episode17.樹天仙の性質
「ミルディア。」
泣いて居ると、突然後ろから声が聞こえ、慌てて、涙を拭う。
しかし、地面に落ち切って居ない物は、
ミルディアの友情の宝玉となって、部屋中に散らばっていた。
「あっ。あの・・・。これは。」
ミルディアは、如何言い訳するかで頭が一杯だったが、
静咲は、そんなミルディアに対し、ゆっくり近づいていく。
顔が・・・近づいて・・・。まさか。
思わず、目を瞑ってしまうが、何も感覚が来ない為に、ゆっくりと片目ずつ開けて行く。
静咲はと言うと、私の横に転がっている宝玉から、ゆっくりと拾っていた。
は、恥ずかしい。私、今・・・。
口付けされるって思った。
「ミルディア?如何したの。固まってしまって。」
「あ、私。あの。違う。」
まさか、口付けされるのかと思ったなどと言えないミルディアは、恥ずかしくなり、慌てふためく。
「ミルディア。顔が赤い。熱でもあるの?」
そう言いながら、額をくっつけて来る、静咲。
「違うから。」
近い。何で、こんな熱の測り方するの。他にも、脈とか色々あるでしょう。
「取り合えず、ベッドで、休もう。ミルディア。」
そう言うと、ミルディアを抱きかかえ、ベッドへと運ぶと、
自分もその隣へと寝転がり、まるで、可愛い動物を可愛がるかのように、頭をずっと撫でている。
この状況は、愛でられてるのかな?
それとも、ペット感覚で、撫でられてるのかな?
「か、紙一重だ。」
ミルディアは、顔を真っ赤にしながら、静咲の顔を改めて見つめる
女の私よりもまつ毛が長い。
それに、やっぱり、甘くて頭の中まで痺れそうな良い香りがする。
髪だって、美しい絹の糸の様だし。私みたいにお婆さんみたいな真っ白い髪じゃない。
ちゃんと光沢がある。
本当に魅惑的だ・・・。
「ん?ミルディア。心の臓の音が先程よりも早いが。っまさか!何か病にでも⁈」
不安そうな表情と共に、ミルディアの顔を覗き込む。
「駄目見ないで。」
「ミルディア。顔が先程よりも赤い。熱も先程よりも上がってきている。
やはり、何か悪い病なのでは?「違うったら。お願いだから、そんなに、近寄らないで‼」
どうしよう、確かに、ある意味で安全な人だけど、ある意味では純粋無垢すぎて危険な人だ!
「っ⁉」
だが、思わず言った言葉に、静咲はまるで、目の前で突然大切にしていた硝子細工が割れた様な顔をしていた。
ミルディアは、その表情を見て、思わず口を塞ぐ。
[咲は、ずっと静咲の事を化け物だと、遠ざけて居た。]
もしかして・・・。今の言葉で・・・傷つけてしまったのでは?
思った以上に衝撃を受けた顔をしている静咲は悲しい表情を浮かべながら、
そのまま離れようとしたのをミルディアは静咲の胸元の裾を掴みそれを制した。
「ちが・・違うの・・・。私が言いたいのは。・・・恥ずかしかったの。」
「え?」
静咲は心底不思議そうな顔をし、立ち上がろうとする姿勢から、
もう一度、ミルディアの傍に行き、ミルディアの話を聞こうとする。
その表情は、先程の悲しい表情から一遍知りたくてたまらないと言う表情になって居た。
「だって。静咲さん。魅惑的なんだもの。」
「・・・・・ん?」
静咲は、座ったまま、目が点になり、首を九十度に傾ける。
その傾き方は、やはり彼は人間に近い物では無いと象徴する様に、直角だった。
「ミワクテキ?それは、どんな焼き方だ?」
「・・・・え?」
焼き方⁇
「私は、ミルディアにとって、美味しそうに見えて居るのか?」
「えっと・・・。」
何だか、違う様な。
「私もそなたに対し、そう思う。」
「ぇ。」
思わぬ言葉に、素っ頓狂な悲鳴が出る。
「そなたを、喰いたいと思う。」
ミルディアは、昔トラッドネスが、男は時々狼になるから、
俺以外の男と二人きりになるなとよく言って居た事を思い出し、
後にその狼と言う意味が解った時には、もうその話題をトラッドネスとする事は無かったが、
今その意味を想い出し、喰われると言うのは、
本当の意味で、なのか、トラッドネスの言って居た意味で、
なのか、そして、静咲も私の発言をもしや、
私が静咲を襲いたいと言う意味に問ったのか測りかねていた。
その間に、静咲も静咲で、ミルディアの顔を除きこんで
何を思って居るのかを測り兼ねていた。
「ミルディア。お願いだ。喰いたいと思っているのなら、
私と同じ思いなら、私は嬉しい。そうでは無いの?」
如何しよう、安易に、そうです。とも、答えられないし、いいえと答えて、また先程の悲しい表情をさせるのも何だか忍びない。
「食べたい。とは、思わない・・・かな。」
「ミルディア。それは違う。」
ん?
