7話勧誘
「イクト君!!!お願いだよ!!僕たちには君が必要なんだ!!!!」
そそくさと下校準備を進めるイクトの目の前にいるのは演劇部部長
最近、僕は揺れている。
頼まれると弱いのは前世からだけど、今回はそれだけじゃない。演劇そのものに、ちょっと興味がある。
ただ、僕の精神は圧倒的にモブなのだ。 でも・・・・
「照明とか音響なら、多少はお手伝いできるかと」
「王子様をお願いしたい」
「舞台装置の制御とかも――」
「王子様」
「僕、そういう目立つのは……」
「榊君が出てきた瞬間に、姫が恋に落ちる説得力が欲しいんだよ!」
確かに、今世の僕の容姿は素晴らしいと思う。
でも、それを人前で堂々と使うとなると話が違う。僕の中のモブが全力で嫌がっている。
……なのに、やってみたい僕もいる。
ただ、この学校の演劇部はかなりガチだ
演技指導
ボイストレーニングに元プロが付いている。最近はその先生からの誘惑も激しい。
「イクト君、かなり高い音まで使う曲を歌うよね。演劇部で、あの辺りをもっと安定して歌えるように練習してみない?」
僕が好きな曲に○○○オペラという歌手のの○○ける世界という曲があるがその曲に限ってて言えばhiF付近は出ないと困る。
……それは、正直かなり魅力的なお誘いだった。
そして僕は――僕は、屈してしまった。
ああ、僕が足りない……。
そうですよ!性癖ですよ今の容姿もあの作品の主人公像も!性癖ですよ!!枕に顔をうずめながら絶叫していた。
嫌というなら代替案を出せすべきだと思っイクトは前世で作っていたストーリーミュージックを主軸としたシナリオを提示た結果王子から「は」逃れることが出来た。が主役から逃げられなかった。
「歌うんですか!?僕が!?」
「そりゃぁ曲まで作って持ってくるなんて歌わせて下さいって言ってるようなものじゃない?なるほどね~AI曲ね、盲点だったわ!あなたの名は語り継いでいくわ!」「語り継がないでください......」
――――――一方、整備工場では。
「こーじょーちょ―ほんっとイクト君現れなくなっちゃったっすね。
あー学校の演劇部のもうアピールに屈したとか聞いたぞ?」
「今週末市民会館で公演があるらしい部費を調達するための公演でもあるらしいな」
「やってることがガチすぎて予算が足らんらしい。」
青春っすねー
「絶対にこないでって言われたし行ってくるか!」
工場長の手元で、ポスターが風にあおられてひらひらと揺れた。
ポスターにはこう書いてある。Whispers of the Lost Grove 原案:榊生久人
初回公当日演――――斎藤自動車整備工場の面々はニヤニヤしながらイクトの前に立った
「何で居るんですか・・・・」
対するイクトは絶望顔だ。
「原案まで書いたんすか?」
「……興が乗ったので」
「王子役は、お断りしましたヤダヤダ言って代替案を出さないのは社会人として良くないと思ったので」
「社会人?イクトくんまだ子供っすよね????」
「言葉の綾です・・・・」
「じゃあ何役なんすか?」
「……エルフ族の少年です」
「主役?」
「…………はい」
そうしてイクトが入部してから1年後の現体制最終公演 しかも前世で作った曲付きラストシーン父親と再会できた主人公が今までの人生を振り返る
シーン 使用楽曲:Alive Within Me -BRaZeLeL
あなたは 今も
僕の中で 息をしてる
触れられなくても
確かに ここにいる
涙の理由を
愛と呼べるなら
僕は今日も
前を向ける
客席のどこかで、鼻をすする音がした。
まだあどけなさを残すイクトの高音が、ホールに響き渡った。マイクの電源は入っていない
余りにも好評だったため映像作品としても残ってしまった。
その後は顧問の先生方の本業が忙しくなったため演劇部は活動休止となった。
「黒歴史だ・・・・」
「でも兄ちゃん楽しそうだったよ!」
「そうですね。」
そう言いながらイクトは窓の外の星空を見上げた
――後日、斎藤自動車整備工場。
斎藤自動車整備工場事務室額縁に飾られた演劇ポスターチケットと限定販売DVDをみながらイクトはげんなりした顔で言葉を零した。
「ここにも黒歴史だ・・・・」
「そーいやエンジンどうなったの?」
「アイドリングはばっちりです。回転を上げるとちょっとノッキングが出るので調整中です。」
「ちゃんと精進してるみたいで安心っすけど・・・・」
「・・・・ちゃんと寝てるんすか?」
「う・・・・」
『Alive Within Me』—BRaZeLeLも公開しています。
『Whispers of the Lost Grove』は、シリーズ楽曲として投稿中です。
『転生エンジニア』が落ち着いたら、こちらの物語も小説として書き起こしたいと思っています。




