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ミルディアの涙-友の行方-  作者: つき夜好き


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episode20.記憶喪失-静カナル面ノ達(ものたち)-

「っ・・・・」

なんだか。温かい。

モフモフっとした、感じが。


≪涙の子・・・涙の子。お前はもふもふする。≫


≪涙の子涙の子お前はもふもふする。≫


≪涙の子お前はもふもふする。≫

そんな声があたりから聞こえ。


白や緑、茶色、緑と茶色の斑などの毛むくじゃらの玉が

ミルディアの身体を覆っていた。


覆うと言うよりも、もはやつぶされる勢いだった。


何だか、本当に温かくて気持ちがいい。

最初はとても軽い羽毛に包まれている感覚だったが、それは最初だけで、どんどんと重たくなり、顔も、次第にそれで埋まって行く頃には・・・。


まっまずいこのままだと、息できない・・・・。


と焦りすら出ていた。


「・・・・・。」


あれ?私。今助けてって言ったのに。


自分でも聞こえない。自分の声。

まさか、耳の中にまで入られたのだろうか。

そう思ったが、それすらも、確かめようがなかった。しかし、確かに聞こえない。

何故なら、その生物達の声は聞こえるのに、

あの、植物の葉がこすれる音や、風の音が全く聞こえず、無の空間で、まさに静寂なのだ。


これは・・・もしかして、この子達が何かしているのかなと、思わずには居られない、ミルディア。


≪涙の子お前はもふもふする。≫


駄目だ。もう身体どころか手の指一本すら動かす事が出来ない。


所が次の瞬間。


≪ギシャァァァァァァァ≫

一匹の子のその威嚇にも似た声により、他の子達が、一斉に同じ声を上げる。


≪ギシャァァァァァァァ≫

≪ギシャァァァァァァァ≫

≪ギシャァァァァァァァ≫

何だろうか。


『降レ、降レ。古ノ民』

この声は、ギルラス?

さっきまでは声が聞こえなかったのに、何で?


『我ハコノ自然ノ支配者』

何か枝を振っている様に、リズミカルに葉の掠れる音がする。


『響ケ、響ケ、葉ノ音色

ウツツヨニ降レ

涙ノ雫ハ流レ出デ

枯れた大地を潤ワサン』


≪キャシャァァァ

涙の子お前はもふもふする。≫

その声は、先程の威嚇とは打って変わって、神の前に平伏すかのように、聞こえたと同時に、重さが一気になくなり、再び、風の音と、葉の掠れる音、空間の音を感じられるようになる。


「ミルディア。どこも喰われてない?」

どうやら先程の白いモフモフ達は、全員いなくなった様で、葉の生い茂った緑色の枝を持ちながら、ギルラスがミルディアに駆け寄って抱き起す。


「こほっけほ。なんか。息苦しかった。あの子達は一体。」


「あれは、(しずか)かなる面ノ(ものたち)、周りの騒がしい音を好物として食べてる。一種の妖精の様な存在だ。

だけど、どの種族にしても近づくと、威嚇して、終いには、跡形もなくしゃぶりつくされると言われている。

だから、ミルディアが生きている事自体奇跡だね。」


「私最初は、気絶して居たから。」


「そうか。もしかしたら、彼らはそれで生きて居るのか解らなくて、喰う事をしなかったのかもしれないな。」


「でも・・・。」


「でも?」

ミルディアの、でも、と言う言葉に、首をかしげるギルラス。


「ふわふわの、モコモコで気持ち良かった。」

幸せそうに語るミルディアに対し、がくりとこけにこける、ギルラス。


「ミルディア。あのねぇ。君、私が助けなければ、跡形もなく喰われて居たかもしれないのだよ?全く呑気な物だよ。おまけに、こんな俺ですらも迷わずに君を見つける事が難しかった。こんな、迷動(めいどう)の樹海に迷い込んで。静咲は、足は速く嗅覚も鋭いが、迷動の中まではそれを追う事は出来ないのだから、こんな迷動の樹海。どうやって作ったの?こんな迷動の樹海・・・。俺達、紅将皇(べにこうしょう)の力でも作り出すのは至難の業だよ。」


