第6話 転生者、二人集まれば文珠まであと少し
確定すぎる発言をいただいて、胸の奥の緊張がすっとほどけた。
私はゆっくりとうなずき、言葉を返す。
「はい。どうやら、前世の記憶を思い出したようです」
「!!……なんてこと! 私以外にもいらっしゃったのね!」
さっきまで震えていたヴァレッタ様の指先がほどけていく。
この世の終わりみたいな顔をしていたのに、一転して大輪の薔薇が咲くような笑顔を見せる。
(う〜ん、美しすぎる。フィクション世界の公爵令嬢つおい)
その変化に、周囲の取り巻きたちも胸を撫で下ろしたようだ。
空気がふっと軽くなる。
おや?
下剋上狙いの令嬢ばかりではない?
取り巻きの視線は、打算というより“仲間を案じる色”が混じっていた。
(もしかして、ざまあ回避も案外いけるのでは?)
原作とは違う温かさに、原作回避への望みが芽生える。
「わたくし、このままでは、その……」
そうだ。
今はヴァレッタ様のお悩み相談室の真っ最中だった。
自分から持ちかけたというのに、問題に正解したからすっかり終わった気分になっていた。
いかんいかん。
ヴァレッタ様はこのままじゃざまあ展開まっしぐら?だし、
私ら取り巻き令嬢だってどうなるかわからない。
いくら信頼関係ができていそうでも、それとこれとは話が別。
ざまあするのは王子様だし、問題は原作ヒロインちゃんとの関係だ。
お互いの死活問題でもあるし、なんとかしたいのは山々だが──ここでは人目が多すぎる。
「ヴァレッタ様、その件はこのような場所でおいそれと口にすることはできませんわ。
でも、私自身もヴァレッタ様のお力になりたいと存じます」
(それがひいては私の生き残りにも関わるからね!)
すべてはゆるぬるライフのため!
悪役令嬢の取り巻き転落コースは回避一択!
うんうん、と必死にうなずくヴァレッタ様。
なあに〜?この可愛い生き物。
悪役令嬢じゃなくて、小動物の間違いなんじゃない〜?
「あの、もしよろしければ次の休みに、我が家へご招待してもよろしいかしら?」
いいよいいよ〜。
取り巻きがいると好き勝手話せないもんね!
本心からヴァレッタ様を心配している雰囲気は感じるけど、
転生者の会話に巻き込むのは酷だし、通じるかわからんし。
というわけで、流石にご自宅まで押しかける取り巻き令嬢は門前払いだろうから、
ヴァレッタ様のテリトリーでなら安全に話せるだろう。
「もちろんでございます。ありがたくお受けいたします」
割と強めに両手を握られ、「きっとよ?」と念を押された私は、
週末の朝イチにローゼンベルク邸からの使者に伴われて、
休日のヴァレッタ様にお会いすることとなった。
後列モブがまさかお嬢様にお呼ばれするなんてねえ。
あれ?
私、ゆるくてぬるい令嬢ライフを所望してなかったっけ?
いや、どうやらこのままじゃいかんと気づいたんだから、
前世の知識でざまあ回避、連座転落回避しなくっちゃ!
話はそこからだ。
そんなこんなで、前世を思い出した私はぬるく生きたいはずなのに、
気づけば悪役令嬢の屋敷へ行く約束をしていた。
(ゆるぬるライフ、遠ざかってない……?)
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