第18話 小さな恋の物語(メリア視点)
私はメリア。メリア・フェリシア。
男爵令嬢で、このお話のヒロイン。
前世を思い出したのは、領地に視察に来た王子様にご挨拶したときだった。
「これ、あのお話だ!」
なにがどうなったのかわからないけど、前世のお気に入り小説だったと思う。
しがない男爵令嬢だったけど、貴族の義務である学園で王子様と恋に落ちて、ゴールインする役なの。
最高じゃない?
お嫁さんになるのが、小さい頃からの夢だった。
父上も母上も優しいけど、私のことをよく見ていないのはわかっていた。
だから、私のことだけを見て、私のことを幸せにしてくれる、私だけの王子様と結婚して幸せになりたかった。
前世を思い出したことで、それがあの王子様なのだと思った。
学園で見かけた時に、ついに始まると思った。
それなのに……
王子様は声もかけず、素通りしていった。
何度話しかけても、仲良くなれなかった。
悪役令嬢からはたまに小言を言われたけど、取り巻きからのいじわるもいつのまにかなくなった。
(原作の強制力なんかないじゃない。)
どうしたらいいかわからなくなった。
そうしているうち、建国劇に出るよう言われた。
建国劇には、王族が必ず参加する。
王子様に会えるチャンスだと思った。
しかも今回は恋愛ストーリーなんだって!
絶対相手役をやりたいと願ったら、運良く殿下の相手役に決まった。
嬉しくて、お芝居の稽古を頑張った。
殿下とのお稽古は楽しかった。
殿下はセリフを全然間違わないし、お芝居もとても上手で、私も負けないように頑張った。
頑張ったのに……。
本番、私の努力はなかったことにされた。
突然台本にないことを殿下が喋り始めた。
みんなも承知のようにセリフを続けた。
私だけが舞台の上で右往左往しているうちに、殿下はモブ役の女の子にプロポーズをした。
わけがわからなかった。
なにもわからないまま、劇は終わって、私はそこから動けなかった。
なんでこんなことになっちゃったの?
私、なにか間違っちゃった?
胸がぎゅってする。苦しいよお。
誰か・・・助けてよお。
「メリア嬢」
顔を上げると、そこには悪役令嬢がいた。
「大丈夫ですか?」
「な、んで……」
「え?」
「なんでこんなんなってるんですか!?みんなで私を嵌めたんですか!?私だけに意地悪して、私にだけ!私にだけ!」
叫び始めたら止まらなかった。
涙が止まらなかった。
全てが憎い、殿下も、悪役令嬢も、公爵様も、父上も……母上も……なにもかもが憎かった。
「ああああああああ!」
「……ごめんなさい。あなたの心を蔑ろにしたことを謝ります」
悪役令嬢が私を抱きしめた。
やめてよ、悪役令嬢なんかにこんなことされたくない。
でも、私の想いとは裏腹に、体は彼女を拒否しなかった。
「ごめんなさい」
悪役令嬢の衣装に掴まって、思い切り泣いてやった。
気づけば抱き上げられて、どこかへ移動させられた。
「少しは落ち着いたようだな」
まだ少し鼻を啜っていた私は、すねた顔のまま小さく頷いた。
「仕方のないこととは言え、そなたには悪いことをした。謝罪する」
そう言って、王子様は頭を下げた。
「殿下、王族がそのように……」
「良いのだ。彼女はただ巻き込まれただけだ」
「それは、そうなのですが……」
王族は簡単に頭を下げちゃいけないって、誰かが言ってた。
なにそれ。
でも、いきなり謝られたことで、この感情をどこへぶつければいいのかわからなくなって、素直に受け入れられなかった。
だから黙った。
「そなたは知る権利がある。なぜこのようになったのか。そして、その上でそなたの功績があることも知ってほしい」
功績?そんなのあるわけない。
私は劇をうまくやれなかった。
公爵様にも、くれぐれも失敗するなと言われていたのに。
私は、もう終わりなんだ……。
そんな私に殿下が語った事実は、私の想定をはるかに超えるものだった。
公爵様がクーデターを企てていた。
その道具が私。
私の恋心を利用して、私と殿下を結婚させて、この国を乗っ取るつもりだったらしい。
だから、私を傷つけても良かったんですか?
殿下も私を利用したんなら、おんなじじゃないですか?
ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
次のお話もぜひ、お楽しみに♪




