第3話 この人いつもこの辺いるよね?
NPC。
Non-Player Character。
つまりプレイヤーじゃないってことだ。
自由度が売りのこのゲームでNPCになるってどういう事だ?
俺はいつの間にか獲得していたスキルを見る。
【スキル《巡回》:同じルートをぐるぐる回る。
街から出る事は許されない。
なぜならそれがNPCだから】
(いや、そりゃそうなんだがな。
ゲームの世界で街から出れないってゲームコンセプトの真逆じゃん!)
そう、俺は今転移した街で同じ道順をぐるぐる歩いている。
(これ、なんか面白いポイントないのかな?)
(まさか、これだけってことはないよな?)
思案しながらぐるぐる回る。
そして、なぜ俺がずっとモノローグだけで喋ってるのかって?
喋れないんだよ!
言葉を発しようとしても、音にならない。
うわー、すげーストレス。
【スキル《反復》:決まった言葉を繰り返し話す。
自由に喋る事は許されない。
なぜならそれがNPCだから】
(いつの時代のNPCだよ。
今やAIで死ぬほど流暢に喋るってのに)
と、いうか。
ここに転送した直後に話しかけてきた運送屋のおっさんとか、
普通に意思を持って喋ってたと思うんだが……
そう思った矢先
「おい、兄ちゃん。
さっきから何この辺ウロチョロしてんだ?」
(え?)
話しかけられ、振り返ろうとする。
だが振り返ることができない。
いや、それすらダメなんかい!
「おい、兄ちゃんよ」
しかし俺は振り向けないし、止まれないのだ。
というかこいつもNPCだろ!
なんで俺だけこんな扱いなんだ!
(いや、まぁ俺がNPC選んだからなんだが)
一人で嘆いて、一人内心でツッコむ。
悲しくて涙が出るぜ。
いや、
だって涙が出ちゃわない。NPCだもん(古)
「おら!無視してんじゃねえ!」
(え?)
輩が殴りかかってきた。
いや、マジ?
しかし全く動けない俺は、それを避けることが出来ない。
そして拳が俺の頬に当たる。
「おら!無視してんじゃねぇよ!」
殴る、蹴る、殴る、蹴る。
いや無視しただけでそこまでせんでも……
いや、それにしても──
(なんの衝撃もなければ、痛くもない。
というより殴られてるのに顔が動かん)
(物理法則どうなってんだ?)
【システムメッセージ:スキル《超無敵》を獲得しました】
(ほう?)
当然俺はスキルを確認した。
【スキル《超無敵》:物にぶつかろうが、プレイヤーの進行を妨げようが絶対に避けない。
何の衝撃もなく何があろうが無敵。
そう、街にいる村人は。
なぜならそれがNPCだから】
なるほど。
(自由度はないけど、これはこれで面白いな)
「ぜぇぜぇ……もう、いいよ。
変なヤツ……はぁ」
そう言って輩は去っていった。
去りながら拳を見て、頭を傾げる仕草をするところを、俺は見た。
振り向けないから最後まで見れなかったけど。
****
もう何周したか分からない道をウロウロしていたら、街の真ん中に光が差し込んだ。
(ん?なんだ?)
自由に動けないかわりに、目だけ動かして確認する。
光が収まると、一人の女性が急に現れた。
が、そこまでしか見ることができず、巡回ルートの道を曲がる。
というかそれしか今出来ないんだ。
まぁ《退職》すればいいんだろうが……
(まだ俺はNPCを遊び切ってないんだ!)
何の決意だ?と問われれば、別に大した決意でもないんだが。
しばらくしてまた元の道に戻る。
先ほど現れた女性がオロオロ、アタフタしている様子が横目で見れた。
そして一人で何やら騒いでいる。
独り言が多いタイプなのだろうか。
いや、人のこと言えんけど。
(まぁ、今は逆に独り言すら喋れないけどねー)
はっはっは。
すると突然、その女性がこちらへ走ってきた。
「あなた!そのアバター!プレイヤーでしょ!」
そう話しかけられた。
そして、俺は──
(止まれた!)
NPCになって初めて足を止めた。
「ねぇ!一体どうなってるの?
絶対この世界ゲームじゃないよね?
だって地面を踏む感触はあるし、温度も感じるし……」
女性はそこまで一気に捲し立てた。
「それに、ログアウトもないのよ!
一体ここはどこなの!?」
【システムメッセージ:スキル《反復》を発動しました】
「ここは初心者の街。"ハジマール"だよ」
「え?あ?
あーそういう名前の街なんですね?」
(喋れた!いや、喋ろうとした内容じゃないけど)
(そして、この街"ハジマール"って名前なのね)
女性と同じタイミングで街の名前を知るタクミ。
自分の口から発したのだが。
「いや、そうじゃなくて!
街の名前じゃなくて!」
「ここは初心者の街。"ハジマール"だよ」
「いや、それはもう分かったわよ!
私いったいこれからどうすれば……」
【システムメッセージ:スキル《反復》を発動しました】
(ん?二回目?)
「冒険者ギルドは、この道を奥まで進んだところにあるよ」
「……冒険者ギルド?
どうすればいいか、そこに行ったら分かるの?」
「冒険者ギルドは、この道を奥まで進んだところにあるよ」
「いや、それは分かったってば……
でも、そうね!
とりあえず泣いても始まらないもんね!」
なぜか一人で納得したらしい女性は、拳を握りしめて上を向いた。
いや、なぜ?
「ありがとう変な人ーー!」
(誰が変な人やねん!)
そう思うも、女性は道の奥へ走って行った。
(ってか、この道の奥に冒険者ギルドがあるんだ)
得ずして、街の名前と冒険者ギルドの場所を知るタクミ。
(うーん。今の人、多分プレイヤーなんだろうな)
再び巡回ルートを歩きながら、考える。
もし、やっぱりここがリアルな世界でゲームとして転移、って流れだとすると……
(プレイヤーにだけは喋れるってことなんだろうな)
まぁ、決められたセリフしか喋れんけど。
ん?
あれ?
今の人も転移者ってことだよな?
(んーーーー)
まぁ、いっか
【システムメッセージ:職業《村人(NPC)》を退職しますか?】
ここまでお読みいただきありがとうございます。
昔のドット絵RPGってNPCのせいで通りたい道が通れない……みたいな経験結構あったよね。
アレはアレで味があったなぁと今は思います。
ただ当時は「いや、どけや!」と強く思ってました。
(新生浮世)
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