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- Mixed blood -  作者: Dave-show
第一章 旅立ち
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鍛冶屋街


 ゴルドホークは、鉱山で発達した町だけあって鍛冶屋が多い。鍛冶屋だけじゃなく、武器屋と防具屋も揃っている。オレたちはその中で、父さんがよく通っていた鍛冶屋に入った。

 

「お邪魔します。ダンさん、お久しぶりです。ユーゴです」

 

 店に入ると、奥から逞しい体躯の中年男性が顔を出した。

 

「おぉ、ユーゴ君か。久しぶりだね。シュエンは元気かい?」

「父さんは旅に出ました。ここには寄ってないんですね」

 

 ダンさんは少し目を見開いて、持っていた金槌を静かに置いた。

 隣に立っていたトーマスとエミリーが、驚いた表情でオレを見る。

 

「えっ、シュエンさん旅に出たんだ」

 

 トーマスが小さく声を上げる。

 

「あぁ、ご丁寧に置き手紙を添えてね」

 

 オレは肩を竦めてみせた。

 

「そうか、ユーゴ君も独り立ちか」

 

 ダンさんは少しだけ寂しそうな表情を見せた後、すぐにいつもの笑顔に戻った。

 

「で、挨拶しに来た訳じゃないだろう?」

「はい、武具の整備をお願いしに来ました」

 

 オレはそう言って、着けている革製の鎧、篭手(こて)脛当(すねあ)て。トーマスの片手剣と盾、エミリーの杖などをカウンターに並べた。

 ダンさんは武具を一つ一つ確認していく。そして、オレの刀に手を伸ばした。

 

「ほぉ、これは見事な刀だね。二級品でも上位ってとこか」

「二級品!?」

 

 ダンさんの言葉に、エミリーが目にも止まらぬ速さで振り向き、ヨダレを垂らさんばかりの顔で刀に食らいつく。

 

「おい、売らねーぞ! 父さんから譲ってもらったもんだからな!」

「チッ、分かってるよ……」

 

 エミリーは不満そうに口を尖らせたが、すぐに視線を逸らした。金が絡んだエミリーは油断ならない。今後気をつけようとオレは心に誓った。

 

「そうそう、気になってたんだよ。シュエンさんの刀だったのか。二級品とはすごいな」

 

 トーマスが感心したように、オレの刀を眺める。

 

「あぁ、若い頃に使っていた刀らしい。ダンさん、一級品ってやっぱり高いんですか」

 

 オレが尋ねると、ダンさんは武具の手入れをしながら答えた。

 

「あぁ、こんな田舎では扱えないよ。王都ですら滅多にお目にかかれない。それを超える『特級品』なんてのもあるよ。見た事もないけどね」

「僕の剣と盾は三級品の下位だもんな……憧れるね」

 

 トーマスは自分の武具を見下ろし、ため息を漏らした。

 

 ダンさんの店には修理を頼みに来たけど、武具も扱っている。

 片手剣、双剣、両手剣、両手大剣などが所狭しと並んでいる。

 

 片手剣は盾を装備し仲間を守る盾役(タンク)に。双剣は速さを活かしたスピードタイプ。両手剣は攻守のバランスに優れたバランスタイプ。両手大剣は一撃の破壊力に全てを懸けるパワータイプだ。

 そして、父さんやオレが持つ刀もまた特殊な武器の一つ。バランスタイプに分類される。

 

「刀は『斬る』事に特化した武器だね。大陸の東にあるリーベン島の特産品だ。シュエンはそこの出身だと聞いたことがあるよ」

「……そうなんですね」

 

 リーベン島。

 父さんの置き手紙に書いてあった島。父さんの故郷。そして、オレの血の秘密が眠る場所。

 

 オレは髪が黒い。

 父さん以外に黒髪の人族に出会ったことがない。それがどれだけ珍しいことなのか、子供の頃は気にもしなかった。そのリーベン島に行けば、オレのルーツを知ることができるかもしれない。父さんがなぜオレの前から姿を消したのか、その理由も……。

