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保健委員は魔女っ子なのです  作者: 冲田いつき


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2/12

2.図書室で見つけたもの

 おばさんが帰ったあとも、ポツポツとお客様がやってきますが、マージ先生は


「一度お手伝いの手は()めて、学校の委員の仕事をしてらっしゃいな」


 と、エーリとカレンを温室に連れていきました。二人とも正直なところ先生の手伝いをしているほうが楽しかったのですが、やることがあるので仕方(しかた)ありません。


「次の保健新聞(ほけんしんぶん)どうしようかしら?」


 エーリとカレンはテーブルの上に広げた真っ白な紙の前で、うーんと(うな)ります。健康(けんこう)啓蒙(けいもう)のための新聞作りも、保健委員の大事な仕事です。早めに今月の分を作らなくてはなりません。


睡眠(すいみん)特集(とくしゅう)とかどうかしら?」


 カレンがいいました。


「良い睡眠が必要な理由とか、安眠(あんみん)効果(こうか)があるハーブティーを紹介(しょうかい)したりするの」


「とっても魅力的(みりょくてき)だけど、魅力的すぎて数ヶ月前(すうかげつまえ)にやった気がするわ」


 エーリがカレンに今までの新聞をまとめたファイルを見せました。そして、二人はまたうーんと唸りました。


「こういう時にパッと魔法を使って、パッと何か思い()かべばいいのになぁ」


 エーリが鉛筆(えんぴつ)(ころ)がしながら言います。しかし、自分の頭の中でできないことをパッとやってくれるなんて、そんな都合(つごう)のいい魔法はありませんし、そもそも魔法学校に行って免許(めんきょ)をもらうまで、魔法の使用は原則(げんそく)禁止(きんし)です。カレンは今できる現実的な提案(ていあん)をしました。


図書室(としょしつ)に行って、何かいいアイデアを(さが)しましょ」

 



 エーリとカレンは先生に許可(きょか)()ると、小学校の図書室に行きました。司書(ししょ)の女の先生は、ポカポカと夕日の()すカウンターでうつらうつらとしていましたが、二人が入るとパッと目を覚まして、ちゃんと仕事してますよ、という顔をしました。そして、生徒(せいと)たちが本棚(ほんだな)物色(ぶっしょく)して調(しら)(もの)を始めると、またうつらうつらとしはじめます。司書の先生はこのようにうとうとしていることがとても多いので、生徒たちはこっそり“居眠(いねむ)り先生”と()んでいました。


 下校時間が近く、今は委員会活動中の時間であることもあって、図書室にはエーリとカレンの二人だけでした。何か使える本はないかと、エーリがずらりと(なら)背表紙(せびょうし)(なが)めていた時、本棚の奥の方で何かきらりと光るものを見たような気がしました。「何かしら」とエーリは、光ったように思ったあたりの本を何冊(なんさつ)()()ります。すると、この本棚に並んでいる本とは明らかに装丁(そうてい)(ちが)う本が、(かく)されるように置いてありました。

 エーリは思わず手に取りました。豪華(ごうか)表紙(ひょうし)ですが、題名(だいめい)などの文字は見当たりません。カレンもエーリが見つけた本を(のぞ)き込みます。


綺麗(きれい)な本ね。どうして(かく)してあったのかしら」


 二人は好奇心(こうきしん)ですっかり保健新聞のことは忘れて、(なぞ)の本の表紙をめくりました。


 本は何ページめくっても白紙でした。エーリは不思議に思って、さらにパラパラとページをめくります。


「何か魔法の力で文字を隠しているのかしら」


 その可能性(かのうせい)()てきれませんが、この本の秘密(ひみつ)は他にありました。真ん中あたりのページに綺麗な腕輪(うでわ)がはめこまれていたのです。おそらく金属(きんぞく)でできているのでしょう。黄金(おうごん)の輝きの中にうっすらと、しかし緻密(ちみつ)彫刻(ちょうこく)(ほどこ)してあり、宝石の(たぐい)ははまっていません。エーリは()()せられるように、思わずその腕輪に()れました。


 その瞬間(しゅんかん)、腕輪が(まばゆ)い光を(はな)ちました。二人は思わず目をつむりますが、その(くら)むような光はすぐに消え、それと同時に腕輪も跡形(あとかた)もなく、どこかにいってしまいました。

 エーリとカレンはとにかく(おどろ)いて顔を見合(みあ)わせ、それからカレンはちらりと、司書の先生の方を見ました。相変(あいか)わらず、うつらうつらしています。何か起こった、ということはばれていないようなので、カレンは少しほっとします。


 本から消えてしまった腕輪は、エーリの左手首に(おさ)まっていました。元の場所に(もど)さなければ、と、エーリは大慌(おおあわ)てで(はず)そうとしました。


「え、どうしよう! 取れないよ?」


 しかし、この金属の腕輪はエーリの手首にぴったりで、つなぎ目もなく、どう()()っても()けません。エーリがおろおろと、腕輪を引いたりねじってみたりしている(あいだ)に、カレンはもう一度、本を見てみました。


「見て、エーリ。腕輪がはまってたページに何か書いてあるわ」


 さっきまで白紙だったページに、文字が()かび()がっていました。




 ***




 腕輪を見つけた者は



 腕輪を真の持ち主以外に渡してはならない


 腕輪の事を誰かに話すことはできない


 間違った手順で腕輪を外すことはできない




 ***

2020/09/30 改稿しました

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