10話 新たな犠牲と平常運転
イクトの曲は実在しますあとがきにかいておきます。
イベントホールでの一幕は、職員室の大型モニターにも映し出されていた。
「今年は榊か~。きれいに踏み抜いてるな~……いや、『ギュイーン!』『入れ!!』はあかんwww 録画してあるよな? これ欲しいw」
イクトの担任は、腹を抱えて笑っていた。
軽音部部室にあのドレスを着たイクトの姿があった。すっかりバンドの正装になってた。
「先輩、先輩たちって普段どんな曲演奏してるんですか?」
「んぁ?V系の曲を幅広くコピーしてるな。摩天楼オペラなんかはよくコピーしてるぞ。」
「素晴らしいですね!」
なんだお前もこちら側だったか。」
所で、黒薔薇としてのオリジナル曲とか欲しくありませんか?ちょちょいとやってみたんですけど。
『棘の戴冠』」
「大枠をDTMで作ってそれ以降をAIに仕上げてもらった奴ですけど。そんなんでも良ければ。ここにデモ曲が入ってます」「AMP!!!!!!!(デスボイス)」
「すごくね?」
「すごいのはAIであって僕ではないです。アーティストは名乗れない手抜きの駄作みたいなものですやりたいことがいっぱいありすぎて趣味も効率化が必要な僕の決して誇ることのできない冒涜の詰め合わせみたいなものです。世界観を作ってるのは僕の言葉ですけど。、それだけです。」
DTMとMIXしておきながら何ってんだ?使ってるソフトプロの現場でも使ってるやつ奴じゃね?繋げてる機材もそこそこ本気なんだが?
「榊自己評価低いぞ。」
世界観も歌詞も、お前が考えたんだろ? 大枠も作って、ミックスまでして」
「でも、仕上げはAIなので……」
「そこは分かった。その上で、俺はこの曲やりたいって言ってんの」
「……いいんですか?」
「だから譜面くれ。……これ、ちょちょいと弾ける曲じゃねえぞ?」
「……新しい風だな」
先輩は、流れ終わったデモ音源をもう一度再生した。
「今までは、俺たちに演奏できる曲を選んできた」
「……これ、結構難しいですよ?」
「だろうな」
隣の先輩が、ギターを抱え直す。
「でも、俺たちの新曲にするなら話は別だ。どんなに難しかろうが、モノにしなきゃなんねえ」
「……いいんですか?」
「俺たちがやりたいって言ってんだよ」
――――――『棘の戴冠』―――――
名もないままで いたかった
この声が 咲くまでは
幕の向こう 響く足音
逃げ道を探す 白い指
鏡の中 着慣れない影
誰のための姿だろう
差し出された 黒い花束
受け取る理由を並べても
胸の奥で震える音は
もう嘘では隠せない
似合うと言われるたび
目を伏せていたけれど
まだ知らない僕が
息を吸った
咲き誇れ 黒薔薇よ
この躊躇いを突き破れ
望まれた姿の奥で
僕の声が目を覚ます
棘の冠 痛むなら
その痛みさえ歌にして
名もないままの願いへと
今 光を灯せ
拍手よりも 怖かったのは
心から望んでしまうこと
一度きりの借りた舞台と
言い訳を握りしめた
隣り合った 二つの旋律
僕の迷いを追い越して
逃げるために閉じた唇
歌うために開いていた
誰かに呼ばれたから
ここに来たはずなのに
降りたくない理由が
胸に咲いた
舞い上がれ 黒薔薇よ
夜を染め抜く花となれ
震えていた昨日の僕も
連れていけばいいだろう
棘の冠 抱きしめて
伏せた瞳を上げるから
差し伸べられた光へと
今 この手を伸ばせ
誰かになりたいわけじゃない
僕のままで 歌いたい
胸を焦がすこの想いを
もう恥じなくていいのなら
目を開け
声を放て
選ばれた理由じゃなく
ここに立つ理由を
僕自身の言葉で
今 響かせよう
咲き誇れ 黒薔薇よ
この躊躇いを突き破れ
望まれた姿の奥で
僕の声が目を覚ます
棘の冠 外さずに
僕は僕として歌うから
名もないままの願いにも
この舞台で花を咲かせよう
名もないままで いたかった
だけど今は 届けたい
この声を
――――――――
後にこの曲は学校全体を巻き込んだMV制作へ四発展していった
衣:装小道具:演劇部
照明:劇部・映画研会
撮影:映画研究会・動画制作部
スペシャルサンクス:教職員一同
黒薔薇は翌年、先輩たちの卒業とイクトの脱退を機に解散した。
その後、先輩たちは新たなボーカルを迎え、黒薔薇として再び活動を始めた。
やがて、メジャーデビューも果たすことになる。
イクトを誘うことはなかった。
彼が進みたい道を、知っていたからだ。
一方、衣装を手がけたお隣さんは、完成したMVを見て鼻血を出していた。
明日納品する、純白のドレスに。
「やっぱり榊さんとこの子しか勝たん……!」
予想の斜め上をいく仕上がりだった。
そして、早くも次の構想が膨らんでいた。
「斗真君には純白のドレス……生久人君には漆黒。黒髪のショートポニテと、銀髪のロングポニテ。あのV系メイクで並んでもらったら……」
そこまで考えて、ようやく手元の赤い染みに気がついた。
手元の染みを見て、ようやく我に返った。
――はずだった。
「……明日納品だったわそれにしてもあの衣装本気を出して良かったたわあの話の流れで生久人君に着せるつもりだと気が付いた私ないす!!!」
「と言う訳で、二人にはお小遣いを餌に」
着てもらいましょう!
