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【第8話】無限インベントリの覚醒と、ギルドの戦慄

ある能力が覚醒!?

【第8話】無限インベントリの覚醒と、ギルドの戦慄

「……よし、これでフォレストウルフの死体を全部片付けられたな」

 シルフィがふう、と息を吐きながら、討伐した5頭の魔物の山を見つめた。

 普段なら、Fランクのキノコ採取クエストでこんな大荷物(魔物の死体)が出ることはない。運ぶ手段がないため、泣く泣く現場に放置するか、部位だけを切り取るのが冒険者の常識だ。

「これ、全部街に持って帰るのって大変ですよね。……あ、そうだ。ネットスーパーの画面の横に、新しい項目が増えてる」

 俺がレベル3になったステータス画面をスクロールすると、そこには新たに【固有サブスキル:ネットインベントリ(容量:無限)】という文字が追加されていた。

「これって……もしかして。ネットスーパーの商品の『返品・保管用倉庫』が解放されたのか?」

 試しに、目の前にあるフォレストウルフの巨体に手を触れ、頭の中で『インベントリに格納』と念じてみる。

 すると、ズザザザッ!と巨大なウルフの死体が光の粒子に変わり、画面の中の『一時預かりスペース』へと吸い込まれていった。画面には【フォレストウルフの死体×5】と表示されている。

「な、何だと……!? タカシ、お前はいま、伝説の空間魔法『無限収納(インベントリ)』を使ったのか!?」

 シルフィがフォークを握りしめたまま、今日一番の衝撃で叫んだ。

 それもそのはず、この世界で空間収納の魔道具(マジックバッグ)といえば、家が数軒建つほどの超超高額アイテムであり、容量もせいぜい樽2〜3個分だ。それが「無限」となれば、一国の物流を支配できるレベルのチート能力である。

「いや、ネットスーパーの倉庫をちょっと借りてるだけみたいです。よし、ウルフの肉を後で食べる用に少しだけ切り分けて残して……よし、これでインベントリへの格納は完璧です。シルフィさん、ギルドに報告に戻りましょう!」

「あ、ああ……。お前という男は、底が知れなさすぎる……。ま、真面目に付き合うのが馬鹿らしくなってくるな。だが、ウルフの肉を『後で食べる用』に残したという点だけは、冒険者として満点の判断だ!」

 シルフィはツンと胸を張りつつも、すでに頭の中は「ウルフの肉がどんな現代調味料で化けるのか」でいっぱいのようだった。



 街へと戻り、俺たちは『冒険者ギルド・ロルム支部』の扉をくぐった。

 夕方のギルドは、依頼を終えた頑強な冒険者たちでごった返している。俺たちがカウンターへ向かうと、今朝の受付嬢が「おかえりなさい」と朗らかな笑顔で迎えてくれた。

「タカシさん、シルフィさん、初クエストお疲れ様です。キノコ採取の報告ですね?」

「はい。これがホーンマッシュです。あと……道中でフォレストウルフの群れに襲われたので、一応それも討伐してきました」

「えっ? フォレストウルフですか? あそこは最近目撃例がなかったはずですが……。討伐の証拠(魔石や耳)はありますか? なければ報告として受理できませんが……」

 受付嬢が心配そうに言う。

 俺は「あ、じゃあ、これ」と言って、受付カウンターの前の広い床スペースを指差した。

 そしてインベントリから、フォレストウルフの死体をゴロゴロと取り出した。ただし、あらかじめネットスーパーの『機能』で、後で食べる用の極上のロース肉を数キロ分だけ切り取って、インベントリ内に残した状態だ。

 ドサッ!!! ドサササッ!!!

 受付の床に、丸々としたフォレストウルフの死体が4頭半、地響きを立てて積み上がった。

「「「「……は?」」」」

 その瞬間、ギルド中が静まり返った。

 酒場でエールを飲んでいた大男たちのグラスが床に落ちて割れる音が響く。

「な、なん、これ……ウルフの群れを一瞬で全滅させたの!? しかも、傷が全員、首元を一刀両断されてる……。シルフィさん、あなたCランクですよね!? どんだけ高密度の魔力を使えばこんな芸当が――」

「ふ、ふん! 別に大した相手ではない! 私はプロだからな、これくらい当然だ!」

 シルフィは黄金色の『味の素バフ(全ステータス+50%)』がまだギリギリ残っているため、身体から無意識にピリピリとした圧倒的な強者のオーラ(威圧感)を放っている。ギルドのベテラン冒険者たちが、そのオーラに気圧されて一歩後ずさりした。

「それにしても、この大荷物をどうやって運んだんですか? マジックバッグなんて持ってないですよね……?」

 受付嬢が戦慄しながら俺たちを見つめる。

 俺のネットスーパーのレベルは、今回のクエスト完了報告の経験値が入っても【4/100】。

 まだまだレベル100への道のりは遠い。10レベルごとにどんな「とんでもないショップ(ドラッグストアや、100円ショップなど)」が報酬として解放されるのか、まだ誰も(タカシ自身も)知らない――。

「あ、それは、俺の固有スキルで……ちょっと運んできまして。それじゃあ、報酬の精算をお願いします!」

 俺はのんきに笑いながら、異世界通貨のチャージ残高が増えるのを計算するのだった。

 

(第9話へ続く)

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