episode14-2.樹ノ国の墓と静咲の過去2
「君は、静咲に静咲自身の記憶を追体験させてもらったんだろう?」
ギルラスのその問いに対し、ミルディアは、ゆっくりと頷く。
「ならば、君は見て居る筈だよ。この漆黒樹血の主を。」
ミルディアは、なんとなくそれが誰かは解って居たけれど、あえて口には出来ずにいた。
「この漆黒血樹の主は、一つは、先の王静朔慈。もう一つの漆黒血樹の主は・・・。」
ギルラスは、少し言いづらそうに言葉を詰まらせ、やがてそれを口にする。
『白純桜。咲=静(さく=しずか)静咲の実母だ。』
その言葉を聞き、胸が苦しくなる、ミルディア。
「静咲さんのお母さんって、本当にあんなに恐ろしい事をしたんですか?」
どうしても、信じられないミルディアは、ギルラスに思わず問う。
「我々樹天仙に呪いをかけたと?残念ながら事実だ。けれど、静咲は、全て我が父と実母である咲が悪いと思って居る。でも、咲は、もともと、そんな樹天仙じゃなかったんだ。ただ、生まれが特殊でね、第5代目の王の娘だったんだけれど、その時代の金ノ国との戦で一度戦死して居てね。燈火となって、先ノ王が幼い時にその輪廻転生を果たしたんだ。本来ならば、高貴な生まれの位の持ち主なのだけれど、本人経っての願いで、王位に就く事は無くて、代わりに、咲の為の爵位、白純桜と言う爵位を作った位だ。
けれど、咲は、それに、相応しい気品のある愛らしい女性だったよ。彼女が通る度に、一人しか情を注げない筈の樹天仙の誰もが彼女に目を奪われる程の美貌だった。でも、そのせいで、それこそ、求愛の儀式を求めて来る樹天仙が、引く手数多で、断るのに苦労して居たのをよく見かけて居たよ。」
ギルラスは、そう話しながら、その足を更に奥へと向け、ミルディアもそれに付いていく。
洞窟を抜けると、そこは吹き抜けになっており、群青色の空が見え、そこは緑豊かに、草花が生い茂って居て、時折吹く風がそれを擽って、音を奏でて居た。
近くに小さな小川があり、ギルラスは、そこにゆっくりと、座り、自らの手で小川の水を弄んでいた。
ミルディアは、そんなギルラスの横に、しゃがみこむ様に、ゆっくりと、座ると、ギルラスの話に耳を傾けた。
「静咲が生まれる前は、この国はそれこそ、樹天仙で溢れかえって居て、今よりも寧ろ騒がしい程だったんだ。
その頃の俺は、今の静咲によく似て居たから、正直、その騒がしさが苦手でね、よく、咲の元へと逃げ込んでいた。咲と居ると心穏やかになったよ。
俺は、心から愛する者が居たから、咲が彼女によく似て居たからなのかもしれない。色々彼女の事を聞いて貰って居た。咲が居る所には、華があって、温かさがあって、穏やかさがあった。」
ギルラスが話す、咲さんの話は、息があった。まるで、沢山咲き誇る花々の間から微笑みかける木漏れ日の様に、それは生きて居た。




