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後列モブは巻き込まれ体質すぎて悪役令嬢を放っておけない〜実は隠れ溺愛されてたとか受け入れられません!〜  作者: 皆神 わいら
第1章 後列モブはゆるくぬるく生きたい

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20/31

第20話 おわりよければすべてよし

「今日も行きます?」

「ええ、もちろん。ご一緒いただけるかしら?」

「おまかせを!」

「くすっ」

「ふふふっ」


建国祭は恙無く終わった。

日常の戻った学園内を、私とヴァレッタ様は連れ立って歩いていた。


「今日はお菓子作りをしようと思うのよ」

「いいですね!もう何を作るか決めてるんですか?」

「いくつか用意はあるのだけど、先に届けてもらっているの」

「わあ、楽しみです♪」


最近では授業が終わり次第、私たちはあるところへ急行している。


「もうそろそろ大丈夫そうですけど」

「気が急いてしまうのはわかるわ。

でも、そろそろというところからが長いこともあるのよ」

「まあ、そうですよね」


あたりまえのように連れ立ってローゼンベルク家の馬車に乗り込む。

ふいに窓から金木犀の香りが漂ってきた。

ここにもあるんだな〜なんて思いながら、季節が変わったことを感じる。


あれから、メリア嬢は殿下の用意した離宮に滞在し、不本意にもクーデター阻止に巻き込まれた心を癒している。

王城の奥まったところにあるその離宮は、近くに沢が流れていたり、小動物のいる森があるようで、専門のスタッフとともに日々リハビリに勤しんでいるらしい。


まさかの全員前世持ちだったことが判明して、メリア嬢は何か思うところがあったようだ。

少しずつ感情を整理しつつ、これからのことを考えようとしている。

離宮にはクリストフ殿下が手配した心の専門家がチームで滞在していて、メリア嬢に柔軟に対応しているらしい。

ご両親が面会しにきて、帰ろうと説得したらしいけど、メリア嬢は断った。


「人は易きに流れる生き物だから」


とか。

なんでも専門スタッフと日々心について学んでいるらしい。


あの頃のメリア嬢はもういない。

そりゃそうだ。

私たちは一分一秒新しく生まれ変わってる。


いつまでも昨日のままの自分でいるのはダサすぎる。

ほっといて腐った魚のようになるのはごめんだ。


ちょっとだけ、違うことをしてみる。

できたことを、ちゃんと自分を褒めてあげる。

そんな大したことのない積み重ねが、未来の理想の自分につながっているのだ。


それなら、今から理想の自分になって生きてしまえばいい。

変わることを受け入れたメリア嬢は、すっごくカッコいい。


それもこれも、時間をかけて部署を新設し、スタッフを育ててきた王子の手腕によるもの、とか。

メンタルケアスタッフ?なにその前世知識ムーブ。

まさか、私たちだけでなく殿下まで前世持ちとは思わなかったよ。


「冷たいのにチョロな鉄板勘違い王子だと思ってたのに」

「そんな風に思っていたの?」


ぼんやり車外を眺めていたら、思わず口に出していたらしい。

この前もうっかり本人の前でもポロリしてしまい、冷めた目で「普通に考えてナシだろう」と、多くの創作物を敵に回すメタ発言を披露されてしまった。


一瞬驚いた顔をしたヴァレッタ様だが、その時の殿下の顔を思い出したのか、ふたりして吹き出してしまう。

ひとしきり笑った後、今日も一つ、何か新しいことをしたくなった。


「ねえ、前世のスイーツ再現してみるのはどう?」

「面白そうね、メリア様とも相談してみましょう」

「やった!楽しみ♪」


何を作ろうか、頭は前世のスイーツでいっぱいになる。

この世界にある食材で、器材で、どこまで作り出せるだろう。


そもそもレシピなんてあんまり覚えていないけれど、ふとヴァレッタ様を見ると、不思議そうに頭を傾げられてしまった。


まあいいか、みんなで試行錯誤するのも面白いかもしれない。


「それより、殿下とのことはどうなってるの?」

「あ〜、それね〜」


ヴァレッタ様が詰め寄ってくる。

突然痛いところを突かれて目が泳ぐ。


陸は、陸はどこですか〜?


「変われるのがカッコいいんでしょ?」

「うう、わかってる!ちゃんと返事するってば!」


正式に婚約の解消が成ったヴァレッタ様は、最近じゃ私におせっかいを焼こうとしてくるので困っている。

友人としても気の置けない間柄になって口調が崩れてきたせいか、容赦がない。


絶対よ、とヴァレッタ様に念を押されつつ馬車が王城の門をくぐる。





ある日前世を思い出した。

役は後列モブだった。

と思ったら、悪役令嬢も前世持ちで、王子殿下も前世持ちで、原作ヒロインちゃんも前世持ちだった。

クーデターを阻止して、婚約解消の協力をしてたら、世紀の公開プロポーズとかで一躍時の人になっちゃった、らしい。


世間では、王子とモブ女のドラマティックゴールインを求める機運が高まっている。

娯楽に飢えた民衆は、すっかり飽きていた建国劇のロマンスシナリオにくいついた。

あれ?ロマンスクーデターは阻止するはずじゃなかったっけ?

ロマンス逆利用されてるんですけど?

解せぬ。


悪役令嬢の殿をあっためてたのに、後列モブを全うして、田舎領地で魚釣りして暮らそうと思ってたのに、いつのまにか国の真ん中に引き摺り出されそうになってるなんて

どこまでが王子の計画のうちだったのか、やっぱり腹黒なんじゃない?


でも、ふたりの心の通う友人を得て、私の毎日は今めちゃくちゃ楽しい

当初の希望とは着地がちがうけど、

これって、ゆるくてぬるい毎日と言えなくもない


「これはこれで、かな?」

「なあに?突然」

「ううん、そろそろ着くね!」


これからも私たちの毎日は続くのだとしたら、

やはり私は願うのだ。

どうか今世は、あわよくば、ゆるくてぬるい毎日を。


第1章 完

ここまでお読みいただき、ありがとうございます!


第1章はひとまずここまで。

このあといくつか番外編を追加していこうと思います。


次のお話もぜひ、お楽しみに♪

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