第11話 無駄な会議ほど無駄なものはない(殿下目線)
第1章も折り返し!毎日更新、駆け抜けます!
「本日の会議は以上となります。後ほど決定事項をまとめて各部署へお届けいたしますので、つつがなく進行いただきますようお願い申し上げます」
宰相が閉会を宣言すると、あつまった面々はやれやれといった雰囲気で席を立ち会議室をあとにしていく。
そそくさと小走りで退出していくのは、王宮の官僚たちだろう。
こんなところで時間をくっているほど暇ではないのだ。
かくいう私も次の会議が控えている。
私、クリストフ・フォン・グランツフェルトはグランツフェルト王国の第一王子だ。
まだ王太子指名はされていない。
すべての貴族子女がその義務を免れないのと同様、王族である私も学園に通い、勉学に励んでいる、ことになっている。
実はある目的のため父王に進言し、待ってもらっているところだがそろそろ結果を出したいところだ。
学生の身分ながら、こうして連日の会議にも出席しているのも王家がこの国の頭脳として機能するための王族教育の一環でもあり、大願のためでもある。
ふと、先日の出来事が脳裏を掠めた。
階段を踏み外し落下した令嬢を、ヴァレッタの懇願で保健室へ運んだ。
そもそもあの階段は専門棟への連絡通路にあり、学生の往来は少ない。
そこへ、ふらりと側近も連れていない王子がひとりでいたことを、事故後の慌ただしさに紛れ、言及するものはいなかった。
落ちてきたのはノーマークのご令嬢だったが、あの場に男子学生が私しかいなかった。
その後どうなったか、簡易的な報告は受けているが、次の婚約者どのとの面会で詳しく聞くのがいいだろう。
婚約者どのは礼儀正しく、非の打ち所がない。なかなかどうして、次期王子妃として理想的な人物に育ったようだ。
面会の度に要求する報告を嫌がるそぶりもない。
「殿下、そろそろ次のご予定が……」
「わかった」
側仕えの耳打ちに、重い腰をあげると、ひとり近づいてくる者がいた。
「殿下。此度の祭礼では、殿下を中心に執り行われるとのこと。わがブランシュフォード家も変わらず全面的にご協力させていただきます」
「ブランシュフォード公爵か。ああ、よろしく頼む」
胸に手を当て、やや頭をさげた公爵は、次の会議にも出席する。
共に参らせていただきます、と私の横を歩き始めた。
書類を抱えた側仕えが私の後ろを黙ってついてくる。
移動時間も惜しいところだが、仕方がない。
我が国はまもなく建国記念祭を迎える。
数百年前、いまだ安全に暮らすこともままならなかった頃、この広い草原に定住を決意した者たちがいた。
起伏の少ない大地と大きな川が流れるこの場所は、畜産農耕に適していたものの、獣たちの水場でもあった。
集落を維持しつつ、襲いくる野獣を退け、魅力的な居住地を奪わんとする者どもを退け、団結することで集落はやがて成長し、王国となった。
先達たちの功績が今の平和な王国の礎となったことを語り継ぐため、建国記念祭では毎年各地で建国劇が演じられる。
子供でも諳んじられるほどに。
中でも王都では、王宮主催の建国劇が国内の貴族子女たちによって演じられるため、これを目的に遠方からやってくる者もいるほどだ。
そして、これは王家の者も例外ではない。
次の会議もこの建国劇のためのものだ。
「今年の希望者はどうなっている?」
「あと数人いれば、というところですね」
「毎度のことながら、頭が痛いな」
毎年恒例の人気行事、といえば聞こえはいいが、その実、同じ台詞で同じ流れの演劇ほど退屈なものもないだろう。
貴族子女の勤めだとしても、好んで演劇に出たがるものはそう多くない。
ましてや毎年演じられる演目だ。
喜ばしい祭りではあるものの、やや冗長となっている点はいなめない。
人数不足を補うためもあり、王家自ら演者を務めることになっている。
「のちほど提案しようかと思っていたのですが……」
公爵はやや口を濁すと、次の会議で提言しようとしていた構想を語り始めた。
会議室まではあと少し。
「今年はやや趣向を変えてみてはどうかと思うのです」
「ほう。話してみよ」
「は。昨今巷ではロマンス物語が人気だとか。そこで、建国劇にロマンス要素を盛り込んでみてはと愚考するのです」
「ふむ」
そうきたか。
一字一句変わらない演目に国民は飽きている。
そこへ、城下で話題の恋愛劇を模すことで、国民の興味をひきたいということらしい。
「残念だが、私の一存で決められるものではない。次の会議でおおいに披露するがいい」
ようやく到着した会議室の扉を側仕えが両側から開いていく。
「さあ、入れ」
聞かせてくれたまえよ、オマエのその計画を。
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後ほどもう1話掲載します。
次のお話もぜひ、お楽しみくださいませ♪




