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第1 3回

「7,6,3…」

ひとりつぶやきながら,慣れた手つきでダイヤルを回す。乾いた音が響いてカギが外れた。わたしは,重い鎖を床に落として,ドアを開ける。

薄暗い踊り場から直射日光の下へ。ギャップが容赦なく両目を襲って,一瞬めまいを感じる。わたしは,両手をかざしながら,日陰を探した。持ってきたシートを広げて腰を下ろす。

1人になりたいとき,わたしは校舎の屋上に来る。軽音の先輩が,なぜだかカギの番号を知ってて,こっそり教えてくれた。だから,ここは一部の軽音部員にとって,隠れ家みたいな場所になってる。夏休みの宿題をロッカーに忘れて,取りに来たわたしは,久しぶりに立ち寄ってみた。

いつものように,スマホにイヤホンをさして,音楽プレイヤーを起動しようとした。そのとき,思わず声をあげそうになった。誰かが近づいてくる気配を感じたからだ。

夏休みの午前中。課外授業はないし,練習してる部もないみたいだ。校舎は静まり返って,遠くでセミの声が聞こえるだけ。そこに足音が…

「なんだあ。聡ちゃんか。カギ開いてるから,誰かと思ったら…」

「なんだ,じゃないよ。もう。おどかさないでよ。」

「それはお互いさまだって。」

サンダルを引きずりながらやって来ると,甲田君は近くの柵にもたれる。Tシャツに短パンというユルい格好で,手にタバコとライターを握ってた。

「あ。そういえば,ごめんね。ライブ来てくれたのに,ぶち壊しにしちゃって。圭治の最後のライブだったのに,って,あ…ごめん,圭治の話,NGだった?」

1人の時間を邪魔されたうえに,苦手な甲田君と2人。わたしは,気が重くなって,目を伏せる。意味もなく,ラベルの文字を目で追ってみた。甲田君は,視線に気づいて,タバコを掲げてみせる。

「あ,これ?しばらく禁煙するんで,吸い納め,ってヤツ?部室に残ってた荷物を取りに来たんだけど,なんとなくそんな気分でね。」 

「禁煙?受験の願掛けか何か?」

「まあ,そんなたいしたもんじゃないけどね,なんとなく?」

 甲田君は,くわえたタバコに火をつけ,大きく息を吸う。空をあおぐと,目を細めて一気に吐き出した。

「もう。先生来たらどうすんの?」

 とりあえず言ってみた。今さら「喫煙同席」とかで謹慎になっても,別に関係ない。推薦で進学するとか考えてないし。でも、アイドルが謹慎はまずいかも。

「平気だって。今日なんて,職員室にほとんど人いないみたいだし。でもさ,これが東京だったら,もう先生来てるかもな。近くのビルの窓に屋上の様子が映ってたりしてさ。」

 甲田君は,ふざけた調子で言ったけど,声のトーンがちょっと低い。いつもとなんか雰囲気が違う。

「そうだね,ほんとなんにもないよね。」

 わたしも立ち上がって,柵にもたれ,180度見回してみる。どこにでもある住宅街の向こうに,低いビルがまばらに見えるだけ。その奥には,この市を囲むように山がかすんでる。

「入部して,最初に連れてこられたとき,結構気に入ったんだ,ここ。ほら,他に高いところなんて近くにないし。でもね,遠くまで見えると思ったけど,ふと気づいたら普通に歩いてる範囲なんだよね。」

「だよな。ほんとに狭い世界で生きてるって感じだよ。」

 タバコを足もとに落として,踏み消すと,甲田君は遠くを見ながら言う。

「ねえ,聡ちゃん。もし,東京に生まれ育ってたら,全然違う生活だったのかな?」

 驚くほど横顔が真剣に見える。やっぱりおかしい。いつもは,めったに真顔なんて見せないチャラ男なのに…

 それはともかく,きっとそうだ。ネットじゃ,「東京に生まれ育つのは最高のアドバンテージ」なんて書き込みがあったりするから。でも…どう答えていいかわからなくて,微妙に話題をそらしてみた。

