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夜は朝まで運動会

 前から迫る林の木立が次々と後ろへ流れていく。肺の中を循環する朝の空気が心地よい。

 近頃の僕は朝食の前に走ることにしていた。この学校では何事につけてもゆっくりと動かなくてはならなくて、運動不足だ。

 放課後のクラブ活動に運動系もあるんだけど、二歳差があるとは言っても男の僕が彼女たちの中に入ってやるのは反則だろう。それに接触が多い競技だと肉体の違いでバレてしまうかもしれない。


 この学校は国の首都から馬車で一日ほど離れた町の郊外にある。敷地は大変に広くて、ただ走るだけでもいい運動になる。首都だろうとこの町だろうとこんな面積を今から用意するのは難しいだろうね。歴史あるからこそだ。


 僕たちの体は地球人とはところどころ違う。体はかなり柔軟だ。僕ですら前世の体操選手並に柔らかい。ステラときたら骨が入っていないかのようだ。

 運動能力も優れている。アマチュアランナーの僕がまるでプロのようなフォームと速度で走ることができる。

 嗅覚も地球人よりいい。こうしてただ走っているときでも、鼻から吸い込まれる空気の中に土を踏んだ鮮烈な臭いとか、草の葉が靴の裏で傷ついて汁が染み出た臭いとか、その陰にいた小さな虫の乾いた臭いとか、無数の情報が飛び込んでくる。様々なアレルギー反応で鼻炎がちの地球人と比べたら倍もいいだろう。

 視力は少し弱いかな。近視気味だ。一応三原色ではある。


 ああ、それにしても運動はいいね、よこしまな思いが発散される。敷地を一周した僕はさわやかな気分で朝食を迎えた。


 鼻がいい分味覚も優れていると思いたいのだけど、味覚は嗅覚と比べてかなり学習の要素が強いからね。黒パンと豆のスープで育った僕の舌は多様性が乏しい。この学校では何を食べてもおいしくて、いつも感動してしまう。

「ごちそうさま。おいしかったよ」

 だから食器を返却するときいつも自然と礼の言葉が口から出る。本当に、ここの調理師には感謝しかない。


 午前中は座学、今日の午後は社交ダンスの授業だった。ここには女しかいないので、男性パートと女性パートに分かれて女同士で踊る。

 もちろんここに来るまでダンスなんてものとは無縁だった僕は踊り方を全然知らなくて、一から教えてもらっている。教師に指導されて動きを覚えて、セレナとカリンが交互にパートナーを務めてくれている。セレナはダンスがあまり好きじゃないみたいなんだけど、それでも。カリンは男性パートも女性パートも抜群に上手い。ちなみにステラは今月の発情期が来てしまって今日はお休みしている。


 そんな感じで一日がおしまい。ああ、今日は一日よく運動したな。今夜は健やかに眠れることだろう。

 ……もちろん、そんなことはなかった。今日は彼女の夜だ。




 トントントン。

 ひと月ぶりに彼女がドアを叩く音がした。

「どうぞ。開いてるよ」

 もう諦めて鍵は掛けていなかったのでそう告げると、ドアが元気よく開いてステラが入ってきた。そしてまた後ろ手に鍵を掛けたステラは我が物顔でベッドに潜り込んで夏掛けを頭まで被った。……いや、チラッチラッと頭だけ出したり引っ込めたりしながらこちらの様子をうかがっている。


「……来ないの?」

「来て欲しいって言いなよ」


 そう言いながら僕は椅子を立っていた。あの桃のような香りが布団がめくられるごとに吐き出されて、いつの間にか部屋中に充満していた。

 僕もベッドに入りたい。その香りを肺の奥まで吸い込みたい。抵抗できない。

 僕は布団に潜り込んで、柔らかくて暖かい塊にピタリと体を寄せた。そしてステラの髪をかき上げて、きめ細やかな肌のつるんとしたおでこに額を当てた。これ以上ないほどの至近距離で僕たちは見つめ合った。


