★その後②
王城内にある個室。
部屋は小さく、装飾品も何もなく、簡素なその部屋に第一王子であるジークハルトは閉じ込められ、もう一週間がたった。
その間、尋問官を始め、調査員や騎士などから何度も何度も取り調べを受け。
学園での生活だけでなく、マリーとの孤児院での出会いや、それからアレース男爵についてなど、多くのことを詳しく聞かれジークハルトは疲労困憊。
執務ならばシャーロットに丸投げ出来たものだが、今はそれも叶わない。
窓もあかない部屋でベッドに横になり(なぜ私がこんな目に……)と悔やんでいれば、ノックの音が聞こえてきた。
「ジークハルト」
「父上!」
今日まで家族の誰とも顔を合わせることは叶わなかったけれど、国王であり父であるルオデルトがやって来てジークハルトはホッとする。
やっとここから出られる、解放される。
そんな喜びが浮かんだジークハルトだったが、父の厳しい顔を見て間違いを知る。
自分は許されていない。
父の表情だけでそれが分かったからだ。
「ジークハルト、ここでの生活はどうだ?」
「生活……ですか? あの、私は謹慎中の為、指示通り大人しく従っております。聴取にも協力をしておりますし……」
ジークハルトは父の質問の意味が分からなかったが、今の状況を伝える。
本当は「最悪」だとか「早く出せ」とか「飽きた」という気持ちがあったが、正直にそんなことを伝えるほどジークハルトも愚かではない。
反省している姿を見せなければ、ここから出れないことは分っている。
その為、肩を落とし気落ちした姿を見せていたジークハルトだったが、父の視線を感じ顔を上げる。
「……」
すると父はどこまでも悲しげな瞳でジークハルトを見ていた。
「分かっているか? お前はこれ以上の状況に、シャーロットを追い落とそうとしていたのだぞ」
「えっ……?」
「もしあのまま我々が夜会に顔を出さず、シャーロットを断罪していたら、シャーロットはどうなっていた?」
「……それは……」
「お前がシャーロット用にと準備していたのは確か一般牢だったな?」
「……は、い……」
「貴族令嬢を一般牢に入れる、それがどれ程恐ろしく非道なことか、お前は分かっていて準備したのか?」
「……いえ……」
ジークハルトは軽い気持ちだった。
そもそも一般牢などジークハルトは見たことも行ったことも無い。
ただ悪女であるシャーロットに相応しい場所をと思い、城の側近に一般牢を準備させただけ。
王子教育として城内の施設を学ぶ機会は当然あるが、あまりの酷い匂いにジークハルトは我儘を言いシャーロットに押し付けた。
それがジークハルトにとっての当たり前であり、いつだって通ったことだった。
シャーロットの気持ちや、彼女に意思があるなど考えてもこなかった。
(もしあのままシャーロットを断罪していたら……)
父たちに見つかる前にシャーロットの刑を確定させ、どこかに追いだすか、毒杯を飲ませるか、アンドリューに命令し処刑していた可能性もある。
何故ならシャーロットは、ジークハルトが何をしてもいい相手。
可哀想だとか、哀れだとか、そんな思いを向ける相手ではなかったからだ。
「あの、父上、私は……」
「ふむ、ジークハルト、やっと自分のしたことが見えてきたか? シャーロットはお前のために用意された物ではなく公爵家の令嬢で、か弱い一人の女性なのだぞ」
「……」
ずっとずっとシャーロットが憎かった。
だって何をやってもジークハルトよりもシャーロットの方が先に出来てしまい、周りの者たちが『シャーロット様をお手本に』と言うからだ。
幼いころからずっとシャーロットには優秀さを見せつけられ、劣等感を植え付けられた。
だからジークハルトはシャーロットに冷たく当たった。
悲しんでいる顔を見てもざまあみろと思うだけ、シャーロット自身が悪いとそう思った。
いつしかそれが当たり前となり、シャーロットには何をしてもいい、そう思い込んでいた。
ジークハルトがそんな態度であれば、ジークハルト付きの者も当然主の真似をする。
