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ミルディアの涙-友の行方-  作者: つき夜好き


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episode18.記憶喪失-脱走-

「ルーティ!」


「ミルティ!」

ミルディアがルーティの泊っている宿に尋ねる事が出来たのは

樹ノ国に入って5日目の事だった。


ルーティは、ギルラスが、準備してくれた町の中で一番いい宿に泊まっていたのだった。


そして、久々に再開を果たした喜びのあまり、ミルディアに泣きつこうとする。

ルーティの頭を掴む者が居た。


「っうううううう。この樹天仙の男。前にも思って居たけど、二度と、ミルティに会わないって言っといて、勝手に表れたかと思ったら。勝手にミルティを連れて行くし、今度は、僕とミルティの感動の再開を邪魔するとか。こいつ何なの??」

ルーティはミルディアとの再会の喜びの涙と、今まさに、それを阻んでいるその男への怒りとが、混ざっていた。


「ルーティ。ルーティ。顔が喜んで居るのか怒って居るのか解んないよ。あと、その人にこいつ呼ばわりはちょっと・・・。」

ミルディアは、そんなルーティに苦笑しながら言う。


「何だよ!事実じゃないか!明らかに不審者だよ。ふぅ~しぃ~ん~しゃぁぁ。」

最後の言葉を強調し、今だ不機嫌丸出しの樹天仙の男に指先を向ける。


「ルーティ。もっもう。」


「何だよ。ミルティまで!不審者の味方するわ「この人はこの国の皇太子何だってば。」


「け??」

ルーティは言いそびれた最後の言葉を言うと、ミルディアの言葉を一生懸命頭の中で整理しようと、その場で固まる。


「ねぇ。ミルディア。この者。石になったぞ?もしかして、生命反応が停止したのでは?」


「静咲・・・これはね、事態が読み込めずに、思考回路が停止してるだけ。もうすぐ復帰して・・・。」


「うっそぉぉぉぉ!すっご!凄いよ!ねねねねねねね。」

出た。ルーティのねねね攻撃だ。


「一体どう言う経緯でこうなったの?ねねねね。出会ったときはそんな気にしなかったけど、顔片方は本当に人型なのに、片方は完ぺきに樹のお面みたいだ!凄い。凄すぎるよ!」

