第2話 現実を見た瞬間、人は無敵になる
【スキル《転職》:勢いで退職した後、あの環境で仕事をしてたのだから、多分次何の仕事でも出来そうな気がする、アレ】
スキルの説明を読んでも、なんだかよく分からないが
「つまり他の職業に転職出来るってことだよな?」
ゲームでよくある、上位職というやつだろうか?
俺はそう思い、スキル《転職》を使用してみることにした。
【システムメッセージ:まだ前の会社に在籍中のため《転職》出来ません】
「いや、なんでそこは忠実なんだよ……面白ぇけどさ」
俺は改めて、今度はスキル《退職》を使用する。
【システムメッセージ:職業《社畜》を退職しますか?】
もちろん、"はい"だ。
【システムメッセージ:あなたは「今辞められると困る!」と残ることを懇願されています。
それでも退職しますか?】
いや、なんでもう一回聞くんだ?
"はい"だっての。
【システムメッセージ:「分かった!待遇を改善する!」と、あなたに1,000万Gを振り込もうとしています。それでも退職しますか?】
「え?1,000万G?」
俺は今の所持金を確認した。
【所持金:4,000G】
いや、俺はさっき四連続で依頼をこなした。
一回で1,000Gって事はこの世界でお金を稼ぐの結構キツイんじゃねぇのか?
「そうなると1,000万Gは死ぬほど大金だよな……」
悩む、悩む……
【システムメッセージ:警告!!スキル《残業》の効果でHPが限界に到達しようとしています】
【HP:5%】
「うお!やべぇ!金より命だろ!」
焦った俺は一つ前のシステムメッセージに対して"はい"を突きつけた。
【システムメッセージ:「また、いつでも戻ってこいよ」と言われていますが、本心かは不明です。
スキル《退職》を使用しました】
よし、ようやく退職出来たぞ!
【システムメッセージ:職業《社畜》を退職したため、あなたの職業が《求職者(無職)》に変更されます】
「おいおい、そんな職業も用意されてんのか。
やべぇなUJO」
【システムメッセージ:スキル《残業》、スキル《承諾》が消失しました】
「ん?スキルは引き継ぎなし、か。
いや、確かに無職なのに残業は意味分からんからな」
【システムメッセージ:スキル《覚醒》が弱体化しました】
「え?引き継ぎもあんの?」
俺はステータスを確認した。
【所持スキル:《覚醒》/《退職》/《転職》】
まじか……
「《退職》と《転職》残ってんじゃん。
もしかしてこれ、次の職業選択しても、上位職業どころか全く別の職業になれるってことじゃね?」
俺は喜びに打ち震えた。
システムの隅から隅まで遊び尽くしたい俺にとって、社畜(もう退職したけど)は天職じゃねぇか!
転職スキルを持ってるから天職ってか?
──いや、すまん。
「よし、早速スキル《転職》使ってみるか!」
【システムメッセージ:スキル《転職》を使用しました】
スキルが使え、俺は思わずガッツポーズをした。
【システムメッセージ:転職先一覧を表示します。
ただし、条件を満たしていない職業は選択できません】
「え?条件?」
俺は改めてシステムウィンドウを確認する。
そこには初期ビルド時と同じように、職業一覧が表示されていた。
ただし、初期ビルドと異なる表示がある。
条件。
職業をタップすると条件が書かれた小窓が、ポップアップで表示されるのである。
「えーとなになに?」
【職業《戦士》:基本の近接職(選択不可)】
【転職条件:木の棒を3回振る】
「いや、条件ゆるっ!」
闇金の借金審査レベルで緩いな。
いや、闇金で金借りた事ねぇけど。
俺は100種類以上ある職業をスクロールして次の転職先を探す。
さすがに条件を一つ一つ見るのは面倒なので、まずは職業からだな。
「条件はあとから確認すりゃいいだろ」
そして、俺は一つの職業で手をとめた。
【職業《村人(NPC)》:Non-Player Characterのこと(選択不可)】
「いや、俺プレイヤーなんだけど、NPCになれるってどういう事だろうな」
俺は条件を確認した。
【条件:全く同じセリフを連続で3回喋る】
「これもゆるいな」
しかし同じセリフか……
「なんでもいいのかな」
俺は試しに三回喋ってみた。
「あー」
「あー」
「あー」
システムメッセージからのメッセージは……こない。
ダメか?
俺はそう思い、システムウィンドウへ目を戻した。
【職業《村人(NPC)》:Non-Player Characterのこと(選択可能)】
いや、選べるじゃん。
そして俺はNPCを選んだ。
社畜で死にかけたのに、学ばない男タクミ。
タクミ、プレイヤー辞めるってよ。
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