側近たちはいつしかシャーロットの意見など聞かなくなったし、シャーロットのことを軽視するようになっていった。
それがたとえ公爵令嬢であっても、他国の王位継承権を持っていたとしても変わらない。
何故ならこの国の王子であるジークハルトがシャーロットに対しそんな扱いをしているのだ、それでいいと皆が思うのも当然。
そしてそんな態度を取り続けるジークハルトに、シャーロットが愛想を尽かすのも当然だった。
(ああ、そうか……私はシャーロットに……)
やっと自分の行動を理解し始めたジークハルトを見て、ルオデルトは頷いた。
「ジークハルト、お前をフォビッグ国へ婿に出すことが決まった」
「フォビッグ国、ですか……?」
シャーロットを国から追いだすことも考えていたジークハルトは、自分に返ってきたその仕打ちに素直に頷く。
先日の夜会のことを思えば、軽い処遇だと分かる。
シャーロットへの断罪の予定を考えれば、毒杯を飲まされても、公開処刑にされても文句は言えない。ジークハルトはあまりの処罰の軽さに違う意味で驚いた。
「ああ、そうだ。あの国の第三王女との婚姻だ。敵国ではないが、友好国でもない。それにこちらとあの国では風習も何もかも違う。それと、かなり距離がある国の為、もう戻ることは叶わぬだろう……」
「……はい……覚悟いたします」
「うむ、それとわが国の王太子にはラインハルトが決まった。本来はお前が学園を卒業後にシャーロットとの結婚と、お前の王太子就任を祝いたかったが、それは永遠に叶わぬこととなった……残念だ」
「……はい……父上、誠に申し訳ありませんでした」
「……」
弟のラインハルトがこの国を継ぐとなればジークハルトは邪魔になる。
それはジークハルトにも分かることだった。
そしてフォビッグ国の第三王女と言えば、母親が妾妃で王位の外にいる人物。
たとえ結婚後に子供が生まれたとしても、フォビッグ国での王位継承権は無いだろうし、婿に出たジークハルトの子供は、ユービテル国の王位継承権の順位は相当低くなるだろう。
(シャーロットを大事にしていたら違ったのだろうな……)
ジークハルトは自分が行ってきたシャーロットへの仕打ちを今ハッキリと理解し、申し訳なかったと、今更だが後悔もしていた。
「話は以上だ……では、私は戻る。ジークハルト、出発は明日になる。荷物はもうまとめてある。連れていく側近たちもこちらで決めた。お前はそのままあちらへ向かえばいい」
「はい……ご手配、有難うございます」
立ち上がるルオデルトを、ジークハルトは息子として顔を上げたまま見送る。
多分もう家族には二度と会えないだろう。
最後に父の背中を見て申し訳なさが募る。
(父上、母上……)
両親にはここまで大事に育ててもらった。
王子の中で、一番爵位の高い令嬢を婚約者として準備してもらえた。
教育係も国でも有名な教師陣を集めてもらった。
それを無下にしてきたのは、ジークハルト本人。
優しく甘く楽しいことしか言わないマリーに逃げたのも、自分自身。
王位から落ち、自分の背に何もなくなった今、そのことにやっと気づけた気がした。
「ジークハルト、アレを連れていきたいか?」
アレとはきっとマリーのことだろう。
先日の夜会でのマリーの姿を思い出し、ジークハルトは首を横に振る。
今はもうマリーのどこを好きだったのかも思い出せない。
ジークハルトが好きだった少女はこの世界にはいない、すべては幻想だった。
「……いいえ、父上、私はこの先フォビッグ国の第三王女をただ一人の方だと決めて、大事にさせて戴きます」
「そうか……」
ルオデルトはそれだけ答え、扉に手を掛ける。
その際に「もう少し早く気づいて欲しかった」という小さな呟きが聞こえ、涙が溢れたジークハルトだった。
★★★
王城で一週間の取り調べを受けたジェイドは、簡素な馬車に乗せられ自宅へと送られた。
王城での取り調べは苦痛で、厳しい質問には逃げ出したくもなった。
公爵家で跡取りとして大事にされていたジェイドは、キツイ言葉や、冷めた視線に、幼いころの記憶を思い出し心が痛んだ。