ルーティはそう言うと、大きな荷物からペンとボロボロの手帳を取り出し、再び、静咲の近くまで行くと、顔を覗き込み、ボロボロの手帳に書き始める。


「凄い。凄すぎる。ここまで精巧な人型の樹天仙は書物に描かれてなかった。」


「何なのだ。この者は、近すぎやしないか?」

静咲は最早嫌悪むき出しだった。


「静咲。ごめんなさい。そうなったルーティは、私も止められない。しばらくそうして居てあげて。」

ミルディアのその言葉に、深いため息を吐く静咲だった。




「騒がしいねぇ。って。なぁんだ。静咲来てたの?」

この者の勢いに押されて、この腐天仙に出会う前に去れなかった。


静咲は、そう思いながら、呆れ返り、再びため息を漏らす。


「ミルディア。ルーティに無事あえてよかったねぇ。」

そう言いながら、さりげなくミルディアの頭を撫でるギルラスのその行動に殺気立つ静咲


けれど、そんな静咲の殺気を知らずに、ミルディアは、その頭を撫でる手が心地よくてギルラスに微笑む。


「あっそうだ。ギルラス。ずっとルーティをここで守ってくれて居たんだよね。ありがとうございました。」


「良いんだよ。あのまま町のど真ん中に置いてたら、喰われちゃうから。」


「え?」

ギルラスのその発言に一瞬驚くも、いつもの冗談だと思い聞き流す。


「所で、あの後、どうなったの?鳥籠の儀式はちゃんと取り消して貰えた?」

場の空気も考えないルーティのその言葉は、今度はミルディアが石になるには、十分な発言だった。


「あれ?ミルティ?おぉぉいミルティ?ミルティってば。」

ルーティは、ペンと手帳を置くとミルディアの顔の前で手をひらひらと動かす。


「もしかして・・・・何かあった?」

石の様に固まったミルディアは次には顔が真っ赤に染まる。


「うわぁぁ解り易い。で?何があったの。」

ルーティは、笑いながら、ミルディアに問う。


「・・・・・。」

ルーティの問いに何も答えられないミルディアを見て、苦笑するギルラスは、ゆっくりと前に出ると、ルーティの耳元にひそひそと何かを吹き込んでいく。


その光景を無表情で見守る静咲だったが、

やがて、ルーティの殺気が静咲に向けられ、

今まで無表情だった、その表情は少しの驚きに変わる。


「なっ、なんだ。」


「樹天仙の愛し方はしつこいって書物に書いてた‼」


ん?ルーティ前と言って居る事が違う。

前は情熱的だって言ってたのに。


ミルディアはそう想いながらも、ルーティの話を聞く。


「それは、生涯一人しか愛し抜かないからで、前世から続く愛情が現世にも表れ出でた物でその愛情は来世にも続くとか。

でも・・・でも、それは樹天仙同士の事だろう?そんな変な運命にミルティを巻き込むな!」


「っ⁈」

その言葉に、その群青色の瞳が揺らぐ静咲。


その変化にミルディアも気付いていた。


「確かに、ミルティの命を助けてくれた事には心から感謝して居るよ。本当に・・・本当だ。だけど・・・樹天仙の愛し方と僕達の愛し方、愛の意味合いは全然違う。その重みもきっと違うはずだ。」


