第5話 まだオブラートに包みたいお年頃
ちょこっと改稿しました!
しまった!
まだヴァレッタ様とのお茶会の最中だった。
慌てて居住まいを正し、令嬢らしい微笑を顔面に貼り付ける。
こういう時だけ、前世の「とりあえず笑っとけ精神」が役に立つ。
「はい。本当に大丈夫です。ただ、ちょっと……」
言いかけて、ふと気づく。
気になることがあって、と続けようとしたのはなぜだろう。
よくよく見ると──
ヴァレッタ様のどこが悪役令嬢なのか、本当にわからない。
令嬢の鑑とまで言われるその姿勢。
末端の取り巻きにまで気を遣う優しさ。
公爵令嬢とは思えないほどの気の弱そうな表情。
そういえば、いつもやいのやいのと噛み付いているのは取り巻き令嬢だった。
ヴァレッタ様はそのたびに口をつぐみ、辛そうに目を伏せていた気がする。
あれ?おかしいな。
原作でも、現実でも、──そうしてなかったか?
(もしかして……)
胸の奥で、いくつかの仮説が形になる。
それは、言葉にしてしまえば戻れないかもしれないけど。
「ヴァレッタ様、不躾な質問をよろしいでしょうか」
当たり障りのない返答しかしていなかった私が、ようやく普通の会話をしようとしていると気づいたのだろう。
ヴァレッタ様は途端に破顔し、「ええ、もちろんよ」と朗らかというよりは懇願するように前のめりになった。
視界の端に、胸の前で握りしめた両手が見える。
(もしかしたら違うかも。けど、もしそうだとしたら……)
ここでハッキリさせなければ、次いつふたりで話せるかわからない。
とはいえ、あからさまな聞き方をして違ったら面倒だ。
言葉選びは慎重にしなくちゃ。
(あとからいくらでもはぐらかせるような聞き方にしよう。……もし私の思った通りなら、きっと何かしら反応してくれるはず)
「思い違いでしたら申し訳ありません。
ヴァレッタ様、もしかして何かにお悩みではありませんか?」
(バカー!わりとストレート!聞き方ー!)
曲がりなりにも令嬢としてもう少しオブラート包むつもりだったのに、
前世を思い出した影響か、どうしても思考も発言も前世よりになってしまう。
「!!……どうしてそうお感じになるの?」
(!? あれれ?これって反応ありなんじゃない?ドンピシャじゃないかもだけど、なにかには引っかかった様子)
令嬢らしく取り繕おうとしたものの、きっとそんなの努力義務だ。
こういう時は思い切った方が突破口につながる。
そう思った私は、もう少し踏み込んでみることにした。
「その、ヴァレッタ様の手が震えていらっしゃるように見えて……」
ハッと自分の手元を見たヴァレッタ様は、隠し事をするようにテーブルの下へ手をしまってしまった。
急に、狩る側と狩られる側の攻守が入れ替わる。
「何かを怖がっているようにお見受けするんです」
「……ッ」
一瞬、表情がくしゃりとゆがむ。
まだいける。
「怯えていらっしゃるような」
「……」
お顔の色がなくなり、視線がうろつく。
「抗っていらっしゃるような」
「……」
もはや顔面蒼白だ。
「回避したいような」
「!……」
お? 当たり、かな?
この世の終わりのような顔をしていたヴァレッタ様は、すがるような視線で問いかけてきた。
「もしかして、あなたも?」
ビンゴ。
「もしかして、エルナ様も転生者でいらっしゃるの?」
はい、ヴァレッタ様の方がストレートだった〜。
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