「もしかして,進路で悩んだりしてる?」

「あ。んん。まあ,そんなとこ。」

 認めるんだ。茶化してごまかすとか思ってたのに。それで,わたしも,「シリアスモード」を発動させる。

「東京の大学,行くんだっけ?ほら,去年オープンキャンパス行ったとこ。」

「ああ。最近ちょっと家が経済的に厳しいみたいでさ,県内の専門学校にするかも。」

 わかった。甲田君の視線をたどると,専門学校が入ってる駅ビルが見える。ビルと言っても,30分もあれば見て回れるレベルだ。そこに進学したら,確かに…

「でもさ,進路で悩むのは,いろいろ真剣に考えてる,ってことだよ。わたしなんて,悩むのを放棄してるからさ。」

 これは本当だ。進路に関しては,イベントのせいにして完全に放置状態になってる。

「何言ってんだよ?自分のやりたいことをやってる聡ちゃんはすごいよ。」

「ほんとに違うんだって。わたしなんて,進路のことから逃げて,マネージャーの言うとおりにしてるだけだから。」

「でも,1回戦勝ったんだよね。たくさんの人に応援されて,それにちゃんと応えてるんだから,やっぱりすごいよ。」

 甲田君の表情はすごく純粋に見えた。キャラに似合わず,からかってる様子なんて少しもなかった。

 そう。わたしは勝った。「合唱おじさん」の鼻骨という犠牲と引きかえに。

『やっぱり,絞め技より空中戦のほうがインパクト強いからね。』

 伯父さんは無責任に笑ってた。わたしにはよくわからないあだ名が増えた。「こけしちゃん」とか「ロケットガール」とか。

「だってさ,俺なんて勝つことに無縁の生活だからね。頭も運動神経もよくない。それに,部活も軽音だから勝ち負けないし。って,そうでもないか。」

「そうだよ。甲田君には,音楽があるんだから。奨学金もらったり,バイトしたりすれば東京の大学だって行けるかもしれないよ。それに…」

 しまった。甲田君の表情が一気に曇ってく。もともとフォローは苦手だ。つられて,わたしまでキャラじゃないこと言ったけど,完全に逆効果だった。

「俺も,それは考えてみたけどね。でも,そこまでしても意味ないんじゃないかって思ってさ。音楽は,先が見えちゃったんだよ。ベースが…そうだな,なっちゃんくらい弾けたら,いろいろ考えるかもしれないけど。」

「見たんだね,動画…」

 甲田君は,だまってうなずいた。あのライブの動画は,伯父さんがネットで全力拡散中だ。「美少女JKベーシストとのコラボ」とかって。 

「2人とも輝いててさ。違うって思ったよ。音楽って,支える側と支えられる側がいるんだって,改めてわかった気がしたんだ。いや,支えられるっていうか,支えたいって思わせることができる,って言ったほうがいいかな。」

甲田君は「語りモード」に入ってた。ふと思った。オヤジ以外に語られるのって,いつ以来だろう。それにしても,若者に語られるのがレアになってるわたしって…

「俺,年の離れた従兄がいてさ。まあ,もうおっさんって年なんだけど,アイドルヲタクなんだよ。そんなだから,親戚中から浮いててさ。相手するのが俺くらいだから,いろいろ話してくれるんだ。」

ここにもいた。オヤジに語られる体質の高校生。甲田君に対して,いつもよりちょっとだけ親近感が持てた。でも,わたしの好感度なんて気にしないで,甲田君は続ける。

「その兄ちゃんが言うには,昔はアイドルって,憧れの存在で恋愛の対象だったんだって。でも,今は,若い頃の自分と重ね合わせて,なんとかして押し上げてやりたいって気持ちの中年ファンが多いって聞いてさ。『自分はもういい歳だから人生どうにもならないけど,君たちは好きな道を進め』なんてね。」

