episode14-4.樹ノ国の墓と静咲の過去4
再び優しい風がギルラスとミルディアを包み込むけれど、それは何処か冷たく悲しく、思えたミルディアは、ギルラスが見つめて居る小川を一緒に見つめながらギルラスの話に耳を傾ける。
「けれど、静咲は、両親どちらとも、その一切の愛情を受けずに育った。いわば、この国の自然が静咲の父であり母と言っても可笑しくない。だから、神サンザーラは、静咲を菩提樹ノ君つまり、自分に似せて成長させたのかもしれないね。
静咲を、不憫だとは思った事は無い。
ただ、時々、申し訳なさを感じる事はあるよ。菩提樹ノ君と言う孤独な責を負わせる事になった事も、いざ本当に情を抱く女性に出会っても、こうして、表現に困ってしまう程に、静咲は情を知らない。」
小川を見つめて居たギルラスの瞳が再び、ミルディアに向けられる。
「ねぇミルディア。でもね、静咲は、君に全てを教えない事で君を守って居る。私はそう思って居るんだ。君は知る事で心を痛めてしまう。静咲は、そう思って居るだろうから、慎重になって話さない事もあると思ってる。でも、君は知るべきなんだ。」
「何の事?」
ミルディアは、真剣な眼差しで、ギルラスを見つめて居ると、ギルラスはミルディア以上に真剣な表情でミルディアを見て居た。
「人間の求愛と樹天仙の求愛の意味をもっと深く、どれ程違うか、君は知る必要があると言って居るんだ。」
ギルラスは、そう言いながら、立ち上がり、再びゆっくりと、ミルディアに手を差し伸べる動作をする。
それに、対しミルディアは、その手に自らの手を重ね、ギルラスが導くままに、歩いて行くのだった。
一方その頃、静咲は、別の湖の畔で、うつ伏せになり、地面の緑と一体になりながら、考え事をして居た。
一生誰も愛さず、民や、樹天仙を平等に見る。誰かに特別情を抱かない。
抱いてしまえばいずれか欲が生まれるから、欲が生まれればきっと、母の様に一人だけと決めたのに、決めた相手を傷つけるのでは?けれど・・・愛して欲しい。
もう既に愛を欲して居る。
これもまた欲だ。
一つ欲すればすべて欲しくなる。
王の様に醜い事を私は彼女にしてしまうのかもしれない・・・。
「なんだ。この・・・苦しい感覚は。」
「お義兄様みぃつけた!」
軽やかなまるで一滴の水が落ちる様なそんな可愛い声でそう言うと、声の主は、紅いフリルのスカートを翻し、ふわりと、静咲の隣に座り持って居た木の枝と紅色の花弁で作った日除けを、静咲に向ける。
けれど、静咲は、何も反応せず、目を閉じたまま、言葉も交わそうとしない。




