第7話 王族の一員になるということ(1)
グランツフェルトは王政を敷く国だ。
国王を頂点に頂き、国内をいくつかに分割し、領主として貴族らにその統治を任せている。
そのため、王族の血を絶やさないために側妃制度はあるし、政略結婚も多い。
過去にはその政略結婚さえ国王の承認が必要だった時代もあったが、現在ではそれぞれの家門に任されている。
国王を頂点としているものの、国政に関しては議会も設けており、王族による独裁を防いでいる。
というのは、別に妃教育で学んだというわけじゃない。
グランツフェルトの国民であれば、幼少期からなんとなく家族に言い聞かされ、貴族の子女であれば学園であらためて学ぶ基本知識だ。
では、現在の王室はどうかというと、国王夫婦とその息子王子二人のみ。
もしもの時は順位に従って国王に指名されることになっており、現国王の兄弟姉妹は既に臣籍降下している。
原作では男爵令嬢に恋したチョロ王太子を操る形でブランシュフォード公爵家がクーデターを起こす。
議会と王室の両方を掌握したことで権力をほしいままにするも、独裁してうまくまわせるほどこの国の運営は容易ではなく、あちこちに火種が燻り、爆発し、火消しに躍起になっているうちに圧政に変わったことで国外に流れていた公爵家の血筋を汲む令嬢の蜂起によって泡沫の夢と消えた。
ざっくりとした原作知識のない私には細かいところまで覚えがないのだが、国内はかなり荒れてしまったらしい。
記憶を取り戻した頃にヴァレッタ様から見せられた原作の流れを書き起こしたノートは大部分が端折られてはいたものの、国の再建に相当の年月がかかったと書かれていた。
ところが、前世もちが複数人いたことによって、チョロ王子は冷静というより腹黒王子となり、救国の悪役令嬢は穏便婚約解消を叶え、長年の想い人とゴールイン確定、傾国の男爵令嬢はメンタルを回復し学園に復帰、名前も顔も描かれない後列モブが王太子妃予定という番狂わせの結果、今に至る。
こんなにうまくいくもんかね、と思いながらもこの先がどう動くかなんて読めない私には目の前のことに対処するのでいっぱいいっぱいだ。
ただ、ありがたいことがある。
側妃を持たなかったんだが、持てなかったんだが詳しいことは知らないが、現在側妃のいないグランツフェルト王家はとても仲が良い。
薄々気づいてはいたが、王妃様の発言権が強いったらない。
美しいだけでなく、肝っ玉が座っている。
そして何より、気遣いを感じさせずに、よくしてくれるのがすごい。
うん、語彙力がない。
特にありがたかったのが、王城に一室賜ってからの食事問題だ。
田舎領地で大家族でワイワイ食事をしていたのが常だった私は、学園の寮に入ってから存在感を消してひっそり食べる食事の時間が嫌でたまらなかった。
なんとなく力のありそうな令嬢の端っこで卒業まで生き延びて、領地に帰るまでの辛抱と我慢はしていたものの、食事は毎日のことだ。
日に日に寂しさが募っていた。
王城に上がれば、もっと寂しいかもしれない。
もはや誰もいない食堂か、自室でひっそり食事を摂るのかな〜なんて思っていたが、その予想は見事に覆された。
なんと、現グランツフェルト王家はなるべく一緒に食事を摂るのが決まりらしい!
決めたのは、もちろん王妃様だ。
そのおかげで、王城に滞在するようになった一日目から夕食どきに寂しい思いをすることなく過ごせている。
めっちゃ緊張するけど。
それも最近では会話を楽しみながらお食事できるようになってきたのは、マナーや所作を叩き込んでくれたメラニー女史のおかげだ。
すんごく厳しかったけど。
厳しいとは言っても、私のマナーがなってなかったせいだし文句は言えない。
所作やマナーというのは、レベルがある。
貴族ならみんな同じだけできるってわけではないのだ。
男爵家、子爵家が手配できる家庭教師と、公爵家が手配できる家庭教師は同じではない。
必然、教える内容も変わるから、できることも変わってくる。
その中でも最高峰の出来を求められるのが王族だ。
私?南の端っこの貧乏伯爵令嬢ですよ。
そんな高等教育を家庭で受けているわけがないじゃないですか〜。
そもそも家庭教師を雇う余裕なんてなかった我が家は、お母様がなんとなく開くおうち教室で兄弟姉妹みんなが学ぶというスタイル。
そのうち長子が下の兄弟を教えたり、親族の子らが入ってきたりという感じだ。
つまり、あんまり真面目にやってこなかったってわけ。
流石に当主の妻たるお母様はそれなりにできる人だったのに、あん時ちゃんとやっておけばよかったな〜なんて後悔をしても遅い。
後悔の気持ちはバネにするのがいちばん!
今を頑張る気持ちに変換して、私は王族に求められる所作の習得に邁進している。
そして今日も、学園から王城へ戻れば私につけられたメイドから夕食に招待されたことを知らされた。
本来であれば専属の侍女がつくのだが、まだ人選が定まっていないらしい。
もちろん口を出しているのはクリストフ殿下だ。
あの人は自分なりの考えがあるらしく、もうお任せすることにした。
なんかもう、抵抗するだけ無駄って気がしてきたよね。
制服から着替えると、夕食前のわずかな時間にもメラニー女史の授業がある。
前世でいうところの塾のような感じだ。
座学授業の他にお辞儀の仕方やお茶会のマナー、ダンスのレッスンも入る。
所作とダンスは最初の頃にみっちり扱かれたせいで、最近は座学中心だ他、先日のような毒の授業なんて突飛なものもたまにある。
前世知識があるおかげか、割とスルスル覚えていけるんだけど、外国語がね〜、なかなか難しいよね。
そんなことをしているうちに夕食の時間が近づき、晩餐用のドレスに着替えて王族用食堂へ案内される。
ちなみにメラニー女史は愛しの旦那様と絶対に夕食を共にすると誓っているらしく、時間になると絶対にお帰りになるので、助かってるってのはここだけの秘密ね。
食堂へ着くと、すでに国王夫妻とテオドール様が待っていた。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
長くなってきたので、分割しました。
次のお話もぜひ、お楽しみに♪




