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新著 日本侵略ー鋼の聖域ー  作者: フリーウェイ
第一章:『鋼の侵食と目覚める量子』
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2/17

第2話:フェイ・シェルの記憶

お越しいただきありがとうございます、フリーウェイです。


第1話では、主人公・朝倉誠のバックボーンと、ヤードの暗部に潜む「居抜き侵略」の入口を描きました。


第2話では、ヤードの奥で待ち受けていた“人間ではない影”――生体侵略兵器「フェイ・シェル」候補生との対峙を通じて、中京集団が行っている戦律の非人道的なアプローチと、誠と《ASUKA》が挑む「救済」の戦いの芽生えを描いていきます。


肩の力を抜いて、SFサスペンスとしての展開をお楽しみいただければ幸いです。

コンテナの影から現れたその“影”は、薄暗い作業灯の下でゆっくりと足を止めた。


外見は二十代半ばの日本人男性。

だが、その佇まいには「生命の揺らぎ」が一切ない。皮膚の質感は均一すぎ、左右対称すぎる目元、そして瞬きひとつしない瞳。


「……誰だ?」


誠が問いかけると、アズがサッと誠の前に立ちふさがった。

その背中は、かすかに震えている。


「マコト、下がるんだ……! あいつはナヴァル人でも、中京の通常の工作員でもない。……“フェイ・シェル”だ」


影――男の姿をしたナニカは、無言のままこちらへ一歩踏み出した。

その歩調は完璧な等間隔であり、まるで人間らしく歩くための運動プログラムを逐一トレースしているかのようだった。


誠の視界に、脳幹のインプラントを経由して《ASUKA》の透過ウィンドウが広がる。


――ピッ。


《誠、対象の生態・構造スキャンを開始するわ。……これは凄惨ね》


ASUKAの声が、誠の頭の中に直接響く。


《外形は複数の日本人の生体データを基にした精巧な人工皮膚。だが骨格と筋肉組織の一部には、サイバネティクス補強と生体適合チタン合金が組み込まれている。そして――頸椎から脳幹にかけて、中京セントラルサーバーと接続するためのインプラント制御デバイスが埋め込まれているわ》


(制御デバイス……? 操られているのか?)


誠が心の中で問うと、ASUKAは静かに肯定した。


《ええ。対象の識別コードは『FS-07』。元々は生身の人間よ。中京の本国にある大規模な強制集落――通称『人間畑』から、日本人に近い容姿や体格を持つ者が選出され、非人道的な生体・思考改造を施されているの》


誠は絶句した。


(元は……生身の人間だと……!?)


「アズ、あいつらは……全員、そんな目に遭わされているのか?」


誠の低く絞り出すような声に、アズは苦い顔で首を縦に振った。


「ああ……。中京の『人間畑』は、俺たちナヴァル人の家族だけでなく、周辺の貧困層や反分子の人間たちが押し込められている絶望の村だ。そこから連れてこられた奴らは、思考の軛(くびき)を打ち込まれ、意識を奪われ、日本人の仕草や言葉を叩き込まれる……。完成すれば、本物の日本人の戸籍や身分を奪って、社会に紛れ込むんだ」


アズの拳から、皮膚が白くなるほどの強い力がこもる。


「あいつらも……好きでこんなバケモノになったわけじゃない。家族を人質に取られ、身体を刻まれ、心を中京の機械に繋がれた被害者なんだよ……!」


その時、FS-07の無機質な瞳が、ジッと誠の顔を捉えた。


「……ア……サ……ク……ラ……」


FS-07の喉から、合成音のような、だがどこか生身の掠れた声が漏れ出た。


誠は目を見張った。

「俺の名前を……知っているのか?」


FS-07は答えず、首を傾げた。その動作は、誠の視線や呼吸のリズムをリアルタイムで「学習」している動きだった。

だが、そのカメラレンズのような瞳の奥底に――誠は見た。


ほんの一瞬、電子ノイズの合間に明滅した、耐えがたい苦痛と悲鳴のような“生の輝き”を。


《誠! FS-07の脳波ログに、微弱なネガティブエントロピーの揺らぎ(個人の意思の残滓)を検知したわ!》


ASUKAの叫びが脳内に響く。


《中京セントラルの思考強制接続が、彼の本来の記憶と感情を押し潰している……。でも、完全に消えたわけじゃないわ! 私の量子演算でインプラントの暗号通信を逆相殺すれば、一瞬だけでも彼の“軛”を解けるかもしれない!》


誠の胸の奥で、父・勝の遺した言葉と、泥臭い己のエンジニア魂が熱く燃え上がった。


巨大軍産テック企業を捨て、父の会社を継ぎ、この《ASUKA》を自らの脳に埋め込んだ理由。

それは単に自保のためでも、兵器を作るためでもない。

奪われた技術、奪われた人間性を取り戻すためだ。


「アズ……あいつを破壊させはしない。……助け出す」


「何……!? 助けるだと!?」


誠は父の工具バッグから手製の量子シグナルノードを取り出し、手のひらに握りしめた。


「親父の遺したASUKAなら、あの哀れな男を縛る『中京の鎖』を切れる。アズ、俺を信じてくれ。ナヴァル人の家族も、あのフェイ・シェルたちも……俺たちが全員救い出す!」


誠は腹を括り、FS-07に向かって強く一歩を踏み出した。


第2話もお読みいただき、ありがとうございます!


フェイ・シェル(FS-07)が単なる無感情な機械モンスターではなく、中京の非人道的な「人間畑」から引きずり出され、心と身体を切り刻まれた生身の被害者であることが明かされました。


絶望的な技術差と侵略の構造に対し、誠の決意と《ASUKA》の量子ハッキング能力がどう打ち克っていくのか。次話では、いよいよ最初の「思考の軛の解除(救済)」と、ヤードからの激しい脱出劇が描かれます!


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