「ん……」


 どちらからと言うこともなく唇が求めあった。発情期のステラは案外に静かだ。キスで口が塞がっているから。

 ステラは執拗なほどにキスをせがむ。舌が絡んで、先を差し込むとちゅうちゅう吸われる。きゅっ、きゅっと交互に舌を吸い合う仕草は彼女なりの代替行為なのかもしれない。


 キスしながら自由な左手を背中に回して撫でる。体の下になった右手がちょうど触れるところに胸がある。

 うわ……すごい。思わず触れたら手が離れなくなった。薄い生地の下のたっぷりした感触を僕は味わっていた。


 胸の重みを確かめる僕の手を横目で見てステラは口を離した。よだれが軽く糸を引いてすぐ切れた。

「起きて」

 悪戯っぽく笑ったステラは身体を起こして、そう言いながら僕の手を引っ張って上体を起こさせた。


「えい」

「わふっ」


 突然ネグリジェの裾がまくり上げられた。白いお腹が見えたと思った次の瞬間僕はその中にしまい込まれていた。

 そこは濃密な甘い香りに満たされていた。僕は立て膝のステラに寝巻の上から抱え込まれてこの上なく柔らかなところに押し付けられていた。ステラは案の定ブラジャーをつけていなかった。生地を透かせた室内灯の薄翳りの下でそれでも白い肌が眩しすぎて、クラクラした。じっとりと汗に濡れた谷間の奥に手を差し込んでみたいという衝動が湧きあがって、いいとも悪いとも思う暇もなく実行していた。

 や、柔らかい……。モチモチして、きめ細やかで、指の隙間に自重で沈み込んでくる魅惑の肉塊の、ピンと硬く立ったピンク色の頂を夢中で吸い続ける。

 ヤバイよ、もうどこまで我慢できるかわからない。「目の前のこの少女を手に入れることより大切なことが他にあるのか?」という思いと「一時の欲望に身を任せて彼女の人生を狂わせてしまってよいのか?」という理性が戦ってる。その戦いすら圧倒的な快感の前で霞の中に消え去りつつある。

 もういっそ胸に集中しよう。どっちの意味でもその先とか考えるのはやめて頭の中をおっぱいでいっぱいにしよう。


 ……と思いつつも手は勝手に背中を探っていた。ステラはどこもかしこも柔らかくて肌はスベスベと言うより吸い付くようだ。滑らかな背筋から下の方へ向かい、しっぽを通り越してさらに柔らかなところへと指が沈む。さすがにパンツは履いていたけど、妙に布面積が小さくて、フリルが指に触れた。

 胸を吸いながらしっぽの付け根の上の辺りをリズムをつけてトントン叩くとネグリジェの外から「うっ、うっ」と漏れる息が聞こえた。付け根の下側に指を滑らせるとビクリと緊張があった。そして爪の先でカリカリそこを引っかくとステラはビクンビクンと跳ねて、暴れた胸が僕の顔を打った。


 ここは危険だ。僕はステラを押し倒して、下から体を抜いた。

「あはっ」

 そうしたらステラが両手を広げて僕を招いたので、覆いかぶさって再びキスをした。


 後はもうその繰り返しだった。キスをしているうちについ胸に手が引き寄せられて、ネグリジェの中に捕まえられて、背中を撫でてお尻を揉んで、頭が茹って脱出する。そしてとうとうヘトヘトに疲れてしまって僕たちは泥のように眠った。抱き合ったまま、頬を寄せて。


 朝の目覚めは爽快だった。昨日は一日よく体を動かしたからね。寝顔を眺めていたらやがてステラもぱっちりと目を開いた。

「おはよう」

「……ええ、ごきげんよう」

 まだ顔が少し赤い。それでまたキスをして朝の時間を過ごして、食堂で二人分の朝食をもらってきて一緒に食べた。今日は走るのはサボることになった。

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