子供時代、ジェイドは実家の子爵家でいらないものとして扱われていた。
貴族特有の長男第一主義の家で、ジェイドはいずれ平民になるものでしかなく、女だったら政略結婚に使えたのにという、父の言葉を聞いて育った。
だからこそソラリス公爵家での生活は夢のようだった。
姉であるシャーロットはジェイドにどこまでも優しく、甘やかしてくれた。
慣れない家で泣いていれば、シャーロットは寄り添い一緒に寝てくれた日もあったし、寝入るまで本を読んでくれた日もあった。
我儘を言っても姉は怒ることも無く、ジェイドの願いをどうにか叶えようとしてくれた。
勉強で分からないところがあれば、姉は分かるまでジェイドの傍で教えてくれて、良くできたと褒めてもくれた。
姉とずっと一緒にいたい。
姉が世界で一番大好きだ。
そんな気持ちがジェイドの中で芽生えるもの当然で、姉に婚約者がいると知った時、ジェイドは悔しくてひっそりと涙を流した。
その内、自分にも婚約者が出来て、その婚約者がシャーロットが決めてくれた相手だと分かると、シャーロットと同じぐらい大事にしようと思えたし、シャーロットを共に支えようとそうも誓った。
だけど気が付けばジェイドはマリーに惹かれ、彼女こそ運命の相手だとそう思うようになっていた。
マリーはいつだってジェイドを褒めてくれた。
常に付きまとう『公爵家の養子』という言葉も、元は『子爵家の息子』という事実も、マリーは馬鹿にすることは無かった。
「公爵様に認められたってことでしょう、ジェイが凄いってことだよ」
「子爵家の子供だって貴族は貴族様じゃない、そこを馬鹿にする人は生まれでしかジェイに勝てないんだよ」
だから気にしなくていい。
ジェイドは頑張っている。
そんな肯定の言葉が嬉しくて、ジークハルト様よりも自分を選んで欲しいと、ジェドはそう願ってしまった。
「マリー、僕と結婚して欲しい、ジークハルト様じゃなくて僕を選んでくれないか?」
勇気を出してマリーに告白をした。
ジークハルト様は姉の婚約者。
王命である婚約を解消するのは難しい。
そんな説明もマリーに伝え、自分と公爵家を継ぐ未来の方が魅力的だとそう言ったのだが、マリーはジェイドを選ばなかった。
「ジェイと結婚しても王妃様にはなれないでしょう?」
そんなことを言われてしまい、気が付けば教室へ戻ろうとしているマリーの背を押していた。
君もジークハルト様を選ぶのかと、何故か全然似ていない姉と重なって見えて、今もなお姉への想いがあることにジェイドはその日初めて気が付いた気がした。
「ジェイド、家の恥さらしが! 良くこの屋敷に戻ってこれたな! 恩人である公爵様を敵に回すなど、お前は何を考えているんだ!」
送られた屋敷は当然実家であるプレイン子爵家。
父は怒っていてジェイドの顔を見るなり怒鳴り殴ってきた。
「公爵家から届いた貴方の私物は殆ど売り払いました。大人が一人増えても平気なほどウチには余裕はないの、長男の結婚も控えていますからね。公爵様には慰謝料を請求されなかったけれど、貴方のお陰でうちは良い笑いものよ」
母親には呆れられ、冷たい視線を向けられた。
公爵家からどれ程の私物が送られてきたかは分からないが、あの優しいシャーロットのことだ、きっとジェイドが困らないようにと色々と手配してくれただろう。
そのほとんどを売り払った母に、愛情は何も感じない。
いや、この人から生まれたことさえ最初から信じられないぐらいだった。
「ジェイド、ハハハッ、やっぱりこうなったか、最初からお前が公爵様になるだなんて無理だったんだよ、これからはこの家のために働くことだけ考えていけよ、なりそこないの四男坊殿、アハハハハ」
今まで公爵子息で合ったジェイドに会う度頭を下げなければならなかった兄は、ここぞとばかりにジェイドをあざ笑い楽しんでいるようだった。
優しくされた記憶など何もないけれど、兄はこんな人間だったのかと知って、自分にも同じ血が流れているのかと思うと気持ち悪さを感じながらも、何となく分かる気もした。
「姉上……」