そう言いながら、ミルディアを抱きかかえると、ゆっくりと森を進んでいく。


「ねぇ。ギルラス。」


「ん?」


「ギルラス。」

何故か、その名を呼ぶたびに、胸が苦しくなる。この迷動と言う場所のせいだろうか。


「どうしたの?何度も名前呼んで。」


「迷動って。何かなって思って。」

本当は、心の中で思う所はあったけれど、説明しようがなかった為に、話をそらした。

ギルラスも、それは解って居たが、あえて問い詰める事はしなかった。


「迷動とはね、君達で言う夢の様な物って言えばいいかな。現実には存在しない。虚ろな世界の事。けれど、君達人に近い者達の見る夢とは違い、此処で体験した事は本当の事なんだよ。だから、ここで死ねば本当に死ぬし、此処で触れた物、出会った者はここでは実在する。しかし、逆を返せばここでしか存在しない物。けれど、樹天仙にとってはそれが夢であり、迷動と呼ばれる世界。」


「ううん。ますます解らなくなってきたかな。」

ミルディアが、しかめ面をすると、ギルラスは、クスリと、微笑むと、少しだけ考えた後に、ミルディアに言う。


「そうだねぇ。君達の夢は、儚く、見るだけで終わり、忘れる物であり、その場限りの物でそこに咲いて居る華や物等持ち帰る事等出来ないだろう。けれど、樹天仙の迷動・・・つまり夢は、現実と同様でそこで起きた出来事も現実で、咲いている植物、触れている物、までが、現実で持ち帰る事だって、その場に留め時間を止める事さえ出来る。だから、樹天仙は、基本見た目の年齢が衰える事が無いんだ。まぁ、衰えに関してはそれだけが、原因じゃないけどね。」

足を止め、そう言うギルラスのミルディアへ向けられた深紅の瞳は、まるで、ミルディアの民の愛情の宝玉の様に揺ら揺らと揺れる水の如く揺れ動いて見えた。


「だからね。本当は、君には作れる筈も無ければ、入れる筈も無かったんだ。けれど、そうしてしまったのは、俺の落ち度だ。」

再び歩き出す、ギルラスの、胸元を少し掴み、出来るだけ、ギルラスに顔を近づけると、ギルラスに問う。


「ギルラス。どういう事?」


「ここは、恐らく君が作ったんだ。」


「わ・・たし・・が?」


「君、まるで何かに呼ばれている様に、森の中に入って行ったのではないかい。」


「うん。」


やはり、ミルディアの宝玉を生み出す者には迷動の術は効き辛かったと言う事か。


ギルラスは、考え込みながらその足取りは少し遅くなる。


紅減の瞳ではミルディアは殆ど効いて居なかった。だから、私の血液を混ぜ更に紅将皇の術を施した、迷黒水(めいこくすい)を作ったのに。


効果は、約千倍だ。


私の思う通りの記憶を消す事が可能になる筈。


なのに、それでも、無意識の中で、脳裏と言うやつなのだろうか、トラッドネスとやらの事が焼き付いて居て、こうして、私の力を媒体にして無意識に迷動の樹海を作り出すとは。さしずめ、ここは彼女がそのトラッドネスと見たいと思って居る、樹ノ国の景色と言った所か。


そう思いながらあたりを見回すギルラス。


彼女にとって、樹ノ国はこう見えているのか。


木々達は、樹ノ国のどの樹よりも潤って居て息づいて居る。

その呼吸が聞こえてくるようだ。


葉と葉が風により重なり合う音は、微かに聞こえその音は、とても、心地よかった。

ところどころから差し込む木漏れ日は、樹天仙に影響がない程度の光で、寧ろ、身体に元気を与える様な光の様だった。


そもそも、樹ノ国にはこんな光等無い上に樹天仙はこんな光等見た事が無いのだから、これは、やはり、ここは彼女の迷動の樹海だと解る。


ギルラスは、ふと思って居る事が同時に口に出てしまう。


「ねぇ。ずっとここに居ようよ。」

その言葉に、今まで前を向いていた、ミルディアの顔がギルラスに向く。


「だって、君。ここ好きでしょう。」

ギルラスは、その足を再び、止めると、ミルディアの顔を覗き込み、何時もとは、また違った微笑みを浮かべながらそう言う。


その微笑は何処か、愛し気な表情にも見える。


「ギルラス。また冗談「本気だよ。」

そう言うと真剣な眼差しでミルディアに言う。


「だって。ここは誰も入る事が出来ない場所だよ?逆に言うと、この中では戦も出来なければ、する事と言ったら、平和に暮らす事だけ。君にとっては理想郷なんじゃない?