如何しよう。話がかみ合ってない。
「そなたを食べてしまっては、そなたを愛せない。」
と言う事は、やっぱり、喰うと言うのは、もう一つの意味なのか。
そう分かった瞬間、ミルディアは、答えをやっと理解できた。
「静咲さんを見てると、心臓がどきどきするの。」
「それは何かの病か⁈」
「違う。違うよ。でも、静咲を見てると、
私よりも、綺麗だって思って、この甘い匂いすら、私は、頭が痺れてしまいそうで。」
「匂い⁈ミルディア、私の匂いが解るの?」
静咲さんは、ギルラスさんと同じ様に、私が、静咲さんの匂いが解る事に頗る驚いて居た。
「人に近い者は、我々樹天仙の匂いは自然体に紛れて解らないんだ。
普通はね。でも、ごく稀に、樹天仙の愛の相手が、人に近い物だった場合、
その人に近い者は、通常嗅ぎ取る事の出来ない樹天仙の匂いが解るのだとか。」
じゃぁ、他の樹天仙からは、何もにおわなかったのは、
その樹天仙から、運命の相手と認識されてないからなのか。
でも、それだったら、ギルラスさんの匂いも私は解った。
[じゃぁ。じゃぁ・・・さ。俺にしない?]
ギルラスさんも、私が運命の相手だと・・・。
本気で求愛の儀式の相手にしたいと思って居るから、私は彼の匂いが解った?
「ねぇ。ミルディア。そなたを喰って良い?優しく喰うから。」
そう言うと静咲はミルディアに、ゆっくり近付いて来る。
「だ、駄目!駄目駄目駄目。私を食べると、その・・・爆発するの!」
そう言うと、静咲は勢いよく、ミルディアから離れる。
「それは、大変だ。ミルディアが爆発してしまったら、ミルディアが死んでしまう。
幾ら私でも、人に近い者が跡形もなく散ってしまったら、再生出来ない。
けれど、何だろうか、樹天仙は樹血と言う神聖な水が身体を廻って居る。
水だから、人に近い者の様には温かくない。
体もそうだ、体温と言う者は無く基本冷たい筈なのに、
今、身体中から、花が咲きそうなほど、温かく感じる。そして、そなたを抱きしめたいと思う。」
そう言いながら、ミルディアのぼさぼさの髪に触れる静咲だが、
最早、それすらも恥ずかしく思えて来て、ミルディアは、
ベッドから起き上がると、すたすたと、部屋の入口へと歩いて行く。
「わっ私・・・ちょっと、外を散歩してくる。」
「あ。ミルディア!違う種族の事は、よく解らんが、人に近い者は、
色々大変な一族なのだな。想い合っている者同士が手を繋ぐにしても、
一体どうするんだ?爆発しあうのか?」
ぽかんとしながら、首を傾げ、ミルディアを見送る静咲。
ーーーーーー
「ふぅぅぅぅ。」
静咲さんって、私の何が良くって求愛の儀式の相手に選んだのかな。
「そう言えば、元々は何が発端何だったっけ?」
そうだ、樹天仙の求愛の儀式を静咲と交わしたのが原因だったんだ。
「それが無かったら・・・私と静咲さんの共通点なんて、無かったんじゃないかな。」
っというか・・・。何時求愛の第一段階を静咲さん私に・・・。
再びうじうじと悩み始めるミルディア。
「あぁ。ラッドの事も全然聞けてないし・・・。
もう。このままじゃ一年過ぎちゃうよ。」
「ミルディアみぃっけ。」
湖の畔で、水が揺蕩う様を、唯ずっと眺めていたミルディアに、
聞き覚えのある声が、後ろから、掛かる。
「って言うか。俺達なんでこうもよく合うのかな?
