episode14-3.樹ノ国の墓と静咲の過去3
「静咲は、自分のせいで咲は錯乱し、一族に呪いをかけたと思って居るけれど、本当は違う。咲が変わってしまったのは、俺の両親のせいだ。」
小川の水をパシャンと、握ると、悔しげな表情を浮かべるギルラス。
「先の王と、咲は結ばれる筈だった。けれど、我が父にその美しさを見初められた為に、咲は先の王との絆を引き裂かれる羽目になったばかりか、母の妬みを買ったんだ。」
ミルディアは、静咲の母である咲さんにそんな過去があるなんて、心底心が痛んだ。
けれど、それと同時に疑問も抱いて居た。
「ギルラスさん。でも、不思議に思うのですが。樹天仙は、本来情を与えられるのは、前世から来世に至るまで一人だけって・・・。」
その言葉に、ギルラスの瞳は揺らいだ。
「我が父上は、咲に情なんて抱いていなかったんだ。人間でいうならば、装飾品の様な物だよ。美しいと思ったら、人間はそれをずっと身に着けたいと思うだろう?我が父は、咲に対して、情ではなく、唯々、その美しさを欲したんだ。咲が、それを知った頃には、最早、咲は、静咲を身籠って居た。」
「そんな。それじゃぁ。それじゃぁ。咲さんは。」
「そう、本当に愛してくれる者を、勘違いし、自分の手で殺しただけでなく、永遠に輪廻も望めない身にしてしまった。それからの、咲は、荒れてね。俺の知って居る、咲じゃなくなったよ。心だけじゃなく、見た目も・・・。」
ミルディアは、ふと静咲が見せてくれた、あの咲の姿を思い出す。最初は本当に自分ですらも、口を開けてしまうほど麗しいその姿は、だんだんと酷く、痛々しくなって居た。顔は罅割れて行き、その瞳からは、まるで血の様な涙が次から次へと流されて居た。それを、思い出すだけで、どんどん心が痛くなっていく。
「それでも咲は、静咲が生まれた時には、最初は、子は分身も同然だから愛そうと、努力して居たみたいだけれど、もう、正気を失いかけて居た頃には、静咲を、それや、化け物と呼んで、遠ざけて居た。」
ギルラスは目を瞑り、まるでその時を思い出しているかのように、眉間に皺をよせ辛そうに話を続ける。
「樹天仙は、一人しか情を注げないけど、子は別なんだ。子はね、樹天仙にとって分身であり、一部も同然だから、本来ならば情を注げる筈なんだ。
けれど、樹天仙の王族のその殆どは、何故だろうね、捻くれて育って居るよ。俺もその一人かな。そう言う意味では、俺も、静咲も、とてもよく似て居る。
けれど、俺は、少なくとも、実母の愛情は妹と共に余すことなく受けたと思ってる。」




