表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/4

第1話 社畜は仕事を断れない

 世界最高峰のVRゲーム『Universal Job Online (ユニバーサル・ジョブ・オンライン)』

 通称UJO (ユジョ)。


 選べる職業は100種類以上。

 戦士、魔法使い、鍛冶屋、商人、暗殺者、王様……なんでもアリ。


 そして今日が──

 その“公式リリース初日”だ。


「よっしゃあああああ!!」


 俺、タクミ。

 ゲームはやり込むタイプだが、強さとか効率とかはどうでもいい。


 システムの隅から隅まで体験したい。

 そういうコレクター系のやり込み勢だ。


 だからこそ、職業選択画面を見た瞬間、俺の目は吸い寄せられた。


 ──【社畜】。


「なんだこれ面白っ」


 王道ファンタジーの世界観に、突然の“社畜”。

 意味が分からない。

 でも、こういう意味不明な職業こそ触りたい。


「よし、これで行こう」


 決定ボタンを押した瞬間、

 周囲のプレイヤーから一斉に声が飛んできた。


「お前、何選んだ!?」

「社畜ってなんだよ。草はえるわ」

「普通そういうのはサブキャラとかで選ぶだろ」


「いや、だって面白そうじゃん」


「いや面白いかもしれんけど初日からそれはないだろ……」


「大体他の職業は他の人が選ぶっしょ」


 そう言いながら初期ビルドを完成させる。


 そして──

 視界が白く染まり、世界が切り替わった。


****


「おおおおお……!」


 目の前に広がるのは、異世界風の街並み。

 CMで見た映像よりも遥かにリアルに……


 リアルに……


 いや、これリアルすぎねぇか?


 石畳の道の感触。

 ザワザワと聞こえる街の喧騒。


 そして──


「……風も感じるんだけど?」


 肌を撫でる風。


 いや、これVRの域超えてない?


 まさかな、いやまさかな。


 よくあるファンタジー小説みたいなゲームの世界に転移なんて、そんなありきたりな展開。


 さすがにないだろうと、とりあえずシステムメニューを開いた。


 そもそもこうやってシステムメニューが開くぐらいだしな。


 ログアウト……

 ログアウト……

 ログアウト……


「……ない」


 上から下までスクロールする。


「いやいやいやいや、なんで?」


 しかし、まぁ。


 もしかして本当に?


 考えてみるも、思考がまとまらない。


 ……とは言え、だ。


「まあ、考えてもしゃーないか」


 街の風景も、感触も、風も全てがリアル。


 しかもログアウトはない。


 とはいえ考えたところで、どうしようもない。


 と、なるとやることは一つ。


「とりあえず、ゲームを楽しむか」


 システムの中から職業を確認する。


【職業:社畜】


「ほんとに社畜じゃん」


 笑いながらスキル欄を開く。


【スキル《残業》:帰りたいのに帰れない。時間が経過する毎にいつ帰れるのかとうんざりするアレ】


「は?なんだこの説明」


 自分のステータスに視線を移す。


【HP:99%】


「ダメージも喰らってねぇのに減ってるうううう!!

 ってか何もしてねぇのに残業扱いかよ!!」


 叫んだところで、後ろから声が飛んできた。


「兄ちゃん!」


「ん?」


 振り返ると、運送屋っぽいNPC、


 いやNPCだよな?


 とにかくおっさんが手を振っていた。


「ちょっとこの荷物、あそこの倉庫まで運んでくれや!」


「え?この量を?一人で? 無理じゃね?」


「新人のくせに文句言ってんじゃねぇ!!」


【システムメッセージ:スキル《承諾》を獲得しました】


「は?」


 スキル説明を見る。


【スキル《承諾》:上司から無理やり仕事を振られるが、有無を言わさず押し付けられるアレ】


「なんっだそりゃ!!」


「おい兄ちゃん、さっさと運べや!」


「……やるしかねぇんだよな。

 まあいっか。やりますよ」


 荷物を持ち上げる。


「おっも……」


 それは明らかに一人で持つ重さではなかった。


 いや、持つこと自体は出来たが運ぶのは無理だ。


「ちょっとおっさん、二人で運んだほうが……」


「ああん?それは俺の仕事じゃねぇ!」


「んな横暴な……いや、それより重すぎる。

 もう、限界……」


【システムメッセージ:スキル《覚醒》を獲得しました】


「またかよ!」


 すぐさまスキルを確認する。


【スキル《覚醒》:普通に無理な作業量をこなしていく時にふと、

 “なんかどこまでも仕事できるんじゃね?”と思う瞬間のアレ】


「いや意味分かんねえし!!」


 と思った瞬間、荷物が少し軽くなった。


「……お、これなら行けるか?」


 運びながらHPを見る。


【HP:82%】


「減ってるぅぅぅ!!」


 そう、叫びながら荷物を運ぶ。


 とにかく指定された場所へ。


【HP:64%】


 運び終わる。


「終わった……」


 と思ったら別のNPC(?)が声をかけてきた。


「兄ちゃん! 次これ頼む!」


【システムメッセージ:スキル《承諾》が発動します】


「パッシブかよ!!」


 依頼、こなす。

 依頼、こなす。

 依頼、こなす。


「俺ゲームなのに何やってんだ?」


【HP:11%】


「……流石に、キツイ。

 というか、これ0%になったらどうなるんだ?

 死ぬのか?

 強制ログアウトならいいけど……

 風とか疲労とか、これ……なんかヤバい気がするんだよな……」


 と、さすがの俺も少し焦り始めたその時。


「兄ちゃん! 次の荷物──」


【システムメッセージ:スキル《承諾》が発動しま──】


「だああああやってられっか!!!」


【システムメッセージ:スキル《退職》を獲得しました】


「え??」


【スキル《退職》:現実を見始め、

 “なんでこんな会社で命削って仕事してんだ?”と急に冷め、

 勢いで退社届を叩きつけるアレ】


「社畜って辞めれんの?」


【システムメッセージ:スキル《残業》《覚醒》《退職》を獲得したことで条件が満たされました】


【システムメッセージ:スキル《転職》を獲得しました】


「……はい?」


 俺はスキル欄を見て、思わず笑った。


「転職……?

 いや、これ絶対面白いやつじゃん」


ここまでお読みいただきありがとうございます。


面白いと思っていただけたら、ブックマークや下の「☆☆☆☆☆」から評価をいただけますと、執筆の大きな励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