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保健委員は魔女っ子なのです  作者: 冲田いつき


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3/12

3 はずれなくなった腕輪

 そのページに書いてあるのはこれだけでした。もう一度本をめくってみても、後のページも前のページも、もとと同じように白紙でした。


「結局これは、はずせないってこと? “(しん)()(ぬし)”って人がはずしてくれるの?」


 エーリは不安で泣きそうになりました。魔法の腕輪(うでわ)であることは間違(まちが)いないでしょう。これがどんな目的で使う魔法道具なのか、装着(そうちゃく)した人に何か影響(えいきょう)(およ)ぼすのか、なにもかもがさっぱりわかりません。(たし)かなのは、簡単にはずせるものではない、ということだけです。


「誰にも言っちゃダメってかいてあるけど、マージ先生に相談(そうだん)すべきだわ!」


 カレンは言いました。エーリは「でも……」と戸惑(とまど)います。これが(のろ)いの腕輪だったら? 誰かに話すことで自分になにか危害(きがい)があったら? エーリはついに、声をころして(なみだ)を流しました。



 ちょうど、下校時間(げこうじかん)()げるチャイムが鳴りました。カレンは(なぞ)の本を(かばん)に入れ、(いそ)いで本棚(ほんだな)片付(かたづ)けました。


「とりあえず、保健室に(もど)りましょう?」


 エーリは涙を()きながらうなずいて、腕輪を(そで)(した)(かく)しました。何もなかったように(よそお)いながら、さよならの挨拶(あいさつ)といっしょにカウンターの前を通り過ぎて、図書室を出ました。司書の先生は帰り支度(じたく)をしているところで、特に二人を気にする様子はありません。外はもう暗くなっていました。



 エーリとカレンは小走(こばし)りで保健室に戻ると、マージ先生に()()りました。先生も店じまいの片付けをしているところでした。エーリは保健室に向かっている(あいだ)に、お母さんに正直(しょうじき)に起こった事を話そうと決意(けつい)していました。子供だけでなんとかできるものとは思えません。二人の只事(ただごと)ではなさそうな雰囲気(ふんいき)に、マージの表情(ひょうじょう)緊張(きんちょう)します。


「いったい、どうしたの?」


 エーリが()(けっ)して、先程(さきほど)のことを話し始めます。


「あのね、さっき図書室で保健新聞に()せる話題(わだい)(さが)していたんだけど……何にも見つからなかったわ!」


 エーリはハッとして自分の口を手でおさえます。カレンは、本当のことを言えなかったエーリに(たす)(ぶね)を出しました。


「違うわ! 言いたい事はそうじゃなくて、図書室には本当にろくな本がなかったの!」


 カレンもハッと口をおさえます。二人は顔を見合わせました。“腕輪のことを誰にも言ってはならない”のではありませんでした。“誰にも言えない”のです。それならば、とカレンは(かばん)にしまった謎の本を取り出そうとしました。でも、鞄を開けた途端(とたん)に、今自分が何をしようとしたのか思い出せないのです。マージは緊張(きんちょう)していた顔を(ゆる)めました。


「何かと思えば……。それなら保健室にある本からも探してみたら? でも、今日はもう帰りましょうね」


「はい、わかりました」


 エーリとカレンは思ってもないことを同時に言い、また顔を見合わせました。言葉にできないならば、と、エーリはマージに見えるように左手の腕輪を(かか)げてみました。マージは腕輪に気づきましたが、


「あら、素敵(すてき)な腕輪ね」


 とだけ言って、(まった)興味(きょうみ)(しめ)してくれませんでした。いつもなら、それはどうしたの? 買ったの? 誰かにもらったの? 学校にはしていってはだめよ? など、とやかく言われるのにです。二人は仕方(しかた)なく、帰り支度を始めました。カレンがエーリにこっそり言いました。


「先生をごまかすなんて、相当(そうとう)な魔法がかかっているわね」


 エーリとカレンの間では、腕輪の話ができるようでした。


大人(おとな)(たよ)れないなら、自分たちでなんとかするしかないけど、(まった)見当(けんとう)がつかないわね……」


 エーリは()()みます。なにしろ、自分たちはまだ、本格的(ほんかくてき)な魔法の勉強は、始めてすらいないのです。算数に()()えてみれば、足し算引き算ができる程度(ていど)知識(ちしき)しかありません。そんなことで、大人もごまかしてしまう魔法の腕輪を“なんとか”なんて、できるのでしょうか。

2020/09/30 改稿しました

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