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#16 日和の僕らとカプセルの中の気持ち

 昨日に和解?をして、やっとちゃんと姫路……真恋と真に友達になれたのは素直に喜ばしいのだけれど、

「だからといって、昨日の今日で即一緒に遊ぶのはなんというかまあ、話の早いことで」

「むう…私も我慢していたんです。出会ってからは、気づいたら会っている、くらいの勢いで遊んでましたから」

 

 たしかにそうだけれど、それが普通に多いんじゃないのか、と思わなくもないが。

「そう言われたらそうか、そんな頻度で会ってたのか、俺ら…」

「はい。もう朝のルーティーンに入れてしまおうか、と悩むくらいには会ってますし、会えない日は、割とまめにメッセくれますよね」

「なんのどういうルーティーンなんだ…」

「夏ですからね、そういうこともあります」

「謎を増やしてくれるな……」

 

 そんな風に、意味すら曖昧な全く取り留めのない会話をしつつバスに揺られ、今日の目的地に着いた。

「もう真恋とここに来るのも、何回目だろうな」

「数えても意味ないんじゃないですかね。田舎なのである程度何かしようとすると、ここになりますし」

 

 それもそうか、と納得しつつもはや慣れた感じでショッピングモールに入り、フードコートへと向かう……のだが。

「で、これはいつ離してくれるんですかね」

 真恋の左手が、俺の腕(シャツ)を遠慮がちに、しかし離すつもりは一切無いという力で、握りしめている。

 

「んー、帰ってから聞いた話なんですけど、私たちが会ってたこと、亜季ちゃんにはバレてるんですよね」

「ん、ああ…そんな風に言ってたっけな」

 昨日常田さんが、俺に真恋の様子を聞きに来た時に、アーケード街で歩く俺達を見たという風に言ってたような。

 正直、そんなことを気にしている暇はなかったので、全く考えていなかったのだが、よく考えたら真恋と俺が、デ…逢い引きしてるように取られていたのかもしれないのか。

 

 実際は、そんな色気のある物というよりは、ゲームだけしている時間のほうがよほど長いのだけど。

「なので、もう良いかなと」

「何が!?」

 この流れから一体何の覚悟を固めたんだ、このお嬢様は。絶対にろくでもない感じがするぞ。

 

「私は、友達多いですけれど、真に仲の良い人となるとかなり絞られます」

「それはまあ、俺もだな」

 真に仲の良い友人となるとあの二人と、真恋くらいか。

「才人くんは、そもそも友達少ないじゃないですか」

「なにおう」

「なので、亜季ちゃんに才人くんと会ってるのが既に知られているのならば、ほかの人に知られようと、もう良いかなと。」

「……信頼しているんだな」

「過保護なのが玉に瑕ですけどね。しかしもう、才人くんを隠しておく理由もないというものです」

「俺、隠されてたんだな」

 

 しかしまあ、こうも何回もモールに来て、人だらけのフードコートで食事を共にしているのだから、そりゃあ知り合いにも見られるか。俺はともかく、真恋は知り合い多いからなあ。

 ……なんとか席につきぼんやりと考えていたら、真恋が頼んだうどんのベルが鳴る。

 

「お待ちどうさま、汁物はちょっと気を使うな」

「すいません、食べたくなったので頼んじゃいました。運ぶこと考えてなかったですね」

「この程度なら問題ないよ。でも、俺のはすぐ受け取れるやつでよかった」

 自分用には、地元のちょっと有名な店の、卵焼きとおにぎりのセットを買ってきている。

 

「図らずしも、今日は二人とも和ですね」

 クスッと目元を綻ばせ笑い、こちらのセットを見てくる。

「卵焼き、お好きなんですか?」

「あー、うん。かなり好きかな?ここのは甘くないからいいよな、米に合う」

「あ、甘いの苦手なんですね、私もです」

 人により好みはあるだろうが、自分は甘い卵焼きは苦手な食べ物に入る。

 

「苦手というか、甘いと食べられないかも」

「ご飯のおかず感は薄くなりますものね」

 真恋はそう言いながら、何かメモを走らせる。

「何か勉強か?」

「そのようなものですね」

「ふうん、マメだなあ」

「まあ、好きでやってることですので。」

 俺もたまに思いつきをメモすることはあるが、大概ろくでもないことが多いので、ここに来てメモまで取ってるのには感心してしまう。

 

