第6話:綻びの糸口
お越しいただきありがとうございます、フリーウェイです。
「完璧に見える侵略システム」や「セントラルによる集中的な統制」であればあるほど、一度綻び(ASUKAによる量子ハッキング)が生じれば、そこから一気に崩壊へと向かっていく――これが朝倉誠たちの最大の反撃の芽となります!
救出した健太の証言を元に最初の「すり替えられた日本人」の特定と奪還・解放作戦へ向けて動き出す第6話を執筆いたしました。
どれほど綿密に組まれた巨大な計画やシステムであっても、現場の末端や人間の感情という「予想外のノイズ」によって、必ずどこかに綻びが生じるものです。
中京集団が誇るセントラルサーバーによる思考統制も例外ではありません。
第6話では、洗脳・すり替えられた日本人を救い出すための最初のターゲット特定と、一筋の光が見えてくる反撃の展開を描きます。
フィクションならではのSFハッキング&潜入サスペンスを、どうぞお楽しみください!
河口市の旧・試作開発室。
薄暗い室内に、ハンダ付けの匂いとモニターの青い光が満ちていた。
「……ここだ。俺がヤードへ運ばれる直前、『すり替えの初期配置』として名前が挙がっていた場所がある」
簡易ベッドから身を起こした佐藤健太が、誠の差し出したタブレット画面の地図を指さした。
そこは河口市役所の「市民課」――住民基本台帳や戸籍管理を司る、行政の心臓部だった。
誠は眉をひそめた。
「市役所の市民課……。戸籍の売買や、実在する日本人の身分データの偽装を現場で直接処理するための拠点か」
《誠、健太さんの記憶データを照合したわ》
ASUKAの電子音が誠の脳幹に心地よく響く。
《河口市役所市民課の係長・横田。彼が半月前から『フェイ・シェル』にすり替わっている可能性が極めて高いわ。元々の本人は市内の自衛隊協力会にも顔を出していた人物……。彼を抑えれば、侵略のネットワーク構造を解析できる》
横で静かに話を聞いていたアズが、腕を組みながら低く呟いた。
「だがマコト、市役所は昼間なら人がごった返している。下手に手を出せば、中京の警察や警備システムに『暴漢』として処理されて終わりだぞ」
「だからこそ、力づくじゃなく『ASUKAのハッキング』を使う」
誠は作業机の上に並べた小型のデバイスを手にとった。父・勝の残した遺産を元に、誠が自宅地下でカスタマイズした指向性量子シグナル発生器だ。
「どんなに緻密に計算された戦略にも、必ず綻びはある。中京のセントラルサーバーは、末端のフェイ・シェルたちを常に暗号化通信で監視・制御している。だが……それは逆に言えば『通信のラインが常に開いている』ということだ」
誠の瞳に、元・軍産テック主任研究者としての鋭い光が宿る。
「横田係長にこのシグナルを照射し、通信のノイズを叩き込む。セントラルからの思考支配(軛)が一瞬でも途絶えれば、 ASUKAが彼の脳内インプラントへ割り込み、本当の意識を再起動できる」
健太が真剣な眼差しで誠を見つめた。
「朝倉さん……横田さんを助け出せたら、彼の中に残っている『本物の横田さんの記憶』から、捕らわれている本物の居場所や、他のフェイ・シェルのリストが手に入るかもしれないんですね?」
「ああ。一人助ければ、そこから次の仲間と情報が手に入る。これが俺たちの反撃だ」
アズが不敵な笑みを浮かべ、誠の肩をぽんと叩いた。
「フッ……大口を叩くじゃないか、社長。ナヴァル人の仲間にも声をかけて、市役所周辺の監視カメラの死角や逃走経路を確保させておく」
「頼む、アズ。健太さんはここで休んでいてくれ」
「いいえ、俺も行きます」
健太は力強い足取りで立ち上がった。
「俺はフェイ・シェルの内側の仕組みを知っています。中京の奴らがどんな波形を出して警戒モードに入るか、俺なら肌でわかる。役に立たせてください!」
誠は健太の目を見つめ、静かに頷いた。
「わかった。頼もしいよ、健太さん」
中京集団が日本を「居抜き」にするために張り巡らせた絶望の網。
だが今、朝倉誠と《ASUKA》、そして泥臭く立ち上がった人間たちの手によって、その完璧な網目に小さな、しかし確実な「綻び」が生まれようとしていた。
「よし……決行は明日の開庁直後だ。本物の日本人を取り戻しに行くぞ!」
第6話をお読みいただき、ありがとうございます!
中京集団の支配網に対し、市役所に潜むフェイ・シェル「横田係長」をターゲットとした最初の奪還・解放作戦が立案されました。
1人を救い出せば、そこから敵のネットワークが崩れていく――誠たちの反撃がいよいよ本格化します。
次回・第7話では、白昼の市役所を舞台にした緊迫の潜入&量子ハッキング作戦(横田の解放劇)をお届けします!
少しでも面白いと感じていただけましたら、ブックマークや評価等で応援していただけると大変執筆の励みになります!




