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「研究書などではギフトと呼ばれています」

 自らを魔物だ、と名乗ったアルタは、しかし、理知の感じられる白銀の双眼でコルタクを見つめた。


「しかし」


 アルタは興味深くコルタクを見つめていた。


「予想では、もっと驚かれる筈だったんですが」


 若しくは殴りかかってくるか、と苦笑しつつも残念そうに言う彼にコルタクは、面白い人だ、と思いながら返す。


「最初から怪しさ満点でしたし、それに、怖い人でもないですから」

「全く、変な人だ」


 とは言えコルタクとて驚かなかったわけではない。

 フードの下に彼の顔が見えた時、逃げようか、等と思い周囲を見たが、周りには身を隠せるような場所はないことに気づいた。あっても疎らな岩影や木陰、とても伏兵に向かない。

 つまり彼は一人でここにいると言うことだ。行き倒れているのにコルタクを食べようとせず肉をせがんだ、となっては警戒するのも馬鹿らしい、とコルタクが言うと、アルタは、その手があったか、と茶目っ気を滲ませ答える。


「でもこれ認識阻害の魔法掛かっているのできっちり着込んでいると分からない筈なんですが」


 まさか偽物掴まされた、事もない筈、と言いいながら彼はフードを頭の後ろではたはたと扇ぐ。

 その様子にコルタクは気づいた事を伝えた。


「そりゃお肉食べてるとき、手を出してたからじゃないですか?きっちり着込んでいないと効果が無いんでしょう」


 そう言うとアルタは両の手を打ち鳴らした。


「ああ、そう言うことですか。納得しました」

「そういえば、人の称号を見れるって言うのはどう言うことなんですか?」


 先程、彼が言っていたことを思い出す。

 

「ええ、そうですね。どこから言いましょう」


 アルタは空を仰ぎ見て、再びコルタクに向き合うと革の手袋を嵌めた両手の人差し指を立ててコルタクに見せる。


「この世界、貴方達プレイヤーと呼ばれる者と私達エーアイと呼ばれる者で大別する事ができますよね」


 一人一人、実在している誰かが動かすプレイヤーと決められた思考に基づいて動く実態のないAI。

 しかし、明確な違いは他にある、とアルタは言う。


「プレイヤーという種別は簡単に言うと、種として上位種である、と考えます。万人が万人、魔力を持ち操作し無意識下で精霊という存在を介し力に変えます。

 たいして我々、世界の大半を占めるエーアイと言う存在は、つまり魔物から人、野生物、意思持つすべての事ですが。これらは基本としてプレイヤーに劣ります。

 よく分かるものだと魔力です。これは原則として我々は所有はしていても運用が出来ません。

 我々、小鬼族も本来魔力の必要な技術魔法は使用できないのですが、実際は技術も魔法も使用できています」


 魔力を力に変換すると淡い光を放つ。アルタは使えないと言うが、少ないコルタクの戦闘経験でも魔物や野生生物がその光を放つところ幾度か見ている。


「プレイヤーがエーアイに無いものを持っている。同様に、エーアイ側にしか無い物もあるのです」

「それが、貴方の他者の称号を視覚化するという?」


 強いてはAIが魔法や術技を使う為の要素。コルタクの声にアルタは頷く。


「研究書などではギフトと呼ばれています。エーアイに付与される特殊能力。ギフトは人によって千差万別です」


 例えば、とアルタは胸に手を当てる。


「私が持つギフトは、称号の看破。内容はお話しした通り称号を見れるというものです。小鬼族は肉体強化が主で次点が魔力操作。私のように戦闘に向かないギフトは極稀なんですが」

「ん、聞く限りギフトは一人一つ?」


 複数の技を出す敵もいたと思い、コルタクは尋ねる。

 アルタはコルタクの問いに更に強く頷いた。


「ええ、基本的には一つか、ギフトを持っていないか。と言っても単一の術技、例えば火球操作や横薙ぎ、をギフトとして持つ者も入れば、複数を内包する魔力操作や剣技もあるので、中には他人に化ける能力だったり、声を大きくする能力もあるそうですよ」

「成程、千差万別ですね」

「まあ、私の称号の看破ではスキル保有者という称号しか分かりませんが。

 それでもスキルを持つ相手が分かるのは狩りにおいて有利です。思わぬ反撃を受けるのを事前に防げますからね」


 そう言ってアルタは話を切った。彼の持つ称号を視覚化する能力の説明を終え、満足げに息をついたアルタは蛇の肉を平らげた時よりも遥かに良い笑顔だ。

 三度の飯よりも、と言うことだろうか。


「ところで、失礼を重ね重ね申し訳ないのですが」

「はいはい?」

「一緒に町へ行って欲しいのです」


 伺い口調のアルタに個人の事情で、つまりは種族の問題で、街に入ることを戸惑っていると言っていたな、とコルタクは考える。


「街に行って何をするんです?」

「小鬼の活動について調査されている方がいる、と聞いたのでその方々に会えないかと」


 そういえば小鬼の情報提供願いの依頼が冒険者ギルドにあった気がする。


「私だけだと、何せこの風貌ですし、門番に察せられそうで。もし魔物であると知られてはプレイヤーの多くいるこの街から生きて帰れるとは思えません」

「まあ、怪しいですね。認識阻害で中身が分からないから、怪しさで考えるなら倍増しますねそれ。まあいいですよ、僕も街に戻ってぶらつこう、とか思ってましたし」

「それはありがたい」

 

 コルタクは立ち上がり尻に付いた土を払うと、腕を天に向け大きく伸びをした。

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