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- Mixed blood -  作者: Dave-show
第一章 旅立ち
15/25


 レトルコメルスを出て、三日目の夕方。

 

「この河原、テント張るのに良くないか?」

 

 オレが問いかけると、トーマスが周囲を確認する。

 

「そうだね、ちょっと早いけどここにしようか」

 

 横には緩やかに川が流れている。

 

「水浴びでもまだそこまで寒くはないけど、やっぱりお湯が恋しいね」

 

 トーマスが嘆いている。

 

「ふふふ。エミリー君、では例のものを出してくれるかい?」

「むふふ。分かったよユーゴ君」

 

 エミリーの空間魔法から新品のテントを出してもらい、二人で組み立てる。四角いテントを川の側に張った。

 

「あれ、新しいテント買ったんだね。でもこれ、天井に穴空いてるけど……」

 

 トーマスは不思議そうにテントを見ている。オレはエミリーと顔を見合わせた。

 加工金属製のストーブを中に入れて、煙突をテントの穴から出し、ストーブの上には火成岩を並べる。中には木製のベンチを置いた。

 

「ユーゴ、これはまさか……」

 

 トーマスの目が大きく見開かれる。

 

「そう、テントサウナだ」

「休憩のリクライニングチェアもちゃんとあるよ!」

 

 珍しくトーマスが嬉しさを顔に出している。

 

「不銹鋼製のストーブだ。熱に強く錆びにくい。サウナだけじゃなく、鍋の加熱にも使えるし暖もとれる」

 

 オレがストーブを指差して説明すると、トーマスは感動したように頷いた。

 

「毎日サウナに入れるじゃないか! すばらしい!」

「ストーブに火入れするから、二人は寝るテントの用意とご飯の用意を頼めるか?」

 

「「了解!」」

 

 テント内の温度は最適。三人で水着に着替えて、いざサウナ。たっぷり汗をかいて川にダイブ! エミリーにいたっては泳いでいる。

 

 先にオレとトーマスが、リクライニングチェアで休憩する。

 

「やっぱり最高だ……」

 

 トーマスは天を仰いだ。

 

「オレらバカンスに来てるんだっけか……?」

 

 遅れてエミリーが椅子に座って休憩する。

 

「ほんと、こんな気持ちいい事あるんなら、早く教えて欲しかったよ」

 

 しばしの休憩……。

 緩やかに流れる川のせせらぎ、時折聞こえる野鳥のさえずり。サウナの高温で高まった鼓動が徐々に落ち着きを取り戻し、旅の疲れが癒される。魔物に襲われる可能性もあるけど、この気持ち良さには代えられない。その時は戦うまでだ。

 

「さて、夕飯に火を入れるか」

「お腹すいたー」

 

 皆で立ち上がったその時、何か違和感を感じた。

 

「あれ? エミリーこっち向いてみて?」

 

 オレはエミリーの顔を覗き込んだ。

 

「ん、どうしたの?」

「やっぱりだ、片目が青いぞ?」

「本当だ、青いね」

 

 トーマスも驚いたように言った。

 

「えっ……い…やっ……」

 

 エミリーは顔を両手で覆った。

 

「ん?」

「いやっ……いやだ……」

「おいおい、どうした?」

 

 エミリーの様子がおかしい。

 

『イヤァーーッッ!!』

 

 これは尋常じゃない。エミリーは悲鳴を上げて、その場にうずくまった。

 

「おい! 大丈夫か!?」

 

 二人ですぐに駆け寄る。

 

「だめだ! 過呼吸起こしてる!」


 トーマスが冷静に判断した。パニック状態のエミリーは、そのまま気を失った。



 ◇◇◇


  

 リクライニングチェアにエミリーを寝かせて、毛布を掛けている。

 少しすると、エミリーが目を覚ました。

 

「エミリー、大丈夫か?」

 

 声をかけると、エミリーはゆっくりと体を起こした。

 

「あぁ、気失ってたんだ。ごめんよ、ありがとう」

「いや、無事で良かった……」

 

 エミリーは体を起こして座り直した。オレ達に背を向け、右目に何かを入れている。

 

「見られちゃったね……二人が察した通りだよ。私はこの青い眼を隠して生きてるんだ。色付きのレンズを入れてるんだけど、川で取れちゃったみたい……気をつけないと。前に、過去のことはあまり話したくないって言ったよね? 二人を信用してないから言いたくないって事じゃないんだよ……どう話せばいいか分からないだけなんだ……」

 

 少し沈黙が流れる。オレは静かに言葉を選んだ。

 

「エミリー、オレたちは仲間だ。家族じゃない。仲間は仲間のいい距離感がある。言いたいことは言ってスッキリすればいいし、言いたくない事は言わなくていい」

 

「エミリー言ってくれたよね。みんな辛い過去の上で生きている、仲間で助け合おうって。それでいいじゃないか」

 

 トーマスも優しく続けた。

 

「うん……ありがとう……」

 

 エミリーは安堵したように、再び笑顔を見せた。

 

「よし、ご飯食べようか! いつ起きてもいいように、じっくり煮込んだから美味しいよ!」

 

 トーマスが作った美味しいご飯で、エミリーの顔に笑顔が戻った。


  

 その後も順調に歩をすすめ、レトルコメルスを出て11日。

 港町ルナポートに到着した。

 

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