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後列モブは巻き込まれ体質すぎて悪役令嬢を放っておけない〜実は隠れ溺愛されてたとか受け入れられません!〜  作者: 皆神 わいら
第2章 後列モブは学園生活をやりすごしたい

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第18話 あるモブの物語(モブ視点)

「おい、玄関でなんか揉めてるってよ」

「行ってみるか」

「俺も」

「私たちも行ってみましょう」


誰が言い出したのか、我も我もと授業をほっぽって学園玄関へ向かう。

教師がまだきていない教室は伽藍堂になった。

かく言う俺もなんとなく流れに乗って玄関へ向かう。


その先で目にしたのは最近俺たちが注視していた令嬢と王太子殿下だった。


彼女は最近俺たちの間で話題になっていたご令嬢だ。

ご令嬢とは言っても、公爵令嬢の最後列について行っているようなモブだった。


それが、先日の建国祭に参加したかと思うと上演中に王太子に公開プロポーズをされ、了承までした。


たまたま劇を実際に見たと言う奴らからどんどん話が広がり、俺たちの中ではモブの輪を乱す危険分子として要注意人物に認定された。


同じモブでありながら前に出すぎる行動にどこか顰蹙(ひんしゅく)を買う中で、彼女はいつのまにか生徒会メンバーに選ばれていることを知る。


そこからは不興のオンパレードだった。


元婚約者を差し置いて呼び捨てで呼び合うらしいし、生徒会と名乗りながら学園祭グループをまわる。

王太子の色のドレスを着て、王太子とファーストダンスを踊りさえしていた。


俺たちは彼女をモブ界から追放することを決めた。


モブにはモブの領分がある。

誰かの言った「モブのくせに」というセリフは俺たちの心をくすぐった。


「そうだ、モブのくせに随分目立ってないか」

「ローゼンベルクのご令嬢と一緒に馬車に乗り込んでいた」

「モブがなにしてんだ」

「モブのくせに王太子妃を狙ってるらしい」

「それってゆくゆくは王妃じゃないか?」

「モブのくせに?そんな玉の輿、ありえない」


そうして盛り上がっていけば、わからせなければという気運が高まった。

どうやら生徒会だと名乗りながら、学園祭の申請書を出せと回っているらしい。


「なんかやなんだよなあ〜」

「なんとなく締め出しちゃった」

「調子に乗ってるよな」


軽くストライキのようにしたことで、気分が上がってきた。

それでも申請書を取りには来ることだろう。

奴がひとりのところを見計らって文句を言いに行くのはどうかと誰かが言った。


「そりゃいいや」

「思い知らせなくちゃならない」


そうして、何人かが生徒会室に抗議しに行った結果、奴は生徒会を辞めた。


「やっぱりモブはこうでなきゃ」

「あー、なんかスッキリした」


しかし、それで終わりじゃなかった。

それが今。学園玄関に俺たちはわらわらと集まってきた。


幸い俺は早めに到着し、ふたりのやりとりをいい位置から傍観していた。

どうやら、奴は学園を辞めるらしい。

離す離さないで揉め出したところで、誰かが前に出た。


「殿下、手を離してやるべきです」

「そうです。それが彼女のためです」


勇気のある誰かが王太子殿下に進言した。

俺たちの言葉が届いたようだ。

殿下は振り返って、俺たちに問うた。


「そうか、君たちはそう思うんだね。ところで、なぜそう思うんだい?」


あまりにシンプルな問いに一瞬面食らったが、彼はモブにはモブの生き方があることを主張した。

そう、モブはでしゃばっちゃいけないんだ。


すると殿下は、俺たちモブは自由に生きられないのかと問い始めた。


殿下は何を言っているんだ?

モブだから目立たなくていいんだ。自由に生きられるじゃないか。


……あれ?