どうしよう・・・


私が不安に思って居た事を・・・。


こんなに簡単に言われると。


なんだか現実を突きつけられている様で。



そうだ・・・もともと、私達は、私はラッドを助けに行くために旅に出て、でも、この気持ちは何だろう。


ルーティに静咲とは釣り合わないとはっきり言われた事に


私は


とても


傷ついてる。


王にも同じこと言われて居る筈なのに

ルーティに言われる方がこんなにも傷つくなんて。


「ミルティもミルティだ!っ⁉ミルティ?」

ルーティの戸惑いの表情に今までルーティに注目していた皆の目がミルディアに一気に向けられる。


「ミルディア。君。」

ギルラスは今まで見た事が無い程眉間に皺をよせ此方を見つめる。


それは、ミルディアが、また、ボロボロと涙を流していたからで、床にはコロコロと音を立ててミルディアの宝玉が次から次へと落ちていく。


ルーティは、少しずつ、目を伏せて行き。


「ルーティ。あの・・・私。「出てけよ。」

ルーティはミルディアの言葉に自らの怒鳴り声を被せる。


「取り合えず、ミルティと話がしたい。お前ら・・・出てけよ。」


「私は出て行かぬっ!「ほぉら、行くよぉ。我が愛しの愚仙弟。」


「何故。ちょ、放せ!「はいはい。行こうねぇ。」

ギルラスは、嫌がる静咲を無理やり羽交い絞めにし、その場を後にした。


「・・・・・。」


「・・・・・。」

しばらく沈黙が走ったが、一番最初にそれを破ったのはルーティだった。


「もう、ここから離れよう。確かに、一年待たないと、隣の国の常夜ノ国には渡れない。

今は内海が干上がっているからね。」

ルーティはそう言いながら、近くにある書物をペラペラと捲る。


だが、その表情はいつもの、探求心溢れる少年とか、弟分と、言うよりは、男性が目の前で話しているといった感じだった。


それは、近くのルミエット(樹ノ国開発製暖炉)の青い揺らめきがルーティの顔を照らし

何処か大人びた表情に見せているのか、

それとも、彼自体がいつにもまして、真剣な表情で、あのねねねと言う言葉を使わない為なのかは、解らない。


「だけどね。ミルディア。」

何時もは、最後まで発音しないしテの部分をデと発音する事や、私のファーストネームを言ったのが更に彼の今の心境や、言葉は真剣そのものなんだと理解するミルディア。


「僕は、ここから離れる。・・・いや逃げるべきだと思うんだ。

このままだと君、トラッドネスに合う事も常夜ノ国に入る事も叶わなくなる。

いや・・・もしかしたら、もう手遅れかもしれない。でも、それでも、早くしないと。」


「どういう事?」


「ミルディア。この国は呪われているんだよ。」

今までペラペラと捲っていた本を閉じそれの表紙を此方に向けまっすぐミルディアを見つめ更に続ける。


「死と運命(カルマ)を司る神デイガーディアンにも。何より。」

ルーティはミルディアに近づくと、その本のしおりを挟んでいた所を広げそのページを見せる。


「嘗てここに君臨して居た純潔の王女サク=シズカにも・・・ね。」


「・・・え?」

ルーティも知ってる?過去にあった出来事を。


その本の内容には、それだけでは無く、死と運命(カルマ)を司る神デイガーディアンが樹天仙にかけた呪いの詳しい概要が書かれていた。


ルーティは、嘗ての神々がこの国にかけた呪いについての記述をミルディアに見せた。



[嘗ての神々の内、

樹ノ国を統治していた神サンザーラは、自らの土地を豊かにする為に、

命と光の豊かな命ノ国を滅ぼし物にしようとした。

それは、確かに成功をおさめ、命と光の豊かな命ノ国は神サンザーラの物となった。

しかし、これを支配していた女神の身体と魂は保つことが出来ずに崩壊した。

その為に、命ノ国を保つ為の力が無くなり、

命ノ国は命が育たない砂漠の地となったのだった。

それを知った、その女神の対であった、死と運命(カルマ)を司る神デイガーディアンは激怒し、お互いの土地を奪い合う神々達を呪った。

その最たるものがサンザーラであった。

死と運命(カルマ)を司る神デイガーディアンは神サンザーラの子らに永久に死ねない呪いをかけると同時に愛の呪いをかけたのだった。

サンザーラの子らは、

最初は、それを祝福だと思って居たが、

それが呪いであると理解するにはそう時間はかからなかった。

永遠を生き自らが愛したものが永遠を生きない者だったならば、

その悲しみを永遠に背負わなければならないからである。

これが愛の呪いだった。

彼らは一度愛した者はその永遠とも輪廻ともいえる命の中で生き続け、

決して解放されることが無いからである。]


愛自体が・・・呪い。


「解るでしょう?あの人のミルディアへの想いと今ミルディアが想って居るそれって、

本当に同じ位なのかな?そこにトラッドネスが居たら、彼と天秤にかけられる?」


[覚えておいて、私は君を深く、深く愛して居る事を。

再び契約を結ぶけれど今度は疑わないで。

私の気持ちを。これからはちゃんと証明していくから。]


「それは。」

それは・・・全く違う話な気がする。

ううん。違わない。私の旅の目的はトラッドネスで、誰かと結ばれるためじゃない。


「天秤にかけるとか・・・。そう言うの。本当にすることなのかな。

友情は友情で、愛情は愛情なんじゃないかな。」


「ならなおのことだよ。ミルディア。彼と求愛の儀式の第三段階を交わす前に、この国を出た方がいい。」


「ルーティ。意味が解らないよ。もっと解る様に「彼と命の絆の契約を交わすと言う事は!君はこの国の人間になるって事なんだ!結婚するって事‼彼に愛の宝玉を渡すって事だよ‼君はおのずと、樹天仙の愛の呪いの運命に身を投じる事になる。そして何より、樹天仙の妻になると言う事は、ますます、金ノ国に入り辛い事になる。ますますトラッドネスを探しづらくなるんだよ?」

書物を机に叩きつけ、まるで現実を叩きつける様に言い放つルーティ。


「その自覚・・・ある訳?」

結婚・・・。愛の宝玉を渡す。


そこまでは・・・考えてなかった。


「それだけでは無いよ。ミルディア。彼は王族だ!それも菩提樹ノ君と言う特殊な地位に居る。

この国の最も高貴な樹天仙だと言う事は、君はもう知って居る筈だ!

樹ノ民からは神同然と、祭り上げられ、国王と同等の権力を持つ者だ‼そんな人物のたった一人の女性になると言う事はそう言う事だよ!つまり、一生ここから出られないし、帰る事も出来ない‼目を覚ましなよ!何を考えてるんだ!ミルディア。それに、トラッドネスの事を聞くはずが、もう5日も経って居る。その間君は一体何をして居たの⁈

王子達の恋に振り回されて居る場合じゃないでしょ⁉僕達はトラッドネスの情報を聞き出さなきゃならないのに!」


「・・・・そうだけど・・・そうだけど。」

ううん。認めざるを得ない。トラッドネスの事を聞く事をどこかで戸惑ってしまっている内に、聞きそびれて、聞きそびれている内に、自分が何の為にここに来たのかを忘れる所だった。


