【第6話】異世界の朝と、現代の『極厚ハムカツサンド』
第6話です!最高の朝ごはんとは!?
【第6話】異世界の朝と、現代の『極厚ハムカツサンド』
オークの生姜焼きによる衝撃の「神バフ」を体験した昨晩。ドワーフの料理長に余った料理を少し分けたら、感動のあまり宿の最高室をタダで提供してくれた。
ふかふかのベッドで一睡し、翌朝。窓から差し込む異世界の青白い朝日に照らされながら、俺はすっきりと目を覚ました。
「ふぁ……よく寝た。さて、朝飯にするか」
食堂に下りると、すでにシルフィがマイフォークとマイスプーンをテーブルに並べて、今か今かと俺を待っていた。真面目な顔をして席に座っているが、俺の姿を見た瞬間に銀色の髪が嬉しそうにぴょこんと跳ねたのを俺は見逃さなかった。
「おはよう、タカシ。昨夜のショウユ料理のおかげで、今朝は驚くほど身体が軽い。……して、今日の朝飯は一体何だ? 市場へ肉を買いに行くか?」
「いえ、シルフィさん。調味料ばかり買っていてもスキルの真価は発揮できません。今回は、俺の世界の『加工肉』と『食品』をそのまま取り寄せて、こっちの野菜と組み合わせてみます」
そう、この世界のお肉(オーク肉など)は安くて旨いが、現代日本の「加工食品技術」だって負けていない。それに、ネットスーパーのレベルを効率よく上げるには、高単価な現代の食品や食材もバランスよく注文していく必要があるのだ。
「ネットスーパー、オープン!」
俺は画面を操作し、現在のブロンズランクで買える『加工食品』と『パン』のカテゴリから、朝食に最高なメニューを組み立てた。
* 大手メーカーの厚切り極厚ロースハム(4枚入り):400円
* 小麦香る食パン(6枚切り):150円
* サクサクパン粉&小麦粉セット:200円
* キャノーラ油(小さじサイズ):100円
* 【合計:850円】
残高からパッと引かれ、足元にポロンと段ボール箱が届く。中から出てきたのは、厚さ1.5センチはある贅沢な『極厚ロースハム』のパックと、日本のコンビニやスーパーでお馴染みの白い『食パン』だ。
「な、なんだその薄くて白い四角い物体は……? パン、なのか? 異世界のパンはどれも硬くて黒いというのに、信じられないほど柔らかくて白い……」
「これは食パンっていう、俺の世界の主食の一つです。ここに、市場で買ったこっちの野菜を合わせます」
俺は昨日市場で買った『コカブジ(キャベツ)』を、宿の包丁で見事な千切りにしていった。
そして、現代日本の技術の結晶である極厚ロースハムに、小麦粉、宿の卵、そして日本のサクサクなパン粉を丁寧にまぶしていく。
宿の厨房を借り、熱した油の中にロースハムを滑り込ませた。
――カラカラカラカラ……!
心地よい軽い音を立てて、パン粉が黄金色に染まっていく。日本のパン粉は水分量が計算されているため、揚がったときのサクサク感が異常なのだ。
きつね色に揚がった極厚ハムカツを、サクッ、と小気味いい音を立てて半分に切る。肉汁がじんわりと溢れ出た。
軽くトーストした白い食パンに、初期調味料の『岩塩』『黒胡椒』で軽く味付けした千切りキャベツをこれでもかと敷き詰め、その上に揚げたての熱々ハムカツをドンッ!と乗せる。もう一枚の食パンで挟み、上からぎゅっと押さえて包丁で斜めにカットすれば――。
「完成です! 現代日本の技術が詰まった『極厚ハムカツサンド』です!」
「……美しすぎる。この、白いパンと黄金色の衣、そしてピンク色の肉の層……これが、美味くないはずがない!」
シルフィはごくりと喉を鳴らし、我慢の限界とばかりに両手でサンドイッチを掴み、大きな口を開けてガブッ!と噛み付いた。
――サクゥッ!!!
厨房と食堂に、信じられないほど軽快で、小気味いい「衣の爆ぜる音」が響き渡った。
「っ~~~~~~~~~!?!? 旨い! 旨すぎるぞタカシ!! なんだこのパンのフワフワ感は! そして中の肉が、サクサクの衣の中から、信じられないほどの弾力と、凝縮された肉の旨味を溢れ出させてくる……っ!」
「現代のロースハムは、旨味がギギュッと凝縮されてるんですよ。そこにこっちの新鮮でちょっと苦味のあるキャベツが合わさることで、油っぽさが消えて無限に食えるんです」
「ああ、止まらない……! 噛むたびに口の中が幸せで満たされていく……! 私はもう、この白いパン(食パン)のない世界には戻れないかもしれない……っ!」
シルフィは目を潤ませながら、ツンデレなプライドを完全に投げ捨てて猛烈な勢いでハムカツサンドを口に押し込んでいく。
その時、俺たちの前に、昨日よりさらに眩しいウィンドウが出現した。
【ログ:現代加工食品×異世界生鮮野菜のシナジー効果が発動しました】
* メニュー:『極厚ハムカツサンド(現代ロースハム・食パン×異世界キャベツ)』
* 付与バフ:【物理防御力+40%】【移動速度+25%】【危険察知(小)】
* 効果時間:4時間
「あ、今度は防御力とスピードのバフだ!」
シルフィの身体が、今度は軽やかな緑色のオーラに包まれる。彼女が少し足を動かすだけで、まるで風を切るような鋭い残像が見えた。
「すごい……! 身体が羽のように軽いぞ! それに、視界がクリアになって、周囲の僅かな殺気や空気の動きが手に取るようにわかる……! タカシ、お前の世界の食べ物は、どれだけ私を驚かせれば気が済むんだ!」
シルフィは興奮しながらも、最後の一口を名残惜しそうにパクリと食べた。
俺も自分の分のサンドイッチを頬張る。サクサクの衣とジューシーなハム、そして異世界キャベツのみずみずしさが合わさり、文句なしの100点満点の朝食だ。
食後にステータスを確認すると、高単価な現代肉とパンを注文したおかげで、ネットスーパーの経験値が【25/100】まで一気に跳ね上がっていた。
「よし、シルフィさん。朝飯も食べて、鉄壁の防御力とスピードを手に入れました。……そろそろ、Fランク冒険者としての初めての仕事、行ってみますか?」
「うむ! 今の私なら、どんな魔物が相手でも遅れは取らん! お前を指一本触れさせずに守り抜いてみせよう!」
シルフィは腰の剣をパチンと叩き、不敵な笑みを浮かべた。
現代食品のチートバフを身にまとった俺たちの、初めてのクエストが幕を開けようとしていた。
(第7話へ続く)
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