16話シン・酒蔵システムへ
旅行騒動から2週間が過ぎ母の背後の般若が消えかかった頃。
中学の頃締結した保守契約が本格的に稼働との流れになった。
「あ、父さん、保守業者かの酒蔵システムの移管テストの打診が来てます。来月の18日なら僕の学校の創立記念で午前のみの授業なのでその日の午後なんてどうでしょう?」
イクトの顔には心配ですと書いてあるようだった。
移行テスト当日の放課後、「ちょっと榊、手伝ってもらえないか?」
「先生ごめんなさい!今日は大事な用事があるんです。!」
「おお、我らが神よ、そんなに急いでどちらへ?」
「じゃあなー神ー」
最近学校で例の部員たち以外からも「神おはよー」等
と言われるようになったさすがに下生は言わないが。人間慣れるものだなともおもう。実際黒薔薇の衣装はもはや抵抗がない。バンドのアイデンティティーだからなのかは知らない。
そこまでの自己分析はしていないするつもりもない。ちなみに今じゃあなー神ーといってきた彼だが、以前僕をいじめてつもりだった。アイツだ。今では親友と言ってもいい。大体人生相談をされる側になっているこれが親友と言っていいのかは全くわからない。
以前、「おまえってさー年齢詐称してないよな?めっちゃ仲がいい親戚のおっちゃんと同じ匂いがするんだよな。」といわれ正直どきりとした。そのときはおもわず自分の匂いを確認した。っと、それよりも、帰らないと。
榊酒造奥の中継サーバーとルーターが今回のメインの作業対象だ。
「父さんただいまー。」
早速作業します。」
「通販受注停止。・・・・完了。」
インカムを通じて全従業員に通達する。
「イクトです。予定していたシステムの変更作業をしますので。一度業務の手を止めてください。」
「拠点間VPN接続OK.新サーバーとの接続良好っと。今日の業務データ同期OK、
中継サーバー設定変更。接続先を新サーバーへ。ヘルスチェックStable!用意していた一通りの予備の業務端末を
使って動作確認する。
うん大丈夫。
イクトの後ろでは保守会社の社員が電話連絡を取りながらこちらの状況を伝えている。
「開発も僕だから確認も楽だなあ。新サーバーのログもだいじょうぶですね。」
「旧サーバーへのアクセスも来なくなりましたね。……では、自宅との拠点間VPNを切断します 。っと動作良好!何だったらレスポンス上がった?流石最新型サーバー!」
「ついにうちの酒蔵メインサーバーも退役かー。本体は次何に使おうかな。」
「こちらでも新サーバーへの接続を確認しました。エラーも出ていません」
「了解です。では皆さん、順番に業務を再開してください。不具合があれば、すぐ教えてください」
インカムで再び呼びかける。
「通販は?」
「テスト注文が正常に通ったら、受け付けを再開します」
「発送担当さん今からテスト用の注文を入れます。伝票発送までの一連の作業お願いします。本当に発送はしません。後ほどキャンセルしますので、キャンセルしたら在庫に戻す作業お願いします。僕も様子を見に行きますので僕がきたら作業開始で。」
イクトは発送担当のところへ台車を引きながらやってきた。台車の上には業務端末とイクトのPCが乗っている。
「大丈夫そうですね。通販再開。!」
「えー業務通常通り再開お願いします。イクトの号令とともにあちこちから業務端末が発するピという音が聞こえ始めた。」
入り口付近にいた父がすっとイクトの横に立った。
「無事に終わったみたいだな。」
「父さん、一応僕このまま終業まで経過観察します。」
「んーーーーこれでセキュリティもしっかりした場所に業務サーバーが移動しました~~~」
「おう。」
「業者さんにも手順書は渡してたんですけど。出来れば移行は自分手でやりたかったので。すごく安心しました。中継サーバーはここに置かないといけないので。あれの対処が必要なときは案内してくださいね。」
「おう。本当に、お前はすごいな」
父さんが、僕の頭に手を置いた。
そのまま、少し乱暴に撫でられる。珍しい。
……ん? ちょっと顔、赤くない?
「……もう、お前が学校にいる間も大丈夫なんだな」
「今までも動いてましたよ? 今度からは、困ったときに対応できる人が増えるんです」
保守を任せた業者の社員さんから声がかけられた。
「あの、イクトさん。」
「はい? あ、お疲れ様です」
「このシステムをベースに、弊社で製品開発を進められないかと考えているんですが。改めて、ご相談させていただけませんか?」
「いいですね! プロがしっかり作り上げたらどうなるのか、興味があります!」
「いいことなのか?」
「そうですね。製品として継続的に面倒を見てもらえるなら、不具合や脆弱性が見つかったときの対応力は、格段に上がると思います」
「お前一人で直さなくてもよくなるってことか」
「はい。僕がもう一人いなくても大丈夫になりますし、仮に僕がいなくなってもこちらの会社が続いてくれる限り対応できる方がたくさんいる状態になります。」
「……進学して、家を出てもってことだよな?」
「はい? ああ、そういうことです。ずっと近くにいられるとは限りませんから」