「解った。離れよう。ここから。」

ミルディアのその言葉を待っていたかのようにルーティはミルディアの弓と剣を渡す。


「これ、静咲に預けたとばかり。」


「多分静咲さん経由ではあると思うけど。

ギルラスさんが預けてくれた。」


「いつ出る?」

ミルディアがそう言うと、ルーティはあの大きなバッグを背負いながら・・・。


「今・・・直ぐに。」

そう言うと、ひっそり裏手口を開け、二人でひっそりと抜け出す。


でも。

「ルーティ本当に、これって、ひっそりになってるのかな?」


「大丈夫。任せてよ。」

任せてって・・・。明らかにこの国に入った時と同じ事になっているような・・・。


そう、すれ違う樹ノ民はしゃがんで通っている私達をじろじろと見ている。

それは、この体制で歩いて居るから怪しんで見ているのか、この国に入った時と同じ理由なのか、もう、解らない。

だが、今回は不思議な事に、ギルラスにも静咲にも見つかる事なく、森の中に逃げ込む事が出来た。


「ここまで来ればきっともう追って来ないよ。「何が追って来ないだって?」

ルーティは満面の笑みで私に言うが、後ろからの飄々とした声で一気にその顔は青ざめる。


「あのねぇ~。樹天仙の愛し方はしつこいぃぃぃとか、生涯一人しか愛し抜かないだの。

前世現世来世の樹天仙の愛し方やミルディアを巻き込むな、と吐き捨ててさぁ

このままにして置くと、考えると思うぅぅ?それに、君に武器まで渡して。

罠だとは気づかなかった?

本当に平和ボケな種族だね。」

姿を現したのはギルラスだった。


「私達は、お前よりも何千年も昔に生まれている。考えを読む事等造作もない。」

続いて、静咲も現れ、ルーティはミルディアを自分の背に隠す。


「駄目だよ。ミルディアはここに留めて置くわけには行かないんだ。

増してや、王族の妻に何て!樹天仙の愛の呪いの巻沿いになるなんて!

何なんだよ!お前。ミルディアの事、愛してなんかない癖に。

たまたま傷を治すために鳥籠を作っただけなのに「だから・・・。そなたの為だけに作った訳ではないと。あの時言ったはずだ。」


何の話をして居るんだろう。この二人の話の内容が解らない。


ミルディアは二人が話している内容についていけていなかった。

何故なら、ミルディアにはその記憶が無かったからだ。


だが、ルーティには〝その″記憶があり鮮明に思い出される。


[そなたの為に助けようと思ったわけでもない。]


[・・・。何かが・・・そうしろと。]


「まさか・・・あの時もう、決めていたとそう言いたいのか!