 

「トーマス、エミリー。オレ、リーベン島に行ってみたいんだ」

 

 唐突なオレの言葉に、二人は顔を見合わせた。

 

「僕もこのゴルドホークに骨を埋めるつもりはない。世界を見て回りたいんだ。ついて行くよ」

 

 トーマスは力強く頷いた。オレ達の目標はいつも同じだ。

 

「私も行くよ! 世界中のギャンブルが私を待ってるからね!」

 

 ……エミリーの動機は相変わらず不純だ。

 

「ありがとう。でも、まずはAランクにならないとな!」

「ほぉ、Aランクに挑戦するのかい? そりゃ気合い入れて整備しないとね。明日の朝にはピカピカに仕上げとくよ」

「はい、よろしくお願いします!」

 

 オレ達はダンさんに深く頭を下げ、店を後にした。


 

 カイトシールドの枠に、クロスした剣と牙を剥いた獅子のシンボルマーク。その下の両開きのドアを開けた。中からは熱気が溢れ、武具を身に纏った男女で賑わっている。

 ゴルドホークの狩猟者協同組合(ハンターギルド)にはSランク狩猟者(ハンター)はいない。Aランクもほぼいない。理由は、さらに大きな町へ流れていくからだ。

 ギルドの依頼は、人々の暮らしの範囲内でしかない。遠く北に広がる山のとんでもないランクの魔物達は、皆の生活に支障をきたさない限りは依頼には上がらない。依頼のランクや数の違いから、都会の方が報酬が良いのだろうと推測できる。

 

 ギルドは魔物討伐、薬草などの採取、護衛など、魔物にまつわるあらゆる依頼を仲介する。狩猟者(ハンター)の生活を保障する役割も担っていて、その業務は多岐にわたる。

 掲示板には、多種多様な依頼が隙間なく張り出されている。

 

 ギルドの受付カウンターには、厳つい男がいることが多い。顔に深い傷を負った者、指が無い者、片腕が無い者もいた。彼らも元狩猟者(ハンター)らしい。ここで依頼の受注と達成報告をする。

 

「おう、三人で来るたぁ久しぶりだな。何の用だ?」

 

 受付のおじさんは、腕を組んだままオレたちを見上げる。

 

「Aランクの試験を受けたくてね」

 

 オレが言うと、おじさんは目を丸くした。

 

「へぇ、もうAランクを受けるのか。お前らがCランクのガキの頃から見てるもんな」

 

 おじさんはそう言って、奥の棚からファイルを取り出し、カウンターの上に開いた。

 

「いいのある?」

 

 トーマスが興味深そうに身を乗り出す。

 

「Aランクは……この三枚だな」

 

 カウンターに並べられた依頼書は、三つとも強力な魔物の討伐依頼だ。護衛や採集依頼なんてものはない。まさに、Aランクへの挑戦に相応しい内容だ。

 

「依頼の選定が難しいね」

 

 トーマスは依頼書の内容を吟味し、少し困った顔をした。

 すると、エミリーがパン! と手を叩いた。

 

「混ぜてテーブルの上に伏せてよ。私が引くからさ」

「お前はこんな時まで博打かよ!」

 

 オレは声を荒らげた。

 でも、三枚とも危険な魔物の討伐だ。どれを選んでも命がけであることに変わりはない。

 

「いや……決められないんじゃそれもありかもな。よし、それで行こう」

 

 オレの言葉に、受付のおじさんが呆れたように三枚の依頼書を混ぜて、テーブルに並べた。

 裏返った依頼書を、エミリーは真剣な表情で吟味する。まるで、自分の全財産を賭けるかのように、瞳を細めて集中している。そして、ようやく一枚に手を伸ばした。

 

「これだー!」

 

 エミリーが勢いよく依頼書をひっくり返す。表を向いた依頼書を三人が覗き込んだ。

 

 ロックリザード。

 オレたちのランクアップ試験の相手は決まった。

 

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