そうかもしれない。アイドルのライブで起きるコールは,どこか必死な感じがすることがある。悲鳴みたいに聞こえたりするときもある。

「それ聞いて,思ったんだ。アイドルに恋をするのってキモイって思う人が多いけど,そっちのほうが無邪気っていうかさ。うまく言えないけど,こじらせた人がたくさんいるより悲しくないかな,なんて。」

もしかしたら,って思った。これが本来の甲田君なのかな,って。田舎って,人が少なくて,狭い社会だから,一度キャラを設定すると変えるのは至難のワザだったりする。気の毒なことだけど,甲田君は,初期段階で失敗したのかもしれない。

「聡ちゃんの周りにも,いるでしょ,そういう人?」

「うん。まあね。っていうか,そんな人ばっかり。」

ほんと,こじらせたおっさんしかいない。タキモトさんなんて,甲田君の言ったままのこと,話してた。でも,まあ別に嫌じゃないけど。そう言おうとすると,甲田君は吸い殻を拾って大きく息を吐いた。

「あーあ。ガラにもないこと言っちゃったな。でも,要は,聡ちゃんは,もうたくさんの人の期待を背負ってるってこと。望んでも,望まなくてもね。」

そこで甲田君は,いつもの人を食ったような表情を見せる。

「とにかく,俺は応援させてもらいますよ,『在宅』だけどね。」

甲田君は,背中を向けて歩き始める。「通常モード」なのに,もう無理してるようにしか見えなかった。それでも,甲田君は,このキャラで,これからもきっとこの町で生きていくんだろう。あのライブは,圭治だけじゃない。甲田君にとっても,「お葬式」だったんだ。

何か言わないといけないと思った。

「甲田君。圭治は,甲田君とバンドできてよかったって思ってるよ。だって,あんなバカなライブにつき合ってくれるメンバー,そうはいないよ。あっ。こんなこと別れたわたしが言っても,説得力…」

言葉につまった。甲田君がドアのノブに手をかける。タキモトさんと甲田君がだぶって見えてしかたなかった。わたしに何ができるんだろう。「こじらせ予備軍」の同級生のために。

「ねえ。今度うちのマネージャーと話してみない?」

「マネージャー?オヤジなら間に合ってるよ。」

ちょっと横顔が見える。甲田君は,なんだか笑ってるみたいだった。

「オヤジって,意外といいこと言うんだよ。まあ,たまにだけどね。」

「ありがと。話せてよかった。」

甲田君は,振り返らなかった。「わたしも」って,そう言う前に,ドアの向こうに消えた。

わたしは,もう一度目の前の景色に向き合って思う。甲田君はなぜ急に本音を話したりしたんだろう。もちろん,いつもの気まぐれかもしれない。わたしとは,特に親しくない,どっちかっていうと,わたしはいつもスルーしてばかりだ。でも,自分と同じ「語られ体質」だって気づいてて,2人きりになったから…

わからない。甲田君だって,わかってないのかも。でも,確かなことは,わたしには見えてないことがまだたくさんある,ってことだ。

今度は口に出して言ってみた。

「わたしも,話せてよかったよ。」


カフェでのライブ。っていうと,プロのミュージシャンが下北とかでやるのを思い浮かべる。ライブCDを聴くと,音からもおしゃれな空気が伝わってくるみたいだ。それで,ちょっと大人な気分になれたりする。

だから,「地元のカフェで」って言われても,正直イメージがわかなかった。いつものことだけど,急に決まったから,予習も十分できない。ネットでちょっと調べるのが精一杯だった。でも,画像だけ見ても,かなりいい雰囲気だった。東京のカフェ,って言われても,疑わないと思った。

その印象は,実際に来ても,変わらない。お店は,広い道路から少し離れた場所にあった。レトロな建物が,周囲の自然にうまく溶け込んでる。店内は,15席くらいで,きれいにまとまった感じ。それで,見回すと,センスのいい小物が,あちこちに置かれてる。それから,窓から差し込む光が,テーブルの上で静かに揺れてて…すべてが,落ち着いた空気を作り出す要素になってた。

