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【完結】捨てる神あれば拾う神あり~踏み台令息は失恋を得て成長する~  作者: 夢子


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卒業式

 遂にシャーロットの卒業式の日を迎えた。


 シャーロットが学園からいなくなってしまう寂しさはエリックの胸の中には当然あるが、それよりも今夜の夜会のことを思うと顔がにやけて仕方が無い。


 シャーロットのパートナーとして夜会に出れる。

 それは男爵子息でしかないエリックにしてみれば奇跡のようなことであり、学生時代だから叶う夢でもあり、また最後のチャンスかもしれなかった。


(テスト頑張ったけれど、やっぱりカトリーヌ様には敵わなかったな……)


 学年末の試験、エリックは今回も二番手だった。

 これまでにないほど勉強に打ち込み、一位になろう! というよりも、全試験百点を! と目指して頑張った。

 だけどやっぱりカトリーヌには一歩及ばず、点数的には何とか良い競争相手になれたぐらいだった。


「私のあの方への想いはエリック様にも負けませんから」


 成績上位者が張り出される順位表を見て、カトリーヌがエリックに勝ち誇ったような顔で呟いた。

 それが余りにも可愛らしく、近くにいた男子生徒たちが頬を染めていたが、エリックだけは違う。

 挑戦状を差し出された、そんな気持ちになった。


「カトリーヌ様、僕たちの卒業までにはまだ二年間ありますからね、来年はどうなっているかは分かりませんよ、僕の本気を舐めないでください」


「あら、でしたら私も少しは本気を出さないといけませんね。あの方と同じ三学年の最終試験まで一位を取り続けることが私の目標ですから、たとえエリック様でも一位は譲りませんよ」


「それなら僕も本気の本気を出します。絶対に卒業までには一位の座を取ってみせますから」


「あら、出来るものならばやってみなさい、私負けなくてよ」


「ええ、覚悟していてくださいね、カトリーヌ様」


 カトリーヌとそんな会話をし笑い合う。

 シャーロット好き仲間である薔薇の会のメンバーの中で、カトリーヌが一番エリックと話が合うし、同じような気持ちを持っていると思う。


 話す機会が多くなれば、男女間ということでいらぬ誤解を持たれそうだが、お互いによき友であると理解できているし、趣味が合う(推しが一緒)仲ともいえた。


 だから当然、ライバルであるカトリーヌとは握手をし、お互いの成績を健闘し合った。

 今度一緒に勉強会をしましょうねと誘われて、エリックは素直にそれに頷いた。


(カトリーヌ様って見た目は可愛らしいけれど、負けず嫌いでちょっと勝ち気で、でも話をすると楽しくって面白いんだよなー。ジェイド君はカトリーヌ様の一体どこが気に入らなかったんだろうか……?)


 伯爵令嬢であるカトリーヌだけど、エリックのことは友人だと認め仲良くしてくれている。

 教室にジェイドが居なければ話しかけてくれるし、シャーロットの情報も色々と教えてくれる。


 公爵家に嫁ぐ予定だったこともあり、カトリーヌは気遣いも出来て成績も優秀で、その上見た目も良いのだ。


 たとえ公爵家と伯爵家と家格は違っても、養子であるジェイドにしてみれば文句のつけようがない婚約者だったはず。


 なのに何故平凡よりも少しい可愛いぐらいのマリーへ心が動いてしまったのか? エリックとしては不思議でしょうがなかった。


(まあ、好みは人それぞれだからね……僕も人のことは言えないし……)


 そんなジェイドの順位といえば、ギリギリ上位成績者に入り張り出される程度。

 公爵家の子息であると考えれば、恥ずかしい成績だともいえる。

 それが全校生徒の前に張り出されたのだ、ある意味ジェイドからすると公開処刑のようなもの。


 だからだろうジェイドは成績の張り出しには今回も顔を出さなかった。

 自分の成績が分かっていたからか、それともやはりマリーを想って顔を出さなかったのかは分からないけれど、それでいいのか? と問いかけたい気持ちになった。


(まあ、今更何を言っても遅いだろうけれどね……)


 もう決まってしまったことを覆す力などエリックにある訳が無い。

 それにシャーロットやカトリーヌに対し、酷い言葉ばかりを掛けていたジェイドを擁護する気にもなれなかった。







「卒業生代表、主席、シャーロット・ソラリス」


「はい」


 卒業生代表はなんとジークハルトではなく、シャーロットだった。

 本来主席が挨拶を行うことは当たり前のことだけれど、それはそもそも王族がいない場合の卒業式のみのことだ。


 王族がその学年にいた場合、代表は王族の者が務めることが常識。

 たとえ主席で無かったとしても王族ならば順位はそれ(主席)と同等が普通、別の人物が代表を務めることはまずありえない。


 これはシャーロットが他国の王位継承権を持っていることが理由の一つにある。

 そしてまだ婚約解消が発表されていないため、シャーロットはジークハルトの婚約者であり、この国の準王族の扱いであること。

 それと、三年間一度も順位を落とさず学年一位を取り続けたことが考慮されているのだろうと頷ける。


 あとここからはエリックの予想だけれど、ジークハルトの成績が余りにも悪すぎて代表者に相応しくないと判断されてしまった可能性が高い。

 そして王家からの要望でシャーロットに代表が決まったと簡単に予想された。


(殿下はギリギリAクラスだったらしいけれど、そもそもクラス替えは一年に一度しかないから実際の成績はもっと下だった可能性もあるよね……)