与えられた部屋に向かえば、小さなボストンバックに衣類だけが入っていて、それがジェイドの私物全てだった。
学園の制服も当然なく、勉強道具も一つもない。
貴族学園の学用品は中古であっても高く売れる。
お金が厳しい家は、子供を学園へ通わすだけで精一杯。
新しい持ち物など準備する財力はない。
だからこそ中古でも高く売れるのだが、案の定ジェイドの学用品は母に売られてしまったようだった。
「仕事を探さないとな……」
もう学校に通うことなど夢の夢。
この家に戻ったということは、搾取し続けられる、そういうことだ。
次兄も三兄も既に家を出ていて、平民として街中で暮らしていると聞けば、長兄至上主義のこの家が嫌だったのだろうと分かる。
ジェイドもここにいればいるだけ、給料も私物も何もかも取り上げられるだろう。
それが姉への罰だと言われれば受け入れるしかないが、出来ればいつかはここを出たい。
兄が結婚して子供が出来る前には、荷物をまとめ出て行きたい。
未来の公爵になることが夢だったジェイドの、それが最低限の目標となっていた。
「ジェイド」
「えっ? カトリーヌ?! なんでここに?」
「貴方に用事があって会いに来たの、プレイン家を訪ねてみたけれど居ないから探したわ、あなたのお兄さんって人、凄く失礼な人なのね」
笑顔ながらも怒った目をしているカトリーヌと、後ろに控える護衛にすみませんと頭を下げる。
あの兄のことだ、カトリーヌに嫌なことも言っただろうし、カトリーヌの体にもじろじろと厭らしい目を向けたのだろう。
自分の兄だと思うと恥ずかしさしかないが、伯爵令嬢であるカトリーヌと街中で立ち話をするわけにはいかない。
どうしようかと迷っていると、カトリーヌが声を掛けてくれた。
「取り敢えず、貴方と話がしたいから喫茶店にでも入りましょう」
「あ、でもーー」
「私が誘っているのだからお支払いは私がしますわ、もう婚約者でもないですし」
「……カトリーヌ、その、有難う……」
「いいえ、気にしなくてもいいですわ、私が誘ったのですから」
家にいたくなくて、仕事を探すという目的で街をぶらぶらと歩いていたジェイドは、カトリーヌに声を掛けられ驚いた。
お金を持っていないことも丸分かりだったようで、その上食事も満足に食べていないことも察してくれたらしく、街にある喫茶店に誘ってもらえた。
あれだけの酷い振る舞いをしたジェイドに対し、カトリーヌは家族よりもよっぽど優しかった。
「……別に貴方を助けるために来たわけではないの、シャーロット様に頼まれたから来ただけよ」
そう言いながらも、カトリーヌはジェイドが食べきれないぐらいの料理を注文し、残ったら持って帰っていいわよとも言ってくれる。
姉の指示だとしても、そこまで気を回してくれるのはカトリーヌだからだろう。
幼馴染の優しさに触れ涙が出そうで、ジェイドは飲み物を一気に飲むことで誤魔化した。
「ありがとう……」
小さな声で礼を言うのが精一杯。
自分のしたことを思えばカトリーヌの前で泣くわけにはいかない。
婚約解消。
それはある意味ジェイドが、シャーロットの妹になりたいというカトリーヌの夢を壊したことに変わりないのだから。
「これ、シャーロット様からよ」
「姉上から?」
もう姉だと呼んではいけないのだが、カトリーヌに注意されることは無かった。
渡されたものは日記帳。
鍵付きのそれを手渡されたが、身に覚えは無く自分の物ではないと分かる。
「ーーっ!」
けれど日記帳を持ってみてその重さに驚く。
日記というにはあまりにも頑丈な造りで、鍵を使い開けてみればまた驚いた。
日記の中は箱になっており、幼いころのジェイドが使った装飾品が入っていて、かなり高価なものばかりだった。
「これは……?」
大きく見開いた丸い目をカトリーヌへ向ければ、シャーロット様からのプレゼントよと答えられた。
「貴方の装飾品を使う人は公爵家にはいないから頼まれたの、送った荷物の中に入れ忘れたんですって」
「……うん……」
確かにジェイドの装飾品を使うものはソラリス公爵家にはいない。
