側近候補たちの勘違い
全4話 毎日21時更新です。
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「ふむ、私からも良いかの?」
緊迫したこの場面に全く不釣り合いな王太子殿下ののんびりした声が側近候補たちにかけられた。
「なんでしょうか?王太子殿下。全ては私共側近にお任せいただければ上手くいきますので、お静かにお待ちいただけませぬか?」
イライラとした声で答える騎士団長子息。王太子殿下に対して無礼ですわね。
気持ちは分かりますが。
「ふむ、いろいろ聞きたいところなのだがの。そもそもじゃ。そちらは誰じゃ?」
その場の空気が凍った。
あぁ、始まった。始まってしまった。お転婆だった子供のころに戻ってスカート摘まんでダッシュで逃げたい。私はこめかみのあたりを揉みながら天を仰いだ。
「なっ!何をおっしゃっているのです、殿下?我らは殿下の側近ではありませぬか?」
まるで愚かな子供に諭すように聖女の取り巻きの一人、財務官僚の子息が殿下に応える。
「ふむぅ、おかしいのう。私には側近候補は選抜されたが正式な側近はおらんのだがの?」
不思議そうに小首をかしげるシベリウス王太子殿下。全くかわいくない。
「えっ?・・・」
側近候補たち、そしてその家の者や下級貴族は絶句していた。
宰相であるデロウ伯爵も目を見開いて固まっている。
一方、王家のお血筋である公爵家、当バーロウ家を含む6大侯爵家やそれに連なる貴族家の者に驚きはない。
国王陛下の隣には父の他に王妃様、側妃様も現れた。こちらも当然驚きはない。
「え・・・」
固まっている者たちを置き去りにシベリウス王太子殿下が続ける。
「それといつからそこの娘は聖女になったのじゃ?」
さらに反対に小首をかしげる殿下。殴りつけたいくらいかわいくない。
「え?いや、え?清らかで誰にでもやさしく、貧民救済の功績からそう呼ばれておりますが・・・」
慌てて応える財務官僚子息。あーあ。
「おかしいのう?聖女とは神の奇跡を起こしたものを聖教会が認定するものぞ?勝手に名乗るなど、その方らは聖教会をなんと心得ておるのじゃ?」
眉を顰める殿下。ですよねー。だから私たちは聖女なんぞと呼んだことは無いのですよねー。
「そして何よりなのじゃが・・・。なんで私がアイリス嬢と婚約破棄せねばならんのじゃ?」
いや、そこは、そこだけはお認め頂いて。どうにか破棄の方向で何とかなりませんかね?
私の想いを見透かすように顔を覆っていた長い黒髪をかき上げ、金色の瞳を見せた殿下はこちらを見てニヤリと笑った。
殿下のご尊顔を初めて拝した貴族たちから驚きの声。令嬢はキャーなどと歓声を上げている。
顔だけは良いのが腹立つ。
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