「モブは、自由に生きてはいけないのか?」


いや、俺たちはモブだから世界に影響なんて与えないんだ。

だから自由にーー

ちょっとわからなくなってきた。


「でも、モブの彼女は王太子妃には相応しくありません」


そうだ。それだ。

いずれ俺たちの国の王妃になる人だ、身分や能力だって完璧でなけりゃ。


「……なぜ?」


え?


聞けば身分もクリア、能力も実はそこそこ高いらしい。

難関と聞く卒業資格試験をパスした?即日?

モブがそんな優秀なわけ……


モブが王太子との恋愛に干渉なんて許されないと誰かが言えば、まさにこの行動を指摘される。

別の奴が言い募るも即言い込められてしまった。


でも、

俺たちは、モブの尊厳を守って戦っているんだ。


なんで王太子がモブなんかを生徒会に誘うんだよ。

王太子がモブを見初めること自体おかしいだろ。


「殿下にはもっとふさわしい相手がいるはずです」


そうだ。なにもモブ女子じゃなくたっていいだろ。

だってあんたは王太子だ。いずれこの国の王様になるんだろ。

モブなんかにうつつを抜かして良いわけないじゃないか。

俺たちの言い分が伝わらない殿下に、次第に怒りを感じ始めた頃

俺たちと殿下のやりとりの間、ずっと黙っていたモブ女が口を開いた。


「もう、そのくらいにしてください」


意外にも奴はモブのなんたるかをわかっている口ぶりで話し始めた。

自分がいけないのだとあいつはハッキリ言った。

モブの自分は殿下の相手には相応しくないと言った。


その通りだ。


公爵令嬢に親しくされて、殿下にちょっかい出されて、まんざらでもないなんてバチが当たったんだと言った。


そうだよ。


モブが王太子妃なんて烏滸がましい。

モブには魚臭い貧乏領地がお似合いだと言った。


わかってるじゃないか。

どうやら俺たちの思いは通じているようだと満足を感じるも、ふたりの様子は何かあやしい。


モブのご令嬢が大きな声を上げて叫び出した。



「願ってしまったから!こんなことになっちゃったんです!そのせいで、殿下までみんなにやいのやいの言われて!みんなにも迷惑かけて!」


おいおい、急にヒステリーかよと思ったってのに、なんかむしろいい雰囲気になってないか?

どう見てもイチャつくふたりに動揺していると、殿下が俺たちに向き直って言った。


「彼女と私が結ばれると、君たちに何か不都合はあるかい?」


不都合っていうか、王太子妃だろ?王妃だろ?

モブになんか務まるかって、あー実は優秀なんだっけ?


「モブはモブとして生きなければならないって。それ、本当に君自身が考えたことかい?」


そう言われるとなあ。

でも、モブのくせに逆転勝ち組とかずるくないか?


「君たちは、誰の物語をやっているんだい?」


え?

その瞬間、俺は頭を殴られたような感覚がした。


「君たちは、君たち自身の、自分の物語の主人公なんじゃないのかい?」


なんだって?


「君たちには君たちの意思があり、それを自分で決定して行動できる。それを、主人公というんじゃないのかい?」


俺が、主人公?


言葉としては知っていても、初めて出会う概念のような感覚だった。

派手じゃないし、目立たないし、何かに秀でてるわけでもない。

特別優秀でもない俺は、誰かの物語のモブだと思っていたのに、俺が主人公だって?


そんな。


まあ確かに、これが誰かの物語で俺は自由に生きられないって言われたら、めっちゃ怒り心頭だけど……

俺はモブで、俺が何をしたからって何も変わらないんだし。

でもモブはでしゃばっちゃダメだし、抜きん出ちゃだめだし。


でももし、俺が主人公なのだとしたら。

俺は自分の思う通りに生きて、自分の物語を紡いでいっていいってことなのか?


それがどういうことなのか、俺にはまだ100パーは理解できなかった、けどーー


抱き合うふたりに、俺たちはもう、何も言えなかった。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます!


マジもんモブの視点でお送りしてみました。


次のお話もぜひ、お楽しみに♪

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