その中に・・・。その君の隣に、俺が居られたらと・・・。一生ここで君と・・・。居られたらと、思ってる。」

そう言うと、ギルラスは、ミルディアを更に抱き上げ、自らの頬に擦り寄せる。


まるで、甘えてくる子供の様でもあった。


「どうして?どうして誰も入る事が出来ないの?そう言えば、静咲は、一緒じゃないよね?」

その言葉に、ギルラスは一瞬悲し気な表情を浮かべるが、ミルディアの問いに直ぐに答える。


「静咲は来ない。正確には静咲ですらも、来られない。ここは、基本特定の者以外受け入れてもらえない未開拓の迷動の樹海と言って良いだろう。君が考えるだけ迷動は広がり、君が想うだけ中に魑魅魍魎や樹ノ国の生き年生ける者達が巣食う。」


「でも、ギルラスは・・・。」


「俺は・・・。俺は、紅将皇(べにしょうこう)で、ツキジ。そして、術式が地獄華だから招かれた。ただそれだけだよ。」

何かを言いかけようとしたが、途中で止め別の説明をして居る様に聞こえたけれど気のせいなのだろうか?


「ツキジ?地獄華?ギルラス、教えて。どういう事?」

ミルディアの頭の中は疑問で一杯になった。


「ツキジはまぁ力の大きさを表す言葉で、紅将皇の中では一番力が強いって事で解釈しておいてよ。地獄華は・・・まぁ一種の紅将皇の中の術の使い方名称かな?

俺の場合は・・・幻覚系の術式が得意だから

そう言うのが得意って事は、解くのも逆に得意でないとね。」

何だか、納得が行くけれど、何処かを省略されている様な説明の仕方だった。


「そう・・・なんだ。じゃぁ、ここが、私の理想郷だと思うのも?」

それでも、なんと質問して良いかわからなかった為に、無理やり質問せざるを得なかった。


「・・・。君が、ここを作り出すって事は、

こういう場所が好きなんじゃないかって。

そう思っただけだよ。」

ギルラスの、その言葉とは裏腹にギルラスの表情は何処か曇って居た。


「どうして、そんなに、悲しそうなの?」

確かに、私が好きな場所だ。

けれど、彼がこんなに悲しそうな顔をする理由が解らなかった。


「俺が、君を、好きだから。」

ギルラスの瞳から紅い聖天水が流れる。


「私を、好き?」

ミルディアはその好きと言う言葉で、又、胸の奥がざわめきだすのを感じたが、その感情が、何なのか、はたまたどうギルラスに表現し、伝えて良い物なのか解らないでいた。

ギルラスは、それをよそに、とても嬉しそうに、ミルディアに、語り掛ける。


「ねぇ。俺は、君とここに居たい。だから、そうしようよ。ここで俺と平和に暮らそう?それで・・・さ。いずれか・・・。いずれか、子をもうけて、静かに暮らすんだ。誰も感傷してこない・・・。誰も邪魔したりしない。」

その言葉に、少し、嬉しい気がした。

こんなに綺麗な場所で少なくとも、嫌いでないと想って居る人と静かに暮らせたらどんなに良いかと。子供だって大好きだ。考えた事は無かったけれど、いずれかは、愛する人との子供が生まれたら、こんな美しい場所に住まわせてあげたいと思う。


[お前が、迎えに来い。]

でも、それよりも、先に、誰かが私を待って居る気がして。


[覚えておいて、私は君を深く、深く愛して居る事を。

再び契約を結ぶけれど今度は疑わないで。

私の気持ちを。これからはちゃんと証明していくから。]

