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後列モブは巻き込まれ体質すぎて悪役令嬢を放っておけない〜実は隠れ溺愛されてたとか受け入れられません!〜  作者: 皆神 わいら
第4章 後列モブは巻き込まれない

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第19話 現場への急行(クリストフ視点)

王城から少し離れた場所にある森が、狩猟大会の会場だった。

普段は王族のみの立ち入りしか許可されておらず、動物や植物がのびのびと生育している。

狩猟大会前にある程度の整備はされているが、年に数回の間引き程度では影響がないほど豊かだ。

ゆっくり馬を歩かせていると、時折野生動物が顔を覗かせる。

初めての狩猟大会では結果を残させてもらったが、ずっと貰い続けるわけにもいかず、程よく楽しむ程度に参加してきた。

次に結果を出すのは、エルナを迎えてからと決めている。

何より、皆に楽しんでもらうのがこの大会の目的なのだから。


弓を背負ってはいても、特に使用することなく森の中を散策する。

馬上から見る景色は、人の高さよりもかなり高い。

ヴァレッタは乗馬を得意としていたが、エルナはどうだろうか。

お転婆そうに見えるが、海遊びに忙しくて、馬遊びはしていないかもしれないな、と小さく笑みが漏れる。


「殿下?」


突然笑い出した俺に怪訝な顔を寄越すトビアスに、好きに狩りをしてこいと命じたものの、すげなく断られた。


「お前が行かなければ、ディートもクラウスも離れられないだろう?」


私の散策に合わせて後ろからついてきているディートリッヒは、本当は狩りに繰り出したくてうずうずしているはずだ。


「殿下、私はまだ馬が得意ではなく。散策にお付き合いできた方がありがたいです」


クラウスがそう申し出るので、トビアスにはディートリッヒと共にきちんと狩猟大会に参加するよう申し付け、追い払った。

慣れない馬の扱いに苦戦するクラウスに助言をしながら散策を続ける。


「学園はどうだ?」


卒業した俺の代わりに、テオドールが入学するまでの期間を生徒会長として務めることになったクラウスからは度々報告は受けているものの、ふたりきりでしか聞き出せないこともあるだろうと声をかける。


「まだまだですよ。私は裏方向きなんです。なんとかやっていけているのは、テオドール殿下の側近の方々が熱心なお陰です」

「彼らはテオドールを支えなければと使命感に燃えているようだ」


俺はやや小柄で愛くるしい見た目の弟を思い出す。

人見知りがあるのか、母上の後ろや柱の影に隠れがちではあるものの、俺の鍛錬を見学しにきたり、話を真剣な顔で聞き入る様子には、王子としての自覚が少なからずあるように見受けられる。


「そうかもしれませんね。来年にはテオドール殿下が生徒会長として采配を奮っていただかなければなりませんから」


クラウスもテオドールのことを思い出しながら話しているのだろう、どこか心配そうだ。


「助けたいと思わせるのも、上に立つものの資質かもしれないとは思わないか?」


庇護欲を掻き立てる見た目をうまく使うことができれば……。

いや、無理を強いるのはよそう。

あれの扱いが上達すると、少し俺としては都合が悪い。


「それで行くと、エルナ様は自然体なご様子が評判のようですね」

「お陰で国民の王室人気が回復どころかすっかりうなぎのぼりだと聞いた」


元々領民に混じって遊び育ったエルナだ。

為人をよく知った者たちが多く国民側にいることを考えると、予想の範疇内と言える。


「貴族からの評判は二分するようですが……」

「彼女なりに必死に努力している。どうか見守り支えてくれると嬉しい」


馬の動きに揺られながら今朝のエルナを思い出す。

ひどい疲労から起き上がることのできず朝まで就寝してしまったと思い込んでいるようだが、それは違う。

起こそうと思えば起こせた。

実際に、一度は起こそうとしたのだ。

少し早く迎えに行くと、眉間に皺を寄せながらソファに身を預けるエルナがいた。

苦しそうな様子から解放したくて声をかけると、顔の力が抜けて、ふにゃりと笑った。

俺の声を聞いたせいだ、と思うのは流石に自惚れだろうか。

心地よさそうに眠るエルナを、俺は起こせなかった。

ソファからベッドへ移動させると、夜着に着替えさせるようメイドに指示し、晩餐会へと向かったのだ。

俺のわがままのせいで、晩餐会を欠席したことを気に病んでいたエルナだったが、ガーデンパーティへ向かう頃にはすっかりいつもの意気を取り戻していた。


(母上もそばにいるし、何もなければいいが)