でも、二度と合わないって!「弟の二度と合わないはねぇ、また絶対合おうだ。」


「何だよ!それ‼」


「まぁ。そうだよね。こぉぉんなひねくれた奴じゃ解りづらくて。

本音何て解ったもんじゃないだろうねぇ。

これでも、ミルディアに会って少しは素直になったんだけど。・・・だからこそ。」


「っえ?」

ギルラスは、目にもとまらぬ速さで、ミルディアの後ろに回ると、顎を掴み何か赤い小瓶を取り出すと、その中に入っていた黒い液体を、ミルディアの口に一滴こぼし入れる。

ミルディアは、それを思わず飲み込んでしまい、それと同時に気を失う。


「ミルディア!ギルラス!ミルディアに何を!」


「ちょぉぉっとだけね?都合の良い部分だけ忘れて貰ったの。」


「なっ!」


「認めよう。お前が言った通りだ。樹天仙の愛し方は、人に近いお前達とは違う。

一人しか愛せないし、前世現世来世でも、そのたった一人しか愛しぬけない。

それが呪縛だ。だから、ミルディアには、ここに居て貰わないと困る。

だが、私は、それを愛の呪縛だとは思わない。ミルディアを愛せたからなのか、相手がミルディアだったからなのか、それはこれから考えるとしよう。

だがな。ミルディアの記憶を消す理由は、他にも三つある。」

静咲はそう言うと、ルーティにゆっくり近づきながらそれを説明していく。


「一つは、ミルディアは、短命だ。

ここに居る間に、その短命をいかに私達と同じ永遠なる命にするかを考えねばならない。

二つ目、私達はまだ命の絆の儀式つまり、この鳥籠の儀式は三つあるがこの第一段階しかミルディアと行って居ない。

こんな中途半端な段階でお前たちを外に出してしまうと、お前たちは無駄に命を狙われる事になる。

まずはこの国の王である静朔慈にそれから、王が差し向ける王専用の軍に。

そして、私の唯一の女だと分かれば、この国のどこに居るかわからない金ノ国の残党である刺客共にも狙われる事になるだろう。

既に、一度攫われかけている。

最後に、お前達の旅の目的が何にせよ、今はこの国を出る時期では何方にしろ、ないと言えよう。「そんな事!」


「解るんだよ。ルーティ=ザン。争いを好まぬ一族よ。お前達一族が本当に争いを好まぬ一族ならば・・・。

今は時ではない。大陸へ渡れる唯一の川は干上がり、その付近は荒れに荒れ、近づくだけでも、空海の荒れた風が、その猛威を振るう事だろう。それでも、死と運命(カルマ)を司るデイガーディアンが住まう地、黒海(こっかい)に行きたいと、言うならば一人で向かうと言い。デイガーディアンは、特に人に近い者程容赦はせん神だと聞くぞ?

だが、私は、ミルディアを死と運命(カルマ)を司るデイガーディアンにやる気はないのでな。」

静咲はそう言うと、ミルディアをゆっくりと抱きかかえ、ルーティに背を向けると、

その髪にさしている紅い簪の小さな鈴が心地よく鳴り響き、彼がルーティの前からゆっくりと姿を消すごとにその音は小さく消えていくのだった。


ルーティは、その後ろ姿をただ見送ったのち、近くに居たギルラスに言う。


「ギルラス・・・さん。」


「おやぁ?今更さん付けかい?あれだけ威勢よく呼び捨てておいて。」


「っ!!ミルディアは・・・ミルティが忘れた記憶ってやっぱり。」


「ううん。まぁ・・・。とりあえず、この国から出て貰ったら困るから・・・ねぇ。」


「はぁ~。やっぱり・・・トラッドネスの事だよなぁ。」

頭をぼりぼりと掻きながら座り込むルーティ。


「そう言えば・・・。聞いた事なかったなぁ。そのトラッドネスって奴の事について。

一体何者なの?そもそも男?女?あっ!もしかして旦那だったりする?それだったらまずいよねぇ。」

その言葉に対し、じろりとギルラスをにらみつけるルーティに、


「じょっ、冗談だって。でも、実際の所、一体何者なの?」


「トラッドネスは、ミルディアにとって、心の奥底に居る友であり、家族であり、そして、絆その物であり、命なんだ。

小さな時は、ミルディアの笑顔の隣にはいつもトラッドネスが居た。」


ルーティは、地面を見つめながら、二人を想い出すように、その顔は刹那気な表情を浮かべ更にギルラスに言う。


「ううん。笑顔の時も泣いて居る時も気が付いたら隣にトラッドネスが居た。

トラッドネスはいつもミルディアを守って居るみたいだった。ミルディアもそんなトラッドネスをずっと頼って居る感じだった。

トラッドネスが、商人になって、外界に出て居る時でも、ミルディアはまるで何時でも隣にトラッドネスが居るみたいだった。

でも、ふとした瞬間に不安な顔をして居た事もあった。出て行ったら二度と帰って来ないんじゃないかって。

ミルディアにとってトラッドネスはこの世で唯一命と交換しても惜しくない友じゃないかな、少なくとも僕はそう思って居る。」


「命と交換しても・・・惜しくない友・・・か。」

ギルラスは、目を閉じながら、ルーティが言った言葉を改めてかみしめる。


「でも、そう・・・だよね。どちらにしても、あの、ミルディアが静咲さんを助けると選択した時点でこうなる事になっていたのかもしれない。」

ルーティはそう言いながらお尻についた土をはらい立ち上がると。


「僕も戻る事にするよ。あの高級な宿にね。」


「それって、静咲とミルディアの結婚を認めたって事で良いのかな?」


「それとこれとは別ですね。」

ルーティはつんとした表情でギルラスに答えると


「ふふふふふ。」

ギルラスはそんなルーティに苦笑するのだった。

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