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保健委員は魔女っ子なのです  作者: 冲田いつき


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4/12

4 黒いローブの不審者

 少しの時が流れました。もう外はすっかり寒くなっていますが、保健室の素敵(すてき)暖炉(だんろ)のそばは、ぬくぬくとして(あたた)かです。

 腕輪(うでわ)はどうなったかというと、あの日から何も変わっていません。エーリには(えき)にも(がい)にもならず、今も左手にあるだけです。学校ではいつも(そで)(かく)していますが、仮に見つかっても(だれ)も腕輪を気にしません。本当に、この腕輪は一体なんなのでしょうか。

 エーリとカレンは、はじめの(ころ)こそ何か手がかりはないかと(なぞ)の本を何度(なんど)も見たり、図書室に少しだけ()いてある小学生向けの魔法の本を読みましたが、子供だけの(ちから)では結局(けっきょく)なにもわかりません。小学生が手に入れられる魔法なんて、“今夜(こんや)()きな人の(ゆめ)を見られるおまじない”程度(ていど)です。

 マージ先生にも何度か相談(そうだん)してみようとしましたが、腕輪のことも本のことも、“腕輪のことを(しゃべ)れない魔法”のせいで、結局(けっきょく)相談(そうだん)出来(でき)ずじまいです。普段(ふだん)は腕輪に存在感(そんざいかん)がないこともあって、二人ともだんだん腕輪のことを気にしなくなりました。



 それよりも二人の今の関心事(かんしんごと)は、最近(さいきん)小学校の近くで目撃(もくげき)されている不審者(ふしんしゃ)でした。

 フードを目深(まぶか)にかぶった黒いローブの(あや)しい人物(じんぶつ)が、校門のあたりで()()っていたり、(まど)から教室を(のぞ)こうとしているのを、クラスのみんなが見ています。平和(へいわ)なこの(まち)では、子供たちにとっては恰好(かっこう)話題(わだい)です。

 先生方(せんせいがた)警戒(けいかい)して見回りなどをしていますが、そうするとふっとどこかに消えてしまって、しばらく(あらわ)れなくなるのです。


 こんな時には、魔女であるマージ先生はとても(たよ)りにされました。先生方の目が(とど)かない時に、不審者が学校に侵入(しんにゅう)したりしないよう、対策(たいさく)をしてもらいます。

 マージ先生は学校(まわ)りに境界線(きょうかいせん)(えが)き、先生や生徒以外の人が勝手(かって)にその線を()えれば、大きな音でベルが鳴るようにしました。ついでに、線を越えた人物はしばらく身動(みうご)きが取れなくなります。その間に不審者を(つか)まえられるというわけです。

 保護者(ほごしゃ)や学校関係者には、必ず約束を取り付けてから来校するように周知(しゅうち)しました。




 今日はマージ先生が出張(しゅっちょう)で学校を()けている日です。そんな日は、保健委員が休み時間に保健室に待機(たいき)しています。先生がいない時はアトリエはお休みになるので、外からのお客様(きゃくさま)用の(とびら)には閉店中(へいてんちゅう)(ふだ)がかけられています。もう昼休みになりましたが、今のところ怪我人(けがにん)病人(びょうにん)もなく、エーリとカレンの仕事はありませんでした。

 二人は暖炉のそばで給食(きゅうしょく)を食べていました。(とく)(さむ)い日には(うれ)しい、保健委員の特権(とっけん)です。すっかり忘れていた保健新聞のことも先日(せんじつ)片付(かたづ)けて、二人はのんびりした気持ちで暖炉にあたっています。からだがぬくぬくと(あたた)かい時は、どんな心配事(しんぱいごと)もなくなってしまうものです。


 エーリとカレンが、食べ終わった給食の食器(しょっき)を給食室に返却(へんきゃく)に行って保健室に(もど)ると、ドアも窓も閉めきっているはずの部屋に風が通るのを感じました。約束もなく入ってきた人を知らせるはずのベルの音も鳴らさずに、開け(はな)たれていたのは、アトリエのお客様用入り口の扉でした。


 お客様用入り口の(かぎ)はきちんと()まっていたはずです。しかもただの鍵ではありません。マージはいつも留守(るす)にするときは魔法で厳重(げんじゅう)に鍵をかけます。

 その魔法を(やぶ)って入ってきたのは、フードを目深(まぶか)(かぶ)った黒いローブの人物でした。

2019/03/21 誤字修正しました

2020/09/30 改稿しました

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