もしかして、運命の相手ってやっぱり、俺達なのかも。」
「それは絶対ない気がします。ギルラスさん。
大体、あれだけ痛い思いしておいて、まだ、足りないんですか?」
「えぇ?だって一日に二回も会う偶然ってもう必然でしかないでしょう?」
「私は今ギルラスさんのちゃらんぽらんに付き合って居る程、余裕がないんです。」
そう言いながらうずくまるミルディアに、
苦笑しながら近づくと、乱雑に、その横に座るギルラス。
「静咲にエッチな事でもされた?「ギルラスさんじゃあるまいし。
私に近づいたら、私が爆発しますって言ったら、驚いて離れちゃう程純粋な人ですよ?」
「っく。あはははははははは。
君に近づいたら爆発⁉
静咲それを信じたのかい?じゃぁどうやって君達人に近い者が生まれて来たのか静咲は、
今頃一生懸命考えを巡らせて居るだろうさ。」
ギルラスは腹を抱えて大笑いし、さらに言う。
「いやまてまて、静咲は、その手の事に疎い。
まず、想い合う男女が手を繋ぐ時にいちいち
爆発するのかって思ってるよ。」
そして、ひたすら笑い終えたのか、笑い転げていた体を起こすと
「何方にしても、爆発した後、怪我等はどうやって治すのだろうか″
なぁんて、今頃、難しい書物を読み漁って調べて居る頃だろうさ!
あぁあおっかし!」
「うぅぅぅ言わないでください!
あの時はあぁしか言いようが無かったんです‼」
「あの時。なんとも意味深気な言い方だね。口付けでもされかけた?」
いかにも、からかい慨があるかのような顔をし、
ミルディアの顔を覗き込むギルラス。
「・・・違います。唯・・・・。」
「唯。何?」
ギルラスはわずかに口角を上げると首を傾げ
ミルディアをその紅い瞳で見つめる。
「あの。ギルラスさん。聞いても?」
突然手を握られ、真面目な表情で、ギルラスに言うミルディアに対し、
少しだけ驚くが、ギルラスは、直に薄く微笑み、良いよと答えると、ミルディアは、続ける。
「あの、樹天仙で言う、喰うってやっぱりそう言う意味なのかな。」
「そう言う意味って。人に近い繁殖の事?」
「なっ⁉」
悪びれもせず、普通に、恥ずかしい事をさらっと言う、
ギルラスに顔を真っ赤にして、言葉を詰まらせるミルディア。
「フフフ。まさか君。喰いたいって言われたの?
あっもしかして、それで、襲われると思ったんだ!」
「あぁぁぁ。それ以上は言わないでください。
自分が恥ずかしくなって来るじゃないですか!」
「クククク。ごめん、ごめん。でも、中らずと雖も遠からずって所かな。
樹天仙にとってはね。食うと、喰うは同じ言い回しでも、違う意味になるんだよ。
食うは食す。普通だよね。でも、喰うは、妻や、愛情を抱いている相手に対して、
腕や首筋を噛ませて欲しい。甘えさせて欲しいとせがんでいるって事なんだ。」
ミルディアの目は戸惑いが見えギルラスはそんな彼女の頭をなでる中で、
のどかな鳥の声があたりに響き渡る。
「まぁ....わかってやって。
静咲は純粋なんだよ。」
苦笑しながらそういうギルラスに対しミルディアは答える。
「はぁ、彼が純粋とか。
そう言う事じゃなくて・・・。
そもそも・・・それ以前の、話です。」
そう言いながら、目の前で揺ら揺らと揺れて居る
湖の水に近づき手を水の中に入れ少し指先で遊びながら、言葉を続ける。
「愛して居ると・・・言われました。」
その言葉に、ギルラスは何処か胸の焼ける様な
感覚を覚えながらそれを表情には出さずに聞いて居た。
「やっぱり、私達の愛情の深さって、
相当違うのではないかと思って。」
「ミルディア・・・・。」
ギルラスは、悲しい表情で、湖を見つめるミルディアの名を思わず、刹那気に呼ぶ。
「樹天仙の愛の重みは何千年・・・いいえ
もっと先の転生した後まで続く程の重みだけど
私達の愛ってほんの一瞬でしょ?
そんなので、本当に釣り合うのかな?