その後も狩りをするわけでもなく、散策をして狩猟大会を終えた俺が王城へ戻ると、そこに待ち受けていたのは、まさかの王妃毒殺未遂事件だった。




「母上、ご無事ですか?」


城へ着くなり状況を聞いた俺は、父上と共にガーデンパーティの会場へ急行した。

懐かしい庭のはずなのに、どこか知らない場所のように感じる。

会場のやや奥で王妃の姿を認め、駆けつけようとすると国王が俺を追い越して王妃に駆け寄っていった。


「ブリンちゃん!ブリンちゃん!」

「人前では呼ばないよう言いましたよね」


慌てて駆けつけた父に対して、平常運転の母の様子に、大きな問題はないように見える。

父から一歩遅れて側に寄ると、母が俺に向けて発した第一声は、エルナへの評価だった。


「クリス、エルナさんが私を助けてくれた。彼女はとても素晴らしい判断力を持つ女性だ」

「王妃様……」


エルナの声を頼りに振り返れば、なぜか母上の側仕えに椅子から立たないよう言い付けられている。

その顔を見れば、蒼白で手が震えているように見えた。


「エルナ!……無事でよかった。母上を助けてくれてありがとう。詳しく聞くのは落ち着いてからにするから。色々と考えてしまうかもしれないけれど、まずは気にしなくていいからね」


驚かせないように、駆け寄りたいのを我慢してゆっくりと近づくと、そっと抱きしめた。

胸の前で握り合わせていた手が膝へ下がり、俺の肩に恐る恐る頭を預けた。

しばらくずっとこうしていたいが、そうもいかない。

一度ギュッと抱きしめる腕に力を入れてから、そっと体を話すと、不安そうに見上げるエルナに、なんとも言えない気分になる。

ひっつきすぎて鬱陶しがられている父を横目に、俺は近寄ってきた医官と側仕えに話を聞いた。


王妃の飲もうとした飲み物から毒物が検出されたことを、簡潔に報告される。

お祭り騒ぎとはいえ、厳戒態勢の中、毒を持ち込むことができるなんて。

未だ出入りを禁じたままの会場は、不安を通り越して不満が漏れ出しそうな予感がした。


さて、どうしようか。

思案していると、エルナが小さく袖を引いてきた。


「ねえ、クリストフ。ちょっと話をしてもいい?」


ふたりきりの時は名を呼んでほしいと繰り返し要求して、ようやく呼び捨てができるようになってきたエルナが、こんな時に小声で俺を呼んだ。


「もちろんだよ。どうしたの?」


俺は他の者から聞こえないだろう場所にエルナを連れ出し、話を聞くことにした。

そこで聞いた話は、俺にとって十分に衝撃的なものだった。


「実はね、王妃様が飲もうとしたカップは、元々私に提供された飲み物だったの」

「なんだって?」

「王妃様が珍しい紅茶を飲みたいと言ったので交換したの」

「なんてことだ……」


つまり、狙われたのは母ではなく、エルナだったと。

言葉にすれば恐怖が蘇ったのだろう、体をぶるりと震わせた。

頼みの綱の王妃を助ける側に回るとは思いもしなかったのだろう、心細かったに違いないのに、彼女は行動することを躊躇わなかった。

そして今は、恐れと立ち向かいながらも、己の知る重要な情報を俺に伝えてくれた。


(ああ、やっぱり君じゃなきゃ……)


「びっくりしたね。もう大丈夫だ、俺がいる。ひとりじゃないよ」


安心したようにひとつ笑うと、エルナはさらに続けた。


「その飲み物を入れてくれた人なんだけど……」


その人物は、予想外とは言えないものの、これだけの暴挙に出る人物とは思えず、少なからず驚きを隠せなかった。

しかし、方法がわからない。


「方法、というか、もしかしてと思うことがあるんだけど」


自信なさげにエルナが教えてくれたのは、家門が秘匿する技術を暴くものであった。

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