「ああ、あの漆黒のドレスですか?いいですよ」
あれ?もっとキャーイヤーンアハーンを想像してたのに。すっかり慣れてらっしゃる。
「最近こっちの方がおちつくんですよねー。普段着にはしませんけど。斗真ー?着てほしい服があるみたいですよー?お小遣いもくれるみたい。」
「うっわ兄ちゃんすげえ格好してるね。え?もしかしておれに着ろって言ってる?兄ちゃん一緒に逃げる側だったよね????」
「一緒に着る側になりました」
「俺の同意は!?」
「強制はしてませんよ?」
「兄ちゃんの手が着せたがってるように動いてるんだけど。」
「なるほどーー。母さんの気持ちがよくわかりました。」
ドコンバタバタガラガラガシャン
「言兄ちゃ・・・・力つええ!!!」
「ふう。」
「シクシシクシシクシク・・・・・・」
「……ごめんなさい。調子に乗りました」
「脱がせて」
「はい……」
「……まだ撮ってます?」
「ええ、兄弟でお話ししてる自然な表情も素敵だから」
「カメラ置いてください」
「あと一枚」
「さっきも言ってましたよね?」
斗真が、イクトの背中に隠れた。
「兄ちゃん、そっち側に戻ってきて」
「……はい。やっぱり僕はこちら側でした」
「っでもね斗真?やり方次第ではこんな風にかっこ良くもなれるんですよ」
MvをTVで流す
「兄ちゃんやっぱり変。」
「お隣さんは危険人物。母さんは取り扱い注意。父さんは豆腐の盾です」
「兄ちゃんは?」
「斗真を守る兄です」
「さっき着せようとしてたじゃん」
「……信用回復に努めます」
イクト2年生の春「うーん。何か1年くらい忘れてる気がしますね。」
IT部!!!!!
そっと新入生の後ろに隠れながらそっと部室に入る
「遅かったでは無いか。入部から丁度365日。さて生久人君。環境を既に持ってる人には環境紹介をしてもらってるんだが。1年前に預かったこのUSB見て行ってもいいかな?」
「アッハイ。」
プロジェクターに映し出されるサーバータラックとフル搭載の様子。
「えー我が家にある48Uラックです。全て200Vで繋がっています。基本的に富士通製を使用しています2CPU48コア96スレッドメモリ196GBSAS300GBx4RAID1+0」を標準構成として運用しています全台SFP+で10GDACでつないでいます1GLANは故障時の保険で繋がっています。上位ルーターにFortiGateのUTMを採用しWebサーバーへの攻撃はここで大半を防いでいます。共通のストレージに
サーバーを用意し16GB1x12」で稼働中です現在は月々25万円ほどの利益を安定して出しており。勿論確定申告もしっかりしています!。」
しーーん・・・・・・・・
「今年はラックの増設も検討していまえています・・・・・よ・・・・・?」
先輩が、ゆっくりと新入生たちを振り返った。
「……我々が目指しているのが、こちらです」
「到達したら月25万円になるんですか?」
「そこは目指すな。まずバックアップを取れ
「一年も幽霊やってた奴が、一番のバケモンだった!!!!!」 何故だ!!!あいつはバンドマンじゃないのか!!!???」
「車オタクであるという情報もあったぞ一体お前は何なのだ!!!!!」
ういう意味ではない!!!!」
「見に来ていただいてもいいですよ? 皆さんで来るなら、一度母に話を通してからになりますが」
先輩が新入生たちを振り返った。
「次回の活動は、見学会とする」
「判断早いですね」
「一年待ったんだぞ!!!!」
「イクト殿この榊酒造業務システムというラベルのサーバーは何であるか?」
「あ、それは一番シャレにならないやつなので触らないでくださいね。企業の基幹システムの一部なので。」
「Why?」
父の会社のシステムです」
「なるほど、ご実家の……いや、納得しかけたが、おかしくないか?」
「保守会社とも契約してますので」
「そういう心配をしているのではない!!!!」
「システム胃管中なのでまだ止められなんですよ。」
「……バンドをやりながら?」
「はい」
「演劇も?」
「はい」
「車もいじって?」
「はい!」
先輩は、静かにラックからイクトへ視線を移した。
「……冗長化すべきは、君の方ではないか?」
黒薔薇/棘の戴冠 BRaZeLeL