そもそも、私と静咲さんって、
なんで、儀式をしてしまう事になってしまったのか。
それも解らないまま、あれよ、あれよと言う間に、
愛さなければならないと言う・・・。
義務にも似たものを課せられてしまったでしょう?
静咲さんはもしかして、義務と、愛を錯覚して居るのではないでしょうか?
〝愛さなければならない″と、〝愛したい″は違う気がするの。
そんな状況で、私は本当に・・・そんな彼の永遠の命のループの中に、
まるで呪縛の様に入って行って良いのでしょうか?」
ミルディアは再び友情の宝玉を流しながら掴む事の出来ない
水を掴もうとするように握りしめる。
「本当にまるで、この湖の様。
どの者にとっても貴重な水だけれど・・・。
入ってみたら、何処で足を取られるのか、
何処から深くなって居るのか解らない。
飲めば、喉を潤せるけれど、最後まで身体を付けてしまえば、
命を奪われてしまう程息苦しい物となる。」
「成程、愛は貴重な物だけれど、その価値は、樹天仙である俺達からしたら、
その湖の浅い所でのどを潤している様な物。
そして、人に近い君達にとっては、樹天仙の愛は、
水の一番深い所で息をしないまま沈んでいる様な物・・・か。」
ギルラスはそう言うと、ミルディアの傍に行くと、
水の中に浸かって居る手を握り、
その手は淡い赤色に光るとミルディアの手の中には
赤い小さな宝石が収まって居た。
「君が今言って居る言葉からするに、贅沢な悩みだね。
どうして深く愛される事にそんなに抵抗するのさ。
もし、静咲の心がこの水の様だとしても・・・。
君は浅い所で、それを飲む者ではないし、
静咲は深い場所に留まって居る樹天仙でもない。
寧ろ。樹天仙は、人ならざるもので、水が大好きだから、
一・二か月ずっと潜ってても死にはしないのが現実だからね。」
そう言うと、ミルディアに更に微笑むギルラス。
「ギルラスさん・・・これ。」
「君には、特別・・・上げるよ。大切にして。」
「なんだか、とても貴重な品な気がするんですけど。」
「ううん。・・・・でも君の掌で出来たって事は、
その石は君に持って居て欲しいんだよ。きっとね。」
ギルラスはそう言うと、更にぎゅっとミルディアの左手を握る。
それの行為を不思議に思い、ふとギルラスを見るとその顔は意外に近かった事に驚き、
思わず固まってしまう。
やっぱり、ギルラスさんは静咲さんの兄弟なんだなぁ。
何処となく、似て居る。
静咲さんが微笑んでくれたらこんな感じなのかな。
静咲さんの心の中の氷がもっともっと解けて
何時も心の中があったかくなって居れば、こんな風に・・・。
やっぱり、ギルラスさんは、美々しいな。
人ならざる者って言って居るのに、顔の輪郭とか、
どう考えても、綺麗だし、睫毛も長い。
片方は樹面だけど、樹面だと感じさせない位、人に限りなく近い。
口元だってきっと、人と同じ位・・・。
「っ⁉」
気が付いたらギルラスの唇がミルディアの唇に重なって居た。
今まででされた事のない、長い口づけに、
ミルディアは、驚き、体が更に固まってしまう。
それが、離れた頃に、やっと口づけをされたのだと理解する程だった。
「っ!?今!!」
「こう言うのが、普通。・・・想像していた、事じゃないの?」
「っ!!」
つぎの瞬間にはギルラスの頬を叩いてしまって居た。
「あっあ、ごめんなさい・・・。つい反射的に・・・。」
「良いよ。俺達樹天仙には人に近い物の平手撃ち何てそよ風みたいなものさ。
全く痛くない。それよりも、これを、静咲に見つかってしまった方が寧ろ拷問されかねっ!?」
ザシュ
鋭い蔦が地面から突き出ると、ギルラスの身体を貫く。
目の前のおびただしい純白のさらっとした液体が飛び散る瞬間までゆっくりに思えた。
これは・・・ギルラスさんの・・・血?
でも、確かに、それは、ギルラスの身体を貫いた瞬間おびただしいばかりの、
血液の様に飛び散っている。
「っ‼」
ミルディアは言葉にできず、その場で腰を抜かし、
驚愕の表情で、瞳からはボロボロと涙を流しながら、
攻撃した者をゆっくりとみる。
「せい・・・さ・・・。」
「やはり。貴様は早くに殺しておけば良かったんだ。」
「ど・・・ぅ・・・して・・・。」
「どうして?そんなの解るであろう?