「そういや、真恋は好きな食べ物ってあるのか?」

「そうですね、特にこれが好きというと、パッとは思いつきませんけど、チーズとかヨーグルトとか……?」

「乳製品だな、俺も牛乳毎日飲むぞ」

「牛乳そのままだとお腹壊しちゃうんですけど、加工品は好きですね。無糖ヨーグルトにジャムを入れたものを朝食にすることが多いです」

「ほーん」

 一応覚えとくか…チラリとスマホでメッセするフリをして、メモに残しておく。

 

「どなたかへ返信ですか?」

「まあそんなとこ。食い終わって落ち着いたら、今日の目的地へ行くかあ」

 そう、完全に落ち着いて駄弁っているが、一応今回も目的があって来ている。

 

「はい!大きなガチャガチャコーナー、楽しみですね」

「種類だけなら、ここと変わらないくらい多いとこもあるんだけども」

「私の欲しいものが、ここにしかないっぽかったんですよねえ」

 こういうのもネットで検索したら出てくる辺り、便利な世の中になったものだ。

 

「この、お茶くみシバイヌシリーズは、第3弾らしいんですよ。こんな可愛いのに今まで知らなかったなんて…」

 それを聞いて一応スマホで調べてみると、少し見覚えのあるガチャガチャが出てきた

「あー…これの前のシリーズのやつ、見かけたことあるな。確かアーケード街の方のガチャガチャにあった気がする」

 

 普段使いしてるゲーセンではない、明るくてプリクラとプライズばかりの方のゲーセンのガチャガチャコーナーにあったような…なら真恋も見かけたことあるんじゃあないのか?

「えー…あそこにあったんですね。いかんせん、こういう物に興味を持ったのが最近でして」

「そうなのか。あ、これだ。草刈りポメラニアンシリーズ」

 

 見つけたネット記事を真恋に見せると、スイと身体をこちらに預けるように覗き込んでくる。

「やっぱりすごく可愛い…!もう手に入らないんですかね」

「少し邪道だけど、ネット通販とかオークションになっちまうよなぁ」

「うむむ、ガチャガチャはやっぱり自分で引いてこそ、ですよねえ」

「モノが欲しいだけなら、全然ありだと思うけどな」

 体験も欲しいとなると、やはりガチャガチャしないといけなくなる。

 

「仕方がないですね、今回はシバイヌを手に入れて、ポメはネットで探します」

「それが良いな」

 そうこう言ってるうちに二人とも食べ終わり、席を後にする。

 フードコートからガチャガチャがある書店へは、割と近い。

 かなり歩かされるゲームコーナーとは大違いだ。

 

「おおー、何度か見かけたことはありましたけど、実際来ると迫力ありますね」

 書店の真ん中らへんに、急に現れるガチャガチャの群れ、縦に3つ重なったもの2セットが横に5列、奥行きは10台くらいか?

 一つの筐体の大きさはそこまででもないから、数字だけ見るよりはコンパクトな空間だけど、迫力はたしかにある。

 

「都会とかだとほぼ1フロアガチャガチャとかあるらしいけど、そこまで行くともう怖くなりそうだよな」

「そうですね……というか狭いですね」

 そう、その数の筐体をモール内の書店に収めているため、筐体と筐体の合間は人1人分ちょっとしかなく、普通に通るのも一苦労だ。

 

「私、もう横歩きで入ったほうがいいでしょうか」

 真剣な顔でカニ歩きのポーズを取る真恋に吹き出しそうになりつつ、目当てのガチャガチャが無いかを、列の中に入る前に確認する。

「んー、ちらっと見ただけだと見えんから、向こう側かな」

「本当ですか!じゃあ向こう回りましょう向こう」

「はいよ。ちょっとすいません、通りますよ〜っと」

 人がそこまでいるわけではないけれど、この狭い中でみんな思い思いのガチャガチャをしているので、結構な密を形成している。

 俺が声をかけることで多少人が避けてくれたけど、それでも通りにくいことに変わりはない。

「わっと、すいません…通ります…」

 

「……仕方ないか」

「あっ、うぇっ!?」

 

 真恋は杖を前に出すこともままならず、動かない左足を庇うように動くからほとんど歩けない状態になっている。

 そんな真恋を見かねて、その手を握る。

 

 (手ぇちっちぇー…ほっそいなマジで)

 この前の二人羽織格ゲーのときにも思ったんだけども、見た目よりも手が小さすぎる。男と女で骨格が違うのは理解しているんだけど、それでも小さく感じる。

 

