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新著 日本侵略ー鋼の聖域ー  作者: フリーウェイ
第一章:『鋼の侵食と目覚める量子』
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3/17

第3話:軛(くびき)を解く者

お越しいただきありがとうございます、フリーウェイです。


前話では、生体侵略兵器「フェイ・シェル」の哀しい出自と、中京集団が誇る恐るべき「人間畑」の存在が明かされました。


この第3話から、物語は本格的な第一章へと突入します。

ただ敵を打ち倒すのではなく、奪われた人間性と自由を取り戻すための朝倉誠と《ASUKA》の最初の「解放(ハッキング)」の瞬間を、ぜひ見届けていただければ幸いです。


※本作はフィクションであり、実在の人物・団体・国家等とは一切関係ありません。

ヤードの薄暗いコンテナ影。

無機質な瞳で誠を見つめるフェイ・シェル候補生『FS-07』。


その身体は、中京集団の高度なサイバネティクス技術によって強化され、頸椎に埋め込まれたインプラントを通じて中央サーバー『中京セントラル』と常時接続されている。


「ア……サ……ク……ラ……」


FS-07の口から漏れる合成音のような声。だが、その瞳の奥には、中京の支配プログラムに押し潰されそうな“生身の人間の悲鳴”が確かに渦巻いていた。


誠は手のひらに握りしめた手製の量子シグナルノードを固く握り直した。


「アズ、バックアップを頼む。あいつの通信プロトコルを遮断し、ASUKAの介入経路を作る」


「無茶だ、マコト! 中京のセキュリティは軍用規格だぞ! 一歩間違えれば、お前の脳幹のAI(アスカ)ごと焼き切られる!」


アズの制止を背に、誠はまっすぐにFS-07へ近づいた。


「大丈夫だ。親父が遺したこの《ASUKA》は……そんな底の浅い技術じゃない」


誠の視界に、鮮烈な青いAR透過ウィンドウが拡散する。


――ピッ。


《誠、FS-07のインプラント通信周波数を特定したわ。中京セントラルからの思考強制同期信号……暗号キーは2048ビット動的暗号。普通なら解除に数年かかるけれど――》


ASUKAの凛とした声が誠の脳内に響き渡る。


《ネガティブエントロピー量子演算、並列展開。ノイズ相殺波形をアンプリファイ(増幅)……誠、シグナルノードを彼の首元へ!》


FS-07が急激に「警戒モード」へ移行しようと、超人的な速度で右腕を振り上げた。チタン合金で補強された拳が誠の顔面へ迫る。


「……させない!」


横から飛び込んだのはアズだった。大柄な身体でFS-07の腕を強引に抱え込み、必死に抑え込む。


「今だ、マコトーーッ!」


「うおおおっ!」


誠は飛び込み、FS-07の頸椎へ手製のノードを叩きつけた。


――バチチッ!!


青白い放電現象がヤードの闇を照らす。


《量子ハッキング開始! 中京セントラルの思考支配通信を逆相殺……『軛』を破砕(クラック)するわ!》


FS-07の身体が激しく痙攣した。無機質だった瞳のカメラレンズが激しく明滅し、中京のサーバーから送られてくる大量の制御コードと、ASUKAが打ち込む解放プログラミングが脳内で激突する。


「ガ……ァ……ッ……アアアアアッ!?」


FS-07の口から、機械音ではない、生の男の叫びが迸った。


そして――パチン、と小さな電子音が途絶える音がした。


FS-07の膝が折れ、地面に崩れ落ちる。

その瞳から冷酷な光が消え、人間らしい困惑と、濁りのない涙が溢れ出していた。


「あ……が……俺は……俺は一体……」


胸を押さえ、途切れ途切れに息を吐く男。

誠は男の肩を抱きかかえた。


「大丈夫だ。もうお前を操る『鎖』は切った」


男は震える手で誠の作業服を掴んだ。


「助け……て……家族が……中京の『人間畑』に……俺の妹が……」


「わかっている。必ず助け出す」


誠の言葉に、男は安心したように意識を失った。


アズが目を見開き、膝をついた男と誠を交互に見つめた。


「信じられない……。中京のセントラル接続を、外部から上書きして解除したというのか……!?」


「親父の遺産と、ASUKAの力だ」


誠が息を整えたその瞬間――ヤード全体に、刺すような高音の警報アラームが鳴り響いた。


――ウウウウウウウウウウウウウウウッ!!


ヤードの至るところに配置された監視カメラが一斉に赤く発光し、誠たちを捕捉する。


《誠、マッド判定よ! 中京セントラルがFS-07のオフラインを検知したわ! ヤード全体の『警戒プロトコル』が発動する!》


ヤードの奥、コンテナの迷路から、ドスドスと重い足音が近づいてくる。

一台や二台ではない。歩き方を学習し終えた複数の「フェイ・シェル」たち、そして――


「マコト、走れ! ヤードの門が閉ざされる前に!」


アズが叫び、意識を失ったFS-07の男を背負い上げた。


誠は父の整備バッグを抱え直し、ヤードの出口へ向かって駆け出した。

背後から追いかけてくるのは、国家の根幹を裏からむしばみ、人々の身分と人生を奪う侵略の足音。


誠は走りながら、脳内のASUKAに強く語りかけた。


(ASUKA……この街だけじゃない。警察も、自衛隊も……すでにすり替わっている可能性があるな?)


《ええ。フェイ・シェルのテンプレート抽出データは、すでに各地の行政・防衛網へ送信されている形跡があるわ。……誠、本当の戦いが始まるわね》


「望むところだ。この国を『居抜き』になんて、絶対にさせない!」


鉄と油の匂い立つヤードを抜け、朝倉誠の抗いの物語が、本格的に走り出した。

第3話をお読みいただき、ありがとうございます!


ASUKAの量子ハッキングによって、フェイ・シェル(FS-07)を縛っていた「中京の軛(思考支配)」を解除し、一人の人間として救い出す最初の勝利を描きました。


しかし、中京セントラルの警報が発令され、ヤード全体が敵へと変貌します。


次話(第4話)では、追撃してくる暗殺兵器「サイバッド」や、封鎖される河口ヤードからの決死の脱出劇をお届けします。


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