静咲を置いては行けない気がして。


「でも・・・でも私は。」


「やっぱり、君は静咲を選ぶの?俺なんか嫌い?」

ギルラスはずるいと思う。

嫌と問われると、嫌って答えたら、なんだかギルラスを傷つける気がして、それは言えない。ギルラスは多分それを知っていて、あえて嫌かという聞き方をしている。

他にも聞き方はある筈なのに。


それに、また、ギルラスの悪い癖だ。

〝なんか″って言ってる。

こういう時のギルラスは大抵静咲と自分を比べている時だ。


どうして、こうも比べるんだろう。


「困らせて、ごめんね。」

ギルラスが謝ってくるなり、ミルディアは、ギルラスの首に思いきり腕を回す。


「っ。ミルディア。何を。」


「ここに居るわけには行かない。

だけど、その理由はギルラスと居たくないとか、貴方が嫌だからとかではない。

だから、貴方が謝る必要なんて何一つない。

それに、私を助けに来てくれて嬉しかった。

あと、好きって言ってくれた事も、ありがとう。」


だから、何かなんて言わないで。


その思いを伝えるかのように、抱きしめる腕は強くなる。


「ミルディア・・・。あ――て・。」


「え?」

ギルラスが何か囁いた様な気がして。

ギルラスに聞き返すが、その前に、樹海から出る事が出来・・・


「ミルディア。」

樹海の外には静咲が待って居て。

ミルディアを目で確認できた瞬間、ギルラスの腕からかっさらう様に奪い取ると・・・。


「ミルディア。ミルディア。ごめん。

もう目を離さないから。手も離さないから。」

そう言いながらぎゅっと抱きしめる。


その光景をギルラスは、眉間に皺を寄せながら見つめ、静咲に言う。


「なぁ。静咲。やはり、儀式の前に話すべきだ。」

ギルラスは、静咲に言う。


「何の事だ。」


迷黒水(めいこくすい)を飲ませた事、何故それを飲ませたのか。ちゃんと、話した方が良い。我々は、化け物だ。我々の本質こそがそれだと。お前も思うだろう?だが、ミルディアにして居る事は、まるで化け物のする事だとは思わないか?我々は、サンザーラの教えに反した行動をミルディアにしたのではないだろうか?」

ギルラスのその言葉に、静咲は、黙り込む。


「我々は、ミルディアに話すべきで、ミルディアから奪った物を返すべきなのでは無いか?でないと君達は本当に愛し合っているのか、神サンザーラと、死と運命(カルマ)を司る神デイガーディアンに疑われたなら、君達は。」


「どういう事?」

そう言いながら、静咲を見つめるミルディア。


「何か・・・あったの?」

そして、ギルラスに不安そうな表情で問いかける。


「ミルディア。すまない。

決して悪気があった訳ではないんだ。」

ギルラスは、俯きながら、ミルディアにそれを話そうと、ゆっくりと一つ一つまるで懺悔でもするかの様に言い始めのだった。

第5章

――――決意ノ時

      ―・突キ付ケラレタ真実・―


「・・・。ギルラス。」

ギルラスが話そうとした瞬間にそれを遮る静咲だったが、ギルラスは静咲に言う。


「静咲。解って居る筈だ。あの迷動は彼女が作った物だ。」

ギルラスのその言葉に、静咲の眉間に皺が寄って行く。


「それにお前は入る事が出来なかった。どういう事か・・・解るね。」

静咲の顔は更に険しくなって行く。


「静咲?解るだろう?」

改めて問うギルラス。


「あの迷動を彼女が作り出し、それに私が入れなかったと言う事は。彼女に迷いがあり、その迷いの答えは、私に関わる事では無く、別の事。彼女が自ら作り上げた迷動ならば、彼女が見て来たもの、彼女の理想郷が作り出される。迷動とは、迷いや空想を元として作られる一種の理想郷。それに、私は招かれなかった。今の私は、彼女の理想郷には入って居ない。」

心底落ち込んだように答える静咲に、ギルラスは苦笑しながら更に言う。


「我々の取った策は、ほんの一時しのぎにしかならなかった。それも、彼女の為を想うつもりが、結局は、我々の欲を満たしたに過ぎない。浅ましいやり方だ。樹天仙の本質と罪深さを表に出しすぎてしまった様だ。そうは思わないか?」

静咲に問いただす様に言うギルラスは、何時も静咲にやられて居るギルラスと言うよりは

兄の立場から物を言うギルラスと言った様子で、静咲は何時ものそれとは違い、兄に怒られた弟の様だった。


「静咲。本当に、彼女の事を想うならば。

私達はあんな行動を取るべきでは無かった。

あんな・・・ミルディアにとっての目的となる記憶を消すなんて事をするなんて。一時しのぎでも、取るべきでは無かったんだ。

そんな事をしても、確かに一時的な解決にはなっても、根本的な解決にはならなかったんだ。」

そのギルラスの言葉に、驚き勢いよく静咲の方を振り返ると、彼はミルディアから目をそらす。


「悪気は・・・無かったんだ。

君は本当に、あらゆる事に急いで居る様に思えたし、少し、ほんの少しだけ、静咲に対して時間が欲しかっただけなんだ。

そして、これだけは言っておく。決して。決して私達の欲だけの理由で記憶を消したわけではないと。」


「では、何故?」

ミルディアは涙を流し、それは友情の宝玉となり、樹ノ国の地を濡らす。


「ミルディア。どうか泣かないで。お願いだ。」


「どうして・・・どうして。どうして‼

私は。私は・・・。誰かを・・・ずっとずっと探し続けてるのに。それを思い出せない!」

ミルディアは、二人を見つめ、頭を抱えながら後ずさる。


[・・・ちゃんとお前が迎えに来いよ。]