「あの、向こう側着いてます…」

「えっ、あっすまん!」

 考えことをしながら真恋を支えて歩くことに必死になっていたら、いつの間にか向こう側にいた。

 

 いやまあ、距離に直したら数メートルだしな……

「じゃあ、今度こそシバイヌ探し出して回すか」

 手を離してガチャガチャの種類を確認しようとすると、

「……あの?真恋さん?」

「まだ人多いので、仕方ないんです。あなたは私の杖ですし」

 真恋の手が俺の手をしっかりと握りしめ、重心までこちらに任せるとまで言うようなカタチになっている。

 

 この状態であの狭い中にある、お茶くみシバイヌを目指すのか……?

 そんな俺の逡巡を尻目に、真恋はついに見つけたお目当てのガチャを目指して、ずんずんと俺を押してくる。

 耳まで真っ赤なくせに。

 

「へへへ……やっと見つけましたよ、シバイヌ……」

「ちょっと怖いぞ…しゃがめるか?」

 シバイヌの筐体は3段の一番下にあって、しゃがまないとコインを入れることすらままならない。

「舐めないでくださいよ。でも、杖は持っておいてください」

「はいよ」

 俺の腕を好きに掴んで杖代わりにしつつしゃがみ、先に両替してポケットに入れておいたコインを投入する。

 

「このガチャガチャという音がいいんですよ、ね!」

 固かったのかガチャガチャというよりは、ゴリゴリという音を立ててレバーを回しきり、1つ目のカプセルが落ちてくる。

「今開けるか?それともある程度回すか?」

「とりあえず5回分回して、中身を確認します。袋も用意してあるので、すみませんが持ってもらえますか?」

「準備いいな、お安い御用で」

 慣れてきたのか、ガチャガチャと手早く回して回して、カプセルが袋に投入されていく。

 

 茶色のカプセルには肉球型の装飾まで付いていて、人気シリーズなのも納得だった。

「カプセルも可愛いんだな、これ」

 5つ目を回し終えた真恋が、人の腕を杖代わりに立ち上がったので、本当の杖を返しながら一度ガチャの森から脱出すべく動き出す。

 

「カプセルが凝っているのも良いですよね、可愛いに満ちています」

 少し人のいない方向に歩き、他のお客さんの迷惑にならない位置で、ガチャガチャの開封式が始まる。

「欲しいやつとかあるのか?」

 お茶くみシバイヌはシークレット入れて全7種のラインナップだ。

 よくシバイヌとお茶くみだけで、7種も作れたよなぁこれ。

 

「とりあえず、普通の茶シバさんですかね。この子の緑のエプロン可愛すぎます」

「んじゃ開けていくか」

「はい!」

 内部開封防止のテープをきれいに剥がし、犬の鼻型の留め具をずらして開けていく。

 

「あ~可愛い〜」

「これは…紅茶汲みクロシバだな」

 黒いシバイヌが器用にティーカップに紅茶を注いでいるフィギュアを見て、真恋は完全に骨抜きになっている。

「これがあと4つ…恐ろしいですね」

「どんどん開けてけよ」

「余韻をくださいよ」

 そんなことを言いつつもすでに手際良く2個目の開封が行われており、真恋の要領の良さが発揮されているのが見える。

 

「ふんふ〜お茶くみワンちゃ〜ん。ふふふふ」

 いや、ガチャガチャがキマっているだけか。

「これは大福マメシバだな」

「可愛すぎる…」

 その後もテンポ良く確認して、ついに5個目のカプセルに取り掛かる。

 

「茶シバさん来てないですよ…?お願いしますよ…?」

 茶シバ狙いの真恋が祈るように、カプセルを開けると、そこには確かに茶シバがいたのだが、

「これって、違うよな?」

「え、ええ。でもこれもしかして…」

 ちゃちゃっと公式リリース記事を確認すると、微妙に隠されてはいたがその存在を見つけることが出来た。

 

「ラーメン屋シバイヌ…シークレットだなこれ」

「う、嬉しいですけど〜!ちょい違うんです!こうなったら当たるまでやってやりますからね!」

「おいそっちは地獄だぞ…」

 

 ヤケになった真恋が、ついに茶シバを引き当てたのは、それから10回ほど追加した後のことだった。

モール高知に実際書店の中のガチャガチャあるんですけど、もっと置いてあるガチャコーナーもあります。

でも絵的に強いんですよね、書店内。

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