そんな状況で,わたしは歌ってる。ダンスも控えめに,ほぼマイクのみに神経を集中させて。音響設備といえば,ドラマで見るスナック?みたいな程度。「BOYZ」も3人だけで,MIXもコールもない。すべてが未体験の領域だった。

続けて2曲歌ってから,MCを始める。

「ありがとうございます。美宙祈です。はじめまして,の方もいるんですね。」

 わたしは,改めて店のなかを見回した。見回す,ってほどの範囲じゃないから,ゆっくりと時間をかける。それで,お客さん全員と目を合わせることができた。

「うれしいです。おかげさまで,ネットでは少しずつ話題になってきたりしてるんですが,逆に地元だとリアルに無名なんで。」

「だよね。地元でライブ,やってないから。」

「大丈夫だよ,ちゃんと知ってる!でも,頭突きはやめて!」

「ズツキ・ダメ・ゼッタイ!骨折は嫌だ!」

 いつもの調子で「BOYZ」がはやし立てた。ちょっと笑いが起こる。

「もう…今日は,『おまいつ』の人たちはスルーすることにしますね。新規さんのために頑張って歌います。」

わたしは,「BOYZ」から顔をそらせた。今度は,タキモトさんの笑顔が視界に入る。

「あ。マナーのいい人は別ですよ。」

そう言うと,タキモトさんは,軽く手を振った。グッズのTシャツを着て,最古参をアピールしてる感じだ。

「でも,ほんと,すいません。地元になじんでなくて。だから,MCでも地元ネタとかできないんですよ。まあ,それはともかく,今日は,ほんとに自由にさせてもらってます。申し訳ないですが,すごくリラックスしてやってたりします。」

これは本音だ。「アイドル異種格闘技」では,思った以上の緊張感のなかでライブしてるから。

「選曲も,思いついた好きな曲で,カラオケが手に入るもの,っていう自由ぶりです。知ってる方も,いると思いますけど,わたし元軽音部員なんですが,ロックに関してけっこう『DD』だったりします。だから,古い曲から最近のものまで,もうバラバラで,まとまりがない感じですが,楽しんでいただけるとうれしいです。」

自分でも,意外だけど,MCも長めになってる。お客さんは,拍手で応えてくれた。

「それで,自由ついでに,ちょっと考えてることがあるんですが…」

わたしは,また視線をすべらせる。今度は,お客さんじゃなくて,その後ろのほうに。

「知ってると思いますけど,わたし,いつもくだらないことやらされてるんです。誰に,ですか?マネージャーですよ。」

伯父さんの姿は見えない。控室にでもこもってるんだと思った。どうやってグッズを売りつけようとか考えながら。

「だから,今日は,わたしも無茶ぶりしちゃいます。店長さん,これ使っていいですか?」

わたしは,スピーカー近くにあるアコースティックギターを指さした。カウンターの向こうで,店長がうなずく。伯父さんと同年代で,見るからにバンド経験者という雰囲気だ。

「せっかくだから,弾いてもらいましょう。隠れてないで出てきてください。『銭ゲバおじさん』。」

「銭ゲバ!銭ゲバ!」

「BOYZ」が,すかさずコールしてくれる。事情を知らなそうな新規さんも手を叩き始める。

「さあ,みなさん,いつもやりたい放題のオヤジが,どんな顔で出てくるか,注目…」

えっ?顔?!顔が…。やられた。完全に読まれてる。だって,もう仕込みはバッチリ,としか言いようがなかった。

カウンターの奥から現れた伯父さんは,覆面姿だった。「パンドラちゃん」が物販で売ってたマスクだ。思い出した。1枚しか売れない,ってレッドさんがネタにしてたっけ。その1枚が,こんな形で…