何故腐天仙にその心を許す?それだけでなく唇まで。
今度は何を許すつもりだ。っ⁉ミルディア。その手に持っている物は・・・。」
静咲はゆっくり腰を抜かしている、ミルディアに近付くと、
その目線に合わせその言葉を強調する。
「何?」
しかし、静咲は笑っているように見えて、目は笑ってはいなかった。
どう考えてもそれは、怒って居て、一歩言葉を間違えたら、
虫の息のギルラスを一思いに殺しかねない勢いだ。
此処でギルラスを庇ってもきっと良い事にもならないけれど、
このままにしておくのもきっとよくない。
「私に・・・見せてよ。」
駄目だ。ここで、これを見せたら、火に油を注ぐ様な物だ。
上手く・・・。上手く言葉を返さなければ。
「さっき。これは、さっき。あの川で。」
必死で真実味の有る嘘を考えようとするが。
「ふぅん。」
静咲の表情そして目は、ミルディアを見て居るが、
言葉は聞いて居ない様に見えたミルディアは、そんな静咲に対し僅かに怯える。
「可笑しいな。その紅色に光る宝石。」
そう言いながら、静咲は、ギルラスの喉元に手を翳し、
それと同時に、ギルラスは更に苦しみだす。
すると、喉元にある、大きな紅色に輝く宝石がまぶしい程に輝く。
「私には、あいつの核の一部にしか見えぬが?」
「それは、先程俺が、上げた・・・っ」
ギルラスは、苦しい表情を浮かべつつ、静咲にそう言う。
「ギルラスさん‼」
ミルディアは、ギルラスが最後まで言うまでに、その言葉を止める。
静咲は、ギルラスのその言葉に、更に不機嫌極まりない表情になり、
核と言われる部分を先程、ギルラスを貫いた蔓で締め上げる。
「駄目です。止めてください。静咲!お願い止めて!」
ミルディアはさん付けで呼ぶ事無くもはや呼び捨てて呼んでいる事さえ気づいて居なかった。
「そなた。受け取る意味が解って受け取ったのか?」
静咲の静かな怒りにも似た言葉に対し、
ミルディアは、涙を流しながら、静咲を見つめる。
静咲の顔は、とても悲しそうだった。
「受け取る事がどんな意味を成すか解っていたのかと聞いて居るんだ!」
そう言いながら、今度は、ミルディアの手首を思い切り掴み無理やり立ち上がらせる。
「静咲・・・。痛い。」
「私は‼どう言う意味か‼解って受け取ったのかって聞いて居るんだ‼」
もう、どうして、彼は私の想いを解ってくれないのだろうか、
此処で悩んでた事も、全部全部彼の事なのに、何時だって。
そう何時だってここに来てから悩む事は、ラッドの事より彼の事の方が多いのに。
何で彼はこんなに起こるの?
「どうして。どうして、そんなに怒るの?何時だって。何処に居たって。
私は、貴方の事を考えて。悩んで、向き合いたいって。
でも、貴方が解らないって思って。」
その言葉を聞き静咲の掴んでいた、ミルディアの手首への力が次第に緩くなる。
「ギルラスは、貴方の事ちゃんと話してくれた。
貴方を悪く言った事なんて、一度も無かったのよ?なのに。どうして?」
「話を聞いて居るなら。理解して居る筈。
私は、そなたと求愛の儀式をする事に命と来世をかけてるんだ。
そなたには重いかもしれない。「そんな事無い。」
静咲の言葉にミルディアは、即答する。
「そう言う事が言いたい訳では無いの。私が言いたいのは。
ギルラスと私が、二人で居るだけで、ギルラスを殺すなんて言わないで欲しいって事。
先ほどの件には、正直私にも落ち度があったから、貴方が罰を受けろと言うなら受ける。
だけど、ギルラスさんを責めるのはやっぱり違う。」
ーーーーー
翌日
「体中が・・・。痛い。」
「そぉれ。惚気?」
「ギルラス‼」
ギロリと睨みつけながらギルラスの名を呼び捨てるミルディア。
「おぉぉっと。とうとう呼び捨てしてくれる位になったんだ。」
「そもそも、貴方が何時も問題を大きくしている気がするわ!「冗談!寧ろそのおかげで
君達の絆や愛とか・・・クス。距離も深まって居るんじゃ?」
「なっ!何を!」
「何をって、昨日の「はぁ。なぁにを言って居るんだか。
貴方の想像する事なんて、何もなかったわ。」
「え。」
ギルラスは、目が点になりながら、じっとミルディアを見つめるが、
ミルディアは、ギルラスから目をそらしながら、更に言う。
「貴方の言う通り、あの人は、本当に天然物だと思うわ。
安全な人だけど、ある意味で安全ではない人。」
「もっ、もしかして・・・。あれだけの展開になっておきながら・・・?」
ギルラスは、その鋭い爪をミルディアに向けながら更に続ける。
「じゃその首の赤い印は⁉」
「一つは確かに想像通りの物だけど、一つは針。」
「はっ針?なっ、まさか、あいつ君を気絶させて?」
「貴方じゃあるまいし。ギルラスよぉぉぉく解って居るでしょう?