だったら売りに出してしまえば良いのだが、荷物に入れ忘れたと言ってカトリーヌに持たせてくれた姉の優しさが心にしみて、ジェイドは胸が一杯になる。
「それから、これは私からよ」
「えっ……?」
書類を数枚カトリーヌに渡される。
それは貴族の子息が通える他の学園の特待生の資料。
成績優秀者であれば、無料で学園に通え寮にも入れるらしい。
勿論王都にある貴族学園よりも格は落ちるし、地方へ行くことにもなる。
けれど生活費だけを考えれば、ここにある宝石一つを売ればどうにでもなる金額だった。
「ありがとう……」
受け取った書類も、装飾品もジェイドの宝物。
幼いころの姉とお揃いの装飾品ばかりが詰まった日記帳は思い出が沢山で、本当の意味でジェイドの宝物となった。
「カトリーヌ、ごめん、僕、怖かったんだ……」
別れ際、ジェイドはカトリーヌに謝った。
謝ったぐらいで許されることではないが、謝られずにはいられなかった。
今更だが、自分のしたことの愚かさを十分に理解している。
いつからかジェイドは心の中で恐怖を感じていた。
公爵になる恐怖。
優秀な弟でいる恐怖。
頼りになる姉を取られる恐怖。
婚約者に負ける恐怖。
それから……
最近ではマリーを失う恐怖も持っていた。
「ええ、私、怒っていたわ」
「うん」
「シャーロット様を一緒に守ろうって約束したのに、シャーロット様の妹にしてくれるって約束したのに、貴方はそれを破って裏切った、とっても頭に来たの」
「うん、本当にごめん」
「でも、シャーロット様から教えてもらったの、あの子の傍にいると心の奥の感情を刺激されてしまうんですって、だから貴方の行動も少しだけ理解できたわ」
「えっ……」
「だからシャーロット様は、貴方にも他の人たちにもチャンスを上げたいって、そう仰ったのよ……」
「姉上が……」
「ええ、私たちのお姉様は本当に素敵な人よ、いつだって私たちを守ってくれて、支えてくれる優しい方」
「うん」
「だから私はこの先もずっとシャーロット様のお傍であの方を守るわ。女性公爵になられるあの方の周りは嫉妬や羨望も多いもの、そんなものからあの方を守るの、それが今の私の目標よ」
「うん……カトリーヌ、ありがとう、姉上を宜しくね」
「ええ、貴方に言われなくてもちゃんとお仕えするわ、当然でしょう」
「うん……」
馬車に乗り込んだカトリーヌを見送る。
甘い婚約者時代など二人には無かったけれど、カトリーヌとは兄妹のような、友人のような、そんな間柄で、シャーロットを間に挟み楽しくすごした。
それなのに自分はジークハルトの側近となり調子に乗った。
その上マリーと出会い恋をして、取り返しのつかない行動を犯してしまった。
「姉上……申し訳ございませんでした……」
零れる涙を拭い、ジェイドは居ない姉に向かって頭を下げる。
マリーを階段から突き落とした時、怖くなって姉に責任を押し付けた。
あの夜会の日も陛下に事実を語れら、姉に何とかしてもらえるのではないかと、そんな期待を込めて視線を送った。
姉を敵だと見做した時点で、そんなことは無理だと分かっていたのに……
「もう甘えるのはこれで最後だ」
姉から届いた装飾品の一つを売り、ジェイドは実家を出た。
学園ではもう一度一年生からやり直しだし、出世が見込める王都の貴族学園ではないけれど、それでもやり直しのチャンスを貰えたのだ。
ジェイドは邁進すると決めた。
「いつか会えたら、姉上に謝らせてもらおう……」
今はそれが、ジェイドの目標となっていた。
おはようございます、夢子です。
今日もお読みいただきありがとうございます。
ちょっと甘すぎる結末かもしれませんが、色々と知っていたシャーロットは厳しい罰を望みませんでした。
ジークハルトは他国へお婿さんに、ジェイドは別の学校で一年生からやり直しとなりました。
ジークハルトはともかく、ジェイドはやっぱりシャーロットにとって可愛い弟です。
なのでカトリーヌに頼んで宝石を渡しました。
公爵家の宝石はかなりの価値があるのでジェイドの助けになりました。
シャーロット優しい!w