 マリーに現を抜かしていたジークハルトは授業も良くさぼっていた。

 それにテスト勉強も、自分の勉強ではなくマリーの勉強を見ていたのだ、成績が落ちて当然だと言える。


(自分でも代表に相応しい成績じゃないって分かっていたんだろうな……)


 そうでなければジークハルト自身が学園に文句の一つも言っているだろうし、出しゃばりだとシャーロットに詰め寄っていた可能性だってある。


 ジークハルトがそれをしないということは、学園側も代表を渋り、王家も容認しているということ。

 つまりジークハルトは国王夫妻に見限られ、王族として相応しくないとレッテルと張られてしまったことになる。


 この先挽回する機会がジークハルトにあるかは分からないけれど、悔しさがシャーロットに向かないことを祈るだけだった。


「--ここまで私たちを指導してくださった諸先生方のご健闘と、学園のさらなる発展、そして後輩たちの輝かしい未来を祈り、卒業生代表の挨拶とさせて戴きます」


 堂々と挨拶を終え、優雅な様子で講堂を歩くシャーロットに大きな拍手が集まる。

 

(シャーロット様、綺麗だなぁ……)


 貴族令嬢の鏡のような立ち振る舞いに、その美貌を見慣れてきたエリックでさえ見惚れてしまう。

 それに緊張などまるでない状態に見えるシャーロットの余裕ある姿に、流石シャーロット様だと感心してしまう。


(僕はあの方と今夜夜会へ行くんだ……あんなに綺麗な人の横に僕は立てるんだ……)


 シャーロットの顔を見れば、拍手の音に負けない程エリックの胸はドキドキと五月蠅くなる。


 エリックにとって一生に一度の想い出の日。


 それがもう間もなく訪れようとしていた。




「エリック」


「シャーロット様」


 式が終わり、卒業生の出待ちをしていれば、エリックに気付いたシャーロットが声を掛けてくれる。

 その手にはたくさんの花束が抱えられていて、薔薇の会の友人たちがシャーロットの傍にいて、同じ三年生のご令嬢エリザベスに贈られた花束も皆で分担して持っていることが分かり、エリックは慌てて駆け寄った。


「シャーロット様、エリザベス様、お手伝いさせて下さい!」


「まあ、有難うエリック、じゃあ、半分お願いしようかしら」


 今日のパートナーだからか、シャーロットは素直に甘えてくれて、抱える花束の半分をエリックに手渡してくれた。


「エリック様、私は大丈夫ですわ、お迎えがありますから」


「お迎えですか?」


「ええ、あちらに……」


 嬉し気なエリザベスの視線の先は校門の方へ向いていて、馬車の前一人の青年が、いや、まだ少年ともいえるような青年が、エリザベスに向けて小さく手を振りニコリと微笑んだ。


(あの子、パトリック・クロノス様に似てるな……)


 そんなエリックの心が聞こえたかのように、エリザベスは「クロノス家のご次男のメルソン様ですわ」と愛し気に微笑みながら皆に向け青年の名を教えてくれる。


 きっと彼がエリザベスの今夜のパートナーなのだろう。

 微笑み見つめ合う二人を見れば甘い雰囲気を醸し出している。


 そんなことにも気付かず、パトリックは校庭の中央でマリーと抱きしめ合い別れを惜しんでいるのだから笑えてしまう。

 あの様子では自分の婚約者が()()()()に変わっていることも気づいていないだろう。


 まあ、エリックには全く関係ないことだけど。


「では、皆さま、私はこれで……シャーロット様、夜会でお会い出来ることを楽しみにしていますわ」


「ええ、エリザベス様、今夜の夜会、お互いに楽しみましょうね」


「ええ」


 メルソンにエスコートされ、並んで歩く姿はお似合いとしか言いようがない。

 身長はまだ同じぐらいだけれど、きっと数年後にはもっとお似合いの二人となるだろう。


 そんな二人を見てエリックは少しだけ羨ましいなと思ってしまう。

 男爵令息でしかない自分にはあり得ない未来だからだ。


「ねえ、エリック、花束も沢山あるし、自宅まで送ってもらうことは可能かしら?」

「えっ……?」


 そんなエリックの心の声が聞こえたのかのように、シャーロットから可愛いおねだりをされてしまう。

 もしかしたら今夜のパートナーということで、心を許してもらえているのかもしれない。

 それが嬉しくって、エリックの顔には良い笑顔が浮かんだ。


「はい、勿論です! シャーロット様をお送り出来るだなんて、光栄です」


「ウフフ、そう言ってもらえると嬉しいわ……じゃあ、エリック、お願いね」


「はい!」


 差し出された美しい手にそっと触れる。

 ドキドキと胸は五月蠅く、緊張から背中だけではなく、額にも手にも汗をかいていそうだが、エリックはどうにか平常心を心がけた。


「シャーロット様、参りましょう」


「ええ、エリック、有難う」


 シャーロットをエスコートし、ソラリス公爵家の馬車へ向かう。

 そんな中、少しでもお似合いのカップルに見えていると良いな……とそんな期待を持ってしまったエリックだった。

こんばんは、夢子です。

本日もお読みいただき有難うございます。


明日は投稿がちょっと遅い時間になるかもしれません。

仕事ではないです。w

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