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- Mixed blood -  作者: Dave-show
第一章 旅立ち
8/25

見張り

 トーマスの元に帰ると、テントの設営、かまどと鍋料理の準備、食器の配膳まで全て終わっていた。何かの肉まで準備してある。

 

「さっき野生のスレイプニルが近くを通ったから、狩ってある程度処理しといたよ。イノシシは早く血抜きしないと臭みが出るから処理してくるね。火を起こして鍋を煮ておいてくれるかい?」


 トーマスは優しく微笑んで、手を休めることなくイノシシを担いだ。

 オレは言われた通り、河原の石で作ったかまどにトレントの薪をやぐら状に組み、指先から火魔法で着火する。パチパチと薪が燃える音を聞きながら、鍋を煮た。

 

 鍋が煮えた頃、トーマスが戻ってきた。

 

「鍋の中は馬肉のポトフだよ。馬系の魔物は体温が高くて雑菌が繁殖しにくいから、新鮮な肉なら生でも食べられるんだ。お皿の生肉は塩で食べてみてよ。生レバーも美味しいよ」

 

 ポトフは馬肉と野菜の旨味がスープに溶け込んで、すごく美味しい。

 生の馬肉は初めて食べる味だった。さっぱりとした良質な脂がほんのり甘い。生のレバーもクセがなく食べやすい。これ程の料理が野営で食べられるのは、間違いなくトーマスのお陰だ。

 オレは、ただ食べているだけの自分を客観視し、情けなくなってきた。思わず箸を置く。

 

「おいしー! 野営のご飯じゃないね! スレイプニルってお金賭けるだけじゃなかったんだ!」

「エミリーのお陰で、野菜も調味料も大量に持ち運べるからね。栄養が偏らずにありがたいよ」

 

 トーマスはエミリーに感謝を伝えた。その会話の中で、エミリーはオレの様子に気づいたらしい。

 

「てか、なんでユーゴは落ち込んでんの?」

 

 エミリーのその言葉でハッと我に返った。露骨に落ち込みすぎたらしい。

 

「いや……トーマスは盾役をこなしながら一人でも魔物を倒せるし、野営の知識や料理の腕もある。エミリーの魔法も強力だし、回復、補助は完璧だ。空間魔法もすごいよ。オレは今日何もしてないし役に立ってない。二人より優れてることが見当たらなくてさ……」

 

 オレは俯き、自分の無力さを口にした。

 トーマスとエミリーは、首を傾げて目を見合わせた後、オレに向き直った。

 

「何言ってんの? ユーゴがいなかったら、誰がAランクの魔物なんて斬り倒せるのさ。Bランクでも私達だけじゃきついよ」

「そうだよ。ユーゴほどの剣士、探したってそう見つかるもんじゃないんだから。僕達二人はラッキーなんだよ」

 

 トーマスは優しくオレの肩に手を置いた。二人はオレが思うよりもずっと信頼してくれていた。

 それを聞いて安心したオレの目から、ツーっと涙がこぼれ落ちた。

 

「あー! ユーゴが泣いてるぅー!!」

 

 エミリーが腹を抱えて笑っている。しかし、悔しいことに涙は止まらない。

 

「トーマス……野営の方法や料理を教えてくれよ……」

 

 オレは震える声で頼み込んだ。

 

「そんな事気にすることないのに……。分かったよ、明日から一緒に準備しよう。食材は十分にあるからね」

 

 美味しい料理を腹いっぱい楽しんだ後、お姫様を一人テントに寝かせて、トーマスと交代で見張りをした。どんな魔物に襲われるか分からない。街道沿いとはいえ見張りは必須だ。

 

 特に何事もなく朝を迎え、旅を再開する。次の日も順調に旅を進めた。

 

 三日目の夜だった。

 オレが見張りの番の時に、周りに多数の気配を感じた。

 

「おいトーマス、お客さんだ。エミリーは起こさなくてもいい」

 

 眠っていたトーマスを静かに起こした。

 

「魔物かい?」

 

 トーマスはすぐに身を起こし、手に持った片手剣の柄を握り締める。

 

「いや、盗賊か何かだろう。弓兵が伏せてる。エミリーのテントごと盾を張れるか?」

 

 オレの問いに、トーマスは即座に頷いた。

 

「分かった」

 

『守護術 シールドシェルター』

 

 トーマスが気力のバリアを張り巡らせる。ドーム状の淡い光が、オレ達とテントを包み込んだ。

 思ったより大人数だ。刀を抜かずに、懐に仕込んだ魔石を握り締め、魔法で応戦する。

 

『火魔法 火炎殺(ブレイズキル)

 

 先制攻撃だ。ゆっくり近づいてきていた剣士達を、炎の奔流が炙った。

 

「「「ギャァァァ!」」」

 

 その声で、バラバラに四方から気力を帯びた矢が飛んできた。キン、キンと音を立てて、トーマスの守護術が全てを防ぐ。

 

『風魔法 魔の暴風(エビルストーム)

 

 中距離魔法で、弓の出処に攻撃した。魔力の嵐が弓兵達を巻き上げる。

 炎で炙られた者、嵐で地面に叩きつけられた者、盗賊全員がうめき声を上げてのたうち回っている。

 オレはゆっくりと歩いて近づき、静かに声を掛けた。

 

「まだやるか?」

 

 盗賊達は、オレの姿を見て震え上がった。

 

「「「ひぃー!」」」

 

 盗賊達は、這うようにバラバラに逃げて行った。瀕死の者はいるだろうが、恐らく殺してはいないだろう。

 

「オレ、人族の相手なんて初めてしたよ」

 

 オレはトーマスの方を振り向いた。トーマスは剣を鞘に収めながら、信じられないものを見るようにオレを見ていた。

 

「この暗い中でよく全滅させたね……」

 

 エミリーは朝までぐっすり寝ていた。お金は銀行に預けているとはいえ、割と持っている。気を引き締めなければならない。

 

 その後は実に平和な旅路だった。

 そして、ゴルドホークを出て一週間。オレたちは予定通りに次の町に到着した。

 

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