第5話:侵食される盾
お越しいただきありがとうございます、フリーウェイです。
ふと耳にした話なのですが、日本の自衛隊員の奥様方のうち、実に800人以上が中〇(特定外国)出身の女性であるという実状があるそうです。さらに、そのお子さんたちが何らかの形で本国へ「里帰り」をしたまま、二度と日本へ帰ってこないという事例も決して少なくないのだとか……。
守るべき国の盾や、その家庭を通じて静かに何かが浸透していくような――どこか背筋が凍るような恐ろしさを感じてしまうエピソードですが、もちろん本作品に登場する人物や設定とは全く関係のない、ただの現実の雑学(?)です。
あくまでフィクションとして、物語の展開をお楽しみいただければ幸いです。
それでは、第5話へどうぞ。
河口市の路地裏に佇む、古びた二階建ての雑居ビル。
ここは朝倉電子精密がかつて使っていた旧・試作開発室であり、地図にも載っていない誠たちの「隠れ家」だった。
軽トラから運び込まれた青年――元『FS-07』は、簡易ベッドの上でゆっくりと瞼を開けた。
「う……あ……」
その瞳には、もはやヤードで浮べていたカメラレンズのような冷酷さはない。怯えと、戸惑いと、そして人間らしい感情が戻っていた。
アズが温かいお茶の入った紙コップを差し出す。
「落ち着け。ここは中京の監視カメラも届かない場所だ。……俺はナヴァル人のアズ。こっちはマコトだ」
青年は震える手でコップを受け取り、喉を鳴らして飲み干した。
「俺は……健太……佐藤健太です……。助けて……くれたんですね……」
誠は健太の目線に合わせてかがみ込んだ。
「健太さん。君を縛っていた『中京の鎖』はASUKAが切った。覚えていることを話してくれないか? 君の身に何があったのか……そして中京が何をしようとしているのかを」
健太は絶望に顔を歪め、ボロボロと涙をこぼしながら語り始めた。
「俺は……父さんの病気の治療費のために、怪しい高収入バイトに応募したんです。でも、連れて行かれたのは海外の……中国の奥地にある『人間畑』と呼ばれる広大な監禁集落でした……」
アズが苦く息を吐き出す。
「やはりな……」
「そこには、俺たちみたいな日本人や、ナヴァル人のご家族たちが大勢閉じ込められていました。逃げ出そうとした奴らは見せしめに殺され……俺は『顔と体格が日本人そのまま使える』という理由で選ばれ……身体中に機械を埋め込まれて……」
健太は自分の首元を震える手で撫でた。
「思考を機械に繋がれてからは、自分の意志では動けなくなりました。でも、脳の隅っこで聞こえるんです。中京のセントラルサーバーから流れてくる『命令』が……」
誠の瞳が鋭くなった。
「どんな命令だ?」
「すり替え……です」
健太の声が恐怖で引きつる。
「『テンプレート抽出ライン』でコピーされた本物の日本人のデータを使って……警察官や、市役所の職員、そして……自衛隊員になりすますんです。本物は殺されるか、『人間畑』へ運ばれ……代わりに中京の意志で動くフェイ・シェルが、日本の機関に紛れ込んでいく……」
誠は息を呑んだ。
《誠、健太さんの証言は私の解析結果と合致するわ》
ASUKAの声が静かに流れる。
《戸籍の売買や泥棒車のニコイチは資金源にすぎない。本命は、防衛網や行政組織の重要ポストを内側からフェイ・シェルに入れ替える『居抜き侵略』……。すでに自衛隊の基地周辺や、幹部クラスの身辺にも手が伸びている可能性が高いわ》
「そんな……それじゃあ、自衛隊や警察に助けを求めても……!」
アズが言葉を失う。
「ああ。通報した先がすでに『フェイ・シェル』かもしれないんだ」
誠は固く拳を握りしめた。
国の盾である自衛隊や警察までもが、裏から静かに浸透され、すり替えられているという絶望的な現実。
だが、誠の瞳から光は消えなかった。
「でも、希望はある。健太さん、君の『軛』は解けた。中京の思考支配は完璧じゃない。ASUKAの力があれば、すり替えられた人たちを解放し、仲間を増やすことができる」
誠は健太の手を強く握りしめた。
「健太さん、そしてアズ。俺たちの手で、『人間畑』に囚われている家族も、すり替えられた日本人たちも、全員助け出そう。……この国を、絶対に渡さない」
暗闇の隠れ家の中で、誠の力強い宣言が静かに響き渡った。
第5話をお読みいただき、ありがとうございます!
前書きの自衛隊への浸透というテーマから地続きで、作中での「居抜き侵略」の真実と、すり替えの恐怖が健太の口から明かされました。
警察も自衛隊も頼れないという圧倒的孤立の中、誠と《ASUKA》、そして救出された健太とアズたちの反撃作戦が動き出します。
次回・第6話では、中京集団が隠れ家を特定すべく放つ次なる刺客と、誠たちの最初の「奪還作戦」の準備が描かれます。
少しでも面白いと感じていただけましたら、ブックマークや評価等で応援していただけると大変執筆の励みになります!