静咲がそんな知識あると思う?」
「あぁぁぁぁぁ・・・ない。」
「何かされたと言えば、されたけど、何もされてないと言えばされてない。」
「って言うと?」
ミルディアは、昨日の鳥籠の中の事を思い出す。
[いた‼・・・そこ・・・いや・・・・。]
[いや?じゃぁ・・・ここは?]
[っう、静咲・・・・。]
[なんだ?]
[マッサージなんて受けた事ないもん‼どこも凝ってないし!痛いだけ‼もう良いから!
放して‼やめて‼開放して‼背中と首の針も抜いて‼]
[断る。施術が終わるまで寝かせないから。
首から足の先まできっちりと愛してやるから。
書物に書いてあった。
人に近い者は自分の物だと首に印をつけたり、
いたわったり慈しんだり愛したりすると。]
あぁっはい。確かに、でも、なんだかそれ、違う気がします。
「っく、あははははははは。」
ギルラスは、おなかを抱えて大笑いする。
「いやぁ。確かに俺、静咲に女性を愛したなら、
気持ちよくさせてやると良いと言った事はあるが。」
「やっぱり犯人は貴方じゃない‼」
「ちょっ、痛い‼叩かないでくれ!ミルディア。」
「嘘つき、痛くも痒くもないでしょ!
殴らせなさい!静咲はそのまま実直に受け止める樹天仙なんだから‼
貴方が一番よく知って居るでしょう!」
「じゃぁ。如何すりゃいいのさ。あいつに色事の全てを伝授しろって?嫌なこった。」
「そうは言ってない。だけど、あんな愛の解釈で、私達本当に大丈夫なのかと・・・。」
「さぁね。でも、少なくとも、君に夢中だと言う事はよぉぉく解った訳だし、
鳥籠が作れるって事の時点で愛されていると言う事は十分解った訳だろう?
で・・・また何で静咲から離れて、俺の所に居るのさ。」
「ギルラスの所に居たいから居るんじゃなくて。
また道に迷って座り込んで居たら、ギルラスが声をかけて来たんじゃない!」
それに対し、少し、驚くと、ギルラスは、こちらを見る。
『私が、ミルディアを・・・探していたのかもしれない。』
ふとギルラスは、そんなことを思いながらも、
何時ものあの、口が裂ける程の笑顔をミルディアに向ける。
「にしても、葉っぱかけて正解だったって訳だ。」
「別にせかしてほしかったわけじゃない!」
頬を膨らませながら、ギルラスに答えるミルディア。
「それより、私が上げた石はどうしたの?」
「あっそう言えば、あれから何処へ行ったんだろう。」
「ククククク。静咲にしてやられたな。
欲しいって言ったばかりに、今回は失敗しちゃった。
でぇも、諦めないから。忘れないで。」
「ほっ本気でもないくせに、からかうだけで私にちょっかい出してたら、
命がいくつあったって足りないんですから‼」
「ミルディア。やっぱり君は。可愛いな。」
そう言いながら、ギルラスは、ミルディアに触れようとするが、その手は空を切る。
「可愛いのは、解ったから、でも、愛して居ると言って良いのは私だけだ。」
急に浮遊感があったかと思うと、いつの間にか、
ギルラスから遠く離れて居て、静咲に抱きしめられていた。
「今後は前以上に警戒するから。覚悟しろ‼腐天仙。」
「ふふふ。期待しているよ。我が不詳の弟よ。」