「BOYZ」が爆笑で迎える。追いかけるように,大きな拍手が,笑い声を包んだ。

「顔,見えないやん!」

どこからか関西弁が聞こえる。また笑いが起こった。新規さんは,これも演出だって思ってるかもしれない。ほんとはくやしいのに。サプライズをサプライズで返されるなんて…

でも,なぜかいい雰囲気だと思ってしまった。地元なのに知らない場所。いつもより小さな会場。初めてわたしを観る人たち…だけど,ここには,サークルモッシュとは違う一体感ができつつある。

伯父さんは,ゆっくり近づいて,わたしの隣に立つ。照れた様子も見せず,軽く頭を下げた。

「では,『銭ゲバ』改め『DDおじさん』を迎えて,弾き語り,じゃなくて,『弾かせ語り』のコーナーを始めます。」

伯父さんが,ギターを手にして,椅子に腰かけた。わたしは,近づいて曲名を耳打ちする。ニューウェイブ,っていうんだっけ?80年代のイギリスのバンドの曲だ。伯父さんは,ちょっと笑ってうなずく。ストラップを肩にかけると,弦をはじいて,感触を確かめ始めた。

「今から歌うのは,わたしが生まれるずっと前の曲で,そんなにヒットしたわけじゃないから,一般的にはあまり知られてないんですが,大好きな曲です。以前,友達とバンドでやったことがあって…」

そう。去年,部内でセッションをしたことがあった。その時に,カバーした曲だ。圭治がやりたいって言って,奈津が気に入って,演奏することが決まったんだった。

「まとまりのない話になっちゃいますが,わたし,ギター1本で歌うってやったことがないんです。来ていただいて申し訳ないんですが,なにしろ,歌にあまり自信がないから。だって,ギターと歌だけって,具の入ってない塩ラーメンみたいじゃないですか。」

「どうも。塩ラーメンのスープです。」

伯父さんが口をはさんだ。絶妙な間に,あちこちで笑いがもれる。わたしは,肩をたたいて,つっこんだ。

「早くしてください。まったく。誰待ちだかわかってます?あ。初めてといえば,そうなんです。アイドル始めてから,英語で歌うの初めてなんですよ。歌詞忘れたり,発音が微妙でも目をつぶってくれると,うれしいんですが…」

「全然オッケー。英語わかんないから。」

「俺も。テスト赤点だった。」

 「BOYZ」も時間かせぎにつき合ってくれる。のぞき込むように見下ろすと,伯父さんは,左手の親指を立てた。わたしも,マイクを左手に握り直して,視線を戻した。

「お待たせしました。では,聞いてください。」

 店内が一瞬静まる。上半身全体を使って,伯父さんが,ピックを振り下ろした。最初の音が響く。きれいなカッティングだった。

「みなさん。よかったら,手拍子お願いします。」

左手の肘のあたりを右手で叩く。みんなもすぐ合わせてくれた。そのなかにひと際大きな音が交じってる。新規さんだけど,曲を知ってるみたいだ。満面の笑顔で,こっちを見てた。つられるように,わたしからも笑みがこぼれた。

歌い出して,気づく。伯父さんのギターは,テクニックを見せつけるような弾き方じゃない。歌に寄り添う,っていうけど,ほんとにそんな感じ。全然主張しないけど,存在感があるっていうか…

ゆっくりと視線を動かした。1人1人を観察するみたいに。みんな,身体でリズムを取りながら,手を打ち鳴らしてた。カウンターのなかに目をやる。店長も,手を止めて,わたしを観てた。

そう。どこにでも,アイドルファン,サブカル好き,なにより音楽が好きな人はいる。それに,地方を楽しくしようと諦めてない人も。それは少数かもしれない。だけど,そういう人と向き合うことには,きっと意味がある。

世の中にはムダなことなんかない。そう言われることがある。少し前なら,全然うなずけなかった。でも,こういう場所にいると,ちょっとそうかも,なんて思えたりする。

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