそこう)の二人の様に、容無き者に成りたいとは思わない。

そなたが短命ならば、その短命を輪廻に変えたい。そなたが、デイガーディアンに連れていかれたのなら、私は、そこに行き、その体と魂を連れ戻しに行くつもりだからね。

私が永遠に死なないと言うならば、そなたも、永遠に死なせたくはないから。

出逢った事を朧気にするなんてもう出来ない。出逢った事を後悔するなんてもう出来ない。だから、出逢った事を永遠に喜べるようにしたいのだよ。」


そう言うと、少し、ミルディアに体重がかかり、少しだけ足が絡むと、先程静咲がくれたアンクレットから心地よい鈴の音が聞こえた。その鈴の音は、静咲が簪につけてる鈴の音と同じだ。


そう思うと少し嬉しくなる。


ふと、静咲の足元を見ると、同じ左足首に、

私の髪と同じ色で編まれたアンクレットが付けられていた。


「静咲。このアンクレットにつけられている銀色の糸は、私の髪の毛?」

そう聞くと、静咲は薄く微笑みながら、頷く。


「君が眠って居る間に、⒑本程・・・。ごめんね?怒った?」

ミルディアは、首を横に振り、笑顔で、静咲に言う。


「怒ってない。この儀式をしようとして居たのね。じゃあ、これは、この、群青色の宝石は・・・。」

ミルディアが、微笑むと、静咲は抱きしめていた腕を解き幸せそうな微笑みを浮かべ、ゆっくりと頷きながら答える。


「私の目の中に散りばめられた私の核の一部を取り出し、あつらえた。」


「痛かったのでは?」

ミルディアは、心配そうに、静咲の頬を優しく撫で、目を覗き込むが、静咲は、その頬に触れて居る手をミルディアを抱きしめて居ない手で握ると、首を横に振り、言う。


「痛みなど。感じはしないよ。樹天仙が、核の欠片を取り出せるのは、愛する者が出来た時のみだからね。私の本当の姿を見て・・・。どう思った?」


「やっぱり、樹天仙は・・・。貴方は。情熱的で、繊細で、そして、素敵なんだって。そう、思った。」

ミルディアがそう言うと、心底驚いた表情を浮かべた後に、嬉しそうな表情を浮かべ、再びミルディアを抱きしめるのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