第15話 火のないうちに煙も消したい
のちの建国三英雄となる、祖グランツフェルト、祖ローゼンベルク、祖ブランシュフォードは安寧の地を求め旅に出た。
ブランシュフォードの才により、良き方角へとひたすら進んだ先で、3人はついに穏やかに水を湛え流れる川と広大な草原に至る。
この地と定め、一族を呼び寄せると力を合わせて開拓に取り掛かった。
昼はグランツフェルトの指示のもと、家畜を放ち、畑を耕し
夜はローゼンベルクが野獣を打ち払う
そうして手を取り合い、力を合わせ、広大で豊かな国土と海を手に入れたのも、ブランシュフォードによってもたらされた幸運の賜物であった。
知識のユリウス・グランツフェルト。
力のブルノー・ローゼンベルク。
幸運のエリアス・ブランシュフォード。
その働きに心を動かされたグランツフェルトは、ブランシュフォードに伴侶となることを望み、やがて王国はさらなる発展と平安を約束されたのであった。
「で、このブランシュフォードを今回の建国劇では女性にすることにした、と」
「そうだ」
「建国記とは異なるけど?」
「そうだ」
「議会でも承認された、と?」
「そうだ」
どうなっとるんじゃー!?
王宮、人気取れればなんでもいいんかー!?
「王宮と議会は、人気取りのためのロマンス化を許した。といっても、はじめから決まっていたようなものだがな」
「え?」
「祭礼を司るのはブランシュフォード家だ。根回しはすんでいた」
バッと勢いよくヴァレッタ様を振り返った。
ブランシュフォードといえば、原作で王宮を乗っ取りクーデターの後に王国を崩壊させる元凶だ。
殿下の口からその家名が出たことに驚きを隠せずにいると、ヴァレッタ様がゆっくり、でもしっかり頷きひとこと、ご存じよと、返された。
「クーデターは事前に阻止する。それが婚約解消の条件だ」
「どこまで知って……」
「さてな。ヴァレッタがどこまで私に話しているのかは、私の預かるところではない」
「すべてお話ししちゃいました」
「だそうだ」
「さいですかー」
え?ってことは、殿下がヒロインちゃんとの恋の行方は?大衆の面前で婚約破棄とかは?
「……ざまあ展開は?」
「瑕疵もなく、原因となる事実もないのにか?」
「ですよねー」
なんかおかしいとは思ってたんだよ。
ここ数日の平和な毎日。
原作ヒロインちゃんイジメをしなくなったってだけでなく、そもそもヒロインちゃんの動向が全然聞こえてこないんだもん〜
ヒロインちゃんどしたん?
「これまでは、な」
「え?」
「祖ブランシュフォード役は、メリア・フェリシア嬢が務める」
「なんでー?」
「ブランシュフォード公爵の肝入りということだ」
フェリシア家はブランシュフォード公爵家の寄り子と寄り親の関係。
だから原作では、ヒロインちゃんとのゴールイン後にブランシュフォード家が王宮を乗っ取れたってわけ。
「此度の建国劇は恋愛劇になることがすでに大衆に宣伝されはじめている」
「はや」
「ふ……、祖ブランシュフォードとの恋愛模様を私とフェリシア嬢で演じることで、実際に演じたふたりが縁付くことを期待する機運を高めたいのであろう」
やれやれ、といったように肩をすくめるクリストフ殿下。
まあ、人間は虚構とリアルの違いの判別ができないっていうからね、ってこれ前世知識だけど。
つまり、祖ブランシュフォードを女体化することで建国記のロマンス解釈上演するってことで、オーケー?
「女体化というか、性別変更だ」
「エルサ様、混乱してらっしゃるのね」
殿下の冷静なツッコミ、あざす。
それにしても、ヴァレッタ様は長年秘密にしてきたことをようやくゲロっちゃって憑き物が落ちたような顔をしている。
婚約解消も内定しているようなもんだし?
クーデター情報もチクれたし?
あれ? 私のゆるぬるライフだけが遠のいてない?
その後、建国劇グループの教室へ連れて行かれ、強制的に私も出演が決まってしまった。
のおおおお〜!!!
なんでえええ!!!
ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
後ほどもう1話掲載いたします。
次のお話もぜひ、お楽しみくださいませ♪