「私は、帰らなきゃいけないのに。それを思い出せない!」


[ちゃんと・・・お前が。]

頭で声が木霊する。


「約束したのに。本当は思い出さなきゃいけないのに。」


[・・・・お前が・・・迎えに・・。]


「誰が呼んでて、誰と約束をしたのかすら。」


「ミルディア。泣くな。」

静咲がミルディアにゆっくり近づき恐る恐るその肩に触れようとする。


[樹天仙の主食は・・・ラギアと一緒さ。]

ミルディアの頭に過るのは・・・。


[何言ってるんだ。お前。

現に目の前に一体居るだろう?

奴らにとっての美味しい(エサ)が。]

迷動の樹海の中で出会った黒と銀の斑の鎧の騎士が言って居た言葉だった。

それを想い出すと、思い切りその手を叩き、全身で拒絶する。


「っ。」


もしかして


私は


食べられる為に


引き留められたのでは?


その言葉が頭に過る。


「お願い。もう、構わないで。」

掠れる様な声で、静咲に言いながら、その場にしゃがみ込むミルディアに、静咲は、何も言わぬまま、その場を後にするのだった。


「ミルディア。」

ギルラスは、その場にしゃがみ込んだまま泣いて居るミルディアをじっと見つめその名を呼ぶ。


だが、ミルディアは、返事を返さない。


「お願いだ。顔を上げなくていい。俺の事を嫌いになっても構わない。けれど、静咲を弟を拒絶しないでくれ。」

ギルラスは、悲しげな表情を浮かべ、ミルディアに更に言う。


「今回の事は俺が弟にやらせた事だ。

弟は、君を心から愛して居るが為に君を、危険に晒したくなくて、俺の悪知恵に乗っただけに過ぎないんだよ。

全て俺が悪い。だから・・・弟に心を閉ざしたりしないでくれ。俺は・・・俺は、俺なんかどう思われたって、っ!」


ミルディアは立ち上がると、ギルラスの胸元を拳で叩く。だが、それは、樹天仙にとっては全くもって痛くもないし、衝撃にもならない事はここまでずっと一緒に居たミルディアならもう知っているだろう。

そう思うと、おそらく、痛めつける為ではなく、もう解ったと、そう言っている様にギルラスは受け取った。


「うぇぇぇん。」

泣き続けて居るが、どこか、その空気は先程より緩やかになっていた。


ミルディアの周りにはどんどんと友情の宝玉が落ちて行き、それは、樹ノ国の地に吸収されて行く。


「ミルディア。ごめんね。本当にごめん。

君が摂取した俺の毒は消えない。けれど、

君にちゃんと記憶を返すから。弟を許して。」

そう言うと、ギルラスは、鋭い爪の先を優しくミルディアの額に当て、そこは赤い光を帯びて、ミルディアはやがて、それの全てを思い出す。


[トラッドネスが・・・死んだ。]


ラッド。トラッドネス‼


[何方の宝玉かは、解らない。もしかしたら、奴のかもしれん。だが、これがミルディア・・・お前のならば・・・。]


そう・・・私のこの世で一番の友。


[俺がお前の宝玉の正式な相手になってやる。たとえお前が大量生産する体質でも

正式な相手が居れば誰も文句なんて言わない、俺が言わせない。俺の宝玉の相手もお前がなれ。これでもう、泣く必要は無いだろう?俺がお前の一番になってやる。

お前が、どんな人間だろうと受け止めてやる。]


命に代えても惜しくない私の友情の宝玉の相手。


[俺はお前を置いて死んだりしない。

だからその代わり一つだけ約束しろ。]


私は、確かに約束した。


[俺がもし、お前の前から消えたなら。

探しに来い・・・。きっと俺は・・・帰り道がなくて迷ってるだけだ。

絶対に俺はお前を置いて死んだりしてねぇから。だから、ちゃんとお前が迎えに来いよ。]


私は、彼が姿を消したなら、必ず其処がどこであろうと迎えに行くと。


でも、その前に私は、やらなければならない事が少し見つかった。


そう思いながら、ミルディアは、涙をふくと、静咲の後を追う。


その後ろ姿を、少し刹那気に見つめるギルラスのその瞳を知る者は誰一人として居なかった。

友の行方は22日で完結です。第二編は6月1日にアップ予定です。

また、その間により円滑に読みやすくする可能性があります。

あらかじめご了承ください。

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