第2話:投げ銭(スパチャ)は異世界の万能薬!?と、うるさい神様
ドラゴンが光の粒子になって消え去った平原で、私のスマホ(配信端末)はスパチャの通知音を奏で続けていた。
パラララ、ピコーン、ピコーン!と、途切れることのない電子音が草原に鳴り響く。
『生存報告で脳汁ドバドバ出たから赤スパ投げるわ』
『本当に生きててよかった。これで今週仕事頑張れる』
『てかあの爆発、まじでどうやったの? 最新のARグラス?』
画面の上半分が、赤や黄色のカラフルな投げ銭で埋め尽くされている。
すると、私の体にじわじわと温かいエネルギーが染み込んできた。ドラゴンに吠えられたときの鼓膜の痛みや、立ちっぱなしの足の疲れが、一瞬で綺麗さっぱり消えていく。
[ピコーン! ギフティング・ヒールにより、ろいでの体力が全回復しました]
「あ、体がめっちゃ軽い。みんなスパチャありがとー! なんか投げ銭されるたびにHPとMPが回復するみたい。コスパ最強のドリンクバーかよ、この加護」
『ノリが軽いねぇ、ろいでちゃん! でもそれこそが僕の神権の真骨頂さ!』
ヘッドホンから、脳を直接揺らすようなテンションの高い声が響く。
無駄に耳に心地よいイケメンボイスなのだが、言葉の端々から漂うウザさが隠しきれていない。
『君のリスナーが放つ「熱狂」は、僕の神権を通じてすべて君の魔力や身体能力にダイレクト変換される。つまり、バズればバズるほど、君は文字通り「神」に近づくってワケ! ちなみに今ので君のライバーレベルが2になったよ! はい拍手! パチパチパチパチ!』
「はいはい、ありがと。てかりーくん、耳元で拍手されるとシンプルに耳障りだから音量下げていい?」
『冷たい! 歌姫が僕に対して氷点下の対応だよ!? そもそも僕は表現と芸能の神、いわば最高責任者だよ!?』
『なんかヘッドホンから変な男の声聞こえん?』
『ボイチェン使った運営の悪ノリ?』
『声は無駄に良いのに、絶妙にうざそうなキャラしてて草』
『りーくんって誰やwwwww』
「あ、リスナーのみんなこれ? なんか『表現の神』を自称する、見た目がすっごいうるさいお兄さん。私のヘッドホンに居候してるから、みんな『りーくん』って呼んであげてね。衣装の情報量が多すぎて目がチカチカするタイプのお兄さんだから」
『誰が見た目うるさいだ! このアシンメトリーなメッシュのこだわりと、ネオンベルトを交差させた黄金比率を今すぐ3時間かけて熱弁してあげようか!?』
「あ、いいです。ミュートにするね」
『ごめんなさい黙ります!!!』
『コント始まって草』
『掛け合い完璧すぎて草。新しいコンビ結成か?』
『りーくん(設定:神様)いじり楽しそう』
ふふ、と笑いながらチャット欄を流し見る。
異世界に転移したというのに、私の配信は「りーくんイジり」で大盛り上がりだ。
だけど、ずっとこの緑一色の平原にいても配信の「画」が変わらなくて、せっかくの視聴者が退屈してしまう。ストリーマーたるもの、常に画面は新しく、面白くなくてはならない。
「よし。それじゃあリスナーのみんな、まずはこの世界の『街』ってやつを探しに行こっか。初上陸の異世界観光配信、スタート!」
『お、それならあっちの方角に大きな人間の街があるよ! ちょうどギルドとかいうやつがあるんじゃないかな?』
「りーくん、珍しく有能。じゃあそっちに進みまーす」
平原を歩き出す私の頭上を、半透明なドローン型の神のカメラ(神権端末)がふわふわと追いかけてくる。
1000万人のリスナーと、見た目はうるさいけれど少しだけ役に立つ神様を頭に乗せて。
私の異世界サバイバル配信は、これからもっともっとバグっていく。
(つづく)
作者のねむねむもーどです。
第2話もお読みいただき、ありがとうございます!
ついに「りーくん」という不名誉(?)なニックネームが定着してしまった表現と芸能の神様。
本人はゴールドストリート系を自称していますが、リスナーたちからは「見た目がうるさいボイチェン運営」扱いされています。今後も事あるごとにミュート(物理)される予定ですので、温かい目で見守ってあげてください。
さて、お待たせしました!
次回、本日の21時30分頃に投稿します!
ろいでちゃんがいよいよ異世界の「街」に初上陸します!
異世界人の常識をバグらせる配信が本格的にスタートしますので、ぜひお楽しみに!
「りーくん、もっと喋って(ミュートされて)ほしい!」「ろいでちゃんの異世界観光が楽しみ!」と思ってくださったリスナーの皆様。
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今後ともこの作品をよろしくお願いします!




