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THEOS KLEIS ‐テオス・クレイス‐  作者: 高砂イサミ
第5ステージ:荒野
68/200

ディスコード -3-


 ジャッカルの首に鋭い牙が食らいつく。そのまま鎌首をもたげて左右に振り回し、最後に地面へとたたきつけた。

 迫力――というか、なかなかにえぐい攻撃だった。


照準ロック!』


 ユーリがもう一方のジャッカルを指さす。半自律で動く召喚獣は、使役する術士のいくつかの指示にのみ反応する。大蛇は命じられた通りにもう一体へ狙いを定めた。

 その時だった。最初に攻撃を受けたジャッカルがむくりと体を起こし、大蛇の背に飛びかかった。

「ユーリ!」


使役獣送還エパネルケスタ!!』


 大蛇はふっと姿を消した。ユーリが自分で消したのだ。召喚獣の負ったダメージはそのまま術士に跳ね返る。敵モンスターがまっ先に攻撃対象とするのはプレイヤーだが、召喚獣に対してもまったく反応しないわけではない。

 などというあれこれをアヤノが知ったのは、ユーリが仲間になってしばらく経ってからだった。

 自分が“戦士”なので“術士”について気にしたことはなかった。しかしパーティを組む以上は知っておくべきだと、基本情報を教えてくれたのは、本人ではなくショウだった。なるほどああいう風にフォローするためには必要な知識なのか。


魔法マギア:プリミラ』


 ダンテの水系広域攻撃。ちょうど至近にいた2体を同時に捉え、一瞬、その動きを止めさせた。

 アヤノは地面を蹴った。まだダメージが少ない方に斬りつける。同じ敵をアルが撃ち、もう一体にはダンテが宝剣でとどめをさした。

「うん、いけそうだね?」

「……手間をかけさせて済まない」

 ダンテがショウをふり返った。ショウは、牽制するように視線だけユーリに向けながら首を振った。

「こっちの都合だよ。謝るのは僕の方」

 ダンテにはショウから説明してある。アヤノの戦闘経験を最優先にするという方針から、ダンテの経験値獲得を優先するよう切り替えると聞いて、ダンテは少し黙った後に静かにうなずいた。そうして一言、『妥当な判断だろう』とだけ答えた。

 どう感じたのかはわからない。もしかしたらいい気分ではなかったかもしれない。

 けれど、少なくとも今のところ、文句のひとつもなく動いてくれている。

「お前がそう言うのなら、もう何も言うまい。ところで“紋章クレスト”だが、有効時間と効率を考えれば、オラクルエリアのみで使用するべきではないだろうか」

「そんなことはないよ。特に“エーリヤ”は、使えるときに使っていいと思う。“ダフニ”はオラクルまで温存した方がいいかもだけど」

「? エーリヤ……ダフニ?」

 どこかで聞いたような、しかし耳慣れない単語にアヤノが首をかしげると、ユーリがこれ見よがしに長いため息をついた。

「相っかわらず、なんにも説明読んでないのねぇ」

「……う」

「“紋章クレスト”の個別名称。前に防御で“クリノスの紋章クレスト”を使ったのは覚えてる? あんな感じで12個全部に名前がついてるんだ。画面からも確認できるから、見ておくといいよ」

 ショウが説明を入れてくれた。そういえばとアヤノも思い出し、画面を開いてみる。“紋章クレスト”の欄には確かに、4種の説明書きが並んでいた。



『 クリノス:防御力上昇:授与者・ヘラ


  エーリヤ:経験値獲得率上昇:授与者・アテナ


  キパリシー:索敵範囲拡大:授与者・アルテミス


  ダフニ:魔法使用効率上昇:授与者・アポロン 』



「ちなみにそれぞれ、百合、オリーブ、糸杉、月桂樹って意味だけど、それは覚えなくても平気。ただ、どんな効果のものを持ってるかくらいは把握しておくと、役に立つかもしれないね――」

 うなずきながら画面に見入っていたアヤノは、ふと空気が変わったことに気付き、目を上げた。

 目を細めたショウの視線の先には敵と戦っている4人組がいた。ジャッカル2体と巨大なサソリに囲まれて、どうやら苦戦しているようだ。

「なんだありゃ。へったくそな戦い方だな」

「ずいぶんと高価なアイテムを身に着けている。ここまでそれに頼ってステージを上がってきたグループか」

「助けるの?」

 ついさっき、できるだけ接触は避けるようにと言っていたはずだが。

 そう含ませて尋ねてみると、ショウは軽く苦笑する。

「ちょっと危なっかしいみたいだから……本当にまずくなったら、かな」

「……」

「大丈夫。この前みたく先方を怒らせるようなことはしないよ」

 そんなやりとりの間にも、彼らはみるみる生命力ライフを削られていた。

 1人などはもうあと一撃でゲームオーバーではないか――というところで、肩をすくめるなり、ショウが飛び出した。長剣は抜かず、投げナイフを構えて。




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