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新著 日本侵略ー鋼の聖域ー  作者: フリーウェイ
第一章:『鋼の侵食と目覚める量子』
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7/17

第7話:最初の楔(くさび)

お越しいただきありがとうございます、フリーウェイです。


恐怖やテクノロジーによる強制的な支配は、一見すると完璧で隙がないように見えます。しかし、「大切な家族を守りたい」という人間の根源的な意思まで完全に消し去ることは不可能です。


第7話では、河口市役所に潜入した誠たちが、すり替えられた最初のターゲット「横田係長」との対峙、そしてASUKAの量子演算による緊迫の思考解除(ハッキング)へ挑みます。


支配の鎖を断ち切る一瞬の攻防を、どうぞお楽しみください!

午前九時三十分。河口市役所の一階ロビーは、手続きに訪れた大勢の市民たちで賑わっていた。


作業服姿の朝倉誠は、書類を抱えた工事事業者になりすまし、市民課のカウンター奧を静かに見つめていた。


「……いたぞ。一番奥のデスクだ」


誠の耳元で、インカム越しにアズの低い声が届く。アズとナヴァル人の仲間たちは、市役所の外周で監視カメラの死角を確保し、いつでも逃走用の車両を出せるよう待機している。


誠の視界の先に座る男――市民課係長、横田。

書類をめくる手つき、住民票の発行業務をこなす動作は極めてスムーズだ。だが、市民と目を合わせる瞬間、その瞳には生気のない、機械的な光が宿っていた。


《誠、対象を固定(ロックオン)したわ》

脳幹のインプラントを経由して、ASUKAの凛とした声が響く。


《頸椎のインプラントデバイスから、中京セントラルへ向けた常時通信パケットを確認。……間違いないわ、彼はフェイ・シェルよ。ただ――》


ASUKAの聲が一瞬沈んだ。


《脳内の情動領域に、激しい負荷とノイズがかかっているわ。『本物の横田』としての記憶と、中京から注ぎ込まれる制御プロトコルが常に衝突して……激しい精神的拷問を受けている状態よ》


(……可哀想にな。今、楽にしてやる)


誠は上着のポケットの中で、手製の指向性量子シグナル発生器のスイッチを握りしめた。


その時、横田係長がふと書類を置く手を止め、誠のいるロビーの方へ視線を向けた。

わずかに眉がぴくりと跳ね上がる。中京の警戒プログラムが、誠の放つわずかな違和感を検知し始めた証拠だ。


(まずい、気づかれるか……!?)


「すみません、横田係長!」


突然、横田のデスクへ声をかけたのは、作業員風の帽子を深めにかぶった青年――佐藤健太だった。


健太は横田の目の前に書類を差し出し、身を乗り出して低く囁いた。


「『人間畑』の……Cブロックの収容所を覚えていますか? ……あなたの奥さんとお子さんがいる場所です!」


「……ッ!?」


横田の表情が劇的に引きつった。無機質だった瞳に、激しい動揺と「人間の光」が走る。


「な……何を……お前、なぜそれを……!?」


中京のセントラルサーバーから『即座に異分子を排除せよ』という強制命令が下り、横田の首筋の皮膚が青白く発光しかけた。


「今だ、誠!!」健太が叫ぶ。


「うおあぁぁッ!!」


誠は距離を詰め、ポケットの中の発生器から、超至近距離でASUKAの量子ノイズ波形を照射した。


――バチチチッ!!


目に見えない量子波が横田の首元を直撃する。


《ネガティブエントロピー演算、最大展開! 中京の動的暗号通信を破砕(クラック)……『軛』を上書きするわ!》


「ガッ……アアアアアッ!?」


横田が両手で頭を抱え、デスクの上になだれ込んだ。書類が舞い散り、周囲の市民や職員から悲鳴が上がる。


横田の脳内で、中京セントラルの冷酷な思考支配コードと、ASUKAが叩き込む「人間性の解放プログラム」が激しく激突していた。


「横田さん!」健太がその肩を強く掴む。

「騙されるな! 中京の言う通りにしても家族は戻らない! でも、この朝倉さんは……俺たちの軛を解いてくれた! 家族を取り戻すために、俺たちと一緒に戦ってください!」


「家族……妻……娘の……ユキ……!!」


横田の口から、血の滲むような叫びが漏れた。

中京に握られた家族への愛――それこそが彼を縛る鎖であったと同時に、支配を打ち破る最大の「熱量(ネガティブエントロピー)」となった。


――パチンッ!


横田の首筋の異常な発光が消え、彼が激しく息を吐き出しながら床へ倒れ込んだ。


その瞳から無機質な冷たさが完全に消え失せ、ボロボロと溢れ出す涙。


「俺は……俺は……何をさせてられていたんだ……! 妻を……娘を助けてくれ……ッ!」


「……成功だ!」誠は拳を握りしめた。


ASUKAの技術と、健太の叫び、そして横田自身の家族を想う心が、中京の洗脳を完璧に打ち破った瞬間だった。


しかし――市役所の天井に設置された防犯カメラが一斉に赤く点滅を始めた。


《誠、マッド警告! 市役所のネットワークを経由して、中京セントラルが横田の離脱を検知したわ! 警察組織に潜むフェイ・シェルへ『要害排除命令』が下されたわ!》


「くっ、アズ! 横田さんを回収した、脱出するぞ!」


「了解だ、裏口へ回れ!」


覚醒した横田係長を抱え、誠と健太は混乱する市役所の混乱を突いて走り出した。


中京集団が誇る「鋼の支配」に、ついに最初の大きな穴が穿たれたのだ。

第7話をお読みいただき、ありがとうございます!


「家族への想い」という弱点であり最大の熱量と、ASUKAの量子ハッキングが融合し、市役所に潜んでいたフェイ・シェル「横田係長」の洗脳を解除・救出することに成功しました!


敵の圧倒的な支配システムに対し、「一重の綻びから仲間を増やしていく」という誠たちの反撃が本格的な軌道に乗り始めます。


次回・第8話では、救出された横田から語られる「国家中枢への侵食リスト」と、市役所を包囲しようとする中京の警察型フェイ・シェルとの脱出戦闘を描きます!


少しでも面白いと感じていただけましたら、ブックマークや評価等で応援していただくと大変執筆の励みになります!

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